2025年夏、新型コロナウイルスのオミクロン系統から派生した変異株 NB.1.8.1(通称「ニンバス」)の検出報告が世界的に増えています。本稿では福岡県内での流行状況やこの変異株の特徴、症状、重症化リスク、そして予防のポイントを、公的機関や信頼性の高い学術機関からの情報を基にまとめました。
福岡県と全国の感染状況
福岡市保健所は毎週、定点医療機関あたりの患者報告数を公表しています。2025年第28週から第32週の福岡市における新型コロナの定点当たり報告数は次のように推移しました。


ニンバス株の特徴
- 系統:オミクロン株のXDEとJN.1の組換え体「XDV」から派生
- 感染力:既存のXEC株やLP.8.1株より実効再生産数が高く、伝播力が強い
- 免疫回避性:JN.1よりやや高いが、ワクチンや自然感染による抗体で中和可能
- WHO分類:2025年5月時点で「注目すべき変異株(Variant Under Monitoring)」に指定
症状の特徴
- 一般的な症状は 発熱、喉の痛み、咳、鼻水、倦怠感 が中心
- 一部で「カミソリを飲み込んだような強い喉の痛み」を訴える例が報告されているが、典型的な症状とは限らない
- 味覚・嗅覚障害は従来株より少ない
- 多くは数日で改善する軽症だが、高齢者や基礎疾患を持つ人は肺炎に進行する可能性がある
重症化リスクと医療機関への影響
- これまでのところ 重症者の急増は報告されていない
- ワクチン接種者の重症化リスクは低いと考えられている
- ただし感染者数が増えることで、高齢者や基礎疾患のある人の入院は増える可能性があり、猛暑や他の感染症との同時流行による医療負荷が懸念される
感染を防ぐためにできること
- ワクチン接種
高齢者や基礎疾患のある方には追加接種が推奨されています。既存ワクチンでもニンバス株に対する中和抗体が確認されています。 - 基本的な感染対策
- 手洗い・うがい
- 適切なマスク着用
- 換気の徹底
- 喉の乾燥を防ぐための加湿や水分補給
- 体調管理と早めの受診
強い喉の痛みや発熱がある場合は無理をせず医療機関に相談し、周囲へ感染を広げないためにも早期診断と隔離が重要です。 - 高リスク者への配慮
家庭内でも高齢者や基礎疾患のある方がいる場合は、マスクや手指衛生を徹底しましょう。
まとめ
- 福岡市・福岡県ともに新型コロナの報告数が上昇傾向
- NB.1.8.1(ニンバス株)は感染力が強い一方で、ワクチン効果は維持されている
- 症状は風邪に類似するが、喉の強い痛みを伴う例もある
- 重症化率は従来と大きく変わらないが、感染拡大により医療負荷の懸念あり
- 基本的な感染対策とワクチン接種を継続することが重要
参考資料
- 福岡市保健所「感染症発生報告」
- 福岡県感染症情報センター「週報」
- 厚生労働省 新型コロナウイルス感染症 報道発表資料
- 東京大学医科学研究所 プレスリリース「NB.1.8.1株のウイルス学的特性」
- 国立感染症研究所 (FORTH) 海外感染症流行情報
- CDC: Symptoms of COVID-19
- Gavi, the Vaccine Alliance: Eight things you need to know about Nimbus and Stratus variants
- Weill Cornell Medicine: Here’s What We Know About NB.1.8.1
- ABC News: COVID variant NB.1.8.1 causing ‘razor blade throat’