健康的に思われている100%果汁ジュース、実は体に悪影響が出ていることが知られています。ここでは100%果汁ジュースを含む、砂糖を多く含む清涼飲料水やスポーツドリンクの体への影響を見ていきます。
本記事では、信頼性の高い研究データをもとに、年齢別にどのような影響が現れるのかを解説します。末尾に参考文献をまとめているので、興味のある方は原論文もチェックしてみてください。
小児への影響
子どもの身体は成長途上にあり、糖質飲料の影響を受けやすいと言われています。子どもはどうしても欲しがるので周りの大人がストップをかけましょう。
- 体重増加:無作為試験では、砂糖入り飲料を摂取し続けた子どもは、同じ量の無糖飲料に置き換えた子どもより体重増加が大きいことが示されました。1日1杯の砂糖飲料を追加するだけで、BMIが平均0.07ポイント増加しpubmed.ncbi.nlm.nih.gov、逆に無糖飲料に置き換えるとBMIの増加が抑えられましたpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。
- 虫歯リスク:系統的レビューによると、1週間に1杯以上の甘味飲料を飲む1.5歳児は、5歳時点で虫歯を経験するリスクが約1.8倍に上昇しましたpmc.ncbi.nlm.nih.gov。砂糖が歯のエナメル質を溶かしやすくするため、少量でも頻繁に飲む習慣は避けるべきです。
- その他の影響:清涼飲料の摂取量が多い子どもでは血圧やインスリン抵抗性の悪化が報告されており、長期的にはメタボリックシンドロームや脂肪肝のリスクを高める可能性があります。
成人への影響
成人にとっても、砂糖飲料は肥満だけでなく様々な生活習慣病のリスクを押し上げます。
体重への影響
液体の糖分は満腹感が得られにくく、他の食事を減らすことにつながりません。そのため飲んだ分だけエネルギー過剰になり、体重が増加します。レビューによると、1日1杯の砂糖飲料を増やすと年間約0.42kgの体重増加につながると報告されていますpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。以下のグラフは、1日1杯の砂糖飲料が子どもと大人の体重・体格にどの程度影響するかを示したものです。

2型糖尿病・代謝疾患
大規模メタ解析では、砂糖飲料を1日1~2杯飲む人はほとんど飲まない人に比べて2型糖尿病の発症リスクが26%高いことが示されていますpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。さらに1日当たり1杯増えるごとに糖尿病リスクは13〜18%ずつ上昇します。これは肥満による影響を調整した後でも認められており、血糖値の急上昇やインスリン抵抗性を悪化させることが原因と考えられています。
心血管疾患
心臓病や脳卒中のリスクも無視できません。前向き研究をまとめたメタ解析では、砂糖飲料の摂取が最も多いグループは、摂取が最も少ないグループに比べて冠動脈疾患のリスクが17%高いことが報告されています。さらに1日1杯の増加でCHDリスクが16%上昇したと推定されていますpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。これは高血圧や脂質異常症などの危険因子を悪化させるためです。
脂肪肝
砂糖飲料に含まれる果糖は肝臓で脂肪合成を促進します。2019年のメタ解析では、砂糖飲料の摂取量が高い人は低い人に比べ非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の発症リスクが40%高いと報告されましたpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。
死亡率
米国のREGARDS研究を解析した2019年の研究では、砂糖飲料を12オンス(約355mL)追加するごとに全死亡リスクが6%上昇し(ハザード比1.06)、一方で100%果汁ジュースでは24%上昇することが示されましたpmc.ncbi.nlm.nih.gov。多量摂取は心疾患死亡のリスクも高めるため、量に注意が必要です。次のグラフは砂糖飲料が引き起こすさまざまな病気のリスク増加率をまとめたものです。


果汁ジュースにもビタミンやミネラルが含まれていますが、過剰摂取すると血糖値の急激な上昇やインスリン抵抗性を招きます。子どもにとっては、果汁でも虫歯や肥満の原因になりうるため、コップ1杯程度に留めることが推奨されます。
健康的な選択肢
健康を維持するためには飲料選びが重要です。以下のポイントを心掛けましょう。
- 水やお茶を選ぶ:喉が渇いたときは無糖の水やお茶で潤しましょう。麦茶やほうじ茶、炭酸水でも満足感が得られます。
- 習慣的な摂取を避ける:甘味飲料を「ごほうび」としてたまに楽しむ程度であれば大きな影響はありませんが、毎日飲むことは控えましょう。
- ラベルを確認する:果汁100%ジュースでも糖質は多いので、内容量やカロリー表示を確認し、量を調整します。
- 無糖への置き換え:どうしても味付き飲料が欲しい場合は、人工甘味料入り飲料や無糖炭酸水などに置き換えるとカロリー摂取を抑えられます。ただし人工甘味料も過剰摂取は推奨されません。
まとめ
砂糖を多く含む飲料は、年齢を問わずさまざまな健康リスクを高めます。子どもでは肥満や虫歯、成人では2型糖尿病や心疾患、NAFLDといった生活習慣病、高齢者では死亡率まで影響することが分かっています。さらに、果汁100%ジュースも「自然」や「健康的」というイメージとは裏腹に、過剰摂取すると砂糖飲料と同様かそれ以上のリスクをもたらします。今日から飲料選びを見直し、無糖の選択肢を増やしていきましょう。
参考文献
- Malik VS, Popkin BM, Bray GA, Després J‑P, Willett WC, Hu FB. Sugar‑sweetened beverages and risk of metabolic syndrome and type 2 diabetes: a meta‑analysis. Diabetes Care. 2010;33(11):2477‑2483. 最高摂取群は最低摂取群に比べて糖尿病リスクが26%高く、メタボリック症候群リスクが20%高いと報告pubmed.ncbi.nlm.nih.gov。
- Huang C, Huang J, Tian Y, Yang X, Gu D. Sugar sweetened beverages consumption and risk of coronary heart disease: a meta‑analysis of prospective studies. Atherosclerosis. 2014;234(1):11‑16. 1日1杯増加ごとに冠動脈疾患リスクが16%上昇すると結論づけているpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。
- de Ruyter JC, Olthof MR, Seidell JC, Katan MB. A trial of sugar‑free or sugar‑sweetened beverages and body weight in children. N Engl J Med. 2012;367(15):1397‑1406. 無糖飲料への置換により体重増加が約1kg抑制され、BMI増加も軽減されたpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。
- Asgari‑Taee F, Zerafati‑Shoae N, Dehghani M, et al. Association of sugar sweetened beverages consumption with non‑alcoholic fatty liver disease: a systematic review and meta‑analysis. Eur J Nutr. 2019;58(5):1759‑1769. 砂糖飲料の多量摂取でNAFLDリスクが40%上昇することが示されたpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。
- Collin LJ, Judd S, Safford M, et al. Association of sugary beverage consumption with mortality risk in US adults: a secondary analysis of data from the REGARDS study. JAMA Netw Open. 2019;2(5):e193121. 12オンスの砂糖飲料で全死亡リスクが6%増加し、同量の果汁ジュースでは24%増加することを報告pmc.ncbi.nlm.nih.gov。
- Large JF, Madigan C, Pradeilles R, et al. Impact of unhealthy food and beverage consumption on children’s risk of dental caries: a systematic review. Nutr Rev. 2023;82(11):1539‑1555. 1.5歳時点で週1杯以上の甘味飲料を摂取する子どもは、5歳時点の虫歯経験が約1.8倍に増加することが報告pmc.ncbi.nlm.nih.gov