黒烏龍茶とは

黒烏龍茶は、烏龍茶に含まれるポリフェノールを特別な製法で重合させた飲料で、「烏龍茶重合ポリフェノール(OTPP)」と呼ばれる成分を豊富に含みます。日本では特定保健用食品(トクホ)として認可されており、食後に摂取すると脂肪の吸収を抑える働きがあることが知られています。一般的に350 mLのボトル1本に70 mgのOTPPが含まれ、食事とともに飲むことが推奨されています。

脂肪吸収を抑える仕組み

OTPPは膵臓から分泌される消化酵素「リパーゼ」の働きを阻害します。通常、リパーゼは食事由来の脂肪を小腸で分解し、体内に吸収しやすい状態にしますが、OTPPがこの酵素に結合すると分解作用が弱まり、未分解の脂肪がそのまま排出されやすくなります。また、脂肪が細かく乳化されるのを防ぐ作用も報告されています。

臨床試験が示すエビデンス

黒烏龍茶の効果を検証した臨床試験は複数報告されています。主なものを取り上げます。

16 週間のランダム化二重盲検試験(1日2本)

日本人男女300名(BMI 25〜30 kg/m²)を対象に、350 mL入りの黒烏龍茶(OTPP 70 mg)を1日2本、食事とともに16 週間摂取する群とプラセボ群を比較した試験では、黒烏龍茶群で総脂肪面積が平均約11 cm²減少し、内臓脂肪面積も約7 cm²減少しました。体重やBMI、体脂肪率、ウエスト/ヒップ周囲径、皮下脂肪厚も有意に減少し、副作用は認められませんでした。これは黒烏龍茶の摂取が腹部脂肪を減らす可能性を示す代表的な研究です。

12 週間の試験(1日1本)

同様に、BMI 23〜30 kg/m²の男女258名が1日1本(70 mg OTPP)を12 週間飲用した試験では、総脂肪面積が約9.4 cm²、内臓脂肪面積が約7.8 cm²減少しました。血中中性脂肪(TG)は平均8.5 %減少し、総コレステロールも2.5 %、LDLコレステロールは3.5 %低下しましたが、HDLコレステロールへの影響は認められませんでした。

12 週間の試験(1日3本)

別の試験では、被験者に1日3回黒烏龍茶を飲んでもらったところ、8 週目以降から内臓脂肪面積が9.2 cm²減少し、LDLコレステロールは6.1 %減少しました。血中TGが高い人ではTGが34 %も減少しており、脂質異常症の改善が期待されます。ただし、HDLコレステロールがわずかに低下したという報告もあり、過剰摂取には注意が必要です。

6 週間の烏龍茶摂取試験(8 g/日)

肥満者や過体重者を対象にした別の試験では、1日8 gの烏龍茶葉(OTPP含量は明記されていません)を6 週間摂取してもらいました。その結果、70 %の重度肥満者が1 kg以上体重を減少させ、22 %は3 kg以上減量しました。肥満群全体でも約64 %が1 kg以上体重を減らし、腹部皮下脂肪厚が12 %の被験者で減少しました。また、血中TGや総コレステロールが高い人では値が顕著に低下しています。この試験は黒烏龍茶以外の烏龍茶でも脂質代謝改善効果があることを示唆します。

脂肪吸収抑制の短期試験

数名を対象としたクロスオーバー試験では、脂肪を多く含む食事と一緒に黒烏龍茶(OTPP 56〜87 mg)を飲むと、4 時間までの食後中性脂肪の上昇が抑制されました。欧州臨床栄養学雑誌に報告された別の試験では、被験者12名が高脂肪食品とともに黒烏龍茶を飲用すると、3日間での糞中脂質排泄量が約2倍に増加しました(19.3 g vs. 9.4 g)。これらの短期試験は、OTPPが脂質の消化吸収を阻害し、脂肪の排出を増やす作用を裏付けています。

データをグラフで読み解く

摂取量と脂肪面積の変化

下の図は、黒烏龍茶の摂取量(1日あたりの本数)と内臓脂肪面積および総脂肪面積の減少量をまとめたものです。値が大きいほど脂肪面積が減ったことを示します。

1日2本飲用した群では総脂肪面積が最も大きく減少していますが、1日3本飲用した群でも内臓脂肪面積の減少が見られました。1日1本でも一定の効果が得られるため、習慣的に飲む場合は1〜2本程度を目安にすると良いでしょう。

血中中性脂肪(TG)の変化

次の図は、12 週間の試験で報告された血中TGの減少率を示しています。1日1本の摂取では約8.5 %、1日3本ではTG値が高い人で平均34 %減少しました。

TGが高い人ほど減少幅が大きいことから、食後高脂血症や脂質異常症の方には一定のメリットが期待できます。ただし、高用量摂取はHDLコレステロールを低下させる可能性があるため注意が必要です。

短期の体重減少

烏龍茶葉を1日8 g摂取した6 週間の試験では、重度肥満者の70 %が1 kg以上体重を減らし、22 %は3 kg以上減量しました。以下のグラフは、その割合を示したものです。

なお、この試験は烏龍茶全般を対象にしており、黒烏龍茶特有のOTPP含量は不明ですが、短期間でも体重が減少した例として紹介しておきます。

飲用時の注意点

  • 即効性や劇的な減量は期待しない:多くの試験で脂肪面積は減少していますが、変化量は数センチ平方メートル単位であり、黒烏龍茶だけで大幅に痩せるわけではありません。適切な食事や運動と併用することが重要です。
  • 飲み過ぎに注意:OTPPは脂肪吸収を抑える一方で、HDLコレステロールの低下が報告されるなど、過剰摂取による影響も完全には解明されていません。トクホ表示では「食事と一緒に1本、1日2本まで」を推奨しています。
  • カフェイン含有:烏龍茶は緑茶や紅茶と同様にカフェインを含むため、妊娠中やカフェインに敏感な人は摂取量に気を付けましょう。
  • 医薬品との併用:脂質吸収抑制剤や抗凝固薬などを服用している人は念のため医師に相談してください。

おわりに

黒烏龍茶には、OTPPが膵リパーゼを阻害することにより食後の中性脂肪上昇を抑え、長期的な摂取で腹部脂肪の減少を促す可能性があることが科学的に示されています。一方で、その効果は「補助的」なものであり、過剰に期待するのではなく、バランスの良い食生活や運動と組み合わせて健康維持に役立てるのが賢明です。1日1〜2本を食事とともに楽しむ程度であれば、安全にメリットを得られるでしょう。

参考文献

  • 日本健康・栄養食品協会『特定保健用食品申請書 黒烏龍茶(OTPP)』、2024年。脂肪分解酵素リパーゼを阻害し、脂質吸収抑制と排出促進を図示。
  • 国立医薬品食品衛生研究所機能性評価室『黒烏龍茶OTPPの有効性に関する評価結果』。ランダム化二重盲検試験における内臓脂肪および総脂肪面積の減少報告。
  • 松浦義治ほか『長期的な黒烏龍茶OTPP摂取が体脂肪量およびメタボリックシンドロームリスクに及ぼす効果』、日本薬理学雑誌39巻(2011年)。166名の男性と134名の女性を対象とした試験で体脂肪および体重、BMIの有意な減少を報告。
  • Japanese Pharmacology & Therapeutics, 36巻4号(2008年)。BMI23〜30 kg/m²の男女を対象に1日1本の飲用で内臓脂肪とウエスト径が減少したことを報告。
  • Hibi M. et al. “Efficacy of tea catechin‑rich beverages to reduce abdominal adiposity and metabolic syndrome risks in obese and overweight subjects: a pooled analysis of six human trials.” Nutrition Research 55 (2018): 1–10. 複数試験のデータを分析し、黒烏龍茶摂取で総脂肪・内臓脂肪面積が減少することを確認。
  • He R‑R. et al. “Beneficial effects of oolong tea consumption on diet-induced overweight and obese subjects.” Chinese Journal of Integrative Medicine 15 (2009): 34–41. 6 週間の烏龍茶摂取で70 %の重度肥満者が1 kg以上減量したことを報告。
  • U.S. Biochemical Journal of Clinical Nutrition, 2006: “Polyphenol-enriched oolong tea increases fecal lipid excretion.” 12名を対象としたクロスオーバー試験で糞中脂質排泄量が有意に増加したことを報告。