オロナミンCやリポビタンDが実は体に悪い理由

「疲れたときの一本」として、これほど日本の生活に根づいた飲みものはありません。オロナミンCは1965年、リポビタンDは1962年から売られていて、親の世代から当たり前にあった、という方も多いと思います。

その一方で、ここ数年「実は体に悪いのでは」という声もよく聞くようになりました。結論から言えば、この2つは毒ではありませんし、たまに飲む一本を心配する必要もありません。ただし「体に悪い」と言われる理由には、当たっている部分と、かなり誇張されている部分が混ざっています。この記事では、その両方を成分表と研究データから切り分けます。後半では、私たちが在宅医療の現場で毎週のように出会う「食べられないから、せめて栄養ドリンクを」という場面について、一段深く掘り下げます。

SECTION 01結論を先に

  1. 本当の問題は、ほぼ「糖質」の一点です。オロナミンC1本(120mL)の炭水化物は19g。WHOが望ましいとする1日の遊離糖類の量(成人でおよそ25g)の、8割近くを一本で使い切ります。リポビタンD1本(100mL)も74kcalで、たんぱく質・脂質を含まないため、その大半は糖に由来します。
  2. カフェインと添加物は、この2製品に関しては騒がれすぎです。カフェインはオロナミンCで約18mg、リポビタンDで50mg。コーヒー1杯(約90mg)より少ない量です。国内の急性カフェイン中毒101例を集めた研究では、中毒量の中央値は7.2g──リポビタンDに換算すると144本分にあたります。現実的な危険は錠剤タイプの眠気防止薬であって、栄養ドリンクではありません。
  3. いちばん見落とされているのは「疲れたら飲む」という使い方そのものです。だるさの背後に貧血・脱水・心不全・甲状腺機能低下・低栄養・うつ・薬の副作用が隠れていることは珍しくありません。糖とカフェインで一時的にしのげてしまうぶん、原因に気づくのが遅れます。私たちが在宅の現場で最も気にしているのは、この点です。

SECTION 02まず、1本の中身を見る

健康への影響を語る前に、そもそも何が入っているのかを確認します。この2つは見た目こそ似ていますが、法律上の区分がまったく違います。オロナミンCは「清涼飲料水」、つまり食品です。リポビタンDは「指定医薬部外品」で、効能・効果を表示することが認められています。この違いが、後の話にも効いてきます。

図1 1本に入っているもの(各社公表値、2026年8月時点) オロナミンCドリンク 120mL/区分:清涼飲料水(食品) エネルギー 79 kcal 炭水化物 19 g (角砂糖 約5〜6個ぶん) たんぱく質/脂質 0 g / 0 g カフェイン 約 18 mg ※表示義務なし・公表値 ビタミン類 ビタミンC 220mg / ビタミンB2 2.4mg ビタミンB6 4.9mg / ナイアシン 12mg 主な原材料 砂糖、ぶどう糖果糖液糖、ハチミツ、食塩、 炭酸、香料、クエン酸、カフェイン、 アミノ酸3種、溶性ビタミンP ほか 着色料は使用せず、黄色はビタミンB2の色 リポビタンD 100mL/区分:指定医薬部外品 エネルギー 74 kcal 糖質 約 18 g ※熱量からの推定 たんぱく質/脂質 0 g / 0 g 無水カフェイン 50 mg 有効成分 タウリン 1000mg / イノシトール 50mg ニコチン酸アミド 20mg ビタミンB1・B2・B6 各5mg 添加物 白糖、D-ソルビトール、クエン酸、 安息香酸Na、香料、グリセリン、バニリン 用法:成人1日1本、15才未満は服用しない 指定医薬部外品には栄養成分表示の義務がないため、リポビタンDの糖質量は公表されていない(熱量とたんぱく質・脂質0gから推定した値)。

数値は大塚製薬「オロナミンCドリンク」製品情報および大正製薬「リポビタンD」製品情報(いずれも2026年8月時点)による。オロナミンCのカフェイン量は栄養成分表示の対象外で、メーカー公表の分析値。

ここで注目してほしいのは、両方ともたんぱく質も脂質も0gだという点です。「栄養ドリンク」という名前から、栄養がぎゅっと詰まっているイメージを持たれがちですが、中身は糖水にビタミンとアミノ酸系の成分を溶かしたものと考えたほうが実態に近い。この事実は、後半の在宅の話でもう一度出てきます。

SECTION 03理由その1|糖質量は、思っているより多い

WHOは2015年のガイドラインで、遊離糖類(砂糖やぶどう糖果糖液糖など、加工の過程で加えられる糖と、はちみつ・果汁に自然に含まれる糖)の摂取を総エネルギーの10%未満に抑えることを強い推奨とし、さらに5%未満まで減らせば追加の利益があるとしています。5%未満はおよそ1日25g、ティースプーン6杯ぶんに相当します。

この物差しに、実際の飲みものを並べてみます。

図2 1本ぶんの糖質量と、WHOが望ましいとする1日量(成人 約25g) 0 10g 20g 30g 40g 50g 60g WHO 望ましい1日量 約25g リポビタンD(100mL) 約18g オロナミンC(120mL) 19g スポーツドリンク(500mL) 約34g コーラ飲料(500mL) 約57g 缶コーヒー・微糖(185g) 約7g スポーツドリンク・コーラ飲料・缶コーヒーは市販品の一般的な値。銘柄によって幅がある。

WHOの数値は「Guideline: Sugars intake for adults and children」(2015年3月)による。棒の長さは各製品の炭水化物量。

スポーツドリンクやコーラに比べれば少ないのですが、それでも一本で1日の望ましい量の7〜8割を使ってしまう。ここに朝の缶コーヒー、午後の菓子パン、夕食後のヨーグルトが加われば、25gはあっさり超えます。「一本くらい」が成立しにくいのは、他の食品にも糖が入っているからです。

液体の糖は、満腹感をつくらない

もう一つ、飲みものの糖に特有の問題があります。同じ19gの糖でも、おにぎりやパンなら「食べた」という感覚が残り、次の食事量が自然に減ります。ところが液体の糖はこの調整が働きにくく、そのぶんが上乗せになりやすい。これが、甘い飲料が体重に効きやすい主な理由と考えられています。

では、実際に何が増えるのか

甘い飲料(sugar-sweetened beverages)と健康影響の関係は、世界中で膨大な研究が積み上がっている分野です。2024年に発表された包括的レビュー(アンブレラレビュー)は、47件のメタ分析、のべ2,205万人あまりのデータを評価し、そのうち79%で「甘い飲料を多く飲むほど健康アウトカムが悪い」という方向の関連を認めました。とくに確実性が高い(クラスI)と判定されたのは、うつ病、心血管疾患、尿路結石、2型糖尿病、そして尿酸値の上昇です。

図3 甘い飲料との関連が「確実」と判定された健康アウトカム 47件のメタ分析・のべ2,205万人を統合した包括的レビューによる(Lane MM ら, Annu Rev Nutr 2024) 2型糖尿病 発症リスクの上昇 心血管疾患 心筋梗塞・脳卒中など 尿路結石 腎・尿管の石 尿酸値の上昇 痛風の下地になる うつ病 発症リスクの上昇 これらは「観察研究」から得られた関連であり、1本飲めば必ず病気になるという意味ではない。 習慣として量が積み上がるほどリスクが上がる、という読み方が適切。

研究で「甘い飲料」として扱われるのは炭酸飲料・スポーツドリンク・加糖コーヒーなどを含む広いカテゴリーで、オロナミンCやリポビタンD単独を調べたものではない。糖質量が同程度である以上、同じ物差しで考えるのが妥当という位置づけ。

2型糖尿病に絞った2024年のメタ分析では、甘い飲料の摂取は2型糖尿病の発症(ハザード比1.15、95%信頼区間 1.06〜1.24)と死亡(ハザード比1.20、95%信頼区間 1.05〜1.38)の両方と関連していました。いずれも観察研究に基づく関連であり、因果関係の証明ではありません。ただ、これだけ多くの集団で同じ方向の結果が繰り返されている以上、「無関係」と考えるのは無理があります。

SECTION 04理由その2|毎日が続くと、別の話になる

ここまでは「一本あたり」の話でした。習慣になったときには、別のリスクが顔を出します。

WHOが糖類の制限を「強い推奨」にした根拠のひとつは、実は肥満ではなくむし歯のデータです。オロナミンCは炭酸とクエン酸を含む酸性の飲料でもあるため、糖によるむし歯に加えて、歯の表面が酸で溶ける酸蝕にも関わります。だらだらと時間をかけて飲む、就寝前に飲む、という飲み方がいちばん歯に厳しい。飲むなら短時間で飲み切り、そのあと水で口をすすぐ──それだけでかなり違います。

「甘い飲料でのどの渇きを潤す」という悪循環

糖尿病の領域には「清涼飲料水ケトーシス」(俗にペットボトル症候群)と呼ばれる状態があります。血糖が高くなる→のどが渇く→甘い飲料で潤す→さらに血糖が上がる、というループに入り、インスリンが相対的に足りなくなって、脂肪が分解されケトン体がたまる。重い場合はケトアシドーシスという命に関わる状態になります。

日本では以前から報告があります。ケトーシスやケトアシドーシスで発症した2型糖尿病24例を追跡した研究では、24例中19例に甘い清涼飲料水の多飲歴があり、その年齢は16歳から57歳と幅広い層に及んでいました。近年の国内多施設研究でも、糖尿病性ケトアシドーシス・高浸透圧高血糖症候群を起こす主な誘因として、服薬の中断、感染症とならんで甘い飲料の過剰摂取が挙げられています。

誤解のないように

これは1日に2〜6リットルといった大量摂取が続いた場合の話で、栄養ドリンク1本で起きることではありません。ただし「暑いから」「のどが渇くから」と甘い飲料に手が伸び続けている人は、渇き自体が高血糖のサインである可能性を一度疑ってみる価値があります。とくに、体重が減ってきた、尿の回数が増えた、という変化が重なるときは受診をおすすめします。

SECTION 05逆に「言われすぎている」こと

ここは、この記事でいちばん書きたかった部分です。ネット上では、この2製品について事実以上に強い表現が使われることがあります。医療者としては、正しい心配と誇張された心配を分けておきたい。

カフェイン|量を物差しに載せると印象が変わる

食品安全委員会のファクトシートによれば、コーヒーのカフェインは100mLあたり約60mg、紅茶は約30mg、せん茶は約20mgです。一方、カフェインを多く添加した清涼飲料水(いわゆるエナジードリンク)は100mLあたり32〜300mgと幅広く、錠剤タイプのサプリメントには1錠200mgを含むものもあります。

図4 カフェイン量の物差し(対数目盛) 桁が大きく違うため、目盛の間隔は10倍ごとに等間隔にしている 10mg 100mg 1,000mg 10,000mg 重篤化しうる域 オロナミンC 約18mg リポビタンD 50mg コーヒー1杯 約90mg 健康な成人の1日目安上限 400mg 心停止例の摂取量 6,000mg〜 6,000mgに到達するには、リポビタンDなら120本、オロナミンCなら333本を一度に飲む必要がある。 現実に中毒が起きているのは、錠剤タイプの眠気防止薬をまとめて服用した場合である。

1日400mgはカナダ保健省が示す健康な成人の上限目安(消費者庁が国内向けに紹介)。6,000mgは国内の急性カフェイン中毒101例の解析で心停止に至った症例の摂取量水準。

国内の実態を示す研究があります。埼玉医科大などのグループが全国の救急医療機関を対象に行った後ろ向き調査では、2011年4月から2016年3月に搬送された101例のうち、6.0g以上を摂取した、あるいは来院時の血中濃度が200μg/mL以上だった7例(6.9%)が心停止に至り、97例(96.0%)は完全に回復、3例(3.0%)が亡くなりました。研究者らは、高濃度のカフェイン錠剤の毒性リスクを周知すべきだと結論づけています。摂取量の中央値は7.2g(範囲1.2〜82.6g)でした。報道された同調査の内訳では、大半が眠気防止薬の錠剤によるもので、エナジードリンクのみによる中毒はごく少数でした。

とはいえ、量を気にしたほうがよい人はいます

消費者庁が紹介するカナダ保健省の目安では、健康な成人で最大400mg/日、妊婦・授乳中・妊娠を予定している女性は300mg/日、10〜12歳で85mg/日、7〜9歳で62.5mg/日、4〜6歳で45mg/日とされています。欧州食品安全機関はさらに厳しく、妊娠中は200mg/日以下を示しています。大人には少ない50mgも、体の小さいこどもの物差しに載せると意味が変わります。4〜6歳の目安45mgは、リポビタンD1本で超えてしまう量です。リポビタンDが「15才未満は服用しないこと」としているのは、この点も踏まえた設定です。不整脈がある方、胃食道逆流のある方、不眠に悩んでいる方、テオフィリンや一部の抗菌薬(シプロフロキサシンなど)を飲んでいる方も、量とタイミングに注意が要ります。

添加物|こちらも過剰な心配は要りません

リポビタンDに含まれる安息香酸ナトリウムは保存料として、D-ソルビトールは甘味・安定化の目的で使われる成分で、いずれも使用基準の範囲内です。オロナミンCの「ぶどう糖果糖液糖」は、砂糖と比べて特別に危険な糖ではありません。果糖のとりすぎが脂肪肝や尿酸に関わることは事実ですが、それは「糖の量」の話であって、砂糖に置き換えれば安全になるという話ではない。気にすべきは添加物の名前ではなく、糖の総量です。

SECTION 06「効いた感じ」の正体

飲むとシャキッとする、あの感覚は気のせいではありません。ただ、その中身を分解すると次のようになります。

要素効いている実感への寄与エビデンスの現在地
糖(約18〜19g) 血糖が速やかに上がり、数十分でだるさが軽くなる 確実。ただし空腹時ほど反動の低下も起きやすい
カフェイン(18〜50mg) 眠気の軽減、覚醒度の上昇 確立している。ただし量としては控えめ
タウリン(1000mg) 体感としてははっきりしない 血圧・中性脂肪・空腹時血糖を小幅に下げる報告はあるが、健康な人の「疲労感」を改善する質の高い試験は乏しい
ビタミンB群 不足していれば意味がある 不足のない人が追加してもエネルギーは増えない
冷たさ・炭酸・期待 実は無視できない 期待効果は多くの試験で確認されている現象

タウリンについて補足します。無作為化比較試験を集めた2024年のメタ分析では、タウリン補充により収縮期血圧が約4.0mmHg、拡張期血圧が約1.5mmHg、空腹時血糖が約5.9mg/dL、中性脂肪が約18.3mg/dL低下し、HDLコレステロールには有意な変化がありませんでした。代謝面へのささやかな作用は示唆されているものの、これは1日あたり数gを数週間から数か月続けた試験の話で、「1本飲めば疲れがとれる」を裏づけるものではありません。

リポビタンDが「疲労の回復・予防」と表示できるのは、指定医薬部外品としての承認基準を満たしているからです。これはその表示が認められているという意味であって、現代の大規模ランダム化比較試験で証明されている、という意味ではない。ここは分けて理解しておくと、製品と上手につきあえます。

SECTION 07理由その3|いちばん見落とされている問題

ここが本題です。糖もカフェインも、実は主役ではありません。「疲れたら飲む」という使い方そのものが、いちばんの落とし穴です。

だるい・疲れがとれない・元気が出ない。この訴えの裏側には、次のようなものが隠れています。

図5 「疲れがとれない」の裏で起きていること だるい・元気が出ない 栄養ドリンクで一時的にしのげてしまう 血液・循環の問題 ・貧血(消化管出血が隠れることも) ・心不全、不整脈 ・脱水 代謝・内分泌の問題 ・甲状腺機能低下症 ・糖尿病(未診断・コントロール不良) ・低栄養、ビタミン欠乏 こころ・眠りの問題 ・うつ状態、不安 ・睡眠時無呼吸 ・不眠、生活リズムの乱れ 薬の影響 降圧薬・利尿薬・睡眠薬・抗ヒスタミン薬 抗うつ薬・抗がん剤・ステロイドの減量後 など 薬が増えた時期と、だるさが出た時期を重ねてみる 見逃したくないもの 感染症(肺炎・尿路感染・結核)、悪性腫瘍 慢性腎臓病、肝疾患 体重減少・発熱・夜間の症状があるときは要注意 「2週間以上つづくだるさ」は、栄養ドリンクではなく採血で答えが出ることが多い。

当院で作成した整理図。列挙した疾患は、外来・訪問診療で「疲れがとれない」を主訴に来られた方から実際に見つかることの多いもの。

糖とカフェインは、この構造をきれいに覆い隠します。飲めば数十分は動ける。だから受診が先延ばしになる。1週間、1か月と続いた頃に、貧血がかなり進んでいた、甲状腺の値が大きく外れていた、ということが起こります。

逆に言えば、栄養ドリンクとの上手なつきあい方はここから導けます。「今日を乗り切るための一本」はよい。「毎日を乗り切るための一本」になったら、それは受診のサインです。

SECTION 08

在宅医療の現場から

ここからは、私たちが訪問診療で日常的に出会う場面に絞って掘り下げます。栄養ドリンクの話は、高齢の方・食が細くなった方・介護しているご家族にとって、外来とはまったく違う意味を持ちます。

8-1 「食べられないから、せめて栄養ドリンクを」

訪問先の冷蔵庫や枕元に、栄養ドリンクの空き瓶が並んでいることがあります。ご家族に理由を伺うと、ほとんど同じ答えが返ってきます。「食事がとれなくなってきたので、せめてこれだけでも」。

その気持ちはよくわかります。ただ、数字を並べると事情が見えてきます。

図6 「栄養ドリンク」と「栄養剤」は、まったく別のもの エネルギー(kcal) たんぱく質(g) オロナミンC 120mL 79 0 リポビタンD 100mL 74 0 メイバランスMini 125mL 200 7.5 ラコールNF 200mL 200 8.8 エンシュア・リキッド 250mL 250 8.8 栄養ドリンクのたんぱく質は 0g。筋肉も、床ずれの治りも、免疫も、たんぱく質なしには支えられない。 「食べられない人の栄養補給」という目的なら、選ぶべきものは最初から違う。

経口栄養剤の値は各製品の添付文書・栄養成分表示による。エンシュア・リキッドとラコールNFは医薬品で、条件を満たせば処方が可能。メイバランスMiniは食品(自費)。

栄養ドリンク1本は、ごはん半膳にも届かないエネルギーで、たんぱく質は0gです。食が細くなった方に必要なのは、糖ではなくたんぱく質とエネルギーの両方。ここが決定的に違います。

そして日本の高齢者の低栄養は、決して例外的な話ではありません。令和6年国民健康・栄養調査では、65歳以上の低栄養傾向(BMI 20kg/m²以下)の割合は19.5%と報告されています。およそ5人に1人。訪問診療で出会う方に限れば、割合はさらに高くなります。

在宅でできること

エンシュア・リキッドやラコールNFは医薬品なので、条件を満たせば訪問診療の場で処方できます(保険上の取り扱いには地域差があるため、実際の運用は主治医と相談してください)。味が合わない場合の選択肢も複数あります。「栄養ドリンクを買い足す」より、まず主治医に「最近食べられていない」と伝えていただくほうが、確実に前に進みます。

8-2 高齢者の「だるい」は、栄養ドリンクでは解けない

図5で挙げた原因は、高齢の方ほど重なって存在します。貧血と甲状腺機能低下と低栄養が同時にある、といったことが普通に起こる。しかも高齢者では症状が典型的に出ません。発熱しない肺炎、痛みの出ない心筋梗塞、食欲低下だけで現れる尿路感染症。「なんとなく元気がない」が唯一のサインということが、本当によくあります。

訪問診療の強みは、ご自宅で採血ができることです。貧血、腎機能、肝機能、甲状腺、電解質、炎症反応、アルブミン。ここまで見れば、「だるさ」の原因の多くは輪郭が見えてきます。通院が難しくて調べられないまま栄養ドリンクでしのいでいる、という状況こそ、訪問診療がいちばん役に立つ場面です。

8-3 糖尿病がある方の場合

令和6年国民健康・栄養調査では、糖尿病が強く疑われる者は約1,100万人と推計され、増加が続いています。在宅の患者さんにも、当然多くいらっしゃいます。

高齢者の糖尿病では、若い方と目標が違います。日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会による血糖コントロール目標では、認知機能とADLに応じて3つのカテゴリーに分け、カテゴリーIの75歳未満はHbA1c 7.5%未満、75歳以上は8.0%未満、カテゴリーIIは8.0%未満、カテゴリーIIIは8.5%未満という設定になっています。重症低血糖を起こしやすい薬を使っている場合には、下限も定められます。つまり「下げすぎない」ことも治療目標です。

この文脈で栄養ドリンクをどう考えるか。糖質18〜19gは、高齢の糖尿病の方にとって決して無視できる量ではありません。ただし、次の点も同時に事実です。

場面考え方
毎日1本が習慣になっている血糖の底上げに確実に効いている。まず本数と時間を確認し、飲むタイミングを食事と重ねる、または糖類ゼロのタイプに替えることを検討する
食事量が落ちてきた糖質制限より低栄養のほうがリスクが大きい局面がある。血糖の目標をゆるめ、たんぱく質を確保する方向へ切り替える
低血糖を起こしたときブドウ糖が第一選択。栄養ドリンクで代用するのは、砂糖(ショ糖)主体のため吸収に一手間かかることがあり、α-グルコシダーゼ阻害薬を服用中は特に不適
SGLT2阻害薬を飲んでいる食事量が落ちた状態では、血糖がさほど高くなくてもケトアシドーシスが起こりうる。食べられない日が続くときは早めに連絡を
のどの渇きが強く、甘い飲料が増えている渇き自体が高血糖のサインである可能性がある。血糖と尿ケトンの確認を

8-4 薬との関係で、実際に問題になること

気をつけたい組み合わせ何が起きるか
テオフィリン(気管支拡張薬)カフェインと構造も作用も近く、動悸・不眠・振戦が出やすくなる
一部の抗菌薬(シプロフロキサシンなど)カフェインの代謝を抑え、体内にとどまる時間が延びる
利尿薬・過活動膀胱の治療中カフェインの利尿作用が夜間頻尿を悪化させ、夜間のトイレ移動が転倒につながる
ビタミン剤・総合感冒薬との併用ビタミンB6やナイアシンが重複する。リポビタンDの注意書きにも過剰摂取への言及がある
薬を飲むときの水がわりに使う意外に多い。糖質が毎回上乗せされるうえ、薬によっては吸収に影響しうる。服薬は水か白湯で

8-5 口の中で起きていること

在宅で見落とされやすいのが口腔です。甘い飲料を少しずつ、時間をかけて飲む習慣は、むし歯と口腔カンジダ症の温床になります。とくに次の条件が重なると一気に進みます。

  • 唾液が減っている(加齢、抗コリン作用のある薬、口呼吸)
  • 自分では歯みがきができず、介助も十分でない
  • 義歯を入れたまま、あるいは外したままの時間が長い
  • 就寝前に飲む習慣がある

口腔の状態は誤嚥性肺炎の頻度に直結します。飲むこと自体を止める必要はありません。時間帯を昼間に寄せる、飲んだあとに水で口をすすぐ、就寝前は避ける。この3つで、リスクの多くは下げられます。訪問歯科や口腔ケアの導入も、遠慮なく相談してください。

8-6 飲み込みと、飲ませ方

嚥下が心配な方には、いくつか実務的な注意があります。

  • 瓶から直接あおる飲み方は避ける。顎が上がって首が反ると、気道が開いてむせやすくなります。コップに移し、やや前かがみの姿勢で。
  • 炭酸は評価が分かれる。炭酸の刺激が嚥下反射のきっかけになるという報告がある一方で、むせやすい方にはかえって刺激が強すぎることもあります。実際に飲んでいただいて、どちらのタイプかを見るのが確実です。
  • とろみをつけるなら、時間をおいて確認する。オロナミンCのような酸性の飲料は、とろみ調整食品を入れてもとろみが出るまでに時間がかかり、ダマになりやすい傾向があります。混ぜた直後の見た目で判断せず、少し置いてから固さを確認してください。
  • むせるなら、無理をしない。楽しみのための一口と、量を入れることは別です。
当院の視点

8-7 終末期に、家族が差し出す一本をどう扱うか

緩和ケアの現場では、この話が最も難しくなります。

経口摂取が落ちてきた時期、ご家族はしばしば栄養ドリンクを買ってこられます。医学的に見れば、その一本は74kcalで、たんぱく質は入っておらず、病状を変える力はありません。血糖だけは確実に上がります。「それは意味がないので、やめましょう」と言うのは簡単です。

ですが、私たちはそう言いません。あの一本は、栄養ではなく関係のかたちだからです。何もしてあげられないという苦しさの中で、家族が手に取れる数少ないものが、それだった。飲めなくなっていく人のそばで、まだ何かを渡せるという実感が、そこにある。

だから私たちは、順序を変えて話します。

図7 終末期の「せめて栄養ドリンクを」に、どう応えるか 1 意味を聞く 「どうしてこれを選ばれたのか」 を先に伺う。栄養の話ではなく、 不安と願いの話であることが多い。 否定から入らない 2 事実を共有する 1本=74kcal、たんぱく質0g。 病状は変わらないが、害も小さい。 むせるかどうかだけは確認する。 数字はそのまま、正直に伝える 3 決定を一緒に残す 続ける/控えるのどちらでも、 理由とともに多職種で共有し記録。 交代した誰かが覆さないように。 これもACPの一部 この時期に問うべきなのは「体にいいか」ではなく、「本人にとって心地よいか」である。

当院で用いている考え方の整理。血糖管理や誤嚥のリスクが具体的に高い場合は、2の段階でその内容を明示し、代替案(少量の氷片、好みの味の口腔ケア用スポンジなど)を一緒に検討する。

終末期において、糖尿病の血糖目標も、糖質制限も、優先順位は下がります。日本糖尿病学会の高齢者向けの目標にも、エンドオブライフの状態では著しい高血糖を防ぎ、それに伴う脱水や急性合併症を予防する治療を優先すると明記されています。「体に悪いからやめる」という発想が最も似合わない時期が、確かにあります。

8-8 介護しているご家族の、その一本

最後に、患者さんではなくご家族の話です。

訪問先で、介護しているご家族が毎日リポビタンDを飲んでおられることがあります。夜中に何度も起こされ、日中も気が休まらず、それでも回さないといけない。一本で立て直して、また一日を始める。

そういうとき、私たちは「体に悪いので控えてください」とは言いません。毎日の一本が必要になっているという事実そのものが、レスパイトの適応を示すサインだと考えます。ショートステイ、デイサービスの追加、訪問看護の回数増、福祉用具の導入。介護する側の疲労は、介護される側の在宅生活の継続に直結します。遠慮して倒れられるほうが、はるかに困る。

「最近ちょっとしんどくて」の一言で構いません。診察は患者さんのためのものですが、その場で介護者の状態を伺うことも、私たちの仕事のうちです。

SECTION 09場面別・早見表

こんなときどう考えるか
大事な会議・試験の前問題なし。糖とカフェインが目的に合っている。ただし空腹時に飲むと後で眠気が来ることがあるので、軽く食べてから
夏の屋外作業のあと目的が水分と塩分なら不向き。塩分がほぼ入っておらず量も少ない。経口補水液やスポーツドリンクを
風邪をひいて食欲がない1〜2日短期間なら合理的。飲めるものが糖水しかない状況では、飲まないよりよい
2週間以上、毎日飲んでいる糖質が積み上がっている。同時に、隠れた原因を調べる時期でもある。受診を
糖尿病がある本数とタイミングを主治医に共有する。糖類ゼロのタイプという選択肢もある
妊娠中カフェインは1本なら許容範囲だが、他の飲みものと合算する。糖質のほうを気にしたい
こどもに飲ませたいリポビタンDは15才未満は服用しない設定。オロナミンCは食品だが、糖質19gは体の小さいこどもには相応に大きい
高齢の家族が食べられない栄養ドリンクでは足りない。たんぱく質の入った栄養剤を主治医と相談
就寝前に飲みたいむし歯と睡眠の両面で避けたい。リポビタンDのカフェイン50mgは寝つきに影響しうる
介護でくたくた飲むことは止めない。それとは別に、レスパイトの相談を

SECTION 10よくあるご質問

オロナミンCとリポビタンD、どちらのほうが体に悪いのですか。

糖質量はほぼ同じで、決定的な差はありません。違いはカフェイン量(オロナミンC約18mg、リポビタンD50mg)と、法律上の区分です。リポビタンDは指定医薬部外品なので「成人1日1本」という用法が定められており、こどもは対象外です。オロナミンCは食品なので用法の定めがなく、そのぶん本数の歯止めがかかりにくいという別の注意点があります。

毎日1本、もう何十年も飲んでいます。今さらやめる意味はありますか。

意味はあります。甘い飲料と健康影響の関係は「量が多いほどリスクが高い」という形なので、減らした時点からリスクは下がる方向に動きます。ただし急にゼロにする必要はありません。まずは本数を数えること、飲む時間帯を昼間に寄せること、就寝前をやめること。この3つだけでも効果があります。

糖類ゼロのタイプなら安心ですか。

糖質に関する問題はほぼ解消します。リポビタンZEROは1本7kcalで糖類ゼロ、リポビタンDライトは58kcalです。人工甘味料についてはまだ研究が積み上がっている段階で、一部の解析では甘味料入り飲料も死亡率と関連するという報告がある一方、結論は定まっていません。少なくとも「糖質18gを毎日」よりは、ゼロタイプのほうが理にかなっています。いちばんよいのは水やお茶ですが、続かない方法に意味はありません。

ビタミンCが220mgも入っているのは、体にいいのではないですか。

成人のビタミンC推奨量は1日100mgなので、確かに多く入っています。ただ、水溶性ビタミンは必要量を超えた分がそのまま尿に出るため、足りている人が追加しても健康効果は増えません。ビタミンCを目的にするなら、果物や野菜のほうが糖質あたりの効率がよく、食物繊維やカリウムもついてきます。

お酒と一緒に飲んでもいいですか。

おすすめしません。米国CDCは、カフェインがアルコールによる機能低下を自覚しにくくさせ、結果として飲みすぎにつながる点を注意喚起しています。カフェインはアルコールの代謝そのものを速めるわけではありません。二日酔いの翌朝に飲むぶんには、糖と水分の補給として悪くありませんが、これも水と食事のほうが確実です。

結局、飲まないほうがいいということですか。

いいえ。たまの一本は、生活の中で十分に居場所があります。この記事でお伝えしたかったのは、①糖質だけは正しく認識しておくこと、②カフェインや添加物への心配は事実より大きくなりがちだということ、③そして「毎日飲まないと動けない」状態は製品の問題ではなく、体からのサインだということ──この3点です。

こんなときは、ご相談ください

  • すぐに医療機関へ:意識がもうろうとする、呼吸が速く息が荒い、強い口渇と多尿が続く、嘔吐が止まらない(糖尿病がある方は特に)
  • 数日以内に受診を:2週間以上つづくだるさ、体重が意図せず減っている、微熱が続く、動悸や息切れが出てきた、食事量が明らかに落ちた
  • 次の外来・訪問診療で相談を:栄養ドリンクが毎日の習慣になっている、飲む本数が増えてきた、家族が食べられなくなってきた、介護でご自身が限界に近い

ふくろう訪問クリニックでは、福岡市早良区を中心に訪問診療を行っています。通院が難しい方のご自宅で採血や点滴を行い、「だるさ」の原因を調べることができます。栄養剤の処方、嚥下や口腔ケアの相談、ご家族のレスパイト調整についてもお気軽にお声かけください。夜間・休日の急な相談にも対応しています。

参考文献・出典

  1. 大塚製薬「オロナミンCドリンク 製品情報(原材料・栄養成分表示)」2026年8月時点
  2. 大正製薬「リポビタンD 製品情報(成分・分量、効能・効果、用法・用量)」2026年8月時点
  3. World Health Organization. Guideline: Sugars intake for adults and children. Geneva: WHO; 2015年3月4日. ISBN 978-92-4-154902-8
  4. Lane MM, Travica N, Gamage E, et al. Sugar-Sweetened Beverages and Adverse Human Health Outcomes: An Umbrella Review of Meta-Analyses of Observational Studies. Annu Rev Nutr. 2024;44(1):383-404. doi:10.1146/annurev-nutr-062322-020650(PMID: 39207876)
  5. Ding P, Yue W, Wang X, et al. Effects of sugary drinks, coffee, tea and fruit juice on incidence rate, mortality and cardiovascular complications of type 2 diabetes patients: a systematic review and meta-analysis. J Diabetes Metab Disord. 2024;23(1):1113-1123. doi:10.1007/s40200-024-01396-5(PMID: 38932853)
  6. Sweetened beverages and cardiovascular outcomes: an umbrella review of mortality and health outcomes. Nutr J. 2025. doi:10.1186/s12937-025-01242-1
  7. Tanaka K, Moriya T, Kanamori A, Yajima Y. Analysis and a long-term follow up of ketosis-onset Japanese NIDDM patients. Diabetes Res Clin Pract. 1999;44(2):137-146.(PMID: 10414933)
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  10. 内閣府食品安全委員会「食品中のカフェイン(ファクトシート)」平成23年3月31日作成/平成30年2月23日最終更新
  11. 消費者庁「食に関する情報|食品に含まれるカフェインの過剰摂取について」(カナダ保健省の年代別上限目安を掲載)
  12. 厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A」(米国CDCのアルコールとの併用に関する情報を含む)
  13. Kamijo Y, Takai M, Fujita Y, Usui K. A Retrospective Study on the Epidemiological and Clinical Features of Emergency Patients with Large or Massive Consumption of Caffeinated Supplements or Energy Drinks in Japan. Intern Med. 2018;57(15):2141-2146. doi:10.2169/internalmedicine.0333-17(PMID: 29526946)
  14. Tzang CC, Chi LY, Lin LH, et al. Taurine reduces the risk for metabolic syndrome: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Nutr Diabetes. 2024;14(1):29. doi:10.1038/s41387-024-00289-z
  15. 厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」令和7年12月2日公表
  16. 日本老年医学会・日本糖尿病学会 編著『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』(血糖コントロール目標のカテゴリー分類)
  17. 日本糖尿病学会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」(日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会)
  18. アボットジャパン「エンシュア・リキッド」添付文書、イーエヌ大塚製薬「ラコールNF配合経腸用液」添付文書、明治「メイバランスMiniカップ」栄養成分表示

本記事は一般の方向けの情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。製品の成分値や薬価・保険上の取り扱いは改定により変わることがあります。持病のある方、服薬中の方は、実際の判断にあたって主治医・薬剤師にご相談ください。