在宅療養にも役立つ栄養剤の選び方

「一番よい製剤」ではなく、
「今の体と暮らしに合う製剤」を選ぶ

経腸栄養剤には、飲みやすい液体、高カロリーで少量の製剤、消化吸収に配慮した製剤、 病気に合わせた特殊な製剤などがあります。違いを知ると、医師や管理栄養士に 「何が困っているのか」を具体的に相談しやすくなります。

情報確認日:2026年7月13日 対象:日本で処方される主な経腸栄養剤 一般の方向け
最初に結論

経腸栄養剤は、カロリーが高いほど優れているわけでも、消化しやすい製剤ほど 全員に適しているわけでもありません。 飲み込みの安全性、消化吸収の状態、必要なエネルギーとたんぱく質、 水分量、便通、病気、薬、味の好み、在宅で続けられるかを組み合わせて選びます。

1.経腸栄養剤とは

「経腸」とは、胃や腸などの消化管を使って栄養をとることです。 口から飲む方法だけでなく、鼻から胃へ入れたチューブや胃ろうから注入する方法も含まれます。 点滴だけで栄養を入れる「静脈栄養」とは異なります。

「飲める製剤」=「安全に飲み込める製剤」ではありません。
液体であっても、飲み込みの力が低下している人では誤嚥することがあります。 飲んでいる最中のむせ、湿った声、息苦しさ、繰り返す発熱などがある場合は、 製品を替える前に嚥下機能の評価が必要です。

経腸栄養剤には、医師が診断や栄養状態に基づいて処方する 医薬品タイプと、ドラッグストアや通信販売などで購入する 食品タイプがあります。本稿では、薬価基準に収載された処方製剤を中心に扱います。

2.まず知っておきたい3つの基本タイプ

基本タイプ

半消化態栄養剤

たんぱく質を、食事に近い比較的大きな形で含む製剤です。 消化吸収に大きな問題がなければ、最初に検討されることが多いタイプです。

代表例:
エンシュア、ラコールNF、エネーボ、イノラス

消化に配慮

消化態栄養剤

たんぱく質をペプチドなどの小さな形にして、消化の負担を軽くした製剤です。 消化吸収機能の低下や、標準製剤が合わない場合に検討されます。

代表例:
ツインラインNF

より細かい成分

成分栄養剤

たんぱく質をアミノ酸まで分解した形で含みます。 脂質が非常に少ないなど、消化器疾患に合わせた特徴があります。

代表例:
エレンタール

消化しやすい製剤ほど「上位」という意味ではありません。 成分栄養剤は味やにおい、調製の手間、浸透圧、脂質の少なさなども考慮する必要があります。 消化管が十分に働く人には、標準的な半消化態栄養剤のほうが使いやすい場合があります。

3.経口または経管で使われる主な処方製剤

以下は、一般成人で比較されることが多い製剤を、使い分けが見えやすいように整理したものです。 実際の適応、投与方法、禁忌、アレルギー情報、味の種類は、最新の添付文書と医師の指示で確認します。 [2]

製剤 タイプ エネルギー密度 特徴 主に検討される場面 注意したい点
エンシュア・リキッド 半消化態 1.0 kcal/mL 標準濃度の液体製剤 消化吸収に大きな問題がなく、ある程度の量を飲める場合 必要カロリーが多いと飲む量も増える
ラコールNF配合経腸用液 半消化態 1.0 kcal/mL 標準濃度で、経口・経管の双方で使われる 標準的な栄養補給を行いたい場合 高カロリー製剤より必要液量が多い
エネーボ配合経腸用液 半消化態 1.2 kcal/mL 標準製剤より少ない量でカロリーを確保しやすい 1.0 kcal/mLでは量が多いが、極端な高濃度までは必要ない場合 製剤以外から必要な水分を確保できるか確認する
エンシュア・H 半消化態 1.5 kcal/mL 少ない液量で高いエネルギーを補給できる 食欲低下、飲める量が少ない、投与時間を短くしたい場合 濃い製剤ほど水分不足や胃腸症状に注意する
イノラス配合経腸用液 半消化態 1.6 kcal/mL 表中で最も高濃度。300 kcalを187.5mLで補える 摂取できる量が特に少なく、効率よくエネルギーを補いたい場合 水分、粘度、胃腸の耐容性を別に評価する
ツインラインNF配合経腸用液 消化態 1.0 kcal/mL ペプチドを用いた、消化吸収に配慮した製剤 標準製剤で消化吸収上の問題がある場合 混合調製が必要。下痢の原因がすべて製剤とは限らない
エレンタール配合内用剤 成分栄養 標準調製時 約1.0 kcal/mL 窒素源がアミノ酸で、脂質が非常に少ない粉末製剤 特定の消化器疾患など、医学的な理由がある場合 調製、味、濃度、投与速度を自己判断で変えない

※スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。

必要液量 = 目標エネルギー ÷ 1mL当たりのエネルギー 300 kcalを補う場合の液量の目安
300mL 1.0 kcal/mL
250mL 1.2 kcal/mL
200mL 1.5 kcal/mL
187.5mL 1.6 kcal/mL

高濃度製剤では飲む量を減らせますが、その分だけ水分も少なくなります。 「少量で済む」ことと「水分補給も十分」は別の問題です。

病気や年齢に合わせた特殊な製剤

製剤 対象・特徴 一般向け製剤との違い
エレンタールP乳幼児用配合内用剤 乳幼児用の成分栄養剤 成長、月齢、病気を含めた小児専門の管理が必要
アミノレバンEN配合散 肝不全用。分岐鎖アミノ酸を含む病態別製剤 単なる高たんぱく補助食品ではなく、肝疾患の状態に合わせて処方される
ヘパンED配合内用剤 肝不全用の成分栄養剤 肝機能、食事量、意識状態などを含めて医師が判断する

※これらを一般用の栄養補助として自己判断で使用することはできません。

半固形製剤は「飲む製剤」とは別に考える

イノソリッド配合経腸用半固形剤ラコールNF配合経腸用半固形剤は、主に胃ろうなどから投与する製剤です。 液体製剤で逆流や胃ろう周囲からの漏れが問題になる人、注入時間を調整したい人などで 検討されることがあります。

ただし、全員に適するわけではありません。チューブの種類や太さ、胃の動き、注入方法、 介助者の手技まで確認する必要があります。ラコールNF半固形剤については、 2026年6月12日適用の薬価リストに2027年3月31日までの経過措置期限が 記載されているため、供給・処方状況を医療機関や薬局に確認してください。 [1]

4.何を見て使い分けるのか

製剤名から先に選ぶのではなく、次の順番で「解決したい問題」を整理すると、 使い分けがわかりやすくなります。

安全に飲み込めるか

むせ、湿った声、飲み込みに時間がかかる、食後の発熱などがあれば、 製剤変更より先に嚥下評価を行います。

胃腸はどの程度働いているか

大きな問題がなければ半消化態を基本にし、消化吸収障害があれば 消化態や成分栄養剤を検討します。

必要量を飲み切れるか

量が多くて続かない場合は高濃度製剤が候補になります。 ただし、水分量は別に計算します。

たんぱく質と微量栄養素は足りるか

同じカロリーでもたんぱく質量は同じとは限りません。 少量だけ使う場合はビタミンやミネラルが不足することもあります。

便通や腹部症状はどうか

下痢、便秘、腹部膨満、吐き気の原因を確認し、 濃度、速度、薬、水分、衛生状態も含めて調整します。

在宅で無理なく続けられるか

味、保管場所、調製の手間、注入時間、家族の介助、 薬局からの供給まで含めて選びます。

成分表示で確認したいポイント

確認項目 何がわかるか 使い分けのポイント
エネルギー密度 1mL当たりのカロリー 高いほど少量で済むが、水分は少なくなる
たんぱく質 筋肉、皮膚、傷の回復に必要な量 高齢者、褥瘡、手術後などでは特に重要。腎・肝疾患では個別調整する
脂質と脂肪酸 エネルギー源、必須脂肪酸、消化のしやすさ 脂質を抑えた製剤が必要な病態もあるが、長期使用では不足にも注意する
食物繊維 便通や腸内環境への作用 多ければ必ずよいわけではない。腸閉塞が疑われる場合などは医師判断が必要
水分 製剤そのものから入る水分量 高濃度製剤ほど、別途の水分補給が必要になりやすい
ナトリウム・カリウム・リン 体液や電解質への影響 心不全、腎機能低下、利尿薬使用中などでは個別に確認する
ビタミン・ミネラル 1日の必要量をどこまで満たせるか 「栄養剤を飲んでいる」だけでは十分とは限らず、実際の1日量で評価する
浸透圧 液体中に溶けている成分の濃さの一指標 濃度や投与速度によっては、下痢や腹部症状に関係することがある

※一つの数値だけでなく、1日に摂取する総量で判断します。

5.医学的エビデンスはどう違うのか

比較的はっきりしていること

  • 低栄養または低栄養リスクがあり、通常の食事だけで必要量を満たせない人には栄養支援を検討する
  • 消化管が機能していれば、経口栄養や経腸栄養が選択肢になる
  • 開始後は、体重、水分状態、摂取量、症状、検査値などを継続して確認する
  • 在宅では、本人・家族への教育と多職種による支援が重要である

一律には決められないこと

  • すべての人に最も優れたブランドはどれか
  • 下痢があれば必ず消化態製剤に替えるべきか
  • 高濃度製剤のほうが治療成績もよいか
  • 食物繊維は多いほどよいか

主要な栄養管理ガイドラインは、特定の商品を一律に順位づけするのではなく、 必要な栄養量、消化管機能、投与経路、病気、忍容性、本人の希望、 在宅での実行可能性をもとに処方を組み立てることを重視しています。 [3] [4]

高濃度製剤、消化態製剤、成分栄養剤、病態別製剤には、それぞれ特定の状況で期待される利点があります。 しかし、製剤の種類を替えただけで、すべての胃腸症状や栄養問題が解決するとは限りません。 病気の進行、感染症、薬の副作用、投与速度、水分不足、便秘、衛生状態なども同時に見直します。

長く食べられていなかった人は、急に増量しない

何日もほとんど食べていない、短期間に大きく体重が減った、著しくやせている人では、 栄養を急に増やすことで電解質が大きく変動する リフィーディング症候群が起こることがあります。 開始量や増量速度は医療者が決め、必要に応じて採血などで確認します。

6.薬価と実際の費用は同じではない

薬価は、国が定めた医療用医薬品の公定価格です。ただし、表に記載された金額が そのまま窓口で支払う金額になるわけではありません。

  • 自己負担割合や公費制度によって支払額が変わる
  • 診察料、処方料、調剤料、在宅管理料などは別に計算される
  • 液体は10mL、粉末は10gなど、薬価の単位が異なる
  • 比較するなら「1本の価格」だけでなく、必要カロリー当たりの量を見る
  • 高濃度製剤は、保管本数や投与時間を減らせることがある
  • 食品タイプは、在宅では自己購入となることが多い

価格だけで決めると、かえって続かないことがあります。 安価でも必要量を飲めずに残す、介助時間が長くなる、下痢で中止するという状況では、 実際の負担が大きくなります。薬剤料に加えて、継続性や介護負担も含めて比較します。

2026年6月12日適用の薬価一覧を開く

厚生労働省の薬価基準収載品目リストに基づく単位薬価です。 10mLと10gをそのまま比較することはできません。 [1]

製剤 薬価の単位 薬価 備考
エレンタール配合内用剤 10g 58.60円 粉末・成分栄養剤
エレンタールP乳幼児用配合内用剤 10g 86.70円 乳幼児用
アミノレバンEN配合散 10g 88.80円 肝不全用
エンシュア・リキッド 10mL 7.10円 液体・1.0 kcal/mL
ヘパンED配合内用剤 10g 32.30円 肝不全用
エンシュア・H 10mL 9.10円 液体・1.5 kcal/mL
ツインラインNF配合経腸用液 混合調製後10mL 9.10円 消化態
ラコールNF配合経腸用液 10mL 10.70円 液体・1.0 kcal/mL
ラコールNF配合経腸用半固形剤 10g 10.60円 経過措置期限:2027年3月31日
エネーボ配合経腸用液 10mL 8.30円 液体・1.2 kcal/mL
イノラス配合経腸用液 10mL 13.90円 液体・1.6 kcal/mL
イノソリッド配合経腸用半固形剤 10g 14.30円 主に経管投与

本表は、経腸成分栄養剤および肝不全用成分栄養剤を中心に掲載しています。 先天代謝異常用ミルク、人乳由来母乳強化剤、静脈栄養製剤などは対象外です。 薬価や経過措置は改定されるため、処方時点の情報を確認してください。

7.在宅医療では「製剤」より「運用設計」が重要

入院中に問題なく使えていた製剤でも、在宅ではうまくいかないことがあります。 病院と自宅では、見守る人、生活時間、保管場所、注入に使える時間、 緊急時の対応、薬局からの配送状況が違うからです。

在宅で本当に使いやすい製剤とは、 栄養学的に適切で、本人が受け入れられ、家族や支援者が安全に扱え、 必要な量を継続できる製剤です。

在宅開始前に、書面で決めておきたいこと

  • 製剤名、1回量、1日量、投与時刻
  • 経口か経管か、注入速度や所要時間
  • 製剤とは別に必要な水分量
  • 薬を投与する順序と、チューブ洗浄方法
  • 開封・調製後の保存方法と廃棄基準
  • 下痢、嘔吐、詰まり、抜去時の連絡先
  • 薬局への注文方法と配送に必要な日数
  • 災害・停電・供給不足時の代替手順

口から飲む場合のポイント

1

食事を妨げない時間にする

食事を食べられる人では、食直前に飲むと食事量が減ることがあります。 食間や就寝前など、生活に合った時間を相談します。

2

一度に無理をしない

少量ずつ時間を分けたほうが続けやすい場合があります。 決められた1日量を、どのように分けるかを相談します。

3

味の飽きを「我慢」で解決しない

温度、味の種類、飲む容器などで受け入れやすさが変わります。 製品の指示や医療者の許可の範囲で工夫します。

とろみを付ける、別の飲料と混ぜる、薄める、凍らせるといった変更は、 飲み込みや栄養濃度、衛生状態に影響します。自己判断では行わず、 医師、管理栄養士、言語聴覚士などに確認してください。

胃ろう・経鼻チューブから入れる場合のポイント

栄養剤の前後

  • 施設から教わった方法でチューブや接続部を確認する
  • 指示された量の水で、投与前後にチューブを洗浄する
  • 心不全や腎機能低下がある人は、水の量も自己変更しない
  • 注入中と注入後の姿勢について指示を守る

薬を入れるとき

  • 栄養剤の中に薬を混ぜない
  • つぶしてよい薬か、薬剤師に確認する
  • 複数の薬をまとめず、指示された順序で投与する
  • 薬の前後にも、指示された量の水で洗浄する

薬の中には、つぶすと効果が変わるもの、チューブを詰まらせやすいもの、 栄養剤と同時に投与すると吸収が変わるものがあります。 在宅開始時だけでなく、薬が追加・変更されたときにも薬剤師へ確認します。

下痢が起きても、すぐに製剤だけを疑わない

症状・変化 確認すること 対応の考え方
下痢 注入速度、急な増量、抗菌薬や下剤、感染、衛生状態、便秘後の水様便 自己判断で中止・変更せず、回数、量、開始時期を記録して相談する
便秘 水分量、活動量、食物繊維、便秘を起こす薬、注入量不足 水分制限の有無を確認し、総合的に調整する
吐き気・嘔吐 投与速度、1回量、姿勢、胃の動き、便秘、病気の悪化 投与を止め、安全を確保して医療者へ連絡する
むせ・湿った声 嚥下機能、姿勢、飲む速度、意識状態 経口摂取をいったん止め、誤嚥の可能性を相談する
急な体重増加・むくみ 水分、塩分、尿量、心臓や腎臓の状態 栄養が付いたと自己判断せず、早めに報告する
チューブの詰まり 薬の投与方法、洗浄不足、製剤の固まり 強い力や器具で押し込まず、教わった手順と連絡先を使う
胃ろう周囲の赤み・漏れ 皮膚、固定位置、痛み、におい、発熱 写真や範囲を記録し、訪問看護や医療機関へ相談する

※症状が強い場合は、記録より安全確保と連絡を優先します。

在宅で記録すると役立つ項目

毎日見るもの

  • 予定量のうち、実際に摂取・注入できた量
  • 水分量と尿量の大きな変化
  • 便の回数と性状
  • むせ、吐き気、腹部膨満、痛み
  • チューブや胃ろう周囲の状態

定期的に見るもの

  • 同じ条件で測った体重
  • 筋力、歩行、日中の活動性
  • むくみ、口の渇き、皮膚の状態
  • 医師が指示した血液検査
  • 栄養剤を続ける目的が達成できているか

体重だけでは、栄養が増えたのか、水分がたまったのかを判断できないことがあります。 摂取量、便、尿、むくみ、活動性などを一緒に見ることが大切です。

すぐに医療者へ連絡したい状態
  • 呼吸が苦しい、強くむせる、顔色が悪い、意識がいつもと違う
  • 嘔吐を繰り返す、強い腹痛や著しい腹部膨満がある
  • チューブが抜けた、位置が変わった、出血している
  • チューブへ水が入らず、薬や栄養を投与できない
  • 発熱とともに、むせや痰が増えた
  • 栄養開始後に強い脱力、急なむくみ、動悸などが出た

症状が重い場合は、通常の連絡を待たず救急要請を検討してください。

供給・災害への備えも処方の一部

  • 薬局が常時在庫しているか、取り寄せに何日かかるか確認する
  • 連休前に残量と次回処方日を確認する
  • 不足時に別製剤へ自己変更せず、処方元へ連絡する
  • ポンプ使用者は充電、電池、停電時の計画を確認する
  • 必要な水、接続器具、衛生用品の備えを決める
  • 製剤名、1日量、投与法、連絡先を1枚にまとめる

災害用の予備量は、保管場所や使用期限、地域の供給体制を踏まえて、 処方医、薬局、訪問看護と相談して決めます。

在宅では多職種で支える

医師 病気、適応、投与経路、目標量を判断
管理栄養士 エネルギー、たんぱく質、水分、食事との組み合わせを設計
薬剤師 薬との相互作用、粉砕可否、供給・保管を確認
訪問看護師 症状、手技、チューブ、皮膚状態を確認
言語聴覚士・歯科職 嚥下機能、食べ方、姿勢、口腔ケアを支援
本人・家族 実際に続けられる量、味、時間、困りごとを共有

8.よくある質問

高カロリーの製剤ほど、栄養価が高くてよいのでしょうか?

高濃度製剤の大きな利点は、少ない量でエネルギーを補えることです。 一方、水分量が少なく、濃さや粘度が胃腸に合わないこともあります。 「高カロリー=全項目で優れている」ではありません。

栄養剤だけで、すべての栄養を補えますか?

必要量を摂取したときに主要な栄養素を満たすよう設計された製剤もありますが、 補助として少量だけ使う場合は、ビタミンやミネラルまで十分とは限りません。 食事を含めた1日全体で評価します。

下痢をしたら、すぐに別の製剤へ替えるべきですか?

下痢の原因は、投与速度、急な増量、薬、感染、便秘、衛生状態などさまざまです。 製剤変更が有効な場合もありますが、まず原因を整理します。 回数、量、開始時期、薬の変更などを記録して相談すると役立ちます。

濃すぎるように感じるので、水で薄めてもよいですか?

自己判断での希釈は、栄養濃度、衛生状態、投与量の管理を難しくします。 水分を追加する場合も、製剤に混ぜるのか、別に飲む・注入するのかを含めて 医療者の指示を確認してください。

処方製剤から市販の栄養食品へ替えてもよいですか?

市販品は、エネルギー密度、たんぱく質、電解質、食物繊維、粘度などが異なります。 見た目が似ていても同じ内容ではありません。病気に合わせた制限がある人や、 栄養剤を主な栄養源としている人は、必ず相談してから変更します。

一度決めた製剤は、ずっと同じものを使いますか?

体重、活動量、病気、傷の状態、嚥下機能、薬、介護状況が変われば、 必要な製剤や量も変わります。状態が安定していても、定期的な見直しが必要です。

まとめ:製剤名より、解決したい問題を明確にする

  1. 経口可能でも、嚥下が安全とは限らない
  2. 消化吸収に問題がなければ、標準的な半消化態が基本になりやすい
  3. 飲める量が少ないときは、高濃度製剤が役立つ
  4. 高濃度にしたときは、水分を別に評価する
  5. 下痢や便秘は、製剤以外の原因も確認する
  6. 病態別・小児用製剤は、専門的な判断のもとで使用する
  7. 在宅では、味、手間、供給、家族の負担まで含めて選ぶ

経腸栄養剤の使い分けで大切なのは、「どの商品が一番よいか」と尋ねることではありません。 今、何が原因で必要量をとれないのか。何を改善したいのか。 自宅で安全に続けられるかを医療者と共有することです。

製剤の濃度、成分、価格だけでなく、本人の生活や希望まで含めて考えることで、 栄養療法は初めて「続けられる治療」になります。

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参考資料

  1. 厚生労働省 「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について (令和8年6月12日適用)」 公式ページ
  2. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 「医療用医薬品 添付文書等情報検索」 公式検索ページ
  3. National Institute for Health and Care Excellence(NICE) “Nutrition support for adults: oral nutrition support, enteral tube feeding and parenteral nutrition(CG32)” 公式ガイドライン
  4. European Society for Clinical Nutrition and Metabolism(ESPEN) “ESPEN practical guideline: Home enteral nutrition” 公式PDF
医療上の注意: 本記事は、経腸栄養剤について理解するための一般的な情報です。 特定の製剤の使用、増量、減量、希釈、中止、投与経路の変更を勧めるものではありません。 適応、禁忌、アレルギー、投与量、水分量、薬との組み合わせは個人ごとに異なります。 処方内容を変更するときは、主治医、管理栄養士、薬剤師、訪問看護師などに相談してください。 製品情報や薬価は改定されるため、使用時点の添付文書・公的資料を確認してください。