2026年9月時点の医学情報・制度をもとに作成しています。
健康診断の結果に「HBs抗原 陽性」と書かれていた。手術の前の血液検査で、初めてB型肝炎だと言われた——。70代、80代になってからこう知らされ、驚いて相談に来られる方は少なくありません。ご本人は「これまで元気だったのに」と戸惑い、ご家族は「うつっていないか」「がんになるのではないか」と心配されます。
この記事では、2026年6月に改訂された日本肝臓学会『B型肝炎治療ガイドライン(第5版)』と、国・福岡県・福岡市の最新の制度をもとに、B型肝炎と怖がりすぎず、放っておかず付き合っていく方法を順にご説明します。
SECTION 01 結論——まず知っておいてほしい3つのこと
- 1「陽性」は、病気が進んでいるという意味ではありません
高齢になって見つかる方の多くは、生まれたときから幼いころに感染し、何十年もウイルスと一緒に暮らしてきた方です。乳幼児期に感染した人の約9割は、若いうちにウイルスの勢いが落ち着いた状態(非活動性キャリア)に移り、その後の経過はおおむね良好です。「今日から病気になった」のではなく、「今日、知った」のです。
- 2ただし、いまどの状態にいるかは、一度きちんと調べないとわかりません
ウイルスの量(HBV DNA)、肝臓の炎症(ALT)、HBe抗原、エコーでの肝臓の状態を調べると、「治療はいらず、定期的な確認だけでよい人」と「飲み薬で抑えたほうがよい人」に分かれます。治療が必要な場合も、1日1回の飲み薬でウイルスを抑え、肝がんを減らせる時代です。
- 3ふだんの暮らしで家族にうつることはほとんどなく、守る手立てもあります
食事・お風呂・洗濯でうつることはありません。歯ブラシやカミソリを分け、ご家族は一度検査を受けて、必要ならワクチンで守れます。そして何より大切なのは、ほかの病気で強い薬(抗がん剤、リウマチの薬、ステロイドなど)を使うとき、必ず「B型肝炎がある」と伝えることです。
SECTION 02 「HBs抗原陽性」とは——検査結果の読み方
B型肝炎の検査にはいくつもの項目があり、名前が似ているため混乱しがちです。ご相談で特に多い取り違えが「抗原」と「抗体」です。まず、結果票に出てくる言葉の意味を整理します。
HBs抗原が陽性なら「ウイルスがいる」、HBs抗体が陽性なら「防ぐ力がある」。同じ「HBs」でも意味は反対です。結果票に「HBs抗原(+)」「HBsAg 陽性」とあれば、B型肝炎ウイルスが体にすみ続けている状態です。
ただし、1回の検査で陽性とわかっても、その場で治療が決まるわけではありません。次のステップは、ウイルスの量や肝臓の状態を調べる精密検査です(SECTION 05)。
医学では、ウイルスが体にすみ続けている人を「キャリア(持続感染者)」と呼びます。「うつす人」「重い病人」という意味ではありません。この記事でもこの言葉を使いますが、あくまで状態を表す言葉としてお読みください。
SECTION 03 なぜ、高齢になってから見つかるのか
日本のB型肝炎ウイルスの感染率は約1%とされ(日本肝臓学会ガイドライン第5版)、ウイルスが体にすみ続けている人は110万〜140万人と推計されています(国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター資料)。年代別に見ると50〜80歳代では1%を超える一方、若い世代では大きく減っています。
高齢の方の感染の多くは、ご本人の暮らし方とは関係のない、時代の事情によるものです。主な経路は2つあります。出産のときにお母さんから赤ちゃんへうつる母子感染と、1948年から1988年まで続いた集団予防接種での注射器の連続使用です。後者については国が責任を認め、給付金の制度があります(SECTION 11)。
大人になってから感染した場合は、多くが一時的な急性肝炎を経てウイルスが排除され、治ります(近年、若い世代で慢性化しやすい遺伝子型Aの感染が増えている点は例外です)。つまり高齢の方が今回初めて「陽性」とわかった場合、その多くは何十年も前から続いている感染であり、最近どこかでうつったわけではありません。
幼いころの感染は、ご本人にはどうすることもできなかったものです。ご家族も、責める側ではなく「一緒に確かめる側」に回ってください。そのほうが、検査にも治療にもつながりやすくなります。
数字の補足:感染者数は、推計した年や方法によって「約100万人」とされることもあります。母子感染対策(1986年〜)とワクチンの定期接種(2016年〜)で若い世代の感染が減り、全体の数は年々少なくなっているため、どの年の推計かで数字が変わります。
SECTION 04 ウイルスとともに暮らす人がたどる「時期」
B型肝炎ウイルスそのものは、肝臓の細胞をほとんど壊しません。肝臓を傷つけるのは、ウイルスを追い出そうとする体の免疫の反応です。そのため、同じ「キャリア」でも、免疫とウイルスの力関係によって状態が大きく違います。ガイドラインでは主に4つの時期に分けて考えます。
乳幼児期に感染すると9割以上がキャリアになり、そのうち約9割は若いうちにHBe抗体へ切り替わって、落ち着いた状態(図3の③)に入ります。一方、残りの約1割では炎症が続き、年に約2%の割合で肝硬変へ進むとされています。だからこそ大切なのは、「陽性か陰性か」ではなく「いま、どの時期にいるか」です。
ウイルスには遺伝子の型(ゲノタイプ)もあり、日本のキャリアの8割以上は、肝がんになりやすい性質をもつC型です。一方、東北・沖縄などに多いBj型はとても穏やかで、ほとんどが症状のないまま一生を終えるとされています。型の検査も保険で受けられます。
SECTION 05 精密検査で何を調べ、どう判断するのか
精密検査では、HBe抗原・HBe抗体、HBV DNA量、ALT、血小板の数、腹部エコー(肝臓の形や硬さ、しこりの有無)を調べます。必要に応じて、肝臓の硬さ(線維化)を血液の指標や超音波の測定器で詳しく評価します。
なお、線維化の目安としてよく使われる「FIB-4」という計算値は、年齢が式に入っているため、高齢の方では高めに出やすいことがガイドラインにも明記されています。数値だけで「肝硬変だ」と驚かず、エコーなどと合わせて判断します。
抗ウイルス薬を使っていない状態で、1年以上の間に3回以上血液検査を行い、そのすべてで次の3つがそろうことです。
- HBe抗原が陰性
- ALTが30 U/L以下
- HBV DNA量が2,000 IU/mL(3.3 LogIU/mL)未満
つまり1回の検査だけでは決められず、時間をかけて見きわめます。「最初の1年は検査が多い」のはこのためです。
治療の目安は、慢性肝炎ならALT 31 U/L以上、かつHBV DNA量2,000 IU/mL以上、肝硬変ならウイルスが検出されるだけで対象です。ただしALTの上昇が、脂肪肝やお酒、ほかの薬によるものと判断される場合は、ウイルスを抑える治療の対象にはなりません。高齢の方ではこうした別の原因が重なっていることも多いため、「ALTが高い=すぐ治療」とは限らないのです。
SECTION 06 肝がんのリスクを、数字で正しく知る
「B型肝炎=いずれ肝がん」というイメージが、不安のいちばん大きな原因かもしれません。実際のリスクは、いまどの状態にいるかで大きく違います。
非活動性キャリアでも、感染していない人と比べると肝がんのリスクは約4倍です。ただ、絶対的な数で見ると1万人のうち1年に6人ほどで、10年に直すと約0.6%(およそ150人に1人)になります。一方、ウイルス量がとても多い人や肝硬変まで進んだ人では、けた違いに高くなります。「どのグループにいるか」を知ること、そしてリスクが高いグループなら治療と定期検査で備えることが大切です。
非活動性キャリアの肝がん発生率は、研究によって年0.02%程度から0.2%程度まで幅があります(El-Serag, Gastroenterology 2012の総説より)。主な理由は次の4つです。
- 「非活動性」の決め方:ウイルス量やALTの線をどこに引くかが研究ごとに違います。
- 地域と遺伝子型:東アジアのほうが欧米より高く出ます。
- 肝硬変の人を含めたか:わずかでも含まれると率は上がります。
- 年齢と時代:追跡した人の年齢や観察した年代が違います。
図5の数字は台湾の住民研究のもので、日本人にそのまま当てはまるとは限りません。「おおよその大きさの違い」として見てください。
リスクを上げる要因として、ガイドラインは40歳以上、男性、ウイルス量が多いこと、飲酒、肝がんの家族歴、肝臓の線維化、血小板の減少、遺伝子型Cなどを挙げています。台湾の研究でも、非活動性キャリアの中で年齢と飲酒は独立した危険因子でした。高齢の方は年齢の条件をすでに満たすため、治療の要否とは別に、定期的な画像検査で肝がんを小さいうちに見つける体制をとることが勧められます。
検査の間隔の目安は、B型慢性肝炎など「高危険群」では6か月ごとの超音波検査と腫瘍マーカー、肝硬変の「超高危険群」では3〜4か月ごとです(肝癌診療ガイドライン2021年版、日本超音波医学会 肝腫瘍の超音波診断基準 第三版案 2025年)。小さいうちに見つかれば、手術やラジオ波焼灼、放射線治療など、体に負担の少ない治療を選べる可能性が高まります。
SECTION 07 治療が必要になったら——1日1回の飲み薬
現在の治療の中心は、核酸アナログ製剤と呼ばれる飲み薬です。ウイルスが増える仕組みを直接止める薬で、1日1回の服用で、多くの人が血液中のウイルスを検出されない程度まで抑えられます。短期的な副作用はほとんどありません。ペグインターフェロンという注射薬も選択肢ですが、副作用が多く、国内の試験は主に50歳未満の人で行われたため、高齢の方では飲み薬が中心になることが多いでしょう。
| エンテカビル | テノホビル ジソプロキシル(TDF) | テノホビル アラフェナミド(TAF) | |
|---|---|---|---|
| 飲み方 | 1日1回。空腹時(食事の前後2時間を避ける) | 1日1回 | 1日1回。食事の影響を受けない |
| 腎臓・骨への負担 | 少ない | 長く飲むと腎機能の低下、リンの低下、骨密度の低下に注意 | TDFより少ない |
| 高齢の方での使いどころ | 腎臓や骨に不安があるときの第一候補の一つ | 定期的に腎機能とリンを確認しながら使う | 腎臓や骨に不安があるときの第一候補の一つ。2024年9月から透析中の方の使い方も明確化 |
治療の効果は、ウイルスを抑えることにとどまりません。日本の研究では、エンテカビルを飲んだ人の5年間の肝がん発生率は3.7%で、背景をそろえた治療を受けていない人の13.7%より低く、リスクは約6割減っていました(Hosaka ら、Hepatology 2013)。長く続けることで、肝臓の線維化が改善することも示されています。
核酸アナログは、ウイルスの「設計図」そのものを肝臓から消す薬ではありません。やめると高い確率でウイルスが再び増え、ときに重い肝炎を起こします。やめられるかどうかは、服用2年以上、ウイルスが検出されない、HBe抗原が陰性といった条件に加え、HBs抗原の量などから再燃のしやすさを見積もったうえで、専門医が判断します。肝硬変の方は、原則として生涯続けます。
費用については、飲み薬の治療にかかる医療費の自己負担を月1万円(所得の高い世帯は2万円)までにする助成制度があります(SECTION 11)。
SECTION 08 2026年の新しい話題——指針の改訂と「機能的治癒」をめざす新薬
治療ガイドラインが4年ぶりに全面改訂されました
日本肝臓学会は2026年6月、『B型肝炎治療ガイドライン』の第5版を公表しました。一般の方に関わりの深い変更点は、「灰色の時期」(ALTかウイルス量の片方だけが目安を超える状態)について、発がんリスクを評価して治療を検討するという記載が加わったこと、そして後で説明する「再活性化」の対策に、免疫チェックポイント阻害薬、多発性骨髄腫などに使うBCMA標的CAR-T細胞療法、ステロイド単独の治療でのリスクが書き加えられたことです。
新しい注射薬「ベピロビルセン」が承認されました
2026年8月24日、B型肝炎の機能的治癒を目的とした注射薬ベピロビルセン(商品名ヒブサーゴ)が、日本で世界に先駆けて承認されました。ウイルスの設計図から写し取られたRNAにくっついて分解させ、HBs抗原を作らせないようにする、これまでにない仕組みの薬です。飲み薬と併用しながら、24週間皮下注射します。
機能的治癒とは、すべての治療をやめた後も、少なくとも24週間、HBs抗原とウイルスが血液から検出されない状態を指します。国際的な2つの第3相試験(B-Well 1・B-Well 2、NEJM 2026年)の結果を、言えることと言えないことに分けて整理しました。
「B型肝炎が治る薬ができた」という報道は、半分正しく、半分は注意が必要です。治療をやめられる人が出てきたことは大きな前進ですが、対象には条件があり、約8割の人では機能的治癒に届いていません。また「機能的治癒」は、肝臓の細胞からウイルスの遺伝子が完全に消えた状態ではないため、治った後も肝がんの定期検査は続けます。保険で使えるようになる(薬価基準に収載される)時期や使える医療機関は、この記事の時点で確認できた範囲では決まっていません。気になる方は、主治医に「自分が対象になりうるか」を尋ねてみてください。
SECTION 09 ご家族の心配に答える——うつること、うつらないこと
B型肝炎ウイルスは、主に血液を介してうつります。感染している人の血液が、ほかの人の皮膚や粘膜の傷に入ったときに初めて感染が起こりえます。厚生労働省の「日常生活の場でウイルス肝炎の伝播を防止するためのガイドライン」も、ふだんの暮らしでの注意点を示しています。
ご家族に勧めたいこと
- 1一度、血液検査を受ける
配偶者やパートナー、きょうだい、そしてご本人が女性の場合はお子さんも、HBs抗原とHBs抗体を一度調べておくと安心です。福岡市では、20歳以上で過去に肝炎ウイルス検査を受けたことがない方は、実施医療機関で無料で検査を受けられます。
- 2抗原も抗体も陰性なら、ワクチンを考える
B型肝炎ワクチンは、1回目・1か月後・6か月後の3回接種が基本です。3回目の1〜2か月後に抗体(10 mIU/mL以上が目安)ができたかを確かめます。年齢が上がるほど抗体がつきにくくなるため、接種後の確認が大切です。成人の接種は任意接種(自費)です。
- 3お孫さんは、母子手帳で確認する
2016年10月から、B型肝炎ワクチンは赤ちゃんの定期接種になっています。2016年4月以降に生まれたお子さんの多くは、1歳までに3回受けています。抱っこや一緒の食事でうつることはありませんが、口移しで食べ物を与えることは避けましょう。
B型肝炎は、施設や在宅の介護・看護でも標準予防策(血液や体液に素手で触れない、手を洗う)で対応できる病気とされています。入浴の順番を最後にしたり、食器を分けたりする必要はありません。安心してサービスを利用してください。
SECTION 10 いちばん大切な注意——ほかの病気の治療で「再活性化」させない
B型肝炎ウイルスをもっている人が、免疫の働きを抑える治療を受けると、それまでおとなしかったウイルスが急に増え、重い肝炎(ときに劇症肝炎)を起こすことがあります。これを再活性化と呼びます。注意が必要な治療には、次のようなものがあります。
- 抗がん剤、分子標的薬、リツキシマブなどを含む化学療法
- 関節リウマチや膠原病の免疫抑制薬
- ステロイド(量や期間によって。第5版で単独使用のリスクも追記)
- 免疫チェックポイント阻害薬、CAR-T細胞療法、造血幹細胞移植
- C型肝炎の治療薬
ガイドラインでは、HBs抗原が陽性の人がこうした治療を受けるときは、始める前から飲み薬(核酸アナログ)で予防することが基本とされています。HBs抗原が陰性でHBc抗体だけが陽性の「過去の感染」の人も、ウイルス量を定期的に測って備えます。
高齢になると、がんの治療や、リウマチ性多発筋痛症などでステロイドを使う機会が増えます。再活性化の多くは、「B型肝炎がある」と知られないまま強い薬が始まってしまうことで起こります。お薬手帳の表紙など、どの医療機関でも目に入る場所に「HBs抗原陽性」と書いておくことが、いちばん確実な予防策です。
SECTION 11 お金と制度——福岡市で使えるもの
B型肝炎には、検査から治療まで、いくつもの公的な助成があります。多くはお住まいの区の保健福祉センター健康課が窓口です(早良区は092-851-6012)。所得によって使えるものと使えないものがあるため、表で整理しました。
| 制度 | 内容 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 肝炎ウイルス検査 | B型・C型肝炎ウイルスの血液検査が無料 | 福岡市民で20歳以上、過去に受けたことがない人。実施医療機関で受ける |
| 初回精密検査の費用助成 | 陽性とわかった後、最初の精密検査の自己負担を助成(1回のみ) | 公的な肝炎ウイルス検査・職場の検査・妊婦健診・手術前の検査で陽性と判定されて1年以内、フォローアップ事業への同意。ふつうの診療の中で見つかった場合は対象外 |
| 定期検査の費用助成 | 慢性肝炎・肝硬変・肝がんの定期検査を年度2回まで助成 | 住民税非課税世帯は無料。市町村民税(所得割)の世帯合計が23万5,000円未満なら1回2,000円(肝硬変・肝がんは3,000円)。医療費助成の受給者証を持つ人は対象外 |
| 肝炎治療の医療費助成(肝炎治療特別促進事業) | 飲み薬(核酸アナログ)の治療にかかる医療費の自己負担を月1万円まで。1年ごとに更新 | 所得の制限はなく、市町村民税(所得割)の世帯合計が23万5,000円以上の世帯は月2万円まで。医師の診断書が必要 |
| 肝がん・重度肝硬変の医療費助成 | 入院・通院の自己負担を月1万円まで | 世帯年収がおおむね370万円以下、対象の治療で高額療養費の上限に達した月が一定数あることなど |
所得が高めの世帯でも、飲み薬の治療の医療費助成(月2万円まで)は受けられます。一方、定期検査の費用助成には所得の条件があります。どれが使えるかわからないときは、区の健康課か、福岡県の肝疾患診療連携拠点病院である久留米大学病院の福岡県肝疾患相談支援センター(相談無料)に尋ねるのが近道です。
集団予防接種で感染した方への給付金(B型肝炎訴訟)
1948年(昭和23年)7月1日から1988年(昭和63年)1月27日までの間に、7歳になるまでに受けた集団予防接種などの注射器の連続使用でB型肝炎ウイルスに感染した方と、その方から母子感染した方(それぞれの相続人を含む)は、国との裁判上の和解などを経て給付金を受け取れます。生まれ年でいえば、おおむね1941年(昭和16年)7月2日以降に生まれた方が対象になりえます。
| 病態 | 給付金 | 発症から20年を過ぎている場合 |
|---|---|---|
| 死亡・肝がん・重度の肝硬変 | 3,600万円 | 900万円 |
| 軽度の肝硬変 | 2,500万円 | 600万円または300万円 |
| 慢性肝炎 | 1,250万円 | 300万円または150万円 |
| 無症候性キャリア | 600万円 | 50万円(感染から20年を過ぎている場合) |
請求の期限は2027年(令和9年)3月31日です。集団予防接種を受けたことや、母子感染ではないことなどを資料で示す必要があり、準備に時間がかかることがあります。2026年1月には、慢性肝炎が再燃した方の除斥期間の数え始めについて、国と原告団の間で新たな合意(基本合意書その3)も結ばれました。まずは厚生労働省の電話相談窓口(03-3595-2252、平日9時〜17時)で、ご自身が対象になりうるかを確かめてみてください。
「陽性」は診断名ではなく、付き合い方を決めるための入口です
在宅医療の現場では、B型肝炎が見つかった高齢の方とご家族から、「これから何を気をつければいいのか」という相談を受けることがあります。私たちが大切にしていることを4つにまとめます。
- 1最初の評価は肝臓の専門医で、その後の見守りは身近な場所で
精密検査と治療方針の決定は、肝臓の専門医療機関で受けてください。方針が決まれば、半年ごとの採血などはかかりつけ医で続けられますし、通院が難しくなったら訪問診療で採血を続け、画像検査だけ専門医療機関で受けるといった組み合わせも考えられます。大切なのは、見守りが途切れないことです。
- 2「治療はいらない」は「何もしなくていい」ではありません
非活動性キャリアでも、10〜20%は後にウイルスが再び増えます。次の検査の予定日は、カレンダーやお薬手帳など、ご家族も見られる場所に書いておいてください。忘れてしまうことを前提に仕組みをつくるほうが、確実です。
- 3お薬手帳の表紙に「HBs抗原陽性」と書いてください
再活性化を防ぐ最大の鍵は、強い薬が始まる前に医療者が気づくことです。歯科、整形外科、皮膚科など、肝臓と関係なさそうな診療科でも見せられるようにしておきましょう。
- 4検査の頻度は、年齢と体調とご本人の希望に合わせて一緒に決めます
90代の方や寝たきりの方に、若い人と同じ間隔で肝がんを探し続けることが最善とは限りません。見つかったときにどうしたいかまで含めて話し合い、検査の間隔を広げることも、立派な医療上の判断です。ただし、ほかの病気の治療前の確認だけは、年齢にかかわらず欠かせません。
SECTION 12 場面別の早見表
| こんなとき | まずすること・目安 |
|---|---|
| 健診や手術前の検査で「HBs抗原陽性」と言われた | 肝臓の専門医療機関で精密検査(HBV DNA量・HBe抗原・エコー)。公的な検査で見つかった場合は、受診前に初回精密検査の助成を申請 |
| 「HBs抗体陽性」と言われた | 抗原ではなく抗体。ワクチンか過去の感染による「防ぐ力」です。HBc抗体の結果もあわせて確認 |
| 「非活動性キャリア」と言われた | 治療は不要。6〜12か月ごとの採血と、リスクに応じた定期的なエコー |
| ALTが上がった | すぐ治療とは限らない。脂肪肝・お酒・薬の影響も含めて再評価(治療の目安はALT 31以上かつDNA 2,000 IU/mL以上) |
| 「灰色の時期」と言われた | 線維化や肝がんの家族歴などを見て、治療するかを主治医と相談 |
| 飲み薬を始めることになった | 自己判断で中止しない。医療費助成(月1万円または2万円まで)を申請 |
| 抗がん剤・リウマチの薬・ステロイドを始める | 開始前に「HBs抗原陽性」と主治医へ。必要なら先に飲み薬で予防 |
| 歯科の治療や手術を受ける | 事前に伝える。標準的な感染対策で対応してもらえます |
| 配偶者・パートナーが心配 | HBs抗原・HBs抗体を検査。どちらも陰性ならワクチン3回と接種後の抗体確認 |
| 子ども・きょうだいが心配 | 一度検査を(福岡市は20歳以上・過去に未受診なら無料) |
| 新薬のニュースを見た | 飲み薬で治療中・肝硬変がない・HBs抗原が一定以下などの条件あり。対象になりうるかを主治医に確認 |
| 1941年7月2日〜1988年1月27日ごろの生まれ | 集団予防接種による感染なら給付金の可能性。請求期限は2027年3月31日 |
SECTION 13 よくある質問
大丈夫です。食事、食器、お風呂、洗濯、トイレでうつることはありません。分けてほしいのは、歯ブラシ、カミソリ、爪切りなど、血液がつく可能性のあるものだけです。
抱っこや一緒の食事でうつることはありません。2016年4月以降に生まれたお子さんの多くは、定期接種のワクチンで守られています。母子手帳で接種の記録を確かめておくと安心です。口移しで食べ物を与えることは避けましょう。
いいえ。非活動性キャリアで肝がんが見つかるのは、1年に1万人あたり6人ほど(台湾の研究)です。ただしゼロではないため、定期的な検査で小さいうちに見つけることが大切です。ウイルス量が多い人や肝硬変の人は、飲み薬の治療でリスクを下げられます。
基本は長く続ける薬です。慢性肝炎の方では、2年以上飲んでウイルスが検出されないなどの条件がそろえば、専門医が再燃のしやすさを見積もったうえで中止を検討できる場合があります。肝硬変の方は原則として続けます。2026年に承認された新しい注射薬は、条件を満たす人に「治療をやめられる」可能性を広げました。
控えることをお勧めします。飲酒は、落ち着いた状態のキャリアでも肝がんの危険因子です。あわせて、脂肪肝や糖尿病があれば、その管理も肝臓を守ることにつながります。「肝臓に効く」とうたう健康食品で、B型肝炎の進行が止まるという根拠はありません。
あります。理由は3つです。ほかの病気で強い薬を使うときに再活性化を防げること。検査の頻度や治療の方針は、体調やご希望に合わせて決められること。そして、生まれた時期によっては給付金の対象になりうることです。「どこまでするか」は、主治医と一緒に決めてかまいません。
SECTION 14 ご利用・採用のご案内
通院が難しくなった方の定期的な診療や、B型肝炎を含む持病の見守り、ご家族の相談を、ご自宅で受けていただけます。
- がんの緩和ケア
- 難病・神経の病気
- 精神科・認知症
- 通院が難しくなった方の定期的な診療
福岡市早良区の訪問診療クリニックです。医師がご自宅に伺い、専門医療機関とも連携しながら診療します。
電話 092-407-7337
https://fukurou.fukuoka.jp/
- 看護師による体調や服薬の確認、医療的ケア
- 理学療法士・作業療法士によるリハビリ
- ご家族への介護のアドバイス
主治医の指示のもと、ご自宅での療養を看護とリハビリで支えます。
電話 092-834-8581
https://nurse-fukurou.jp/
人材紹介会社を通さず直接ご応募いただいた方には、紹介手数料がかからない分を還元する形で入職祝い金をお贈りしています。
募集職種:医師(常勤・非常勤)、看護師、医療事務
電話 092-407-7337
メール clinic@fukurou.fukuoka.jp
採用情報ページ
募集職種:看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(常勤・非常勤)
電話 092-834-8581(平日9:00〜18:00)
メール nurse@fukurou.fukuoka.jp
求人情報ページ
SECTION 15 参考文献・参考資料
- 日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会 編. B型肝炎治療ガイドライン(第5版). 2026年6月. https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/hepatitis_b.html
- 日本肝臓学会. B型肝炎治療ガイドライン(第5版)資料3「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」. 2026年6月. https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/B_document-3_v3.pdf
- 日本肝臓学会 編. 肝細胞癌診療ガイドライン 2025年版. 金原出版; 2025年10月. doi:10.18888/9784307805025
- 日本肝臓学会 編. 肝癌診療ガイドライン 2021年版「肝細胞癌サーベイランス・診断アルゴリズムの解説」. 日本癌治療学会 がん診療ガイドライン. http://www.jsco-cpg.jp/liver-cancer/guideline/
- 日本超音波医学会 肝腫瘤の超音波診断基準検討小委員会. 肝腫瘍の超音波診断基準 第三版(案). 2025年3月. https://www.jsum.or.jp/uploads_files/guideline/shindanbosyuu/20250318.pdf
- Chen CJ, Yang HI, Su J, et al. Risk of hepatocellular carcinoma across a biological gradient of serum hepatitis B virus DNA level. JAMA. 2006;295(1):65-73. doi:10.1001/jama.295.1.65
- Chen JD, Yang HI, Iloeje UH, et al. Carriers of inactive hepatitis B virus are still at risk for hepatocellular carcinoma and liver-related death. Gastroenterology. 2010;138(5):1747-1754. doi:10.1053/j.gastro.2010.01.042
- El-Serag HB. Epidemiology of viral hepatitis and hepatocellular carcinoma. Gastroenterology. 2012;142(6):1264-1273. doi:10.1053/j.gastro.2011.12.061
- Hosaka T, Suzuki F, Kobayashi M, et al. Long-term entecavir treatment reduces hepatocellular carcinoma incidence in patients with hepatitis B virus infection. Hepatology. 2013;58(1):98-107.
- Hou J, Lim SG, Buti M, et al. Phase 3 results of bepirovirsen treatment for chronic hepatitis B virus infection. N Engl J Med. 2026;394(24):2395-2406. doi:10.1056/NEJMoa2515131. PMID: 42206582
- グラクソ・スミスクライン株式会社(製造販売元). ヒブサーゴ(ベピロビルセン)B型肝炎ウイルス持続感染における機能的治癒を適応として承認取得. 2026年8月24日. https://jp.gsk.com/ja-jp/news/press-releases/20260824-bepirovirsen/
- Weng MK, Doshani M, Khan MA, et al. Universal hepatitis B vaccination in adults aged 19-59 years: updated recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices – United States, 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(13):477-483. doi:10.15585/mmwr.mm7113a1
- 厚生労働省. 日常生活の場でウイルス肝炎の伝播を防止するためのガイドライン. https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/pdf/guideline02.pdf
- 厚生労働省(集団生活の場における肝炎ウイルス感染予防ガイドラインの作成のための研究班). 高齢者施設における肝炎対策のガイドライン. 2014年3月. https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/pdf/guideline04.pdf
- 国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター. これだけは知っておきたいB型肝炎ガイド(医学生・医師・歯学生・歯科医師向け). https://www.kanen.jihs.go.jp/content/020/hepatitis-b-igakusei.pdf
- 国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター. 肝炎治療医療費助成制度. https://www.kanen.jihs.go.jp/cont/040/zyosei.html
- 田中純子(研究代表者). 全国規模の肝炎ウイルス感染状況の把握及びウイルス性肝炎eliminationに向けた方策の確立に資する疫学研究 令和5年度総括研究報告書. 厚生労働科学研究費補助金(肝炎等克服政策研究事業). https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202320002A-sokatsu_0.pdf
- 厚生労働省ウェブサイト掲載資料(田中純子). 日本の肝炎対策の取り組みの年表を含む講演資料. https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001583366.pdf
- 福岡県. 肝炎ウイルス陽性者の初回精密検査及び定期検査の助成について. 2026年1月8日更新. https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/jyuushouka.html
- 福岡市. 福岡市肝炎ウイルス陽性者等フォローアップ事業について. https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/hokensho/sonota/kanen/kanenfollowup_1.html
- 福岡市. 2026年度 健診ガイド(B型・C型肝炎ウイルス検査). https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/shika-eiyo/health/kenko-dukuri/kenshingaido.html
- 福岡県. 肝炎医療費助成等の申請窓口(福岡市の方). https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/293264.pdf
- 福岡県肝疾患相談支援センター(久留米大学病院). 医療費助成制度. https://www.fukuoka-kanshikkan.com/patient/subsidy.html
- 厚生労働省. B型肝炎訴訟について(救済対象の方に給付金をお支払いします). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/b-kanen
- 法務省. B型肝炎訴訟. https://www.moj.go.jp/shoumu/shoumukouhou/shoumu01_00032.html
- 厚生労働省. 特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律案(概要). https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/190-16.pdf
- 社会保険診療報酬支払基金. 特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務. https://www.ssk.or.jp/smph/koreisha/kanen/index.html
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療方針を示すものではありません。検査結果の解釈や治療については、主治医にご相談ください。記事の作成にあたり、企業からの資金提供や便宜供与は受けていません。

