2024年9月、パーキンソン病に特化した有料老人ホーム「PDハウス」を全国で展開する株式会社サンウェルズ(金沢市、当時東証プライム上場)について、併設の訪問看護ステーションで過剰な訪問看護と診療報酬の不正請求の疑いがあると報じられました。同社は当初これを否定しましたが、社外の弁護士らによる特別調査委員会が2025年2月に公表した報告書は、ほぼ全ての施設で実態と異なる記録・請求があったと評価し、不正請求額を約28億4,700万円と試算しました。
この記事では、①何が起きたのか ②パーキンソン病の看護は、どこまで必要なのか ③制度のどこに穴があり、国はどう変えたのか ④これから施設を選ぶ人は何を確かめればよいか——を、公表資料にもとづいて整理します。
SECTION 01 結論を先に——この問題の3つの芯
この記事の芯
- 報告書が「不正」と評価したのは、制度の使い方ではなく「記録と実態のずれ」でした数分の訪問を「約30分」と記録し、その場にいない同行者を「複数名」として請求していたこと。制度が用意した枠を使ったこと自体は違法ではありません。
- 「1日3回・2人」を全員の標準にすることは、制度が禁じる「漫然かつ画一的」な訪問に近づきますパーキンソン病は個人差が非常に大きく、必要な看護の量は診断名ではなく、その人の状態で決まります。1日3回の訪問が本当に必要な人もいれば、そうでない人もいます。
- 国は2025〜2026年に、「同じ建物への頻回訪問」の評価を根本から変えました指導要綱の改正(2025年4月)、全国一斉調査(2026年1月)、診療報酬改定(2026年6月)。ホスピス型住宅とよばれる事業の経営モデルは転換点にあります。
SECTION 02 何が起きたのか——公表資料でたどる2年間
まず、いつ何が起きたのかを時系列で整理します。ここに載せたのは、同社の適時開示、東京証券取引所の公表、厚生労働省と学会の公表資料、および主要報道で確認できる事実に限っています。
流れを一言でいえば、報道→否定→自社の調査委員会による認定→財務諸表の訂正→上場審査→制度改正という順番です。会社自身が設置した委員会の報告書が「ほぼ全ての施設で実態と異なる記録・請求があった」と評価した点が、この問題の性格を決めています。外部の告発だけでなく、会社自身の公表資料が事実を確定させているためです。
同社はその後、再発防止策の策定と関係者の処分を公表し、決算説明資料では法令研修・倫理研修の定期実施や運営体制の見直しを進めていると説明しています。2026年3月期は医療保険による売上の低下などで赤字となり、新規開設のペースを大幅に落としたことも公表されています。株式は2026年4月1日付で監理銘柄(審査中)に指定され、同社の開示によれば、2027年3月26日までにスタンダード市場の基準に適合しなければ上場廃止となる可能性があります。
SECTION 03 PDハウスとは何か——「ホスピス型住宅」というしくみ
PDハウスは、パーキンソン病の人を主な入居者とする住宅型有料老人ホームで、同社の公表資料によれば2026年3月末時点で全国56施設が開設されています。このように、末期がんや神経難病など医療の必要度が高い人を主な入居者とし、訪問看護ステーションを併設した高齢者住宅は「ホスピス型住宅」とよばれ、近年急速に増えました。日本医療・病院管理学会の用語解説によれば、2025年10月時点で全国に673施設あり、2024年には約100施設が新設されて新設高齢者住宅の約1割を占めたとされます。国内の緩和ケア病棟が約450であることを考えると、施設数では匹敵する規模です。
ここで大事なのは、このしくみ自体は合法で、必要な人にとっては貴重な受け皿だということです。自宅で介護が続けられず、病院にもいられない難病の人が、医療保険で手厚い看護を受けながら暮らせる場所は、確かに足りていません。日本在宅医療連合学会も、ホスピス型住宅は「自宅や病院、既存の施設などでケアを受けることができない多くの患者の受け皿」であり、質が担保された施設も一定数存在すると述べています。
問題は、このしくみが「訪問を増やすほど医療保険からの収入が増える」構造を1つの建物の中に作ることです。訪問看護の費用の財源は、私たちが払う健康保険料と税金、そして本人の自己負担です。回数・人数・時間が「その人の状態」ではなく「経営の方針」で決まったとき、そして「行っていない時間」や「いない人」が記録に書かれたとき、この構造は公的なお金の流出に変わります。
SECTION 04 パーキンソン病の看護は「診断名」ではなく「状態」で決まる
ここからは医学の話です。「パーキンソン病だから1日3回・2人の看護が要る」という考え方は、医学的に正しいのでしょうか。
パーキンソン病という病気
パーキンソン病は、脳の黒質という場所でドパミンを作る神経細胞が減っていく進行性の病気です。手足のふるえ(静止時振戦)、筋肉のこわばり(筋強剛)、動きが遅く小さくなる(運動緩慢)が3大症状で、進行すると姿勢を保てず転びやすくなります。発症は50〜65歳に多く、高齢になるほど増えます。便秘、嗅覚の低下、睡眠の異常、幻覚、抑うつ、認知機能の低下などの「非運動症状」も重要です。指定難病(告示番号6)に指定されており、受給者証を持つ人の数が最も多い疾患のひとつです。
看護の観点でとくに大切なのは、進行期の1日は平坦ではないということです。主役の薬であるL-ドパは効いている時間が短く、進行すると効き目が切れる「ウェアリング・オフ」が起こります。効いている時間(オン)は歩けるのに、切れた時間(オフ)はすくみ足で一歩も出ない——同じ人が1日のうちで別人のように変わります。だから服薬の時刻が生活の骨格になり、オフの時間帯に転倒や誤嚥が起きやすくなります。嚥下障害から起こる誤嚥性肺炎は、この病気の人の命を奪う主要な原因です。
図3のように、パーキンソン病がヤール3以上かつ生活機能障害度Ⅱ度以上になると「別表第七」に入り、訪問看護は介護保険でなく医療保険となって、週4日以上・1日複数回・複数名の枠が開きます。この枠は、進行期の患者さんを在宅で支えるために国が用意したものです。しかし枠が開くことは「できる」であって「しなければならない」ではありません。
頻回・複数名の訪問に医学的な根拠がある場面、ない場面
| 場面 | 看護が担うこと | 頻回・複数名の根拠 |
|---|---|---|
| 服薬時刻とオフの時間帯 | 時刻どおりの服薬確認、オフ時のすくみ・転倒リスクの観察、服薬時刻の組み直しを医師に提案 | 根拠になりうる 服薬回数が多い人ほど訪問時刻の設計が重要 |
| 食事と嚥下 | 食形態・姿勢・とろみの調整、むせと発熱の観察、口腔ケア | 根拠になりうる 誤嚥性肺炎の既往や体重減少がある人 |
| 薬の調整期・退院直後 | 効き目と副作用(幻覚・血圧低下・ジスキネジア)の観察と報告 | 根拠になりうる 期間限定。安定したら減らす |
| 終末期 | 呼吸・苦痛の緩和、家族の支援、看取り | 根拠になりうる |
| 移乗・清拭・排泄介助で体格や拘縮のため1人では危険 | 2人での介助、褥瘡予防 | 複数名の要件になりうる 「身体的理由」+本人・家族の同意が制度上の要件 |
| 症状が安定している時期の定時訪問 | バイタル測定、状態確認 | 一律の1日3回・2人の根拠にはならない |
| 夜間、眠っている人の様子を確認する | 見守り。センサーや介護職の巡視で足りることが多い | 訪問看護の「実施」とは認められない 2〜3分の確認や画面確認は看護の実施ではない |
表1 パーキンソン病の在宅看護で、頻回訪問・複数名訪問に医学的な根拠がある場面とない場面(当院の整理。制度上の要件は厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」による)
つまり、パーキンソン病の看護には「診断名だけで一律に決められる回数」は存在しません。同じヤール3の人でも、オフの時間が長い人と短い人、誤嚥を繰り返す人と食事が安定している人では、必要な訪問の時刻も回数も違います。日本神経学会の「パーキンソン病診療ガイドライン2018」も、多職種によるリハビリテーションや個別の症状に応じた対応を重視しており、「1日3回の訪問看護」のような一律の量を定めてはいません。パーキンソン病専門看護師の効果を検証した英国の大規模なランダム化比較試験(Jarman ら, BMJ 2002)では、看護師の関与で患者さんの主観的な健康感は改善し費用も増えなかった一方、客観的な健康状態の指標には差がありませんでした。看護の価値は「回数」ではなく「その人の生活に合わせた設計」にある、というのが医学の側からみた結論です。
SECTION 05 報告書が指摘したことを、3つの層に分けて読む
同社が公表した特別調査委員会の報告書(2025年2月7日)が指摘した内容は、性格の異なる3つの層に分けると理解しやすくなります。
層A:記録と実態の不一致——報告書が「不正」と評価した中身
報告書によれば、2024年9月時点の全42施設のほとんどで、訪問が数分以内で終わったにもかかわらず約30分の訪問をしたとの記録が作られ、その分の診療報酬が請求されていました。就寝中の入居者を2〜3分確認したり、センサーの画面で睡眠状況を見たりしただけのケースもあったと報じられています(北陸中日新聞2025年2月8日)。また、同行者がいないのに複数名で訪問したとして加算を請求していた事例もありました。報告書はこの2類型を不正請求と評価し、その額を約28億4,700万円と試算しました。報道によれば、該当する訪問は約17万件にのぼります(JBpress 2025年5月23日)。
この金額の大きさを別の数字と比べてみます。厚生労働省の公表によれば、令和6年度に全国の保険医療機関等(病院・診療所・薬局など全て)から指導・監査等で返還を求めた額は約48億5千万円でした。1社の訪問看護事業だけの試算額が、その半分を超えています。
層B:一律の方針——「1日3回・複数名」を標準にしたこと
報告書は、各施設の売上高目標が1日3回・複数名で訪問しなければ達成できない水準に設定されていたこと、事例や時間帯によっては複数回・複数名の訪問は必要ないという認識が十分に広がっていなかったことを指摘しています(日本経済新聞2025年2月7日)。一方で報告書は、同社の役員が「1日3回及び複数名訪問はあくまで標準的な方針であり、必要性が認められない場合や同意が得られない場合にまで強いる考えはなかった」と説明したことも記載しています。この層は、報告書の不正額の試算には含まれていません。
ただ、制度の側からみると、この層も無関係ではありません。厚生労働省の算定留意事項は、訪問看護は「利用者の心身の状況等に応じて妥当適切に行い、漫然かつ画一的なものとならないよう」実施すべきで、「心身の状況等を踏まえずに一律に指定訪問看護の日数、回数、実施時間及び人数を定めること」は認められない、と明記しています(2026年6月改定で表現が明確化)。全員に同じ回数・人数を当てはめる方針は、この原則と緊張関係にあります。
層C:事業の構造——ホスピス型住宅に共通する論点
層Cは、同社に限らず、ホスピス型住宅とよばれる事業に共通する構造の問題です。この点を数字で示したのが、次の学会調査です。
SECTION 06 なぜ長く続いたのか——制度側にあった3つの穴
2020年度の改定に伴う減収を補うために訪問看護の人員配置を変えた、という経営会議の議論が報告書に紹介されていると報じられています(JBpress)。つまり問題は数年にわたっていた可能性があります。なぜ長く続いたのか。制度の側に3つの穴がありました。
- 穴1:同じ建物への訪問が、自宅への訪問とほぼ同じ単価で評価されていた自宅を1軒ずつ回る訪問看護と、廊下を挟んだ隣の部屋へ行く訪問看護では、移動も準備も手間が違います。ところが改定前の「1日3回以上」の加算は、同じ建物に3人以上いても7,200円で、50人いても同じでした。建物内で回数を増やすほど収益が伸びる設計だったのです。
- 穴2:訪問回数を決める主治医が、施設と対等ではなかった医療保険の訪問看護は主治医の指示書があって初めて始まりますが、回数や人数は指示書ではなく訪問看護計画で決まります。そして主治医は施設側が紹介し、変えることもできます。学会調査では、施設側から虚偽の病名や過剰な訪問の記載を求められた医師が40.0%、応じないと主治医を変更すると圧力を受けた医師が59.3%にのぼりました。
- 穴3:訪問看護ステーションへの指導・監査が、広域事業者を想定していなかった指導・監査は原則として地方厚生局と都道府県が地域ごとに行います。複数の都道府県にまたがる法人が同じ方針で運営していても、地域ごとの指導では全体像が見えにくい構造でした。2025年4月の指導要綱改正で、厚生労働省本省が加わる「共同指導」と、請求書1件あたりの平均額が高いステーションを個別指導の対象に選ぶ基準が新設されたのは、この穴への直接の対応です。
図5は日本在宅医療連合学会が2025年12月1日に公表した調査で、ホスピス型住宅一般について医師493名が答えたものです。同社の施設だけを対象にした調査ではありません。学会自身が回収率の低さ(14.5%)を限界として明記していますが、「外部の訪問看護が原則使えない」85.9%、「一律に複数回訪問」57.1%という数字は、層Cの構造が業界に広く存在することを示しています。学会はこれを「構造的な問題であり、一主治医の努力で解決できるような問題ではなくなっている」と評価し、制度の再設計を求めました。
SECTION 07 国はどう変えたのか——2025年4月から2026年6月までの対策
厚生労働大臣は2025年2月12日の会見で、不正請求の疑いがある場合は地方厚生局による指導監査を行い、確認されれば厳正に対処すると述べました。その後の対策は、指導(2025年4月)、調査(2026年1月)、報酬の設計変更(2026年6月)の3段階で進みました。とくに2026年6月1日施行の令和8年度診療報酬改定は、ホスピス型住宅の経営モデルを根本から変えるものです。
| 項目 | 改定前(〜2026年5月) | 改定後(2026年6月〜) |
|---|---|---|
| 訪問時間の扱い | 30分〜1時間30分程度が標準(通知) | 同一建物の訪問看護基本療養費(Ⅱ)等は20分を下回るものは算定できないと明記。標準未満の訪問が頻繁なら「訪問看護を実施したとは認められない」 |
| 記録 | 訪問時間の概要を記録 | 訪問看護記録書に実際の開始時刻と終了時刻、訪問人数を記録し保管。事業者に記録の整備と2年間保存を義務づけ |
| 一律の回数・人数 | 「漫然かつ画一的」の禁止(運営基準) | 心身の状況を踏まえず一律に日数・回数・時間・人数を定めることは認められないと留意事項に明記 |
| 「同一建物」の範囲 | 1つの建物 | 同一敷地内の建物も同一建物とみなす |
| 同じ建物の人数による評価 | 「1〜2人/3人以上」の2区分 | 「1〜2人/3〜9人/10〜19人/20〜49人/50人以上」の5区分+月内の訪問日数で細分化。基本療養費・複数名加算・難病等複数回加算・夜間早朝加算に適用 |
| 1日3回以上の加算 | 3人以上でも7,200円 | 50人以上の建物では3,000〜4,100円(図6) |
| 包括型訪問看護療養費 | なし(出来高のみ) | 新設。併設ステーションが届け出た建物では、別表第七・第八・特別指示の利用者に1日2回以上訪問した場合、1日あたりの定額に。記録書Ⅲを1日ごとに電子で作成し、国の調査への参加が要件 |
| 利益による誘引・誘導 | 明文の規定なし | 運営基準に「経済上の利益の提供による誘引の禁止」「特定の主治医・事業者への誘導の禁止」を新設。高齢者向け住まいの事業者からの金品等の収受を禁止。医療機関側の療養担当規則にも同趣旨を新設 |
| 指導・監査 | 地方厚生局と都道府県 | 2025年4月3日の要綱改正で、広域事業者への厚労省本省を含む共同指導と、1件あたり平均額が高いステーションを個別指導に選ぶ基準を新設。2026年1月から全国一斉調査(報道) |
表2 令和8年度診療報酬改定と関連する対策の主な内容(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」令和8年3月10日版、保発0403第1号〈令和7年4月3日〉、共同通信2025年12月21日)
図6が示すように、「同じ建物で、多くの人に、1日3回」というモデルは報酬の面で成り立ちにくくなりました。一方で、この改定は「減額だけ」ではない点にも触れておきます。包括型訪問看護療養費には、1日の訪問時間が90分以上の区分(1万3,450〜1万5,510円)が設けられ、24時間体制で本当に頻回の看護が必要な人への評価は残されています。「必要な人には手厚く、一律には払わない」という方向に設計が変わった、と読むのが正確です。
SECTION 08 施設を選ぶとき、入っているとき——患者と家族が確かめたい8つのこと
ホスピス型住宅そのものを避ける必要はありません。大切なのは、「訪問看護の回数と人数が、誰の何のために決まっているか」を自分で確かめられることです。
- 外部の訪問看護ステーションや主治医を選べるか、見学のときに聞く学会調査では85.9%の医師が「原則として外部のステーションは使えない」と答えています。2026年6月からは、住まいの事業者と訪問看護事業者のあいだで紹介の対価として金品をやりとりすることが禁止されました。ただし「選べるか」は、制度ではなく自分で確認するしかありません。
- 訪問看護計画書と報告書の写しを受け取る訪問看護計画書は本人・家族に説明して同意を得るもの、報告書は月1回主治医に出すものです。学会調査では、報告書の内容が「概ね定型文」と答えた医師が43.8%ありました。個別の目標と評価が書かれているかを見てください。
- 「1日3回」「2人」の理由を、その人の状態で説明してもらう複数名訪問は「身体的理由で1人では困難」などの要件と、本人または家族の同意が必要です。同意書に署名する前に、なぜ2人が必要なのかを聞いてください。表1のような理由が説明できないなら、その回数・人数は「方針」で決まっている可能性があります。
- 訪問看護記録書に、実際の開始・終了時刻が書かれているか2026年6月から、実際の開始時刻と終了時刻の記録が明確に求められています。家族が記録の閲覧を求めることは可能です。
- 利用者負担の請求書と、難病医療費助成の上限を照らし合わせる訪問看護療養費の利用者負担の請求書には、訪問回数や加算が載ります。難病医療費助成の受給者証があれば、自己負担は所得に応じた月額上限までです。上限に達している場合、本人の負担は増えませんが、その上に積まれた請求は全て公費と保険料から支払われています。
- 夜間の「見守り」が訪問看護として請求されていないか眠っている人の様子を数分見ることや、センサーの画面を確認することは、施設としては大切な見守りですが、訪問看護の「実施」とは認められません。夜間の訪問看護が請求されている場合、実際に何をしたかを聞いてください。
- 主治医が交代した経緯を尋ねる学会調査では、施設の要求に応じない医師が主治医を外されたケースが報告されています。主治医の交代が施設側の都合で起きていないか、理由を聞いておく価値があります。
- 疑問があれば、相談窓口を使う請求に疑問があれば、各地方厚生局(福岡県なら九州厚生局)に情報提供できます。療養生活の相談は福岡県・福岡市難病相談支援センター(難病相談 092-643-8292/療養生活 092-643-1379)、高齢者の総合相談は各区のいきいきセンターふくおかへ。
「回数」を先に決めた瞬間に、看護は看護でなくなります
- 当法人も訪問看護ステーションを運営する当事者ですだからこそ、この問題を「悪い会社の話」で終わらせたくありません。別表第七の枠は、進行期の難病の人を在宅で支えるために国が用意した枠です。信頼が壊れれば、本当に必要な人の枠まで削られます。2026年の改定で「1日3回以上」の加算が下がったことは、必要な人にとっては痛みでもあります。
- パーキンソン病では、回数より「訪問する時刻」を先に決めます同じヤール3の人でも、オンとオフで別人になります。服薬の時刻に合わせて訪問し、効き目が切れる時間帯に転倒と誤嚥を防ぐ——これが訪問の設計の出発点です。1日1回で足りる人もいれば、薬の調整期には1日3回が必要な人もいます。回数は結果であって、目標ではありません。
- 「訪問看護はどこも同じ」ではありません全国には2万か所を超える訪問看護ステーションがあり、その大多数は一人ひとりの計画で動いています。この問題で訪問看護全体への信頼が下がることを、私たちは最も心配しています。疑問があれば、記録を見せてほしいと言ってください。見せられる記録を作ることが、私たちの仕事の一部です。
SECTION 09 用語の早見表——この記事に出てきた制度のことば
| ことば | 意味 |
|---|---|
| 別表第七 | 末期がん、パーキンソン病関連疾患、多系統萎縮症、ALSなど、厚生労働大臣が定める疾病等のリスト。該当すると訪問看護が医療保険となり、週4日以上・1日複数回・複数名の枠が開く |
| 別表第八 | 在宅酸素、気管カニューレ、真皮を超える褥瘡など、特別な管理を要する状態のリスト。週4日以上の訪問と特別管理加算の根拠 |
| 特別訪問看護指示書 | 急性増悪や終末期などに主治医が交付し、14日間、週4日以上の医療保険の訪問看護を可能にする指示書 |
| 難病等複数回訪問加算 | 別表第七・第八・特別指示の利用者に1日2回または3回以上訪問したときの加算。2026年6月から同一建物内の人数で5区分 |
| 複数名訪問看護加算 | 看護師等が2人以上で同時に訪問したときの加算。身体的理由などの要件と本人・家族の同意が必要。同行者がいないのに算定すれば不正請求 |
| 同一建物居住者 | 同じ建物(2026年6月からは同一敷地内の建物を含む)に住む利用者。人数と日数に応じて訪問看護の単価が下がる |
| 包括型訪問看護療養費 | 2026年6月新設。高齢者向け住まいに併設・隣接するステーションが、その建物の別表第七等の利用者に1日2回以上訪問した場合の1日単位の定額 |
| 訪問看護計画書・報告書 | 計画書は本人・家族に説明し同意を得る文書、報告書は月1回主治医に提出する文書。押印欄は2026年6月に廃止 |
| 訪問看護記録書 | 訪問ごとに作る記録。実際の開始・終了時刻と訪問人数の記載が求められ、2年間保存 |
| 指導・監査 | 地方厚生局と都道府県が行う、請求の適正さの確認。不正が確認されると返還、加算金(返還額の40%)、指定取消などの処分がありうる |
| 監理銘柄(審査中) | 上場廃止のおそれがある株式を投資家に注意喚起するために東証が指定する区分。ケアの提供と直接の関係はない |
| ホスピス型住宅 | 法律上の定義はない通称。末期がんや難病の人を主な入居者とし、訪問看護ステーションを併設した住宅型有料老人ホーム・サ高住 |
SECTION 10 よくある質問
報告書が指摘したのは主に請求と記録の問題で、看護の質そのものを直接評価したものではありません。慌てて退去する必要はありません。同社は再発防止策を公表し、運営体制を見直していると説明しています。まずはSECTION 08の8項目、とくに訪問看護計画書の写し、複数名訪問の理由、記録の時刻を確認してください。説明が得られない、納得できないという場合に、主治医やケアマネジャー、難病相談支援センターに相談するのが順番です。
指導・監査で返還が確定した場合、保険者(健康保険組合や市町村など)への返還とあわせて、利用者が支払った自己負担分も利用者に返す扱いになるのが通例です。ただし本稿執筆時点で、同社の返還額が行政によって確定・公表されたという情報は確認できていません。難病医療費助成で月額上限に達していた人は、自己負担分がもともと上限で頭打ちになっているため、返る金額は小さいこともあります。過去の請求書は捨てずに保管しておいてください。
一概には言えません。服薬が1日4〜5回あり、オフの時間帯に転倒や誤嚥を繰り返す人、薬を調整している時期の人、終末期の人には、1日3回の訪問に医学的な根拠があります。一方、症状が安定していて服薬も自分でできる人に、毎日3回の訪問が必要になることは多くありません。目安は「その回数を、その人の状態で説明できるか」です。
無駄とは限りません。体格や拘縮で移乗が1人では危険な場合や、強い興奮で安全が確保できない場合には、2人で行くことが本人と看護師の両方を守ります。制度もそのために複数名訪問看護加算を用意しています。ただし、それには本人または家族の同意が要件です。理由の説明なしに同意書だけが出てきたら、理由を聞いてください。
いいえ。全国には2万か所を超える訪問看護ステーションがあり(2026年4月1日時点で20,051か所、全国訪問看護事業協会調べ)、その大多数は利用者ごとの計画で訪問しています。厚生労働省の全国一斉調査も、ホスピス型住宅と精神科訪問看護に重点を置いたものと報じられています。学会調査でも、ケアの質が高い施設が存在することは明記されています。
2026年6月の診療報酬改定で「同じ建物で多くの人に頻回訪問」というモデルは報酬の面で成り立ちにくくなり、包括型への移行や、入居者の受け入れ方針の見直しが進むとみられます。同社も新規開設を大きく減らし、運営体制を見直していると公表しています。一方で、自宅でも病院でもケアを受けられない難病や末期がんの人の受け皿は必要であり、なくなるべきものではありません。「必要な人に、必要な分だけ」の看護が続けられる事業者が残る、という方向に制度は動いています。
SECTION 11 ご利用・採用のご案内
ふくろう訪問クリニック
福岡市早良区|緩和ケア・難病・精神科・認知症の訪問診療
- パーキンソン病などの神経難病、末期がんの在宅療養
- 病院の専門医との「二人主治医」での訪問診療
- 訪問看護の回数・人数は、その方の状態に応じて計画します
通院が難しくなってきた方、施設で受けている医療に疑問がある方のご相談もお受けします。
ふくろう訪問看護リハビリステーション
看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問
- 服薬時刻に合わせた訪問設計、嚥下と転倒の予防
- 神経難病・末期がん・精神科の訪問看護に対応
- 訪問看護記録・計画書・報告書はご家族にも開示します
電話 092-834-8581(平日9:00〜18:00)
「見せられる記録」を一緒に作る仲間を募集しています
人材紹介会社を通さない直接応募がいちばん早く、条件を決める人と直接相談できます。紹介手数料がかからないぶんを、入職祝い金として求職者の方に還元しています。
SECTION 12 参考資料
- 株式会社サンウェルズ「特別調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ」2025年2月7日(適時開示)。同「再発防止策の策定及び関係者の処分に関するお知らせ」2025年2月12日。同「宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入り及び上場契約違約金の徴求に関するお知らせ」2025年5月1日。同「東京証券取引所スタンダード市場への市場区分変更申請(予備申請)に関するお知らせ」2026年3月27日。同「2026年3月期 決算説明資料」2026年5月12日。https://sunwels.jp/ir/
- 日本取引所グループ「宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入り及び上場契約違約金の徴求:(株)サンウェルズ」2025年4月30日。同「監理銘柄(審査中)指定理由の追加:(株)サンウェルズ」2026年4月30日。https://www.jpx.co.jp/news/1023/20260430-12.html
- 日本経済新聞「サンウェルズ、不正請求の調査報告書 看護行為なく加算」2025年2月7日。同「サンウェルズ、上場基準の適合性再審査へ 決算修正で」2025年5月1日。同「サンウェルズの社長『市場区分変更の可能性ある』」2025年5月22日。
- 北陸中日新聞「ほぼ全施設で不正請求 PDハウス運営サンウェルズ 調査委報告書 過剰訪問看護で28億円」2025年2月8日。
- 星良孝「【サンウェルズ不正請求(後編)】17万1546件に達した訪問時間のごまかしなどで28億円を不正請求」JBpress 2025年5月23日。https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/88475
- 共同通信「【独自】訪問看護、1月全国調査へ 厚労省、不正請求問題で」2025年12月21日。
- 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」令和8年3月10日版。https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
- 厚生労働省「『指定訪問看護事業者等の指導及び監査について』の一部改正について」令和7年4月3日 保発0403第1号。
- 厚生労働省「令和6年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況について」。https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000188884_00004.html
- 日本在宅医療連合学会「ホスピス型住宅における訪問看護と訪問診療の連携に関する実態調査報告(速報)」2025年12月1日。https://www.jahcm.org/assets/images/pdf/hospice_report.pdf
- 日本医療・病院管理学会 用語解説「ホスピス型住宅」。https://www.jsha.gr.jp/glossary-keyterm/r6/no-036/
- 全国訪問看護事業協会「令和8年度 訪問看護ステーション数 調査結果」(令和8年4月1日時点)。
- 難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」。https://www.nanbyou.or.jp/entry/314
- 日本神経学会監修『パーキンソン病診療ガイドライン2018』医学書院, 2018.
- Jarman B, Hurwitz B, Cook A, Bajekal M, Lee A. Effects of community based nurses specialising in Parkinson’s disease on health outcome and costs: randomised controlled trial. BMJ. 2002;324(7345):1072-1075. doi:10.1136/bmj.324.7345.1072
- 特掲診療料の施設基準等(平成20年厚生労働省告示第63号)別表第七・別表第八。
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