赤い便秘薬を使い続けてはいけない理由

「赤い便秘薬をください」。訪問診療の現場で、いちばんよく聞く薬の希望のひとつです。赤い糖衣の小さな錠剤、成分名はセンノシド。就寝前に飲むと翌朝すっきり出るので、何年も毎晩飲み続けている方が少なくありません。

先に結論を言うと、この薬は「悪い薬」ではありません。出ないときに1回だけ使う「頓用」なら、いまのガイドラインでも認められた使い方です。問題は毎日飲み続ける使い方のほうにあります。この記事では、2024年に改訂された添付文書、2023年に改訂された日本と米国のガイドライン、そして「腸が黒くなる」「がんになる」という噂の真偽まで、根拠をつけて整理します。

SECTION 01 結論を先に——赤い薬は「非常用」に戻す

  1. 1赤い薬は悪者ではない。悪いのは「毎日」という使い方センノシドは、日本の便通異常症診療ガイドライン2023でも「頓用ないしはごく短期間」の薬として位置づけられ、米国のガイドライン2023でも条件付きで推奨されています。出ないときに1回、という使い方は正解です。ただし添付文書には「長期連用を避けること」とはっきり書かれています。
  2. 2毎日飲むと、腹痛・下痢・脱水・低カリウムが日常になり、原因が置き去りになる「翌朝どっさり」の裏で、おなかは毎日けいれんしています。高齢の方では下痢は便秘より危険で、脱水・転倒・便失禁につながります。そして何より、便秘の原因(薬の副作用、大腸の病気、食事量の減少)を誰も探さなくなります。
  3. 3「腸が黒くなってがんになる」は根拠が弱い。だからこそ、本当の理由で減らす長期連用で大腸の粘膜が黒っぽくなる「大腸メラノーシス」は良性で、やめれば戻ります。大腸がんとの関連は、いちばん新しい統合解析でも統計的に有意ではありませんでした。怖がらせて減らすのではなく、「便を柔らかくする土台の薬」に主役を交代させ、赤い薬は非常用に戻す——これが本記事の提案です。今日から急にやめる必要はありません。

SECTION 02 「赤い便秘薬」の正体——センノシドという薬

医療用では「プルゼニド錠」やその後発品「センノシド錠12mg」が代表で、1錠にセンノシド12mgが入っています。通常は就寝前に1〜2錠(12〜24mg)、強い便秘では1回4錠(48mg)まで増やせる、というのが添付文書の用量です。後発品なら1錠5.5円と安く、市販薬にも「センナ」を名乗る製品が多数あります。

赤い色は糖衣の着色料で、成分そのものの色ではありません。一方で、飲んだあとの尿が黄褐色〜赤色になることがあり、これは代謝物の色です。害はありませんが、血尿と見分けがつきにくいので、受診のときは「赤い便秘薬を飲んでいる」と伝えてください。

図1 「赤い便秘薬」(センノシド)が効くまで 1 生薬センナ 葉やさやに含まれる有効成分が「センノシド」。医療用の錠剤1錠に12mg。錠剤の赤は糖衣の着色で、 成分の色ではありません。 2 胃・小腸 そのままでは吸収も作用もされず、大腸まで届きます。だから飲んでもすぐには効きません。 3 大腸の腸内 細菌 細菌が「レインアンスロン」という物質に変えます。この段階で初めて効く形になります。 4 大腸の壁 壁の神経を刺激して動きを強め、水分の吸収を減らします。効くのは飲んでから8〜12時間後。就寝 前に飲むと翌朝に出るのはこのためです。 浸透圧性下剤(酸化マグネシウムなど)が「便に水を含ませて柔らかくする薬」であるのに対し、センノシドは「大腸を動かす薬」 です。硬い便を柔らかくする力はありません。

図1 センノシドは胃や小腸では効かず、大腸の腸内細菌に変換されてから大腸の壁を刺激します。効き始めまで8〜12時間かかるため就寝前に飲みますが、逆にいえば「今日出ない」のを今すぐ解決する薬ではありません。

図1のいちばん大事な点は最後の注記です。センノシドは大腸を「動かす」薬であって、便を「柔らかくする」薬ではありません。硬い便を無理に動かせば、腹痛が起きるのは当然です。ここが、毎日飲む使い方がつらくなる出発点です。

SECTION 03 なぜ多くの人が「毎日」になってしまうのか

理由は単純で、よく効くからです。就寝前に飲めば翌朝出る、という体験は強く、「これがないと出ない」という気持ちになります。しかも安く、市販でも買え、医師も「出ているならいいか」と続けがちです。

もうひとつの理由は、「毎日出ないと便秘」という思い込みです。日本のガイドラインは便秘を「本来体外に出すべき便が大腸に滞って硬くなり、出しにくい・残る、という状態」として定義しており、回数だけでは決めません。2〜3日に1回でも、柔らかい便が苦痛なく出ていれば便秘ではありません。逆に毎日出ていても、硬くて怒責が必要なら便秘です。

便秘の悩みは年齢とともに増えます。厚生労働省の国民生活基礎調査では、便秘を訴える人の割合は若い世代では女性に多く、高齢になると男女とも大きく増えて差が縮まります。訪問診療の対象となる方は、まさにこの層です。だからこそ、「出た・出ない」の管理を刺激性下剤だけに頼ると、長い年月を毎晩の赤い薬で過ごすことになります。

図2 同じ薬でも「頓用」と「常用」では別物 頓用(出ないときだけ1回) 常用(毎晩・毎日) 飲む頻度 2〜3日出ないときに1回。使わない日のほうが 多い 毎日決まった量。日課になっている 何のために 出ない日の「非常用」。土台の薬や生活の工夫 が主役 これがないと出ない。土台がなく、この薬だけ で押している 日本のガイドラ イン(2023) 「頓用ないしはごく短期間」の使い方として位 置づけ 強い推奨の薬(浸透圧性下剤など)が先。連用 は想定していない 添付文書 用法の範囲内 「連用による耐性の増大等のため効果が減弱し、 薬剤に頼りがちになる」と明記 起きやすいこと 腹痛や下痢は一過性。翌日はもとに戻る 腹痛・下痢の繰り返し、脱水・低カリウム、量 が増える、原因が置き去り

図2 同じセンノシドでも、頓用と常用では位置づけがまったく違います。添付文書の「重要な基本的注意」には、連用による耐性増大・効果減弱・薬剤への依存傾向が明記されています。

SECTION 04 毎日飲み続けると何が起きるか——5つの問題

図3 毎日飲み続けると何が起きるか(5つ) 1 腹痛と下痢 翌朝どっさりの裏で、おなかは無理をしている 毎回起きる 添付文書で腹痛は「5%以上」と最も多い副作用。高齢の方では下痢がそのまま脱水・転倒・便失禁 につながります。 2 脱水と低カリウ 水と一緒にカリウムが抜ける 採血で分かる 利尿薬や腎機能の低下がある方はとくに注意。脱力感・足がつる・不整脈の形で出ます。添付文書は 低カリウム血症の方に大量投与を避けるよう求めています。 3 量が増えていく 「効かなくなった」と言って1錠が2錠、3錠に 見直しのサイン 添付文書は「耐性の増大」を挙げます。医学的には本当の耐性はまれとされ、増えていく多くは「便 が硬い・量が少ない」を刺激だけで押している状態です。 4 原因が置き去り 便秘は病名ではなく「サイン」 いちばん危ない 薬の副作用(痛み止め・精神科の薬・パーキンソン病の薬など)、大腸がん、甲状腺、食事量の減少。 赤い薬で出てしまうと、誰も原因を探さなくなります。 5 気づかない二重 取り 病院の薬+市販薬+健康茶+漢方 お薬手帳で確認 市販のセンナ製剤、ダイエット茶(キャンドルブッシュ)、大黄を含む漢方薬はすべて同じ仲間。合 わせると医療用の何倍にもなることがあります。

図3 常用で起きる5つの問題。1と2は体に起きること、3は薬に起きること、4と5は「誰も見ていない」ことで起きる問題です。

1. 腹痛と下痢は「副作用」ではなく「作用」そのもの

センノシドの添付文書で最も頻度が高い副作用は腹痛(5%以上)で、下痢・吐き気・腹鳴が続きます。刺激性下剤は大腸を強く動かして出す薬なので、腹痛は薬が効いている証拠でもあります。週に1回なら我慢できても、毎晩となると話は別です。夜中の腹痛で眠れない、朝食前にトイレから離れられない、という訴えはとても多いです。

高齢の方、寝たきりの方では、下痢は便秘より危険です。トイレに間に合わず便失禁になれば皮膚がただれ、褥瘡(床ずれ)の入り口になります。急いでトイレに向かって転倒する事故も、下剤が効きすぎた朝に起きます。

2. 脱水と低カリウム血症——採血で見つかる

下痢は水だけでなくカリウムも失います。添付文書は「電解質失調(特に低カリウム血症)のある患者」に大量投与を避けるよう求め、副作用にも低カリウム血症・低ナトリウム血症・脱水を挙げています。利尿薬を飲んでいる方、腎機能が落ちている方、食事量が少ない方では、赤い薬の常用が採血の異常につながることがあります。症状は脱力感、足がつる、動悸・不整脈です。

3. 「効かなくなった」と量が増えていく

添付文書は「連用による耐性の増大等のため効果が減弱し、薬剤に頼りがちになる」と書いています。ここは正直に補足します。専門家の総説(Müller-Lissnerら、2005年)は、推奨量の刺激性下剤で腸が傷むことは考えにくく、本当の意味の耐性はまれで、やめたあとの「反動の便秘」も証拠がない、と結論しています。

ではなぜ現実には1錠が2錠、3錠に増えていくのか。多くの場合、それは薬に慣れたのではなく、「便が硬い」「便の量が少ない」「出す力が弱い」という本当の問題を、刺激だけで押しているからです。腸を動かしても中身が硬ければ出ません。土台を入れずに2階だけ増築しているようなもので、ここに気づかないと増量は止まりません。

4. 便秘の原因が置き去りになる——いちばん危ない問題

便秘は病名ではなく症状です。赤い薬で「出てしまう」と、便秘の裏にある原因を誰も探さなくなります。痛み止めの医療用麻薬、抗コリン作用のある精神科の薬やパーキンソン病の薬、鉄剤、カルシウム拮抗薬。あるいは大腸がん、甲状腺機能低下症、糖尿病。食事量が減った、寝たきりになった。これらはすべて、「出す薬」ではなく「原因への対処」が必要です(SECTION 08で詳しく扱います)。

5. 気づかない「二重取り」——市販薬・健康茶・漢方

センノシドを含むのは病院の薬だけではありません。市販の「センナ錠」「センナ茶」、ダイエット目的の健康茶に入っている「キャンドルブッシュ(ハネセンナ)」、そして漢方薬の生薬「大黄(だいおう)」。これらはすべて同じアントラキノン系の仲間で、作用も副作用も足し算になります。

行政の注意喚起。国民生活センターは2014年1月23日、キャンドルブッシュを含む健康茶15銘柄を調べ、すべてからセンノシドを検出したと発表しました。約半数の銘柄では、カップ2〜3杯で医療用1回分(12mg)に相当する量になり、5年間で下痢などの健康被害が21件寄せられていました。市販のセンナ製剤の添付文書にも「大量に服用しないこと」「他の下剤と一緒に飲まないこと」が「してはいけないこと」として書かれています。

訪問診療で処方薬を「1錠」に減らしたつもりでも、本人が市販薬や健康茶で補っていることは珍しくありません。お薬手帳に載らないものこそ、確認が必要です。

SECTION 05 「腸が黒くなる」「がんになる」は本当か

センノシドを長く飲むと、大腸の粘膜に色素がたまり、内視鏡で見ると黒っぽく見えることがあります。「大腸メラノーシス」と呼ばれ、添付文書にも「長期連用により発現することがある」と記載されています。この状態をめぐって、2つの噂があります。

噂1「腸が黒くなって動かなくなる」

大腸メラノーシス自体は良性で、症状はなく、薬をやめれば数か月から1年ほどで薄れていきます。「刺激性下剤で腸の神経が壊れて動かなくなる」という古い説は、かつて使われていた別の下剤や、重い便秘の方の手術標本の観察に由来し、いまの推奨量での因果関係は示されていません。前述の総説も「推奨量の刺激性下剤が大腸を傷める可能性は低い」としています。

噂2「がんになる」

こちらは研究が積み重なっています。ドイツの前向き症例対照研究(Nuskoら、2000年)は、大腸がん202人・腺腫114人・対照238人を比べ、アントラキノン系下剤の使用は腺腫でもがんでもオッズ比1.0で、長期使用でも高度のメラノーシスでも危険性は上がりませんでした。2022年の系統的レビューとメタ解析(Lombardiら)は観察研究5本を統合し、オッズ比1.41(95%信頼区間0.94〜2.11)で、統計的に有意な関連はないと結論しています。

数字の読み方。「オッズ比1.41」だけを見ると4割増しに見えますが、信頼区間が1をまたいでいる(0.94〜2.11)ので、「増えていない」と「2倍」の両方が否定できない、つまり結論が出ていない状態です。しかも元になった研究はすべて観察研究で、便秘そのものが大腸がんの検査を受けるきっかけになる(がんが先で便秘が後)という逆向きの説明も残ります。「がんにならない」と言い切れるわけではなく、「がんになるから飲むな」と言える証拠もない、というのが正確な表現です。

では、内視鏡で黒くなっていたらどう受け止めればよいか。それは「長い期間、赤い薬を飲んできた」という記録です。がんの前兆ではなく、便秘の原因を見直す機会と考えてください。医師にとっても、その方の便秘治療が刺激性下剤頼みになっている、という大事な手がかりになります。

SECTION 06 ガイドラインと添付文書は何と言っているか

日本:便通異常症診療ガイドライン2023

日本消化管学会が2023年に改訂したガイドラインでは、慢性便秘症の治療薬として「浸透圧性下剤(酸化マグネシウムなどの塩類下剤、ラクツロース、ポリエチレングリコール)」「上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチド)」「胆汁酸トランスポーター阻害薬(エロビキシバット)」が強い推奨(エビデンスレベルA)とされ、治療の流れは「生活習慣の改善→浸透圧性下剤→上皮機能変容薬または胆汁酸トランスポーター阻害薬」と整理されました。刺激性下剤については、頓用またはごく短期間の使用が推奨されています。

米国:AGA/ACG共同ガイドライン2023

米国の2つの消化器学会(AGAとACG)が2023年5月に共同発表したガイドラインは、初めてセンナを根拠のある治療として取り上げ、「条件付き推奨」としました。ただし注記があります。臨床試験は4週間のもので、より長期の使用は「おそらく適切」だが、耐性と副作用を理解するためのデータが必要、試験で使われた量は実際より多いので少量から始めよ、というものです。つまり、「長期に毎日飲んで安全」というデータは、推奨した米国でも存在しません。

添付文書(2024年1月改訂)

センノシド錠の添付文書は「重要な基本的注意」として「連用による耐性の増大等のため効果が減弱し、薬剤に頼りがちになることがあるので長期連用を避けること」と記載しています。禁忌には急性腹症、けいれん性便秘、重症の硬結便(硬い便が詰まっている状態)があり、低カリウム血症のある方には大量投与を避けるよう求めています。市販のセンナ製剤も「大量に服用しない」「他の下剤と併用しない」が「してはいけないこと」です。

図4 便秘薬は「2階建て」で考える 2階=非常用(レスキュー) 2〜3日出ないときに1回だけ センノシド(赤い薬) ピコスルファート(液) ビサコジル坐薬 浣腸 土台が効いていれば出番は減っていきます。使った回数を数えておくと、土台の薬が足りているかの目安になります。 土台が弱いと、2階を毎日使うことになる 1階=土台(毎日) 便を柔らかく・出しやすくする 酸化マグネシウム ポリエチレングリコール(PEG) ラクツロース ルビプロストン リナクロチド エロビキシバット 食事量・水分 食物繊維 朝食後のトイレ習慣 足台で前かがみ 日本のガイドライン2023で「強い推奨」なのはこの階の薬です。腎臓が弱い方の酸化マグネシウムは血液検査で見張りながら使い ます。

図4 ガイドラインが「強い推奨」とするのは1階の薬です。2階(刺激性下剤)は非常用で、1階がきちんと効いていれば出番は減ります。毎日2階を使っているなら、1階が足りていないサインです。

図4の考え方を一言でいえば、「便を柔らかくする薬を毎日、腸を動かす薬は非常用に」です。当院のコラム「下剤の種類と選び方」で各薬の特徴を詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

SECTION 07 「土台」の薬をどう選ぶか

1階の薬にはそれぞれ得意・不得意があります。ここでは訪問診療でよく使う順に、要点だけ整理します。

特徴と注意点
酸化マグネシウム最も使われる浸透圧性下剤。便に水を含ませて柔らかくする。安価で調節しやすい。腎機能が落ちた方や高齢の方では高マグネシウム血症に注意し、長期に使う場合は血液検査で見張る。一部の抗菌薬・骨粗鬆症の薬と飲み合わせに注意。
ポリエチレングリコール(PEG)2018年に国内で使えるようになった浸透圧性下剤。水に溶かして飲む。電解質への影響が少なく、腎機能が悪い方にも使いやすい。溶かす手間があるので介護者の協力が要る。
ラクツロース糖類下剤。腸内細菌に分解されて便を柔らかくする。甘いシロップ・ゼリーがあり、のみ込みが悪い方にも使いやすい。おなかの張りが出ることがある。
ルビプロストン/リナクロチド腸の粘膜から水分を出させる薬(上皮機能変容薬)。浸透圧性下剤で不十分なときの次の一手。ルビプロストンは吐き気、リナクロチドは下痢が出ることがあり、量で調節する。
エロビキシバット胆汁酸の再吸収を抑え、大腸に届く胆汁酸を増やして便を柔らかくし、動きも良くする。食前に飲む。腹痛が出ることがある。
センノシド/ピコスルファート刺激性下剤。土台の薬を入れても2〜3日出ないときの非常用。ピコスルファートは液剤で滴数で調節でき、効き方がややマイルド。

土台の薬を入れたあとに大事なのは、出た便の硬さを見ることです。バナナ状〜柔らかめが目標で、コロコロの硬い便なら土台が足りず、水様便なら多すぎます。この調節ができれば、赤い薬の出番は自然に減っていきます。

SECTION 08 赤い薬の前に確かめたい「便秘の裏側」

図5 赤い薬の前に確かめたい「便秘の裏側」 薬の副作用 便秘を起こす薬を飲んでいないか 薬を先に見直す 医療用麻薬(痛み止め)、抗コリン作用のある薬(一部の精神科の薬・過活動膀胱の薬・パーキンソ ン病の薬)、鉄剤、カルシウム拮抗薬、抗がん剤の一部。 病気 便秘が最初のサインになる病気 検査で確かめる 大腸がん(便が細い・血が混じる・急に便通が変わった)、甲状腺機能低下症、糖尿病、パーキンソ ン病、脳卒中後、うつ状態。 生活の変化 食べる量・動く量が減っていないか 生活を整える 食事量が減ると便の材料が減ります。水分不足、寝たきり、トイレを我慢する環境、義歯が合わず繊 維の多い食事がとれない、なども。 詰まっている 「下痢」に見えて、実は便が栓になっている 診察で分かる 直腸に硬い便の栓ができると、すき間から水様便だけが漏れます(溢流性下痢)。ここに赤い薬を足 すと悪化します。直腸診や腹部の診察で分かります。

図5 便秘は症状であって病名ではありません。刺激性下剤で「出す」前に、4つの裏側を確かめます。とくにいちばん下の「詰まっている」は、下痢に見えるため赤い薬が足されがちで、悪化させます。

薬の副作用としての便秘

当院が診ている方に多いのが、薬による便秘です。がんの痛みに使う医療用麻薬は、腸の動きを止める作用そのものが便秘を起こします。この便秘には、原因を直接断つ薬(ナルデメジン)があり、赤い薬を増やすより理にかなっています。精神科の薬の一部、過活動膀胱の薬、パーキンソン病の薬などの抗コリン作用も腸の動きを落とします。とくに統合失調症の治療薬クロザピンでは、便秘を放置すると麻痺性イレウス(腸が動かなくなる)に進むことがあり、便秘の管理そのものが治療の一部です。

病気のサインとしての便秘

急に便通が変わった、便が細くなった、血が混じる、体重が減った、貧血を指摘された——こうした変化を伴う便秘は、大腸がんの可能性を必ず確かめます。50歳を過ぎて初めて便秘になった場合も同様です。甲状腺機能低下症、糖尿病による自律神経障害、パーキンソン病、脳卒中後も便秘を起こします。これらは採血や画像で分かります。

「下痢」に見えて詰まっている

寝たきりの方で見落としやすいのが糞便塞栓(宿便)です。直腸に硬い便の栓ができると、そのすき間から水様便だけが漏れ出て「下痢」に見えます(溢流性下痢)。ここで下痢止めを出したり、逆に「便が出ていないから」と赤い薬を足したりすると、いずれも悪化します。腹部の診察と直腸診で分かり、対処は薬ではなく摘便や浣腸です。訪問看護が定期的に入っている方では、看護師がこの状態に最初に気づくことがよくあります。

SECTION 09 「毎日」から「非常用」に戻す手順

10年毎晩飲んできた薬を、明日から急にやめる必要はありません。急にやめると本当に出なくなり、「やっぱりこの薬がないとだめだ」という体験だけが残ります。手順は、土台を先に入れて、赤い薬を後から格下げする、の順です。

図6 赤い薬を「毎日」から「非常用」に戻す4ステップ STEP 1 重なりと原因を洗い出す(受診時) 初日 お薬手帳・市販薬・健康茶・漢方をすべて持参。便秘を起こす薬がないか、採血(カリウム・マグネシウ ム・甲状腺)と腹部の診察。 STEP 2 土台の薬を先に入れる(1〜2週間) 1〜2週 酸化マグネシウムやPEGなど「便を柔らかくする薬」を毎日に据えます。この間、赤い薬はまだ減らしませ ん。急にやめると詰まります。 STEP 3 赤い薬を「非常用」に格下げする(2〜4週間) 2〜4週 毎日→1日おき→2〜3日出ないときだけ、の順に。量を減らすより「飲まない日」を作るほうがうまくいき ます。 STEP 4 排便日誌で見直す(3週間ごと) 3週ごと 出た日・便の硬さ・赤い薬を使った回数を記録。「2〜3日に1回でも柔らかく快適」なら便秘ではありませ ん。使った回数が月に数回まで減れば成功です。 医療用麻薬を使っている方、腸の手術歴がある方、麻痺性イレウスを起こしやすい薬を飲んでいる方は、この手順を自己判断で進め ず、必ず主治医と一緒に行ってください。

図6 STEP 2で土台を入れる間は、赤い薬をまだ減らしません。STEP 3では量を減らすより「飲まない日」を作ります。1か月半から2か月で、月に数回の非常用まで戻る方が多いです。

排便日誌のつけ方

  • 出た日に○をつける。出なかった日は空欄。
  • 便の硬さを3段階で(コロコロ/バナナ/泥・水)。ブリストル便形状スケールという7段階の絵があり、訪問看護がお渡しできます。
  • 赤い薬を使った日に「赤」と書く。月に何回「赤」がついたかが、いちばん大事な指標です。
  • 腹痛・便失禁・トイレでの転倒があった日も記録する。

目標は「毎日出ること」ではなく、「2〜3日に1回でも、柔らかい便が苦痛なく出て、赤い薬は月に数回まで」です。ここまで来れば、赤い薬は本来の役目に戻ったといえます。

自己判断で進めないでほしい方。医療用麻薬を使っている方、腸の手術歴やイレウスの既往がある方、クロザピンなど腸の動きを強く落とす薬を飲んでいる方、パーキンソン病で便秘が薬の効きに影響する方は、この手順を主治医と一緒に行ってください。急な変更が体調の急変につながることがあります。

SECTION 10 制度の側から見ると——「残薬」と「重複」を誰が見るか

便秘薬は、処方薬・市販薬・健康食品の3つの入口があり、しかも本人が「便秘薬」と思っていない健康茶や漢方まで含まれます。全体像を見る人がいないと、二重取りも常用も止まりません。

2026年6月1日施行の令和8年度診療報酬改定では、訪問看護に対して利用者の服薬状況や残薬の把握と、必要に応じた薬局への情報提供が明記されました。「赤い薬が何錠残っているか」「市販薬を買っていないか」を訪問のたびに確かめることは、いまや制度上も訪問看護の仕事です。かかりつけ薬局の薬剤師も、お薬手帳をもとに市販薬・健康食品との重なりを確認できます。

市販薬については、センナを含む便秘薬は「指定第2類医薬品」で、薬剤師または登録販売者が情報提供する区分です。購入時に「病院で便秘薬をもらっている」「健康茶を飲んでいる」と一言伝えるだけで、重複は防げます。

当院の視点——「赤い薬をやめる」ではなく「赤い薬に頼らない土台をつくる」

ふくろう訪問クリニック・ふくろう訪問看護リハビリステーションが在宅で大事にしていること

  1. 1「やめましょう」から始めない10年飲んできた薬を否定されると、患者さんは話を閉じてしまいます。私たちが最初にすることは、便を柔らかくする土台の薬を足すことで、赤い薬はしばらくそのままです。土台が効いてくると、赤い薬の出番は本人が気づくより先に減っていきます。
  2. 2寝たきり・認知症の方では、下痢は便秘より危ないと考える便失禁は皮膚のただれと褥瘡の入り口で、トイレに急いで転倒する事故も下剤が効きすぎた朝に起きます。だから「翌朝どっさり」より「毎日少しずつ・柔らかく」を目標にします。認知症の方は腹痛を言葉で訴えられず、落ち着きのなさや不機嫌として現れることも覚えておいてください。
  3. 3緩和ケア・精神科では、便秘を起こしている薬を先に見る医療用麻薬の便秘にはナルデメジン、抗コリン作用の強い薬は減らせないか、クロザピンなら麻痺性イレウスの予防として便秘管理を治療の一部に組み込む。赤い薬を増やす前に、原因の側に手を入れます。
  4. 4訪問看護と一緒に「赤い薬を使った回数」を指標にする排便日誌に「赤」の印をつけ、月に何回使ったかを診察で共有します。この回数が減っていくことが、便秘治療がうまくいっている何よりの証拠です。残薬と市販薬の確認は、訪問のたびに看護師が行います。

SECTION 11 場面別早見表

こんなときどう考える・どうする
2〜3日出なくて赤い薬を1錠飲んだ。翌朝出た正しい使い方です。この使い方なら続けて問題ありません。月に何回使ったかだけ数えておきましょう。
毎晩1錠が習慣になって5年以上やめる前に「土台」の薬(酸化マグネシウムなど)を相談してください。土台が効けば赤い薬は自然に減ります。
1錠では効かなくなり、2錠・3錠に増えた薬に慣れたのではなく、便が硬い・量が少ないサインです。増やさず、便を柔らかくする薬に切り替える相談を。
飲んだ朝は必ず腹痛と下痢になる薬が強すぎます。半分に減らす、液剤(ピコスルファート)に替える、土台の薬を入れる、のいずれかを主治医に相談。
足がつる、だるい、動悸がする低カリウム血症・脱水の可能性。利尿薬を飲んでいる方はとくに、採血を受けてください。
尿が赤っぽい・茶色いセンノシドの代謝物の色で、害はありません。ただし血尿との区別は必要なので、受診時に「赤い便秘薬を飲んでいる」と伝えてください。
病院の薬のほかに市販のセンナ茶や健康茶も飲んでいる同じ成分の二重取りです。すべてを持参して、合計量を主治医か薬剤師に見てもらってください。
内視鏡で「腸が黒くなっている」と言われた良性で、やめれば戻ります。がんの前兆ではありませんが、「長く飲んできた記録」なので、便秘治療を見直す機会にしてください。
急に便通が変わった、便が細い、血が混じる、体重が減った赤い薬で出してしまう前に、大腸の検査を。50歳以降に初めて便秘になった場合も同様です。
寝たきりで、水のような便が少しずつ漏れる便が栓になって漏れている(溢流性下痢)可能性。赤い薬は足さず、訪問看護か医師に腹部の診察を依頼してください。
医療用麻薬を使い始めてから便秘になった原因を直接断つ薬(ナルデメジン)があります。赤い薬を増やす前に主治医に相談を。
認知症の家族が施設で毎晩赤い薬をもらっている施設の看護師・嘱託医に「土台の薬に切り替えられないか」「排便日誌で赤い薬の回数を見てほしい」と伝えてください。

SECTION 12 よくある質問

もう10年、毎晩飲んでいます。今さら減らす意味はありますか?

あります。10年飲んでいるからこそ、腹痛や下痢が「当たり前」になっていて、便秘の原因を誰も見ていない可能性が高いからです。減らす目的は「薬をやめること」ではなく、「柔らかい便が苦痛なく出て、赤い薬の出番が減る」状態にすることです。土台の薬を先に入れれば、無理なく減らせる方がほとんどです。

酸化マグネシウムを出されましたが効きません。赤い薬しか効かないのですが。

酸化マグネシウムは「便を柔らかくする薬」で、飲んだ翌朝に必ず出る薬ではありません。効果が出るまで数日かかり、水分と一緒に飲む必要があります。「効かない」の多くは量が足りないか、期待している効き方が違うかです。また、腎機能や併用薬によっては別の土台(PEG、ラクツロース、エロビキシバットなど)が合うこともあります。「効かない」と感じたら、赤い薬に戻る前に土台の種類と量の調整を相談してください。

市販の便秘薬(ビサコジルやピコスルファート)なら毎日飲んでも大丈夫ですか?

いいえ。ビサコジル(コーラックなど)やピコスルファートも同じ「刺激性下剤」で、毎日飲む使い方は同じ問題を起こします。市販薬の添付文書にも「大量に服用しない」「他の下剤と併用しない」が「してはいけないこと」として書かれています。毎日必要なら、市販薬で自己管理を続けるのではなく受診してください。

便秘を放っておくと大腸がんになると聞きました。だから毎日出しています。

便秘そのものが大腸がんの原因になるという証拠は確立していません。一方で、大腸がんが便秘という形で見つかることはあります。大事なのは「毎日出す」ことではなく、急な便通の変化・便が細い・血が混じる・体重減少といったサインを見逃さないこと、そして年齢に応じた大腸がん検診を受けることです。毎日赤い薬で出していると、かえってこれらのサインが薬にかき消されます。

認知症の母が施設で毎晩赤い薬をもらっています。本人は腹痛を訴えません。

認知症の方は腹痛を言葉にできず、朝の不機嫌・落ち着きのなさ・食事拒否として出ることがあります。また下痢による便失禁は皮膚のただれと褥瘡の入り口です。施設の看護師や嘱託医に「便を柔らかくする土台の薬に切り替えられないか」「排便日誌で赤い薬を使った回数を見てほしい」と伝えてみてください。当院が診ている方であれば、施設と連携して調整します。

赤い薬を飲むと尿が赤くなります。血尿ではありませんか?

センノシドの代謝物が尿を黄褐色〜赤色にすることがあり、それ自体は害がありません。ただ、見た目だけで血尿と区別するのは難しいので、受診のときに「赤い便秘薬を飲んでいる」と伝えたうえで、必要なら尿検査で確かめてもらってください。

SECTION 13 ご利用・採用のご案内

便秘薬の見直しは、診察室で1回話して終わるものではなく、排便日誌を見ながら数週間かけて行うものです。通院が難しくなった方、施設や自宅で便秘薬が長く続いている方は、ご相談ください。

ふくろう訪問クリニック

福岡市早良区の訪問診療(在宅医療)

  • 緩和ケア・難病・精神科・認知症の在宅診療
  • 便秘薬の見直し、薬の重複・残薬の整理
  • 医療用麻薬による便秘、精神科の薬による便秘への対応
  • 24時間対応の往診体制

通院が難しくなった方、施設入所中の方もご相談ください。

https://fukurou.fukuoka.jp/

ふくろう訪問看護リハビリステーション

訪問看護・訪問リハビリ

  • 排便日誌の作成支援、便の硬さと回数の見守り
  • 腹部の観察、摘便・浣腸などの排便ケア
  • 残薬・市販薬・健康食品の重なりの確認
  • 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士によるリハビリ

医療保険・介護保険のどちらで利用できるかもご案内します。

https://nurse-fukurou.jp/

採用のご案内

在宅で「薬を減らす医療」を一緒にやりませんか

紹介会社を通さない直接応募の方には、紹介手数料がかからないぶんを還元する入職祝い金をお渡ししています。

ふくろう訪問クリニック
入職祝い金 20万円直接応募限定

募集職種:医師(常勤・非常勤)/看護師/医療事務

電話:092-407-7337

メール:clinic@fukurou.fukuoka.jp

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ふくろう訪問看護リハビリステーション
入職祝い金 20万円直接応募限定

募集職種:看護師/理学療法士/作業療法士/言語聴覚士(常勤・非常勤)

電話:092-834-8581(平日9:00〜18:00)

メール:nurse@fukurou.fukuoka.jp

求人情報ページを見る

SECTION 14 参考文献・参考資料

  1. 日本消化管学会編. 便通異常症診療ガイドライン2023—慢性便秘症. 南江堂, 2023.
  2. 伊原栄吉, 田中義将, 荻野治栄. 便通異常症診療ガイドライン2023(慢性便秘症・慢性下痢症). 日本内科学会雑誌 2024;113(10):1948-1954. doi:10.2169/naika.113.1948
  3. Chang L, Chey WD, Imdad A, et al. American Gastroenterological Association-American College of Gastroenterology Clinical Practice Guideline: Pharmacological Management of Chronic Idiopathic Constipation. Am J Gastroenterol 2023;118(6):936-954. doi:10.14309/ajg.0000000000002227 PMID:37211380
  4. センノシド錠12mg「サワイ」添付文書(2024年1月改訂). 沢井製薬. / プルゼニド錠12mg 添付文書. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療用医薬品情報.
  5. Müller-Lissner SA, Kamm MA, Scarpignato C, Wald A. Myths and misconceptions about chronic constipation. Am J Gastroenterol 2005;100(1):232-242. doi:10.1111/j.1572-0241.2005.40885.x PMID:15654804
  6. Nusko G, Schneider B, Schneider I, Wittekind C, Hahn EG. Anthranoid laxative use is not a risk factor for colorectal neoplasia: results of a prospective case control study. Gut 2000;46(5):651-655. PMID:10764708
  7. Lombardi N, Crescioli G, Maggini V, et al. Anthraquinone laxatives use and colorectal cancer: A systematic review and meta-analysis of observational studies. Phytother Res 2022;36(3):1093-1102. doi:10.1002/ptr.7373
  8. Nascimbeni R, Donato F, Ghirardi M, Mariani P, Villanacci V, Salerni B. Constipation, anthranoid laxatives, melanosis coli, and colon cancer: a risk assessment using aberrant crypt foci. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2002;11(8):753-757. PMID:12163329
  9. Citronberg J, Kantor ED, Potter JD, White E. A prospective study of the effect of bowel movement frequency, constipation, and laxative use on colorectal cancer risk. Am J Gastroenterol 2014;109(10):1640-1649. PMID:25223576
  10. 独立行政法人国民生活センター. キャンドルブッシュを含む健康茶—下剤成分(センノシド)を含むため過剰摂取に注意—. 報道発表資料, 2014年1月23日.
  11. 厚生労働省. 2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況(Ⅲ 世帯員の健康状況 1 自覚症状の状況).
  12. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定(2026年6月1日施行)訪問看護療養費関係通知.
  13. 一般用医薬品 センナ錠 添付文書(してはいけないこと:大量に服用しないこと、他の瀉下薬との併用を避けること). 日本医薬情報センター(JAPIC)一般用医薬品添付文書情報.
  14. ふくろう訪問クリニック. 下剤の種類と選び方. https://fukurou.fukuoka.jp/column/1411/

本記事は一般向けの医療情報であり、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。薬の変更は必ず主治医・薬剤師にご相談ください。本記事の作成にあたり、企業からの資金提供・便宜供与は受けていません。記事の内容は2026年9月3日時点の情報に基づきます。