「インフルエンザは毎年打つけど、コロナはもういいかな」「そもそもコロナって、まだあるんですか?」——2026年の秋、訪問先でよく聞く言葉です。
10月1日から、福岡市の助成を受けた新型コロナワクチンの定期接種が始まります。この記事では「コロナはもう終わったのか」という問いに、最新の流行データ・医学研究・行政の情報をもとに、できるだけ数字で答えます。結論を先に言うと、コロナは終わっていません。「見えにくくなった」だけです。後半には、20〜50代の方に向けたパート(SECTION 09)も設けました。
SECTION 01 結論——先に3つだけ
- 1コロナは終わっていない。見えにくくなっただけ2025年も全国で21,497人が新型コロナで亡くなり(インフルエンザは6,838人)、そのほぼ全員(98%)が65歳以上でした。2026年に入ってからも、1〜2月だけで全国の基幹定点病院に約7,000人が入院しています。福岡県では2025年に889人、福岡市では199人が新型コロナで亡くなっています。
- 2「インフルは打つけどコロナは打たない」は、数字で見ると逆高齢者にとって新型コロナの重さはインフルエンザと同じかそれ以上です(60代で、かかった後60日以内に亡くなるリスクは約2倍)。一方、ワクチンには65歳以上の入院を約6割・死亡を約7割減らしたデータ(デンマーク)があり、日本でも入院を6〜7割減らしたデータが出ています。
- 310月1日から、福岡市の定期接種が始まる65歳以上(と60〜64歳の一部)が対象で、個人負担金は8,000円。市県民税非課税世帯・生活保護の方は無料(当日に証明書類が必要)です。インフルエンザ(1,500円)と同時に受けられ、秋に打った入院予防効果は翌年の夏の波まで続くことが示されています。
SECTION 02 「コロナってまだあるの?」——見えなくなった3つの理由
2023年5月に新型コロナが「5類感染症」になってから、テレビで毎日感染者数が流れることはなくなりました。病気が消えたのではなく、数え方と伝わり方が変わったのです。理由は3つあります。
- 1数え方が変わった全ての医療機関が毎日報告する「全数把握」から、全国約5,000か所の定点医療機関が週1回まとめて報告する「定点報告」に変わりました。2025年4月からは急性呼吸器感染症(ARI)サーベイランスに組み込まれ、定点の選び方も変わっています。数字はいまも毎週公表されていますが、ニュースにはほとんどなりません。
- 2検査されなくなった5類になって検査や治療が通常の保険診療(自己負担あり)になり、熱が出ても検査をしない人・しない医療機関が増えました。日本感染症学会など3学会も2026年9月の見解で「実際の広がりはもっと大きい可能性がある」と指摘しています。
- 3話題にならなくなった報道が減れば、「もう終わった」と感じるのは自然なことです。けれども後で示すように、亡くなる人・入院する人は、いまも高齢者を中心に続いています。
流行は「冬と夏」、年2回の山で続いている
図1は、全国の基幹定点病院(約500か所)に新型コロナで入院した人の数を、2026年1月から月ごとに並べたものです。1〜2月は月3,400〜3,500人、いったん落ち着いた後、7〜8月に再び増えました。1月から9月13日までの累計は14,260人、そのうち60歳以上が75%を占めます。
図1 基幹定点(約500か所)からの届出のみの数なので、全国の入院者の総数はこれよりずっと多くなります。9月は13日までの2週分です。
いまの福岡は「静か」に見える——だからこそ、この時期に打つ
2026年9月7〜13日(第37週)の全国の定点当たり報告数は2.44で、5週連続の増加(第33週1.12→1.18→1.47→2.08→2.44)です。昨年の同じ週(8.43)と比べれば低い水準で、福岡県は0.87と全国より少なめでした。
同じ週の福岡県のインフルエンザの定点当たり報告数は4.43(前週の1.67倍)。今年はインフルエンザの流行入りが早く、「今週の数字」だけを見ると、コロナよりインフルの方がはるかに多く見えます。ここが「インフルは打つけどコロナは打たない」と感じやすい落とし穴です。新型コロナは、これまで毎年、冬(1〜2月ごろ)にもう一度山を作ってきました(図1)。山が来る前の10〜12月に打っておく、という考え方はインフルエンザと同じです。
SECTION 03 数字で見る「コロナの重さ」——インフルエンザと比べる
亡くなる人の数:減ってはいる。それでもインフルの3倍
厚生労働省の人口動態統計によると、新型コロナで亡くなった人は2024年に35,865人(死因順位第8位)、2025年は21,497人と大きく減りました。減った理由は「ウイルスが弱くなった」というより、繰り返す感染とワクチンで社会全体に免疫が積み上がったこと、治療薬が使えるようになったことが大きいと考えられています。
それでも図2のとおり、2025年はインフルエンザの大流行年で、インフルエンザの死亡6,838人は近年で最も多かったにもかかわらず、新型コロナの死亡はその約3倍でした。65歳以上に限ると、新型コロナ21,003人に対しインフルエンザ6,333人(3.3倍)。2026年に入ってからも、1〜3月の65歳以上の死亡は新型コロナ2,500人、インフルエンザ1,013人と報告されています。
図2 人口動態統計は医師が死亡診断書に書いた原死因を集計したもの。医師が原死因を別の病名(心不全・肺炎など)と記載した死亡は含まれないため、実際の影響はこれより大きいと考えられます。
同じ「かかった」でも、高齢者ではコロナの方が重い
日本の医療保険データを使った大規模解析(オミクロン株流行期の2022年5月〜2023年4月)では、発症後60日以内に亡くなるリスクはインフルエンザと比べて、60代で2.05倍、70代で1.87倍、80歳以上で1.41倍でした。2024〜25年シーズンに国内5病院に入院した患者の比較でも、集中治療室(ICU)に入るか人工呼吸器が必要になった割合は、新型コロナ21.2%、インフルエンザ11.2%と約2倍です。デンマークの50歳以上の全国調査(2022〜2025年)では、入院中の死亡率は両者で同じでしたが、退院後90日以内の死亡は新型コロナの方が1.23倍、再入院は1.10倍多いことが報告されています。
治ったあとに残るもの:罹患後症状とフレイル
新型コロナには「治ったあと」の問題があります。日本の2022年11月の調査では、日常生活に支障をきたす症状が3か月以上続いた人の割合は70歳以上で15.7%でした。三重県の5医療機関の調査でも、オミクロン株でも9%に3か月以上の罹患後症状があり、そのうち60歳以上が4割を占めました。米国の50歳以上を3年間追った研究では、入院しなかった軽症の新型コロナでも、その後にフレイル(心身の活力が落ちた状態)に移行するリスクが1.66倍、75〜84歳で2.18倍、85歳以上で3.59倍と報告されています。認知機能の低下や認知症の発症との関連も指摘されています。在宅で療養している方にとって、「一度かかると、元の生活に戻れない」ことが、いちばん避けたいことです。
| 高齢者にとって | インフルエンザ | 新型コロナ |
|---|---|---|
| 流行の時期 | 冬(12〜3月)に1回 | 冬(1〜2月)と夏(7〜8月)の年2回 |
| 2025年の死亡数(全国) | 6,838人(近年で最多) | 21,497人(約3倍) |
| うち65歳以上 | 6,333人 | 21,003人(全体の98%) |
| かかった後60日以内の死亡 | (基準) | 60代2.05倍・70代1.87倍・80歳以上1.41倍 |
| 入院したときの重症化 | ICU・人工呼吸 11.2% | ICU・人工呼吸 21.2% |
| 治ったあと | 基本的に回復 | 罹患後症状(70歳以上で15.7%)、フレイルへの移行、認知機能低下 |
| 定期接種(福岡市) | 65歳以上等・年1回・1,500円 | 65歳以上等・年1回・8,000円 |
| ワクチンの主な目的 | 発症・重症化の予防 | 入院・死亡の予防(入院6割・死亡7割減のデータ) |
表1 出典は文末の参考文献3・17・18・19・20・21。「かかった後60日以内の死亡」はオミクロン株流行期の日本の医療保険データによる比較です。
SECTION 04 いま流行っている株と、今年のワクチン
新型コロナが毎年流行を繰り返す理由のひとつが、数か月ごとに姿を変える変異株です。2025年夏以降は「NB.1.8.1系統(通称ニンバス)」が主流になり、2026年5月からは久しぶりに現れた「BA.3.2系統(通称セミ株)」が中心になりました。8月にはBA.3.2系統が減り、NB.1.8.1系統の亜系統が再び増えています。海外では「XFG」が増加中です。どの株も「以前より重症化しやすくなった」というデータはありませんが、「軽くなった」わけでもなく、以前の感染やワクチンでできた免疫を部分的にすり抜ける性質を持っています。
図3 株の呼び名(ニンバス、セミ株)は通称で、正式な系統名はNB.1.8.1、BA.3.2です。
WHOは2026年5月、今シーズンのワクチンの株として「1価のLP.8.1」を推奨し、いま流行している株に幅広く効く「XFG」「NB.1.8.1」なども使ってよいとしました。日本ではこれを受けて、XFG対応(ファイザー・モデルナ・武田薬品)とNB.1.8.1対応(第一三共・Meiji Seika ファルマ)の5種類が定期接種に使われる予定です(表2)。いずれも、いま流行しているJN.1系統の株に対して中和抗体を誘導することが確認されており、BA.3.2に対しても(JN.1系統より低いものの)中和抗体が確認されています。今シーズンの供給量は約702万回分の見込みです(2026年8月25日時点)。
| 製品名(会社) | 種類 | 株 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| コミナティ (ファイザー) | mRNA | XFG | 世界で最も使用実績が多い。1人用のシリンジ。 |
| エムネクスパイク (モデルナ) | mRNA(次世代型) | XFG | 2026年から。スパイクの一部(NTD・RBD)だけを作る設計で用量は従来の1/5(10μg)。注射部位の痛みは従来より少なめ。 |
| ヌバキソビッド (武田薬品) | 組換えタンパク | XFG | mRNAではない。発熱などの全身の副反応が比較的少ない。 |
| ダイチロナ (第一三共) | mRNA | NB.1.8.1 | 国内創製・国内製造。受容体結合部位(RBD)を標的。 |
| コスタイベ (Meiji Seika ファルマ) | 自己増幅型mRNA | NB.1.8.1 | 体内で少し増える設計のため用量が少ない(5μg)。国内製造。 |
表2 日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会「2026年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解」(2026年9月1日)表1をもとに作成。実際に定期接種に位置づけられるかは厚生労働省の審議会で最終決定されます。
どの種類を選んでも重症化予防の効果に大きな差はなく、違いは主に「副反応の出方」と「医療機関がどれを採用しているか」です。当院は今シーズン、自己増幅型mRNAワクチンのコスタイベ(Meiji Seika ファルマ、NB.1.8.1対応)を採用しています。選んだ理由は、コラム「コロナワクチン、2026-2027年シーズンはどれを打つ?」にまとめています(昨シーズンの比較はこちら)。
SECTION 05 ワクチンは効くのか——日本と海外の最新データ
「打っても感染するから意味がない」という声をよく聞きます。いまのワクチンの目的は感染を完全に防ぐことではなく、入院と死亡を減らすことです。その目的については、日本を含む複数の国から一貫した結果が出ています(図4)。
図4 いずれも「検査陰性デザイン」という方法で、同じ症状で受診・入院した人のうち検査で陽性だった人と陰性だった人のワクチン接種歴を比べています。
- 1日本:2024年秋のワクチンは入院を約6割減らし、翌年の夏まで効いた長崎大学を中心とするVERSUS研究では、2024年10月〜2025年4月、65歳以上の発症予防効果は44.3%、60歳以上の入院予防効果は61.8%でした。さらに同じワクチンの効果を2025年4〜9月(夏の波)で調べると、発症予防は26.0%(統計的に有意ではない)まで下がっていた一方、入院予防効果は72.1%が保たれていました。「秋に1回打てば、翌年の夏の波まで入院を防ぐ効果が続く」ことを示すデータです。
- 2日本:2025年秋のワクチンも効いていた(暫定)同じ研究グループのEVOLVE研究(60歳以上、2025年10月〜2026年3月、1,036エピソード)では、2025〜26年シーズンのワクチンの発症予防効果は72.7%(95%信頼区間41.4〜87.3)でした。LP.8.1対応、XEC対応のいずれもほぼ同じ効果で、XEC対応の自己増幅型mRNAワクチン(コスタイベ)に限った解析でも76.0%(28.4〜92.0)でした。前年の2024年秋のJN.1対応コスタイベに限った別の解析でも、60歳以上の発症予防効果は74.5%(31.3〜90.6)と報告されています(同じ期間のmRNAワクチン全体では46.7%)。ただし対象者が少なく信頼区間が広いこと、Meiji Seika ファルマとの共同研究であること、接種した人は感染対策にも熱心で効果が高く出た可能性があることが、研究者自身から限界として挙げられています。
- 3海外:65歳以上の入院を6割、死亡を7割減らしたデンマークの全国データでは、2025年秋のLP.8.1対応ワクチンは65歳以上の入院を60.6%、死亡を70.1%減らし、接種後4か月でも効果が続いていました。米国CDCの報告では、65歳以上の救急受診を48%、入院を53%減らしています。カナダ・米国退役軍人省のデータも同じ方向です。
- 4効果は数か月で薄れる。だから「毎年」オミクロン株以降、発症予防効果は接種後数か月で下がることが繰り返し確認されています。ウイルスも変わります。インフルエンザワクチンと同じように、その年の流行株に合わせて毎年打つのが、いまの考え方です。
- 5かかっても軽くすむ。後遺症も減る2025年7〜9月の国内多施設研究では、12か月以内に追加接種を受けていた人は、そうでない人より発症時の最高体温が低くなっていました(37.8℃ vs 38.2〜38.3℃。発熱の日数には差がありませんでした)。罹患後症状(いわゆる後遺症)についても、追加接種を受けた人では頻度が23%低いというメタ解析があり、日本のVENUS研究でも発症前14〜149日に接種していた人では、調べた36項目のうち28項目で罹患後の病気のリスクが低下していました。
- 6「もうかかったから」は理由になりにくいオミクロン株に感染してできた再感染予防の効果は時間とともに下がり、1年以上たつとほぼ消えることが報告されています。かかったことのある人も定期接種の対象です。最近かかった場合は、回復後3か月程度あけて接種することもできます。
SECTION 06 副反応と安全性——正直に書きます
よくある副反応:注射部位の痛み、発熱、だるさ
接種後1〜2日の注射部位の痛み・腫れ、発熱、だるさ、頭痛は一定の割合で起こります。図5は国内のコホート調査で「37.5℃以上の発熱」が出た人の割合を種類別に並べたものです。製品によって差があり、組換えタンパクのヌバキソビッドは発熱が少ない傾向が一貫しています(米国の医療従事者の比較試験でも発熱2.3%対13.8%)。65歳以上に限ると発熱はさらに少なく、2025年秋のLP.8.1対応コミナティを受けた65歳以上53人の調査では、38℃以上の発熱は3.8%、だるさ30.2%、頭痛18.9%でした。
図5 スパイクバックス(モデルナ)は2026年度からエムネクスパイクに置き換わります。調査年・接種回数が製品ごとに異なるため、目安としてご覧ください。
「ワクチンで死亡が増える」は確認されていない
- 1接種後の死亡リスク日本の複数の自治体の保険データを使ったVENUS研究では、65歳以上で、1〜2回目だけでなく3〜5回目の追加接種のあとも、死亡リスクの増加は認められませんでした。海外でも、接種後の期間に全死亡が増えていないことが複数の研究で確認されています。人口動態統計では、医師が死亡診断書で「新型コロナワクチンの副反応」を原死因と記載した死亡は2025年に6人、2024年に8人でした(因果関係が確定したものではありませんが、同じ統計で新型コロナによる死亡は年2〜3万人です)。
- 2接種後に長く続く症状厚生労働省は「新型コロナワクチン接種後の遷延する症状に係る実態調査」を続けています。2025年度の結果概要では、報告された症状は多様で特定の症状に集中しておらず、多くは軽快または回復している一方、一部に回復に長期間かかる例や未回復の例があり、ワクチンとの因果関係の検証はできないとされました。「ないことにしない」で調査が続いていること自体が、この制度の信頼性を支えています。
- 3「スパイクタンパク質が体に残って害をなす」という説科学的な検証がないまま広がったため、厚生労働科学研究で文献評価が行われ、2026年7月24日の審議会で「現時点で直接的な安全性上の問題を示す文献の存在は確認できない」と報告されています。
- 4心筋炎・心膜炎mRNAワクチン接種後の心筋炎はごくまれで、主に若い男性で報告されており、高齢者ではさらにまれです。接種後数日以内に胸の痛み・息切れ・動悸があれば、早めに医療機関に連絡してください。
- 5万一のときの補償定期接種で健康被害が生じ、国の審査会でワクチンによるものと認定された場合は、予防接種法にもとづく救済(医療費・医療手当・障害年金・死亡一時金・葬祭料など)を受けられます。窓口は各区の保健福祉センターです。
SECTION 07 福岡市の定期接種——10月1日から、8,000円(非課税世帯は無料)
福岡市の令和8年度(2026年度)の新型コロナワクチン定期接種は、2026年10月1日〜2027年3月31日に1回、原則として平日に、市が指定した医療機関で受けられます。対象と費用の決まり方を図6にまとめました。
図6 「60〜64歳の対象者」は、心臓・腎臓・呼吸器の機能またはHIVによる免疫機能の障がいで身体障害者手帳1級相当の方に限られ、他の理由での1級は該当しません。
| 福岡市・令和8年度 | 新型コロナ | インフルエンザ |
|---|---|---|
| 期間 | 10月1日〜2027年3月31日 | 10月1日〜2027年3月31日 |
| 回数 | 1回 | 1回 |
| 対象 | 接種日に65歳以上/60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器・HIVによる免疫の障がい(手帳1級相当) | |
| 個人負担金 | 8,000円 | 1,500円 |
| 無料になる方 | 生活保護/中国残留邦人等支援給付/市県民税非課税世帯(接種日当日に介護保険料の通知書の写し・後期高齢者医療資格確認書の写し・保護受給証明書などを提出。後日の払い戻し不可) | |
| 持ち物 | マイナンバーカード・運転免許証・介護保険被保険者証のいずれか。60〜64歳の対象者は手帳の写しまたは診断書 | |
| 受ける場所 | 市の指定医療機関(「予防接種(高齢者用)実施医療機関」のステッカー)。市外は福岡県の広域化実施医療機関。県外は事前に「予防接種実施依頼書」が必要 | |
| 同時接種 | コロナとインフルの同時接種は可能(肺炎球菌・帯状疱疹も医師が必要と認めた場合は可能) | |
| 問い合わせ | 各区保健福祉センター健康課(早良区 092-851-6012) | |
表3 福岡市ホームページ「令和8年度 新型コロナワクチン接種を実施します」(2026年9月10日更新)、「令和8年度 高齢者のインフルエンザ定期予防接種を実施します」(同9月11日更新)より。
なぜ8,000円なのか、なぜ5人に1人しか打たないのか
定期接種が始まった2024年度は、国が1回8,300円を自治体に補助していましたが、この補助は2025年度で終了しました。いまの自己負担額は市区町村ごとの独自の助成で決まっており、同じ注射でも地域によって金額が大きく違います。福岡市の8,000円は、市の助成があってこの金額です。
その結果、2024年度の65歳以上の定期接種率は全国で19.0%(5人に1人)にとどまり、2025年度はさらに低かったと3学会は懸念しています。市区町村別の全国調査では、自己負担が低い自治体ほど接種率が高く(接種率比1.31)、郵送の個別通知がある自治体では接種率が21.4%対15.2%と高いことが分かっています。「案内が届かないから忘れていた」は、よくある理由です。
SECTION 08 「打たない理由」に、ひとつずつ答えます
- 1「もうかかったから、免疫がある」感染でできた再感染予防の効果は、オミクロン株では1年以上たつとほぼ消えます(SECTION 05)。かかった人も定期接種の対象で、最近かかった場合は回復後3か月程度あけて受けることもできます。
- 2「打っても感染するなら意味がない」いまのワクチンの目的は「感染ゼロ」ではなく「入院と死亡を減らす」ことです。65歳以上の入院を約6割、死亡を約7割減らし(デンマーク)、かかっても熱が低くすみ、罹患後症状も減ります。
- 3「前に打ったとき、副反応がつらかった」種類を変える選択肢があります。組換えタンパク(ヌバキソビッド)は発熱が少なく、65歳以上では発熱の頻度自体が低めです。前回の症状を医師に伝えてください。解熱剤(アセトアミノフェン)は接種後に使えます。
- 4「毎年打つなんて、おかしい」効果が数か月で薄れ、ウイルスが毎年変わるため、流行株に合わせて毎年更新するのはインフルエンザワクチンと同じ考え方です。年1回の秋の接種で、入院予防効果は翌年の夏まで持つことが日本のデータで示されています。
- 5「アメリカはもうやめたと聞いた」若く健康な人への一律の推奨を見直した国はありますが、65歳以上やハイリスクの方への推奨は米・英・カナダ・豪のいずれでも続いており、むしろ年2回が推奨されています。日本の定期接種の対象も、まさにその「65歳以上」です。
- 6「8,000円は高い」安くはありません。ただ、市県民税非課税世帯と生活保護の方は無料です(当日の書類をお忘れなく)。それ以外の方にとっても、入院やその後の介護度の悪化と比べて考えていただきたい金額です。
- 7「インフルだけ打てば十分」インフルエンザワクチンは新型コロナには効きません。別のウイルスです。しかも新型コロナは冬だけでなく夏にも流行します。福岡市では両方とも同じ期間・同じ医療機関で、同じ日に受けられます。
SECTION 09 20〜50代の方へ——「だるくなるのが嫌」の先にあるもの
「打つと1〜2日だるくなるから、打たない」——働き盛りの方から、いちばんよく聞く理由です。その気持ちは正当です。仕事も家事も止められない年代にとって、予定して具合が悪くなる1日は重い。ただ、比べる相手を間違えないでください。比べるべきは「接種後の1〜2日」と、「ワクチンなしでかかったときに失うもの」です。65歳未満は定期接種の対象外で全額自己負担ですが、それでも当院は、費用が払えるのであれば接種をお勧めします。理由を、死亡以外の「人生で不利になる点」に絞って数字で示します。
図7 Aは英国の18歳以上11万2,964人のオンライン認知検査。Bは日本の住民調査で、いずれも大半が軽症の感染者です。
- 1「頭の働き」が下がる——軽症で治っても、平均でIQ換算3点英国で11万2,964人が受けたオンライン認知検査(NEJM 2024年)では、新型コロナにかかって症状が治まった人でも、かかっていない人と比べて総合スコアが平均でIQ換算3点分低く、症状が3か月以上続いている人では6点分、集中治療室に入った人では9点分低くなっていました。差が大きかったのは記憶・推論・実行機能の課題で、オミクロン株の時期にかかった人でも差はありました。3点は「小さい」効果量ですが、働き盛りにとっては集中力・判断の速さ・ミスの多さとして表れる差です。同じ研究で、2回以上接種した人では差が小さい傾向でした。
- 2心臓と血管——入院しなくても、その後1年の心筋炎・血栓のリスクが上がる米国退役軍人15万人の追跡(Nature Medicine 2022年、ワクチン普及前の時期)では、感染後1年間の心筋炎のリスクが5.38倍、肺の血栓(肺塞栓)2.93倍、心停止2.45倍、主要な心血管イベント全体で1.55倍と報告され、これは入院しなかった人でも上がっていました。ただし同じグループの2年追跡では、入院しなかった人では80項目の後遺症のうち69%が2年で差がなくなっており、「一生」ではなく「数年」の話です。なお、英国の4,200万人の解析では、感染後の心筋炎はワクチン接種後より多く(例外は40歳未満の男性における旧モデルナ製剤の2回目)、「心臓が心配だから打たない」は、多くの場合、逆の選択になります。
- 3後遺症で、仕事と生活が削られる——日本の働き盛りのデータ東京都品川区の20〜69歳(平均42歳、99%が軽症、92%が接種済み)の住民調査では、オミクロン株BA.5期に感染した人の11.8%に2か月以上続く症状があり、感染していない人の約2倍でした。特徴的だったのはブレインフォグ(頭に霧がかかった感じ)、集中力低下、味覚・嗅覚障害、脱毛、筋力低下です。症状がある人の59.5%は約半年後も日常生活に何らかの支障があり、8.5%は「深刻な支障」と答えています。大阪府八尾市の18〜79歳(平均45歳、84%が軽症)の調査でも、感染者の15.0%に罹患後症状があり、非感染者の4.4%の約3倍でした。かかるたびにリスクは積み重なることも報告されています。
- 4ワクチンは、この「失うもの」を減らす八尾市の調査では、感染前に1回以上接種していた人の罹患後症状は未接種の人の約半分でした。追加接種を受けた人では罹患後症状が23%少ないというメタ解析(SECTION 05)もあります。かかっても発熱が軽くすみ、認知機能の差も小さい。若く健康な人では入院や死亡の絶対的なリスクが低いため、ワクチンの「利益の絶対量」は高齢者より小さく、国が定期接種の対象にしていないのはそのためです。それでも「かかったあとの数か月〜数年」を守る効果は、この年代にこそ意味があります。
- 5「だるさ」との比べ方接種後の発熱・だるさは若い人ほど出やすく、たいてい1〜2日で治まり、解熱剤で対応できます。対して罹患後症状は2か月以上、心臓・血管のリスクは1〜2年、認知機能の差は1年以上です。実務的な工夫としては、週末の前日の夕方に打つ、翌日の予定を軽くしておく、発熱の少ない種類(組換えタンパクのヌバキソビッド)を選ぶ、があります。米国の医療従事者の比較試験では、組換えタンパクは発熱2.3%対13.8%で、副反応で失った労働時間の中央値が半分でした。
- 6費用——全額自己負担、それでも勧めたい人64歳以下は任意接種で、費用は医療機関ごとに設定されています(自治体の案内では1万7,000円程度の例)。安くはありません。そのうえで当院が特にお勧めするのは、次の方です。
- 同居家族に高齢者・がん治療中・免疫の弱い人がいる方
- 糖尿病・肥満・喘息・心臓や腎臓の病気がある方
- 医療・介護・保育など、休むと現場が止まる仕事の方
- 一人暮らしで、倒れたときに支えがない方
- 妊娠中・妊娠を考えている方(接種の時期は産科の主治医と相談してください)
当院の視点:「今週の数字」ではなく、「1年の山」で決める
ふくろう訪問クリニック(在宅医療・緩和ケア・難病・精神科・認知症)から、訪問診療の現場で大切にしていること
- 1対象なのに「打ちに行けない」人ほど、打つ意味が大きい訪問診療を受けている方の多くは、定期接種の対象であると同時に、外来まで出向くこと自体が難しい方です。当院では訪問診療の患者さんには訪問時にご自宅で接種します(今シーズンはコスタイベを使用)。希望される方は担当医・看護師にお申し出ください。
- 2認知症の方は、元気なうちに「本人の意思」を残しておく定期接種は「ご本人の明確な接種意思の確認ができない場合は対象外」というのが福岡市の決まりです。認知症が進むと、本人が望んでいたかどうかを確かめられなくなります。毎年のワクチンをどうしたいか、ご本人の言葉をご家族と一緒に早めに確認し、記録に残しておくことをお勧めします。
- 3がん治療中・緩和ケア中でも受けられる。家族が「防波堤」になる新型コロナワクチンは生ワクチンではないため、抗がん剤治療中や免疫が下がっている方も受けられます(効きは弱まることがあります)。接種のタイミングは治療の予定に合わせて主治医と決めます。同時に、出入りするご家族・介護者の接種が、免疫の弱い方を守るいちばん確かな方法です。64歳以下のご家族は任意接種(自己負担)になりますが、それでも検討する価値があります。
- 410〜12月に、インフルとコロナを同じ日に福岡では9月の時点でインフルエンザが先に増え、コロナは静かに見えます。けれども冬の山は例年1〜2月です。両方の山の前、10〜12月に同じ日に2本受けておくのが、いちばん手間が少なく効果的です。
SECTION 10 場面別・早見表
| こんなとき | こうする |
|---|---|
| 65歳以上で、持病はとくにない | 定期接種の対象(8,000円)。インフルエンザ(1,500円)と同時に、10〜12月のうちに。 |
| 65歳以上で、市県民税非課税世帯 | 無料。接種日当日に介護保険料の通知書(第1〜3所得段階)や後期高齢者医療資格確認書(区分Ⅰ・Ⅱ)の写しを提出。忘れると払い戻し不可。 |
| 60〜64歳で、心臓・腎臓・呼吸器・HIVの手帳1級相当 | 定期接種の対象。手帳の写しか診断書を持参。 |
| 64歳以下(持病の有無を問わず) | 定期接種の対象外(任意接種・全額自己負担)。費用が払えるなら接種を勧めます(SECTION 09)。持病がある方は主治医と相談。 |
| 今年すでにコロナにかかった | 対象です。回復後、3か月程度あけて受けることもできます。 |
| 前回の接種で高熱がつらかった | 発熱の少ない種類(組換えタンパク)や、他の製品への変更を相談。解熱剤を用意しておく。 |
| 抗がん剤治療中・免疫を抑える薬を使っている | 接種できます。投与スケジュールに合わせて主治医とタイミングを決める。 |
| 認知症で本人の意思確認が難しい | 早めにご家族と相談。意思確認ができない場合は定期接種の対象外となる決まりのため、担当医に事前にご相談を。 |
| 高齢者施設に入所中 | 施設の嘱託医・かかりつけ医に確認(施設内で接種できることが多い)。 |
| 市外・県外の病院に入院中 | 県内の広域化実施医療機関なら市の助成で受けられる。県外は事前に「予防接種実施依頼書」の手続きを。 |
| 子や孫と同居している | ご家族の接種は任意接種。家庭内では手洗い・換気、発熱した人との部屋の分離を。 |
| 接種後に胸の痛み・息切れ・動悸 | まれな心筋炎の可能性。早めに医療機関に連絡(当院の患者さんは訪問看護・クリニックへ)。 |
表4 福岡市の令和8年度の案内と3学会見解をもとに作成。
SECTION 11 よくある質問
SECTION 12 ご利用・採用のご案内
- 緩和ケア・難病・精神科・認知症の訪問診療
- 通院が難しい方の定期的な訪問と、必要時の往診
- 訪問時のインフルエンザ・新型コロナワクチン(コスタイベ)接種のご相談
ご本人・ご家族・ケアマネジャー・病院の相談員からのご相談をお受けしています。
電話 092-407-7337|https://fukurou.fukuoka.jp/
- 看護師・理学療法士・作業療法士による訪問
- 接種後の体調確認、発熱時の対応、療養生活のサポート
- 医療保険・介護保険どちらにも対応
主治医の指示書があれば、当院以外の医療機関の患者さんも利用できます。
電話 092-834-8581(平日9:00〜18:00)|https://nurse-fukurou.jp/
いっしょに働く仲間を募集しています
- 看護師(常勤・非常勤)
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(常勤・非常勤)
- 職員とご家族のインフルエンザ・新型コロナワクチンは無料で接種
電話 092-834-8581(平日9:00〜18:00)|メール nurse@fukurou.fukuoka.jp
求人情報ページ
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SECTION 13 参考文献・参考資料
- 厚生労働省.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況(2026年第37週:9月7日〜13日).2026年9月18日.https://www.mhlw.go.jp/content/001750910.pdf
- 厚生労働省.令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況.2026年6月3日.https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai25/dl/gaikyouR7.pdf
- 日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会.2026年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解.2026年9月1日.https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/gakkai_covid19_260901.pdf
- 福岡市.令和8年度 新型コロナワクチン接種を実施します(2026年9月10日更新).https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/k-kanri/coronavaccine.html
- 福岡市.令和8年度 高齢者のインフルエンザ定期予防接種を実施します(2026年9月11日更新).https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/k-kanri/health/koreishainfluenza.html
- 福岡県.福岡県感染症発生動向調査週報(令和8年第37週).2026年9月17日.https://www.pref.fukuoka.lg.jp/press-release/idwr2026-37w.html
- 国立健康危機管理研究機構.新型コロナウイルス ゲノムサーベイランスによる全国の系統別検出状況 2026年8月(2026年9月16日時点).https://id-info.jihs.go.jp/relevant-information/covid-19/variants/index.html
- 厚生労働省 厚生科学審議会 季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会.2026/27シーズン向け新型コロナワクチンの抗原組成について(2026年5月26日).https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001702430.pdf
- 厚生労働省.2026/27シーズンの季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの供給について(2026年8月25日時点).https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001741995.pdf
- World Health Organization. Statement on the antigen composition of COVID-19 vaccines. 16 May 2026.
- Maeda H, et al. Effectiveness of JN.1-adapted COVID-19 vaccine against medically attended SARS-CoV-2 infection and COVID-19 hospitalization in adults in Japan, from October 2024 to April 2025: VERSUS. Vaccine 2026;80:128544.
- 長崎大学熱帯医学研究所.新型コロナワクチンの有効性に関する研究(VERSUS Study)第13報:JN.1系統対応1価ワクチンの長期的な有効性.2026年7月21日.https://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/versus/results/20260721.html
- 長崎大学熱帯医学研究所.2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンの発症予防の有効性(EVOLVE Study,2026年8月27日時点の暫定結果).https://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/evolve/results/20260831.pdf
- Maeda H, et al. Interim analysis of effectiveness of JN.1-adapted conventional and self-amplifying mRNA COVID-19 vaccines against symptomatic SARS-CoV-2 infection in adults aged ≥60 years, Japan, October 2024–April 2025. Vaccine 2026;88:128964.
- Hansen CH, et al. Effectiveness of the BNT162b2 LP.8.1-adapted SARS-CoV-2 vaccine against COVID-19-associated hospitalisation and death: a Danish nationwide cohort study. Lancet Infect Dis 2026;26(7):e269-e270.
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- Miyashita K, et al. Outcomes of COVID-19 in the Omicron-predominant wave: large-scale real-world data analysis with a comparison to influenza. Pneumonia (Nathan) 2025;17(1):3.
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- Hori M, et al. Risk factors for post-coronavirus disease condition in the Alpha-, Delta-, and Omicron-dominant waves among adults in Japan: A population-based matched case-control study. J Med Virol 2024;96(9):e29928. doi:10.1002/jmv.29928(同 プレスリリース 2024年10月16日)
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- 厚生労働省.第112回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会(2026年7月24日)資料1-5「新型コロナワクチン接種後の遷延する症状に係る実態調査について」、資料1-6「新型コロナワクチン由来スパイクタンパク質の安全性上の懸念に関する文献評価について」.https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/newpage_00295.html
- 厚生労働省.副反応検討部会資料「新型コロナワクチンを含むコホート調査」(2024年7月29日、2025年4月14日).https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001475827.pdf
- 日本経済新聞.厚労省、新型コロナウイルスワクチン助成終了へ 高齢者らの定期接種.2025年4月10日.
- 品川区.令和7年度 高齢者新型コロナ定期予防接種(任意接種の費用の目安として参照).https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/kenkou/yobousessyu/20240327130755.html
本記事の内容は2026年9月22日時点の情報にもとづいています。定期接種の実施内容は自治体の最新の案内をご確認ください。医学的な判断は、個々の状況によって異なります。ご自身のことは主治医にご相談ください。

