「最近、呼んでも返事をしないんです」「耳垢がたまっているみたいなので、取ってもらえませんか」。訪問診療の現場で、ご家族からよくいただく相談です。認知機能が落ちてきた方の「聞こえにくさ」の陰に、耳の奥で固まった耳垢(医学用語で耳垢栓塞〈じこうせんそく〉)が隠れていることは珍しくありません。
では、家族が取ってもよいのでしょうか。先に答えを書くと、耳の入口に見えている耳垢をそっと拭うところまでは家族がしてよく、奥で固まった耳垢を道具で取り出すのは医療者の仕事です。当院も奥の耳垢は原則として耳鼻咽喉科にお願いしてきましたが、「連れて行くのが大変」という声を多く聞きます。
この記事では、最新の医学研究と厚生労働省の通知・ガイドラインをもとに、安全さを保ったまま、通院の負担を減らす進め方を整理します。
SECTION 01 結論——3つだけ覚えてください
- 1家族ができるのは「入口の見える範囲」まで厚生労働省の通知は、耳垢の除去を原則として医行為ではない行為に挙げる一方で、「耳垢塞栓の除去」だけははっきり除いています[1]。奥の固い塊を耳かきやピンセットで取ろうとするのは、家族でも介護職でも勧められません。
- 2近道は「見る → 軟らかくする → 一度で取る」まず医師や看護師が耳の中を見て、本当に耳垢が原因かを確かめます。耳垢栓塞なら点耳薬で数日かけて軟らかくしてから、耳鼻咽喉科で一度で取ってもらう。本人の負担も通院の回数も少なくて済む進め方です。
- 3取ることはゴールではなく入口耳垢を取っても聞こえにくければ、加齢による難聴が隠れています。難聴は認知症の「変えられる危険因子」の一つですが[12]、「耳垢を取れば認知症がよくなる」というほど単純ではありません。
SECTION 02 耳垢は、なぜ高齢になると詰まりやすいのか
耳垢は汚れではありません。耳の穴(外耳道)の皮膚を守るためにつくられる分泌物で、ほこりを絡め取り、皮膚の乾燥を防いでいます。外耳道の皮膚は奥から入口へ向かってゆっくり移動しており、噛む・話すといったあごの動きも手伝って、古い耳垢は自然に外へ運ばれます。米国の耳垢の診療ガイドラインも、この「自浄作用」を耳の健康の土台として説明しています[4]。
耳垢がつくられるのは、入口側の約3分の1だけです。その奥の約3分の2は皮膚が薄く骨のすぐ上にあるため、少し触れただけで痛みや出血が起きます(図1)。
高齢になると詰まりやすい5つの理由
- 1耳垢が乾いて硬くなりやすい年齢とともに分泌が減り、耳垢が乾いて外へ運ばれにくくなります[5]。
- 2外耳道の毛が太く長くなる毛が耳垢を引っかけ、自然に出ていくのを妨げます[5]。
- 3補聴器や耳栓が出口をふさぐ補聴器は、耳垢が詰まりやすくなる代表的な原因の一つです[4,5]。
- 4綿棒や耳かきで奥へ押し込む取ろうとした耳垢を、かえって奥へ送り込んでしまいます[4]。
- 5本人が気づかない・訴えない認知機能が落ちると、耳のつまりや聞こえにくさを言葉で伝えにくくなります[10]。
SECTION 03 どのくらい多いのか
米国のガイドラインによると、耳垢が詰まっている(または多すぎる)人は、子どもで約10人に1人、成人で約20人に1人、高齢者や発達に障害のある人では3人に1人を超えます[4]。
日本では、国立長寿医療研究センターの縦断研究で、地域で暮らす60〜88歳の792人のうち10.7%に、聞こえの良い側の耳の耳垢栓塞がありました。認知機能の検査(MMSE)が24点未満の人に限ると23.3%と、およそ2倍でした[8]。施設で暮らす高齢者では、最大57%という海外の報告もあります[5]。
図2の数字は、どれかが間違っているわけではありません。主に3つの違いによるものです。
- 1だれを数えたか地域で元気に暮らす人か、施設や病院で暮らす人か、認知機能が落ちた人か。自分で耳の手入れができない人ほど、多くなります。
- 2どう数えたか日本の研究は「聞こえの良い側の耳」がふさがっている人だけを数えています[8]。どちらかの耳に詰まりがあれば数える方法なら、割合はもっと高くなります。「完全にふさいでいる」か「半分以上」かでも変わります。
- 3どこの国か耳垢が湿ったタイプか乾いたタイプかは遺伝で決まり、東アジアでは乾いたタイプが多いことがわかっています[18]。海外の数字をそのまま日本に当てはめることはできません。
在宅で介護を受けている方は、地域全体の約1割よりは多く、施設の最大値よりは少ない、その間のどこかにいると考えるのが自然です。いずれにしても、聞こえにくそうな高齢者の耳は、一度は中を見てみる価値があります。
SECTION 04 詰まると何が起きるか——家族が気づくサイン
耳垢が外耳道をふさぐと、聞こえにくさ、耳がつまった感じ、耳鳴り、かゆみ、痛み、めまいが起きることがあります。外耳道には迷走神経の枝が来ているため、耳への刺激で咳が出ることもあります[5]。
ところが認知症の方は、こうした症状を自分から訴えないことが多いのです[10]。気づくのは、そばにいる家族や介護職です。次のような変化は、「認知症が進んだ」と受け取られがちですが、耳垢や難聴が原因のこともあります。
| 家族が気づきやすい変化 | 受け取られがちな見方 |
|---|---|
| 呼んでも返事が遅い・聞き返しが増えた | 「ぼんやりしている」「認知症が進んだ」 |
| テレビや電話の音が大きくなった | 「年だから仕方ない」 |
| 会話がかみ合わない・話の輪に入ってこない | 「話が理解できなくなった」 |
| 補聴器がピーピー鳴る・つけても聞こえが悪い | 「補聴器が壊れた」 |
| 耳をしきりに触る・かく | 「癖だから」 |
| 周りの話し声が聞こえず、不安そうにしている | 「気難しくなった」 |
耳垢を取ると、聞こえや認知機能はどう変わるか
国立長寿医療研究センターの研究では、もの忘れのある高齢者55人の耳垢を取り、前後で聴力とMMSE(30点満点の認知機能検査)を測りました。聞こえの良い側の耳に耳垢栓塞があった29人は、聴力が平均4.6dB改善し、MMSEは平均0.7点上がりました。比べた26人(耳垢栓塞がないか、聞こえの悪い側だけにあった人)は、聴力の変化が0.9dB、MMSEは−1.0点で、年齢をそろえて比べると差は統計的に意味のあるものでした[9]。
平均で見れば小さな変化です。ただし同じグループの別の報告では、耳垢を取っただけで聴力が15dB以上よくなった人もいました[10]。全員がはっきりよくなるわけではないものの、一部の人には目に見える違いが出る——これが現時点での正直な評価です。人数が少なく、無作為に分けた試験ではない点にも注意が必要です。
SECTION 05 どこまで取ってよいのか——法律と行政の整理
厚生労働省の通知は「耳垢塞栓の除去」を除いている
医師法などは、医師や看護師などの免許がない人が「業として」医行為を行うことを禁じています。そのうえで厚生労働省は、2005年(平成17年)7月26日の通知で、介護の現場で判断に迷いやすい行為のうち、原則として医行為ではないものを列挙しました。そこに「耳垢を除去すること(耳垢塞栓の除去を除く)」とあります[1]。
2025年3月には、この通知と2022年(令和4年)の追加の通知[2]をもとに、介護職員が安全に行うための「原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」(令和6年度老人保健健康増進等事業)がまとめられ、厚生労働省のホームページで公表されました。ガイドラインは、病状が不安定で専門的な管理が必要な場合には医行為とされることもあり得るとし、医療職と連携して行うこと、事故が起きたときの法的な責任は別に判断されることを明記しています[3]。
※医学では「耳垢栓塞」、厚生労働省の通知では「耳垢塞栓」と書かれていますが、同じ状態を指します。
家族はどう考えればよいか
医師法の規制は「業として」行う人が対象なので、家族が自分の親の耳を拭うこと自体が法律違反になるわけではありません。ただ、耳の奥が傷つきやすいのは、だれがやっても同じです。介護職と同じ線引き——入口の見える範囲までは家族、奥で固まった耳垢は医療者——で考えるのが安全です(図3)。
耳掃除のけがは、実際に起きている
東京消防庁の集計では、令和3年から令和7年の5年間に、耳掃除中のけがで208人が救急搬送されました(令和7年は速報値)。いちばん多いのは「耳かき棒などを自分で奥に入れすぎた」80人で、「耳かき中に人や物にぶつかった・ぶつかられた」42人が続きます。9割以上は軽症ですが、入院が必要な中等症も18人いました[14]。
消費者庁は、家庭での耳掃除は耳の入口付近の目で見える範囲を綿棒でそっと拭う程度にとどめ、教えても動いてしまう可能性があれば家庭で無理に行わないよう呼びかけています[15]。子ども向けの注意喚起ですが、処置の途中で急に頭を動かすことがある認知症の方にも、そのまま当てはまります。
SECTION 06 ではどうするのが良いか——5つのステップ
「耳鼻咽喉科に連れて行く」は安全ですが、車いすでの移動や待ち時間を考えると、ご家族にも本人にも大きな負担です。ここで大切なのは、耳鼻科に行くかどうかではなく、行く前と行ったあとを整えて、受診を最小限にすることです。当院が勧める進め方を図4にまとめました。
ステップ2 まず「見る」——耳垢のせいとは限らない
訪問診療の医師は、明かりのついた耳鏡で外耳道と鼓膜を見ることができます。聞こえにくさの原因が耳垢ではなく、外耳炎や中耳炎、耳だれ、ときにはほかの病気であることもあります。米国のガイドラインは、症状がなく耳の中もよく見えるなら耳垢を取る必要はないとする一方で、補聴器を使っている人は診察のたびに耳垢を確認するよう勧めています[4]。「取るかどうか」は、見てから決めることです。
ステップ3 「軟らかくする」——点耳薬で数日
耳垢栓塞とわかったら、多くの場合、点耳薬で軟らかくしてから取ります。コクラン共同計画の系統的レビュー(10件の試験、623人)では、点耳薬を5日間使うと、何もしない場合より耳垢が完全に取れやすいことを示した試験がありました。一方で、どの種類の点耳薬が優れているかは示せず、証拠の質は「低い」と評価されています[6]。英国の国立医療技術評価機構(NICE)の指針は、洗浄で取る場合、処置の直前から最長5日前まで軟化剤を使うことを勧めています[7]。
日本の医療機関では、重曹(炭酸水素ナトリウム)とグリセリンを含む点耳液などが使われます。ただし、鼓膜に穴があると、液が中耳に入ってしまいます。点耳薬は、必ず医師が鼓膜を確認してから、指示された回数と日数で使ってください。
- 1手のひらで温めてから冷たい液が耳に入ると、めまいを起こすことがあります。
- 2耳を上にして横になる指示された量を入れ、数分そのままの姿勢で液をなじませます。
- 3出てきた分は入口だけ拭く綿棒を奥へ入れる必要はありません。
- 4痛み・めまい・耳だれが出たら中止使うのをやめて、処方した医師に連絡してください。
ステップ4 「一度で取る」——受診を1回で終わらせる工夫
耳鼻咽喉科では、顕微鏡や内視鏡で見ながら、吸引や鉗子(かんし)、必要なら洗浄で耳垢を取ります。見ながら行うので、奥に別の病気がないかも同時に確かめられます。受診の負担を減らすために、次の準備が役に立ちます。
- 1事前に軟らかくしておく受診日に合わせて点耳薬を使っておくと、固い耳垢でも1回で取れる見込みが高まります。
- 2主治医に紹介状を書いてもらう血をさらさらにする薬、糖尿病、耳の手術歴、認知症の程度が伝わると、耳鼻科側も処置を計画しやすくなります。
- 3補聴器とお薬手帳を持って行く補聴器の汚れや合い方も、一緒に見てもらえます。
- 4混み具合と移動手段を先に確かめる電話で空いている時間帯を聞き、車いすや介護タクシーの手配をしておきます。
- 5普段の聞こえを知る人が付き添う本人が説明できない分、家族や介護職が「いつから、どんなふうに」を伝えます。
どうしても通院が難しい場合は、往診や訪問診療に対応している耳鼻咽喉科もあります(数は限られます)。主治医やケアマネジャーに相談してください。在宅医が自宅で取ることもありますが、顕微鏡や吸引の設備がない環境では、見えやすく軟らかい耳垢に限るのが安全です。
英国のNICE指針は、訓練を受けた地域の看護師などが、電動の洗浄器や吸引を使って地域で耳垢を取る体制を想定し、手押しの注射器による洗浄は行わないよう求めています[7]。日本ではこうした仕組みはまだ一般的ではなく、在宅療養中の方の耳垢を「だれが、どこで取るか」は、これからの課題です。
ステップ5 「聞こえを確かめる」
耳垢を取ったら、その日のうちに、呼びかけへの反応やテレビの音量が変わったかを確かめてください。変わらなければ、耳垢とは別に加齢による難聴があると考えられます(SECTION 08で説明します)。
SECTION 07 家でしないこと・最初から耳鼻科に任せたい人
家でしないこと
- 1綿棒や耳かきを奥まで入れる耳垢を押し込み、外耳道や鼓膜を傷つけます。米国のガイドラインも、綿棒などで耳の中を掃除しすぎないよう患者に伝えることを求めています[4]。
- 2ピンセットや先の硬い道具で塊をつまむ見えない奥で皮膚をはさんだり、鼓膜を傷つけたりします。
- 3イヤーキャンドル(耳に立てるろうそく)を使う米国のガイドラインは、はっきり勧めていません[4]。
- 4自己判断で油や液体を耳に入れる鼓膜に穴があったり、耳の手術を受けたことがあったりすると危険です。
- 5動いてしまう人に耳かきを続ける急に頭を動かした拍子に、奥まで入る事故が起きています[14,15]。
最初から耳鼻咽喉科に任せたい人
次に当てはまる方は、家での処置や在宅での洗浄は避け、最初から耳鼻咽喉科で見ながら取ってもらうのが安全です。米国のガイドラインが「対応を変えるべき要因」として挙げる項目と、英国の指針が洗浄を避けるべきとする項目をもとにまとめました[4,7]。
| 当てはまること | 理由 |
|---|---|
| 鼓膜に穴がある・耳の手術を受けたことがある | 液や水が中耳に入り、感染やめまいを起こすおそれがあります |
| 最近、耳だれや中耳炎・外耳炎があった | 炎症を悪化させるおそれがあります |
| 糖尿病がある・免疫が落ちている(抗がん剤治療中など) | 処置のあとに、外耳道の重い感染を起こすことがあります |
| 血をさらさらにする薬を飲んでいる | わずかな傷でも出血しやすくなります |
| 頭や首に放射線治療を受けたことがある | 外耳道の皮膚が弱くなっていることがあります |
| 片方の耳しか聞こえない | その耳を傷つけたときの影響が大きくなります |
| 外耳道が狭い・骨の出っ張りがある | 器具が届きにくく、傷つけやすくなります |
- 1耳の痛み・腫れ外耳炎や中耳炎のことがあります。耳には何も入れずに受診してください。
- 2耳だれ・出血鼓膜や外耳道の傷、感染が考えられます。
- 3急に片方の耳が聞こえなくなった突発性難聴は早く治療を始めることが大切で、厚生労働省も早期受診を呼びかけています[16]。耳垢のせいと決めつけないでください。
- 4強いめまい・ふらつき耳以外の病気のこともあります。
SECTION 08 耳垢を取ったあと——聞こえと認知症の本当の関係
耳垢を取っても聞こえが戻らない方は少なくありません。高齢者の難聴そのものが、とても多いからです。国立長寿医療研究センターの縦断研究では、聞こえの良い側の耳で25dB以上の難聴がある人の割合は、75〜79歳で男性71.4%・女性67.3%、80歳以上で男性84.3%・女性73.3%でした。全国の65歳以上の難聴者は、約1,570万〜1,660万人と推計されています[11]。
難聴と認知症の関係は、近年とくに注目されています。ランセット誌の認知症委員会は2024年の報告で、14の「変えられる危険因子」にすべて対処できれば、世界の認知症の約45%を予防するか遅らせられる可能性があるとし、なかでも難聴と中年期のLDLコレステロール高値を、それぞれ約7%と最も大きな因子に挙げました[12]。
では、補聴器で聞こえを補えば認知機能の低下は防げるのでしょうか。70〜84歳の977人を、補聴器と聞こえのカウンセリングを受ける群と、健康教育を受ける群に分けたACHIEVE試験では、3年間の認知機能の低下に、参加者全体では差がつきませんでした。一方、もともと認知症のリスクが高い人たち(238人)に限ると、低下の速さが48%ゆるやかでした[13]。
この3つは、大きさを比べられる数字ではありません。7%は「社会全体の認知症のうち、難聴に関連する割合」の推計、48%は「リスクの高い一部の人たちでの、低下の速さの違い」、+0.7点は「耳垢を取った人の検査点数の平均変化」です。対象も、測っているものも、研究の型も違います。
3つから共通して言えるのは、聞こえを放っておかないことには意味があるが、耳垢を取ったり補聴器をつけたりすれば認知症が治る、とまでは言えないということです。
国と自治体の動き
厚生労働省老健局は、市町村向けに「難聴高齢者の早期発見・早期対応等に向けた手引き」を作成し、改訂版を含む調査研究の成果を、2025年(令和7年)7月18日の事務連絡で自治体に周知しています[17]。2026年(令和8年)3月25日の「難聴への対応に関する連絡会議」では、「難聴が認知症のリスクであるとの指摘への対応」が意見交換事項とされ、「軽度・中等度難聴の診療の手引き」の作成(令和7年度厚生労働科学研究)も示されました[16]。
聞こえが戻らないときにできること
- 1補聴器相談医のいる耳鼻咽喉科で相談する福岡市消費生活センターも、聞こえにくくなったら補聴器相談医がいる耳鼻咽喉科を受診し、補聴器が必要かどうか相談するよう勧めています。補聴器は聴力に合わせた細かな調整が必要で、慣れるまで最低でも3か月程度は使い続けることが必要とされています[19]。
- 2集音器と補聴器の違いを知る集音器はすべての音を一律に大きくしますが、補聴器は使う人に合わせて調整します。目的に合っているかを確かめてから選びましょう[19]。
- 3費用の支援を確かめる聴覚障害で身体障害者手帳の対象になれば、補装具費の支給を受けられます[20]。高齢者の補聴器購入を独自に助成する市町村もありますが、内容は自治体ごとに違うため、区役所や地域包括支援センターで確かめてください。
- 4話し方と環境を整える正面から、口元が見える位置で、ゆっくりはっきり話す。テレビを消してから話しかける。大きな声を出すより、近づいて話すほうが伝わります。
当院の視点——「取れるか」の前に「聞こえているか」を見る
在宅医療の現場で耳垢の相談を受けるとき、当院が大切にしていることを4つにまとめます。
- 1「取って」の前に、まず耳の中を見る訪問診療の際に明かりで耳の中を確かめ、耳垢が原因なのか、外耳炎や中耳炎など別の理由なのかを見分けてから、進め方を決めます。「耳垢のせい」と決めつけないことが、最初の安全策です。
- 2奥の耳垢は、原則として耳鼻咽喉科で取ってもらう認知症の方は処置中に急に頭を動かすことがあり、ご自宅では顕微鏡や吸引も使えません。鼓膜や外耳道の状態まで確かめてもらえる安全さを優先し、奥で固まった耳垢は原則として耳鼻咽喉科にお願いしています。
- 3受診が「1回で終わる」ように、行く前を整える軟らかくしておく、紹介状に服薬や持病を書く、補聴器を持って行く。受診前の準備で、通院の負担はかなり減らせます。段取りはご家族と一緒に考えます。
- 4取ったあとの「聞こえ」まで見届ける耳垢を取っても聞こえが戻らなければ、加齢による難聴への対応に進みます。「呼んでも返事をしない」を認知症の進行と決めつけず、まず聞こえを疑う——ご家族と共有したい視点です。
SECTION 09 場面別の早見表
| こんなとき | まずすること | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 入口に耳垢が見える | 入浴後にタオルや綿棒で入口だけ拭う | 奥まで入れる・強くこする |
| 奥に茶色や黒っぽい塊が見える | 訪問時に医師・看護師へ伝える | 耳かきやピンセットで取ろうとする |
| 呼びかけへの反応が鈍い・テレビの音が大きい | 耳の中の確認を依頼する | 「認知症が進んだ」と決めつける |
| 補聴器がピーピー鳴る | 耳垢と補聴器の汚れを確かめてもらう | 音量を上げてしのぐ |
| 耳をしきりに触る・かく | 皮膚の炎症も含めて診てもらう | 耳かきでかき出す |
| 処置中に頭を動かす・嫌がる | 無理に続けず、医療者に任せる | 押さえつけて続ける |
| 耳だれ・痛み・出血がある | 耳掃除をやめて受診する | 綿棒で拭き続ける |
| 急に片方の耳が聞こえなくなった | 早めに耳鼻咽喉科を受診する | 耳垢のせいと様子を見る |
| 糖尿病・血をさらさらにする薬・耳の手術歴がある | 家での処置は避け、耳鼻科に任せる | 自己流の点耳や洗浄 |
| 点耳薬を処方された | 指示の回数と日数を守り、横向きで数分なじませる | 冷たいまま入れる・自己判断で延長する |
| 耳鼻咽喉科を受診する | 紹介状・お薬手帳・補聴器を持って、普段を知る人が付き添う | 軟らかくせず、準備なしで受診する |
| 取ったのに聞こえが戻らない | 補聴器相談医のいる耳鼻咽喉科で相談する | 「年のせい」とあきらめる |
SECTION 10 よくある質問
SECTION 11 ご利用・採用のご案内
- 通院が難しくなった方のご自宅・施設に、医師が定期的にうかがいます。
- 緩和ケア、難病、精神科、認知症の診療に力を入れています。
- 耳や聞こえの困りごとも、まず訪問時にご相談ください。必要に応じて耳鼻咽喉科へおつなぎします。
訪問できる地域やご利用の流れは、お電話でお問い合わせください。
https://fukurou.fukuoka.jp/
- 主治医の指示のもとで、体調管理やお薬、床ずれなどのケアを行います。
- 点耳薬の介助や耳まわりの清潔、聞こえの変化の観察も、日々のケアの中で担います。
- リハビリ職による、ご自宅でのリハビリにも対応します。
ご利用には主治医の指示書が必要です。ケアマネジャーを通じてのご相談も受け付けています。
https://nurse-fukurou.jp/
入職祝い金は、人材紹介会社を通さずに直接ご応募いただいた方が対象です。
SECTION 12 参考文献
- 厚生労働省医政局長通知「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」医政発第0726005号、平成17年7月26日. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2895&dataType=1&pageNo=1
- 厚生労働省医政局長通知「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その2)」医政発1201第4号、令和4年12月1日.
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」2025年3月(厚生労働省ホームページ掲載). https://www.mhlw.go.jp/content/001728796.pdf
- Schwartz SR, Magit AE, Rosenfeld RM, et al. Clinical Practice Guideline (Update): Earwax (Cerumen Impaction). Otolaryngol Head Neck Surg. 2017;156(1_suppl):S1-S29. doi:10.1177/0194599816671491. PMID: 28045591.
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- 厚生労働省「難聴に関する取組について(全体像)」第9回 難聴への対応に関する連絡会議 資料1、令和8年3月25日. https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001680120.pdf
- 厚生労働省老健局 事務連絡「難聴高齢者の早期発見・早期対応等に向けた手引きの活用に関する調査研究事業の成果に関する周知について」令和7年7月18日.
- Yoshiura K, Kinoshita A, Ishida T, et al. A SNP in the ABCC11 gene is the determinant of human earwax type. Nat Genet. 2006;38(3):324-330. doi:10.1038/ng1733. PMID: 16444273.
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- 福岡市「補装具の給付」. https://www.city.fukuoka.lg.jp/fukushi/syougaisyashien/health/hosougu.html
本記事の情報は2026年9月29日時点のものです。個別の症状や処置については、主治医にご相談ください。

