決めるとき、決めたあと:親の施設の選び方

親の施設の選び方第10回/全10回
決めるとき、決めたあと

見学の見どころ、契約書の落とし穴、そして最期まで

最終回です。ここまで9回かけて、住まいの種類、手続き、お金、医療を並べてきました。 条件が決まったら、いよいよ見に行きます。 この回では、見学で何を見るか、契約書のどこを読むか、 そして決めたあとに家族がやることを書きます。 最後に、いちばん先送りにされやすい話——最期をどこで迎えるか——に触れて、連載を閉じます。

この連載の現在地 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 第10回 決めるとき、決めたあと

この回の結論

  1. 見学は時間帯を変えて2回行ってください。1回目は説明を聞く時間、2回目は夕方以降。案内のない時間の様子が、その施設の実力です。
  2. 契約書でまず読むのは「出るとき」の条件です。入るときの説明は丁寧でも、退去の条件は聞かなければ出てきません。
  3. 決めたあとにも仕事があります。話し合いを繰り返し、その都度、文書にまとめておくこと。国のガイドラインが、そう定めています。

SECTION 01 見学は、時間帯を変えて2回

見学の予約を入れると、たいてい午前中か午後の早い時間を案内されます。 職員がいちばん多く、入居者も活動している時間です。 それは悪いことではありません。ただ、そこだけを見て決めるのは危ないということです。

図1 見学は2回。見るものが違う 1 1回目——説明を聞く(平日の日中) 重要事項説明書をもらい、費用の内訳を出してもらう。職員体制を数で聞く。 医療の体制(かかりつけ医を続けられるか、訪問診療を入れている入居者はいるか)を聞く。 退去の条件が契約書のどこに書いてあるか、指してもらう。 体験入居ができるか聞く。 2 2回目——様子を見る(夕方以降、できれば食事の時間) 職員が少なくなる時間の空気を見る。呼び出しに何分で人が来るか。 においがしないか。テレビの音だけが大きく響いていないか。 職員が入居者にどう話しかけているか。ここがいちばん正直に出ます。 食事の様子(形態、量、介助のしかた、時間のかけ方)。 2回目は「近くまで来たので」と言って、予約なしで立ち寄る方法もあります。断られる施設は、それ自体が答えです。

図1 案内されている時間ではなく、案内されていない時間を見る。それが見学の本体です。

言葉ではなく、五感で見る

  • におい排泄物のにおいがこもっていないか。強い芳香剤でごまかしていないか。においは、おむつ交換の頻度と換気の状態を正直に映します。
  • 大音量のテレビだけが鳴っていて、人の声がしない。呼び出しのブザーが鳴りっぱなしになっている。これは人手が足りていないサインです。
  • 職員の言葉づかい入居者を子ども扱いしていないか。名前で呼んでいるか。目線の高さを合わせているか。第7回で触れたユマニチュードは、まさにこの部分の技術です。
  • 居室に私物があるか写真、使い慣れた湯のみ、着慣れた服。個人の持ち物がある部屋は、その人の暮らしが続いている部屋です。何もない部屋が並んでいたら、理由を聞いてください。
  • 掲示物の日付行事の予定表やお知らせの日付が古いまま貼られているなら、そこは動いていません。
  • 入居者の表情と姿勢車いすに座らされたまま、全員が同じ方向を向いてテレビを見ている時間が長くないか。

SECTION 02 数で聞く——住まいの種類ごとの質問

ここまでの各回で「聞いてください」と書いてきた質問を、一枚にまとめます。 数字で答えてもらうのがコツです。 「しっかり対応しています」ではなく「夜勤は2人です」という答えを引き出してください。

 聞くことなぜ聞くのか
どの住まいでも夜間は職員が何人いますかいちばん人手が薄い時間の実力がわかります
看護職員は何時から何時までいますか「看護師がいます」は日中だけのことが多いです(第9回)
いま入居している同じくらいの要介護度の方は、月いくら払っていますかパンフレットの月額は、介護を使わない前提の額です(第4回)
入浴は週に何回ですか。時間は何分ですか暮らしの質に直結し、人手の余裕も見えます
どういう状態になったら、退去をお願いすることになりますか契約書のどこに書いてあるか、指してもらってください
有料老人ホーム・
サービス付き高齢者向け住宅
特定施設の指定を受けていますか「介護付」と名乗れるかどうかの分かれ目です(第4回)
外部の訪問介護やデイサービスを使っている方はいますか併設事業所だけで固まっていないかを見ます(第4回)
いまのケアマネジャーを続けられますか変更を求められる場合は理由を聞いてください
特別養護老人ホーム配置医は週に何回来ますか医療の手厚さの実際がわかります(第5回)
看取りのときに来てもらえる医療機関は決まっていますか特養で外部の医師が入れるのは、末期のがんと看取りの30日間だけです(第9回)
グループホーム訪問診療や訪問看護を入れている入居者はいますか医療との付き合い方を知っているかがわかります(第7回)
体験利用はできますか少人数の共同生活が合うかどうかは、試さないとわかりません
介護老人保健施設どういう状態になったら退所の話になりますか家に帰ることを目指す施設です(第6回)
退所後の主治医への情報提供はしてもらえますか省令が施設に求めていることです(第6回)
すべての施設で昨年、この施設で何人を看取りましたか答えられる施設と、そうでない施設がはっきり分かれます

表1 見学で聞く質問。全部を一度に聞く必要はありません。 最後の1問(昨年何人を看取ったか)は、施設の姿勢がいちばん出る質問です。

SECTION 03 契約書で最初に読むのは、「出るとき」

契約の説明は、入るときの話が中心になります。 月額はいくら、サービスはこれこれ、入居の日はいつ。 けれども、あとで家族を苦しめるのは、ほとんどが出るときの条件です。 重要事項説明書の読みどころは第4回の表2にまとめました。ここでは契約書の側を見ます。

  • 退去を求められる条件福岡市の指導指針は、設置者の側から契約を解除できる条件について「信頼関係を著しく害する場合に限るなど入居者の権利を不当に狭めるものとなっていないこと」と定めています。「医療が必要になったら」「入院が◯日を超えたら」といった書き方になっていないか、確かめてください。
  • 要介護状態になったときの住み替え一般居室から介護居室や提携ホームに移る契約になっている場合は、医師の意見を聴くこと、本人または身元引受人等の同意を得ること、一定の観察期間を設けることを、契約書か管理規程に明らかにしておくことになっています。家賃の差額が出る場合の扱いも確認してください。
  • 前払金の返還第4回の図2のとおりです。入居開始可能日より前なら全額返還、入居後3か月以内なら日数分だけ差し引いて返還、それ以降は想定居住期間に応じて日割り。想定居住期間が何か月なのかを、契約書で確かめてください。
  • 敷金家賃の6か月分を超えないこと、退去時に原状回復費用を除いて全額返還すること、と福岡市の指針は定めています。
  • 利用料の改定のルールどういうときに、どういう手続きで値上げできるのか。契約書か管理規程に書かれているはずです。
  • 身元引受人の権利と義務連帯保証を求められるのか、緊急連絡先なのか。個人の根保証契約を結ぶ場合は、極度額(上限額)の設定を含めて民法の規定に従うことになっています。
気をつけること

福岡市の指導指針は、消費者契約法についても注意を促しています。 事業者の損害賠償の責任を免除する条項、消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項、 消費者の利益を一方的に害する条項は、無効となる場合があるため、 契約書の作成に十分留意すること、と。

つまり、契約書に書いてあるからといって、すべてが有効とは限りません。 「退去時に一律◯十万円」「事故があっても施設は責任を負わない」。 こうした条項に違和感があったら、署名する前に相談してください。 福岡市消費生活センターの消費生活相談は092-781-0999、 月曜から金曜の9時から17時、第2・第4土曜は10時から16時(電話相談のみ)です。

SECTION 04 家族の役割を、先に分ける

決まったあとに起きる問題の多くは、施設ではなく家族の側で起きます。 誰が何をするのかを決めていないからです。入居前に、次の4つを決めてください。

  • 決める人治療の方針や住み替えを、最終的に誰が判断するのか。本人の意思が確認できるうちに、本人に決めてもらってください。あとで述べる人生会議の話です。
  • 払う人誰の口座から、いくら出るのか。きょうだいで分担するなら、その割合と期間を紙にしてください。口約束は必ず崩れます。
  • 通う人面会、洗濯物、日用品の補充。近くに住む人に負担が偏りやすいところです。遠方のきょうだいは、その負担を金銭や手続きで引き受ける、といった分け方があります。
  • 連絡先になる人施設からの電話を受ける人です。1人に決めておかないと、伝わらない、あるいは二重に伝わる事故が起きます。ただし、決めるのは1人でも、決まったことは全員で共有してください。

SECTION 05 合わなかったとき——住み替えは失敗ではありません

入ってみて合わない、ということは起こります。 そのとき、いきなり次の施設を探す前に、順番があります。

  • まず、施設に言う入浴の回数、食事の形態、居室の場所、職員との相性。多くは調整できます。言わないまま我慢して、限界がきてから動くのがいちばん損です。
  • ケアマネジャーに間に入ってもらう言いにくいことは、専門職から伝えてもらったほうが通ります。ケアマネジャーは変えることもできます(第2回)。
  • 医療の側から足せないか考える第9回で書いたとおり、住まいがサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム、グループホームなら、訪問診療や訪問看護を入れることで住み続けられる場合があります。「医療が必要になったから出る」とは限りません。
  • それでも合わないなら、動く合わない住まいに我慢して住み続ける必要はありません。ただし、次の行き先を決めてから動いてください。相談先はいきいきセンターふくおか、ケアマネジャー、区の福祉・介護保険課です。
医療の目で見ると

ただし、第7回で書いたとおり、認知症のある方にとって、住み替えそのものが負担になります。 短い期間に二度、三度と場所が変わると、そのたびに混乱が強くなり、 食事量が落ち、体力が落ちていきます。

ですから、動くかどうかを決めるときには、 「移ることで得られるもの」と「移ること自体の負担」を、両方はかりにかけてください。 判断に迷うときは、いま診てもらっている医師に相談してください。 本人の体力がどのくらい残っているかは、家族より医療者のほうが見えていることがあります。

SECTION 06 最期をどこで迎えるか——人生会議

最後に、いちばん先送りにされる話をします。 施設が決まると、家族はほっとします。そして、その先の話をしないまま時間が過ぎます。 けれども、いつかは決めなければならない日が来ます。そしてその日には、 たいてい本人がもう自分で決められなくなっています。

国は、この話し合いを人生会議と呼んでいます。 厚生労働省のガイドラインは、こう定めています。

医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療・ケアを受ける本人が 多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、 本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが 最も重要な原則である。
また、本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し、 伝えられるような支援が医療・ケアチームにより行われ、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要である。 出典:厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(改訂 平成30年3月)1

大事なのは「繰り返し」という言葉です。 一度決めて終わりではありません。気持ちは変わります。変わってよいのです。 そして同じガイドラインは、話し合った内容をその都度、文書にまとめておくことも求めています。

制度のしくみ

同じガイドラインは、本人の意思が確認できなくなった場合についても定めています。 家族等が本人の意思を推定できる場合は、その推定意思を尊重して本人にとっての最善の方針をとる。 推定できない場合は、本人に代わる者として家族等と十分に話し合い、本人にとって何が最善かを判断する。

だからこそ、ガイドラインはこうも述べています。 「この話し合いに先立ち、本人は特定の家族等を自らの意思を推定する者として 前もって定めておくことも重要である」。 つまり、「自分で言えなくなったら、この人に決めてほしい」を、本人に決めておいてもらうということです。

なお、このガイドラインは、生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死を対象としていません。 話し合うのは、そういうことではありません。

何を聞いておくのか

いきなり「最期はどうしたい」とは聞けません。次の4つを、折を見て少しずつ聞いてください。

  • どこで過ごしたいか家がいいのか、いまの施設でいいのか、病院がいいのか。「痛いのはいやだ」「にぎやかなところがいい」といった言葉でも、十分に手がかりになります。
  • 食べられなくなったとき、どうしたいか点滴をするか、胃ろうをつくるか、口から食べられる分だけにするか。ここは家族がいちばん悩むところなので、本人の言葉を残しておく価値があります。
  • 具合が悪くなったとき、救急車を呼んでほしいか第9回で書いたとおり、その中間の場面をどうするか。決めておくと、夜中に慌てずに済みます。
  • 自分で言えなくなったら、誰に決めてほしいかガイドラインが「前もって定めておくことも重要」としている部分です。きょうだいの間で揉めないための、いちばん確かな備えでもあります。
福岡市の場合

第9回で紹介した福岡市のパンフレットに、「早わかり在宅医療(看取り編)」があります。 在宅医療のはじめかたから看取りまでを解説したもので、無料です。 市役所1階の情報プラザ、いきいきセンターふくおか、働く人の介護サポートセンター、 各区保健福祉センターの地域保健福祉課などで配布しており、市のホームページからPDFでも読めます。

家族だけで話すのが難しいときは、この冊子を机の上に置いて、 「こういうのをもらってきた」と切り出すやり方があります。 パンフレットを口実にするほうが、本人も話しやすいことが多いのです。

また、契約や解約でトラブルになったときは、 福岡市消費生活センターの消費生活相談(電話 092-781-0999)が使えます。 高齢者の契約トラブルの相談を受けている窓口です。

在宅医の視点

10回を通して、いちばんお伝えしたかったこと。

この連載は、施設を勧めるために書いたものではありません。 第3回にまるごと1回を使って「まだ自宅でいける」を書き、 第9回にまるごと1回を使って「どの住まいなら医療が続くか」を書きました。 施設の紹介だけをするなら、この2回は要りません。 それでも書いたのは、選択肢を知らないまま決めてしまう家族を、 私たちが実際にたくさん見てきたからです。

10回を通して繰り返してきたことが、ひとつだけあります。 「悪くなったとき、どこまでここで診てもらえますか」と聞いてください、ということです。 第1回の署名でも書きましたし、各回で形を変えて書いてきました。 パンフレットにも比較サイトにも載っていないこの一問が、 1年後、2年後にいちばん効いてきます。

そして、決めたあとも道は閉じていません。 合わなければ変えられます。医療は外から足せます。順番を間違えたら戻れます。 いちばんしてはいけないのは、ひとりで抱え込んで、限界まで我慢することです。 福岡市には、いきいきセンターふくおかが57か所あります。相談は無料です。 介護のことも、医療のことも、まずそこに電話してください。

私たちは、ご自宅にも、有料老人ホームにも、サービス付き高齢者向け住宅にも、 グループホームにも伺っています。 住まいが変わっても、医療は続けられます。 どこで暮らすかを決めるとき、その先の医療のことも一緒に考えられるように。 この連載が、その手がかりになれば幸いです。

この回のチェックリスト(第10回ぶん)

  • 見学に、時間帯を変えて2回行った
  • 夜間の職員数と、看護職員がいる時間を、数字で聞いた
  • いま入居している同じくらいの要介護度の方の実際の月額を聞いた
  • 退去を求められる条件が契約書のどこにあるか、指してもらった
  • 前払金がある場合、返還の算定方式と想定居住期間を確認した
  • 身元引受人に何を求められるのかを確認した
  • 「昨年、何人を看取りましたか」と聞いた
  • 家族の役割(決める人・払う人・通う人・連絡先)を分けた
  • 本人に「自分で言えなくなったら誰に決めてほしいか」を聞いた
  • 話し合った内容を、日付を入れて紙に残した

この回で出てきた福岡市の窓口

電話番号と受付時間は変わることがあります。最新の内容は各ページでご確認ください。

  • いきいきセンターふくおか(福岡市地域包括支援センター)市内57か所。介護のことで迷ったときの最初の相談先です。相談は無料/案内ページ住所別の一覧
  • 福岡市消費生活センター(消費生活相談)契約や解約でトラブルになったとき/電話 092-781-0999(月曜から金曜 9時から17時、第2・第4土曜 10時から16時は電話相談のみ)/消費生活センターのページ
  • パンフレット「早わかり在宅医療(看取り編)」無料。在宅医療のはじめかたから看取りまで/パンフレットのページ(PDFもあります)
  • 福岡市 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の重要事項説明書見学の前に読めます/重要事項説明書の一覧
  • お住まいの区の福祉・介護保険課介護保険の手続き全般。電話番号は第8回の窓口欄に7区分を載せています
利用のご案内

自宅でも、施設に移ってからでも、医療は続けられます。

ふくろう訪問クリニックは、福岡市早良区の在宅医療のクリニックです。 ご自宅はもちろん、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームへも医師が伺います。 通院が難しくなってきた、施設に移るので主治医を探している、退院後の行き先を決めたい。 どの段階のご相談でもかまいません。ご家族だけでのお問い合わせも歓迎します。

ふくろう訪問クリニック(訪問診療) 福岡市早良区荒江2-6-37 第2渡辺ビル1階
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ふくろう訪問看護リハビリステーション 看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が伺います。
お電話:092-834-8581(平日 9:00〜18:00)
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訪問看護は、ふくろう訪問クリニック以外がかかりつけの方でもご利用いただけます。 主治医を変える必要はありません。

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ふくろう訪問クリニック 入職祝い金20万円直接応募限定 医師(常勤・非常勤)/看護師/医療事務
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入職祝い金は、クリニック・ステーションのどちらも20万円です。 人材紹介会社を通さず直接ご応募いただいた方が対象になります。 見学だけでも歓迎します。訪問の経験がない方、ブランクのある方もご相談ください。

Q&A よくある質問

Q本人を見学に連れて行くべきですか。
Aできれば連れて行ってください。住むのは本人です。ただし、いきなり「ここに入るかもしれない」と言うと拒否感が強く出ることがあります。「見学だけ」「お茶を飲みに行く」といった形で、まず場所に慣れてもらう方法があります。体験入居ができる施設なら、それがいちばん確かです。福岡市の指導指針も、有料老人ホームに対して体験入居の機会の確保を求めています。
Qきょうだいで意見が割れています。
Aよくあることです。多くの場合、割れているのは「どの施設か」ではなく「誰がどれだけ負担するか」です。第1回の決める順番のとおり、状態・お金・医療の3つを紙に書き出して、事実を共有するところから始めてください。そのうえで、本人の希望を軸にします。それでも折り合わないときは、ケアマネジャーやいきいきセンターふくおかに同席してもらうと、話が前に進むことがあります。
Q「最期の話」を本人にするのが怖いです。
A正面から切り出す必要はありません。テレビでそういう場面が出たとき、知人の話が出たとき、パンフレットをもらってきたとき。きっかけを使って、少しずつでかまいません。ガイドラインも「繰り返し行われることが重要」としています。一度で決めなくてよいのです。また、医師や看護師から切り出したほうが話しやすいこともあります。訪問診療や訪問看護が入っている場合は、その場で相談してみてください。
Qこの連載を読み返すとしたら、どこから読めばよいですか。
Aいま困っている段階によります。何から始めればよいかわからないなら第1回と第2回。まだ自宅で頑張れそうなら第3回。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を見に行くなら第4回。特別養護老人ホームを考えるなら第5回。退院の話が出ているなら第6回。認知症があるなら第7回。お金が不安なら第8回。そして、どの段階の方にも読んでいただきたいのが第9回です。この下に全10回の一覧があります。

REFERENCE 参考資料

  1. 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(改訂 平成30年3月)(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197701.pdf
  2. 厚生労働省「『人生会議』してみませんか」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html
  3. 福岡市「福岡市有料老人ホーム設置運営指導指針」令和7年2月1日(契約内容等、体験入居、消費者契約の留意点)(https://www.city.fukuoka.lg.jp/fukushi/jigyousyasido/health/00/05/documents/07yuryoushishin.pdf
  4. 老人福祉法(昭和38年法律第133号)第29条、老人福祉法施行規則(昭和38年厚生省令第28号)第21条(前払金の返還)(https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000133
  5. 福岡市「福岡市消費生活センター」(https://www.city.fukuoka.lg.jp/shimin/shohiseikatsu/life/syouhiseikatusentauhoumupeiji/shohi.html
  6. 福岡市「パンフレット『早わかり在宅医療』、『早わかり在宅医療(看取り編)』、『早わかり在宅医療(費用と制度編)』」(https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/chiikiiryo/health/hayawakarizaitakuiryou.html
  7. 福岡市「いきいきセンターふくおか(福岡市地域包括支援センター)」(https://www.city.fukuoka.lg.jp/fukushi/chiikihoken/health/00/04/4-030101-1_2.html
本記事は、公開されている法令・通知・自治体の資料をもとに、施設選びに必要な範囲を整理したものです。 費用の目安や制度の取扱いは、改定や個々の事情によって変わります。実際の手続きや金額は、 お住まいの区の窓口、地域包括支援センター(福岡市では「いきいきセンターふくおか」)、 担当のケアマネジャー、各施設に必ずご確認ください。 治療やお体のことについては、かかりつけ医にご相談ください。