「今年のインフルエンザは早いらしい」「何歳から市の助成で打てるの?」「高齢者向けの新しいワクチンができたと聞いたけれど…」。秋になると、ご本人やご家族からこうした質問が増えます。
2026年秋の福岡市では、インフルエンザの報告数が9月のうちから増え、9月下旬には注意報の基準を超えました。この記事では、福岡市の発表、日本感染症学会の提言、厚生労働省の資料、海外の研究をもとに、65歳以上の方の今シーズンのワクチン接種と、在宅で療養している方・ご家族の備えをまとめました。
SECTION 01 結論:今年は早めの接種を
流行がすでに始まっています
福岡市の報告数は9月下旬に注意報の基準(10)を超え、10月4日までの1週間は13.20でした[1]。接種を考えている方は、早めに予約しましょう。
65歳以上は福岡市の定期接種で1,500円
期間は2026年10月1日〜2027年3月31日、1回接種です。生活保護や市県民税非課税世帯の方などは、書類を出せば自己負担がかかりません[2]。
今季は3価の標準量ワクチン
高齢者向けの高用量ワクチンは、75歳以上の定期接種に加える予定でしたが、国内の製造・供給の問題で今季の導入は見送られました[3]。
ワクチンの大きな役割は重症化を防ぐこと
打っても、かかることはあります[4]。熱が出たら早めに相談し、同居するご家族や介護する方も接種を考えましょう。
SECTION 02 2026年秋の流行状況:福岡市は9月から増加
インフルエンザの流行は、決められた医療機関(定点)から1週間に報告される患者数の平均、「定点当たり報告数」で見ます。福岡市では、この数が10以上になると「注意報」、30以上になると「警報」の目安とされています[5]。
福岡市の定点当たり報告数は、9月はじめの4.43から毎週増え、第39週(9月21日〜27日)に11.03と注意報の基準を超えました。第40週(9月28日〜10月4日)は13.20で、同じ週の福岡県全体は8.97、全国は11.35でした[1]。
図1 福岡市のインフルエンザ定点当たり報告数(2026年第36〜40週)
棒の長さが1週間の報告数。点線は注意報の基準(10)です。
出典:福岡市 感染症発生報告数(定点報告)[1]。2026年10月8日時点の公表値。
(第40週)
(第40週)
(第40週)
昨シーズン(2025/26年)は、11月ごろからA型(H3N2)による大きな流行があり、年明けからはB型が広がる「二つの山」になりました。日本感染症学会は、このシーズンの推計受診者数を約2,245万人とし、近年と同じかそれ以上の大きな流行だったとしています[3]。厚生労働省は、例年の流行のピークは1月末〜3月上旬で、ワクチンは12月中旬までに打ち終えるのが望ましいとしています[4]。今年はすでに9月から患者が増えているため、それより前倒しで考えるとよいでしょう。福岡市は、ワクチンの効果が出るまで接種後約2週間かかり、効果は約5か月続くとしています[2]。
SECTION 03 高齢の方にワクチンが勧められる理由
インフルエンザは、多くの人では1週間ほどで治ります。しかし高齢の方や免疫が落ちている方では、細菌による肺炎を起こすなどして、重くなることがあります[4]。寝込んだあとに体力や足腰が弱り、もとの生活に戻るまで時間がかかることもあります。
ワクチンには、かかるのをある程度防ぐ効果と、かかっても重くなるのを防ぐ効果があります。ただし、はしかや風しんのワクチンほど高い予防効果は期待できず、打ってもかかることはあります[4]。どのくらい効くのかについては、いくつかの数字が示されています。
国内の高齢者施設での研究
高齢者福祉施設に入所している方では、発病を34〜55%、死亡を82%防いだという報告があります(1999年度の研究)[4]。
ランダム化比較試験のまとめ
65歳以上を対象としたランダム化比較試験をまとめた分析(コクランレビュー)では、1シーズンにインフルエンザにかかる人が6%から2.4%に減ると推定されました。ただし根拠の確かさは「低い」とされ、死亡は小規模な1試験しかなく判断できず、入院についてはデータがありませんでした[6]。
昨シーズン序盤のイングランドの調査
ワクチンの株と流行株のずれが心配されたシーズンでも、成人(高齢の方に限らない)の救急受診・入院を32〜39%減らしていたと報告されています(接種から間もない時期の推定)[7]。
研究によって、対象(施設に入所している方か、地域で暮らす方か)、何を数えたか(発病・検査で確かめた感染・入院・死亡)、そのシーズンにワクチンの株と流行した株がどれくらい合っていたか、研究の方法が違うためです。インフルエンザワクチンの効果は毎年同じではありません。それでも、学会は高齢の方に毎年の接種を強く勧めています[3]。
SECTION 04 福岡市の定期接種(2026年度)
65歳以上の方などのインフルエンザワクチンは、予防接種法にもとづく「定期接種(B類)」です。費用の一部を市が負担しますが、受けるかどうかはご本人が決めます。福岡市でも、ご本人が希望する場合だけ接種するとしています[2]。
図2 定期接種の対象かどうかの目安(福岡市)
左があてはまる状況、右が接種の区分です。年齢は接種する日で判断します。
出典:福岡市「令和8年度 高齢者のインフルエンザ定期予防接種を実施します」[2]をもとに作成。
| 項目 | 内容(福岡市・2026年度) |
|---|---|
| 期間 | 2026年10月1日〜2027年3月31日(原則として月〜金曜日)。期間を過ぎると全額自己負担 |
| 回数 | 1回 |
| 自己負担 | 1,500円 |
| 自己負担なし | 生活保護を受けている方、中国残留邦人等の支援給付を受けている方、市県民税非課税世帯の方。接種日に確認書類を医療機関へ出す(後日の払い戻しはなし) |
| 場所 | 福岡市が指定した医療機関。かかりつけ医が市外にある、市外の病院に入院中などの場合は、福岡県内の広域化実施医療機関でも受けられます。福岡県外で受けるときは、事前に市の「予防接種実施依頼書」の手続きが必要です |
| 持ち物 | 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、介護保険被保険者証のいずれか)。60〜64歳の方は身体障害者手帳の写しか診断書 |
確認書類の例として、福岡市は介護保険料の通知書の写し(所得段階によるもの)、後期高齢者医療の資格確認書の写し(区分Ⅰ・Ⅱ)、介護保険負担限度額認定証の写しなどを挙げています。くわしくは福岡市のページか、お住まいの区の保健福祉センター健康課でご確認ください[2]。
新型コロナワクチンも、65歳以上の方などは同じ期間に定期接種として受けられます(福岡市の自己負担は8,000円、生活保護・市県民税非課税世帯などは免除)[8]。日本感染症学会は、高齢の方にはインフルエンザと新型コロナのワクチンの同時接種を積極的に勧めています[3]。今シーズンの新型コロナワクチンについては「コロナワクチン、2026-2027年シーズンはどれを打つ?」もご覧ください。
SECTION 05 今シーズンのワクチン:3価と高用量ワクチン
3価ワクチンになっています
日本のインフルエンザワクチンは、2025/26シーズンから、A型2種類(H1N1とH3N2)とB型1種類(ビクトリア系統)の「3価」になりました。2026/27シーズンも3価で、流行の予測にあわせて株が見直されています[3]。株は毎年変わるため、去年打った方も今年の接種が勧められます。
高用量ワクチンは今季の定期接種には入りません
高用量ワクチンは、1株あたりの抗原の量が標準のワクチンの4倍(60μg)あるワクチンで、日本では2024年12月に60歳以上を対象に承認されました。標準のワクチンが皮下注射なのに対し、筋肉内に注射します[9]。
米国とカナダの65歳以上約3万2千人を対象としたランダム化比較試験では、検査で確かめたインフルエンザが標準量の1.9%から高用量の1.4%に減り、標準量に比べた相対的な有効率は24.2%でした[10]。デンマークとスペインの大規模な試験をまとめた解析では、インフルエンザまたは肺炎による入院が8.8%少なかったと報告されています[9]。
国の審議会は、費用対効果がもっともよいとされた75歳以上を対象に、高用量ワクチンを定期接種に加える方針を了承していました[11]。しかし日本感染症学会によると、国内の製造・供給上の問題で2026/27シーズンからの導入は見送られ、2026年9月の時点で国内では発売されていません[3]。今シーズンは、これまでどおり標準量のワクチンを受けることになります。
高用量ワクチンを待つために接種を遅らせる必要はありません。流行がすでに始まっている今シーズンは、標準量のワクチンを早めに受けることが大切です。卵アレルギーがある方は「卵アレルギーの人はインフルエンザワクチンを打てない?」もご覧ください。
副反応と、接種を見合わせるとき
厚生労働省によると、打ったところが赤くなる・腫れる・痛むといった反応が10〜20%、熱・頭痛・寒気・だるさが5〜10%の方に出ますが、多くは2〜3日で治まります。まれにアナフィラキシーという強いアレルギー反応が起きることがあるため、接種後30分ほどは医療機関で様子をみます[4]。接種の日に熱がある方は受けられません[2]。体調がすぐれない日は無理をせず、日を改めましょう。
SECTION 06 在宅療養中の方と家族の備え
通院が難しく訪問診療を受けている方は、外出して人混みにいる時間が短い一方で、ご家族、ヘルパー、訪問看護師など、家に出入りする人からうつることがあります。かかると体力が落ちやすく、食事や水分がとれなくなって状態が変わることもあるため、早めの備えが役立ちます。
1. ご本人の接種は主治医に相談
訪問診療をしている医療機関の中には、自宅での接種に対応しているところがあります。定期接種として受けられるかどうかも含め、主治医にご相談ください。持病の状態や、ほかのワクチン(新型コロナ、肺炎球菌、RSウイルスなど)の予定も一緒に確認しておくと安心です[3]。
2. 同居する家族・介護する人も接種を
日本感染症学会は、高齢の方に加えて、介護をする方や医療従事者にも接種を勧めています[3]。ご本人が打っていても、まわりの人がかかれば持ち込むことがあります。介護をしている方の体調をくずさないためにも、ご家族の接種を考えましょう。
3. 熱が出たら早めに連絡
抗インフルエンザ薬は、熱などの症状が出てから48時間以内に使い始めると、熱の出ている期間を1〜2日短くするとされ、高齢の方など重症化しやすい方では重症化を防ぐ効果があるとされています[4]。使うかどうかは医師が判断します。夜間や休日の連絡先も含め、熱が出たときの連絡方法を主治医・訪問看護と前もって確かめておきましょう。
家でできる感染対策(チェックリスト)
- ✓家に入るとき、介護の前後に、石けんと流水で手を洗う(アルコールの手指消毒も)
- ✓熱やせきのある家族は不織布マスクをつけ、できるだけ別の部屋で過ごす
- ✓冬も暖房をつけたまま、窓を少し開けて換気する(対角線上の2か所を開けると効果的)
- ✓部屋の湿度を50〜60%に保つ
- ✓熱が出たときの連絡先(夜間・休日も)を電話の近くに貼っておく
換気・湿度・手洗いの目安は、厚生労働省の資料にもとづいています[4]。
SECTION 07 受診・相談の目安とよくある質問
厚生労働省は、高い熱が続く、息が苦しい、意識がおかしいといったときは、早めに医療機関にかかるよう呼びかけています[4]。次のようなときは、ためらわずに相談してください。
- 救急車を考える:呼びかけても反応が鈍いなど意識がおかしい、急に息が苦しくなった、顔色が明らかに悪い[12]
- その日のうちに主治医へ:熱が出た、せきやたんが増えた、水分や食事がとれない、いつもより元気がない
- 接種の相談:持病の治療中、以前ワクチンで強い反応が出た、ほかのワクチンとの間隔を知りたい
訪問診療・訪問看護を受けている方は、まず主治医や訪問看護の連絡先に電話してください。つながらないときや、命に関わると感じたときは119番です。救急搬送や延命の治療を望まないと決めている方は、そのようなときにどうするかを、主治医と前もって話し合っておきましょう。
Q. 去年打ったのですが、今年も必要ですか?
A. 毎年の接種が勧められています。株は毎年見直されていて、今シーズンも3価のワクチンが新しく作られています[3]。福岡市の定期接種も、今年度の期間中に1回受けられます[2]。
Q. 新型コロナのワクチンと同じ日に打てますか?
A. 日本感染症学会は、高齢の方には同時接種を積極的に勧めています[3]。体調や持病によって考え方が変わることもあるので、接種する医療機関で相談してください。
Q. 高用量ワクチンを自費で受けられますか?
A. 2026年9月の時点で、高用量ワクチンは国内で発売されていません[3]。今シーズンは標準量のワクチンを早めに受けることをおすすめします。
この記事の情報は2026年10月9日時点のものです。流行状況や接種の制度は変わることがあります。最新の情報は福岡市・厚生労働省の発表でご確認ください。
SECTION 08 ご利用・採用のご案内
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参考文献
- 福岡市. 福岡市感染症発生報告数(定点報告)2026年第40週(2026年10月8日更新). https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/hokensho/kansensho/kansenshojoho/chosa/teitenhoukoku.html
- 福岡市. 令和8年度 高齢者のインフルエンザ定期予防接種を実施します(2026年9月11日更新). https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/k-kanri/health/koreishainfluenza.html
- 日本感染症学会 インフルエンザ委員会. 2026/27シーズンに向けたインフルエンザワクチン接種に関する考え方とトピックス. 2026年9月18日. https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/influenza_260918.pdf
- 厚生労働省. 令和8年度冬季 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A(令和8年9月30日版). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2026.html
- 福岡市. 福岡市感染症情報(定点当たり報告数等解説)(2025年10月23日更新). https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/hokensho/kansensho/kansenshojoho/chosa/houkokukaisetu.html
- Demicheli V, Jefferson T, Di Pietrantonj C, et al. Vaccines for preventing influenza in the elderly. Cochrane Database Syst Rev. 2018;2(2):CD004876. doi:10.1002/14651858.CD004876.pub4. PMID: 29388197
- Kirsebom FCM, Thompson C, Talts T, et al. Early influenza virus characterisation and vaccine effectiveness in England in autumn 2025, a period dominated by influenza A(H3N2) subclade K. Euro Surveill. 2025;30(46):2500854. doi:10.2807/1560-7917.ES.2025.30.46.2500854
- 福岡市. 令和8年度新型コロナワクチン接種を実施します(2026年9月10日更新). https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/k-kanri/coronavaccine.html
- 日本感染症学会 インフルエンザ委員会. 高齢者に対する高用量不活化インフルエンザワクチンの使用について ~医療機関の皆様へ~. 2026年6月27日. https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/influenza_2606.pdf
- DiazGranados CA, Dunning AJ, Kimmel M, et al. Efficacy of high-dose versus standard-dose influenza vaccine in older adults. N Engl J Med. 2014;371(7):635-645. doi:10.1056/NEJMoa1315727. PMID: 25119609
- 厚生労働省. 第64回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料1-4「高用量インフルエンザワクチンについて」. 2026年2月12日. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001654126.pdf
- 厚生労働省. 上手な医療のかかり方「こんな時は迷わず119へ」. https://kakarikata.mhlw.go.jp/kakaritsuke/urgency.html

