小児のインフルエンザワクチンは2回必要?

「子どものインフルエンザワクチンは2回」。毎年秋になると当たり前のように言われますが、なぜ2回なのか、何歳まで2回なのか、1回ではだめなのか。この記事では、日本の決まり(何歳から・量はいくら・間隔はどれくらい)を整理したうえで、「2回必要」という話にどこまで強い根拠があるのかを、最新の研究と行政情報をもとに、できるだけ正直に説明します。

SECTION 01 結論を先に——3つだけ覚えてください

  1. 「2回」の根拠がいちばん強いのは、初めて打つ3歳未満の子どもです。51の研究を統合した2025年の解析では、初めて接種する3歳未満で、1回だけの有効率が14%、2回で41%と、2回目で約28ポイントの上乗せがありました。ここは「2回で正解」と言い切ってよい年齢帯です。
  2. 年齢が上がるほど、2回目の上乗せは小さくなります。同じ解析で9歳未満全体にすると1回35%・2回43%で、差は統計的に有意ではありませんでした。日本の実データでも、2回の効果がはっきりしていたのは小学校2年生までで、3年生以上では回数と効果の関係に一定の傾向がみられませんでした。WHOも米国も「9歳以上は1回」です。
  3. それでも、家庭で「うちは1回でいい」と決めるのはおすすめしません。日本の電子添文(添付文書)と日本小児科学会の指針は「13歳未満は2回」のままで、自治体の助成や副反応の救済もこの枠で動いています。B型に対しては2回のほうが効いたシーズンもあります。そして今シーズン(2026/27)は3株すべてが前年から変わり、8月下旬に全国で流行入りしています。迷うくらいなら、決まりどおり2回を、できるだけ早く始めるのが安全です。

SECTION 02 日本の決まり——何歳から・量はいくら・間隔はどれくらい

まず、いまの日本の「決まり」を確認します。注射の不活化ワクチン(インフルエンザHAワクチン)は、生後6か月から接種できます。年齢によって1回の量と回数が決まっていて、去年打ったかどうかは問いません。

図1 日本の不活化インフルエンザワクチン(注射)の決まり年齢で「1回の量」と「回数」が決まる。接種歴(去年打ったかどうか)は問わない年齢1回の量回数間隔・補足生後6か月〜3歳未満0.25 mL2回およそ2〜4週間あける(4週間が望ましい)3歳〜13歳未満0.5 mL2回およそ2〜4週間あける(4週間が望ましい)13歳以上0.5 mL1回医師が必要と判断した場合は2回も可2歳〜19歳未満(フルミスト)0.2 mL 点鼻1回注射ではなく鼻に噴霧する生ワクチン出典:インフルエンザHAワクチン電子添文、厚生労働省「インフルエンザワクチン(季節性)」、フルミスト点鼻液電子添文

図1 電子添文(添付文書)の用法・用量にもとづく整理。製品によっては「1歳以上」から適応のものもあり、6か月〜1歳未満はデンカ製(生研)など6か月以上の適応をもつ製剤を使う。

量が「0.25 mL」と「0.5 mL」に分かれている理由

2011年8月に、日本のワクチンの用法・用量が改められ、WHOの推奨量に合わせて子どもの量が増えました。それまでは6か月〜1歳未満が0.1 mL、1〜6歳未満が0.2 mL、6〜13歳未満が0.3 mLと、海外よりかなり少ない量でした。国内の臨床試験(6か月〜13歳未満の60人に、いまの量を21日間隔で2回接種)で、抗体の上がり方が欧州の基準を満たすことが確認されて、いまの「3歳未満は0.25 mL、3歳以上は0.5 mL」になっています。

間隔は「およそ2〜4週間」、望ましいのは4週間

電子添文には「およそ2〜4週間の間隔をおいて2回」と書かれ、注意として「免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましい」と添えられています。WHOと米国CDCは「4週間以上」です。つまり、最短で2週間、できれば4週間、4週間より長く空いても2回目は打ってよい(やり直しは不要)、という理解で大丈夫です。

13歳の線をまたいだら

1回目を12歳で打ち、2回目のときに13歳になっていた場合は、12歳として考えて2回目を打ってよい、と厚生労働省が示しています。13歳以上は原則1回ですが、基礎疾患などで免疫が強く抑えられている人は、医師の判断で2回になることがあります。

SECTION 03 なぜ「2回」なのか——免疫のしくみで考える

ワクチンの効き方には、「初めての出会い」と「二度目以降の出会い」で大きな違いがあります。インフルエンザウイルスに一度も出会ったことのない体(免疫学的に「ナイーブ」といいます)は、1回目のワクチンでは抗体が十分に上がらないことが多く、2回目でようやく防御に必要な量に届きます。1回目が「顔を覚える」、2回目が「本気で備える」というイメージです。

いっぽう、過去にワクチンを打ったことがある、あるいはインフルエンザにかかったことがある体は、すでに「顔を覚えて」いるので、1回で十分な抗体が上がります。大人が毎年1回でよいのはこのためです。

ここから、大事なことが2つ導かれます。

  1. 「2回必要」の本来の理由は、年齢ではなく「初めてかどうか」です。だからWHOと米国は、9歳未満で「初めて打つ子(またはこれまでに2回未満の子)」に限って2回、それ以外は1回、と定めています。
  2. ただし、小さい子ほど「初めて」である確率が高く、免疫の反応そのものも弱い。だから年齢で線を引く日本の方式にも、実務上の合理性はあります。問題は、その線をどこに引くか、その根拠はどれくらい強いか、です。

SECTION 04 エビデンスを年齢で分けて読む

「2回は必要か」という問いに一つの答えはありません。年齢で分けて読むと、はっきりしてきます。

3歳未満で初めて打つ子ども——2回の根拠は強い

2025年10月にJAMA Network Openに出た系統的レビューは、1998〜2024年に発表された51研究・41万5,050人分のデータから、「初めてインフルエンザワクチンを打つ9歳未満の子ども」で1回と2回を比べました。

図2 初めて打つ子どもで、2回目はどれくらい上乗せになるか51研究・41万5,050人の統合解析(Goldsmith 2025)。数字はワクチン有効率(発症を減らした割合)3歳未満で初めて接種1回だけ14%(95%CI −9.8〜33)2回41%(95%CI 29〜51)→ 差は約28ポイント。統計的にも意味のある差9歳未満全体で初めて接種1回だけ35%(95%CI 18〜48)2回43%(95%CI 34〜50)→ 差は8ポイントで、統計的に有意ではない0%25%50%75%100%出典:Goldsmith JJ, et al. JAMA Netw Open 2025;8(10):e2535250(不活化ワクチン、接種歴のない子ども)

図2 接種歴のない子どもを対象にした不活化ワクチンの有効率。3歳未満では2回目の上乗せが大きく、9歳未満全体では有意差なし。

3歳未満では、2回目によって有効率が14%から41%に上がりました。論文の記載では28ポイント(数値の丸めの関係で41−14=27ではなく28)の差で、統計的にも意味のある差です。一方、対象を9歳未満全体に広げると、1回35%・2回43%で、差は統計的に有意ではなくなりました。著者らは「3歳未満では2回目に追加の防御効果があるが、それより上の年齢では明確に示せなかった」とまとめています。データが足りず、3〜8歳を別に切り出した解析はできていません。

日本の実データ——小学校低学年までは2回の上乗せ、それ以上は傾向なし

日本には、慶應義塾大学小児科を中心とした研究グループが2013/14シーズンから毎年続けている、全国の病院・診療所での有効率調査があります。「日本では6か月〜12歳に2回が推奨されているが、それは適切か」を確かめるために、2013〜2018年の5シーズン分で回数別の効果を調べた論文があります。

図3 日本の実データ:2回接種で発症リスクはどれだけ下がったか(学年別)2013〜2018年の5シーズン、生後6か月〜12歳。未接種と比べたリスク低下(1−調整オッズ比)未就学児37%減(調整オッズ比 0.63、95%CI 0.59〜0.69)小学1年生25%減(0.75、0.67〜0.83)小学2年生19%減(0.81、0.71〜0.92)小学3年生以上回数と効果のあいだに一定の傾向なし0%10%20%30%40%50%同じ研究では1回接種でも発症・入院は減っており、B型に対しては2回のほうが効いたシーズンがあった出典:Shinjoh M, et al. Vaccine 2019;37(30):4047-4054

図3 未接種と比べた2回接種の発症リスク低下(調整オッズ比から換算)。学年が上がるほど差が縮み、小学3年生以上では一定の傾向がみられなかった。

結果は、未就学児で37%減、小学1年生で25%減、小学2年生で19%減と、学年が上がるほど2回の効果は小さくなり、3年生以上では回数と効果のあいだに一定の傾向がみられませんでした。同じ研究で、1回接種でも発症と入院は減っていました。著者らは「この結果はWHOの推奨(9歳未満で初めての子に2回)を支持する」と述べています。ただし、B型に対しては2回のほうが効いたシーズンがあったことも報告されています。

さらに新しいデータもあります。同じグループの2024/25シーズンの報告(1,351人)では、注射のワクチンの有効率は入院した子で73%、外来で57%と十分に高く、若い年齢ほど効果がはっきりしていましたが、「2回接種による追加の利益は認められなかった」とされています。2025/26シーズン(A型H3N2の亜系統Kが主流で、ワクチン株とずれていたシーズン)の報告では、入院した子での注射の有効率は43%、フルミストは81%(ただし接種者が少なく幅が広い)で、B型に対してはどちらも有意な効果が示せませんでした。

ここまでをまとめると

「2回必要」という言い方は、初めて打つ3歳未満ではしっかりした根拠があります。3〜8歳では、2回のほうがよさそうだが差は小さく、統計的にはっきりしない。9〜12歳では、2回目の上乗せを示す根拠はほとんどなく、WHOも米国も1回です。日本の「13歳未満は2回」という線は、効き目のデータというより、抗体価の研究にもとづく安全側の線引きです。

SECTION 05 日本と海外でルールが違う理由

図4 「2回」の線引きは国や機関で違う日本は年齢だけで決める。WHOと米国は「初めて打つかどうか」で決める日本(電子添文・厚労省)13歳未満:2回13歳以上:1回去年打っていても13歳未満は2回。理由は抗体価の研究(1回より2回のほうが高く上がる)WHO(2022年 position paper)9歳未満で初めて:2回それ以外:1回初めて打つ年に2回(4週間以上あける)。翌年からは毎年1回米国 CDC/小児科学会(2026/27)6か月〜8歳・過去に2回未満:2回9歳以上:1回これまでに合計2回以上打っていれば1回でよい。2回打つ場合は4週間以上あける出典:厚生労働省「インフルエンザワクチン(季節性)」、WHO Wkly Epidemiol Rec 2022;97:185-208、米国小児科学会(AAP)2026/27シーズンの案内

図4 同じ不活化ワクチンでも、「2回」の対象の決め方が違う。日本は年齢のみ、WHOと米国は接種歴を考慮する。

厚生労働省は、13歳未満を2回とする理由を「1回接種後よりも2回接種後の方がより高い抗体価の上昇が得られることから」と説明しています。つまり日本のルールは、発症をどれだけ防いだかという実地の効果ではなく、血液中の抗体の上がり方(免疫原性)を根拠にしています。抗体価は「効きそうか」の代用指標としては優れていますが、2回で抗体が高く上がることと、2回打った子が実際に発症しにくくなることは、同じではありません。図3で見たように、小学校高学年では後者がはっきりしないのです。

では、日本のルールは間違っているのでしょうか。私はそうは思いません。理由は3つあります。

  1. 「初めてかどうか」は現場で確かめにくい。母子手帳の記録が抜けていたり、去年打ったかどうか保護者の記憶があいまいだったりします。年齢だけで決めるルールは、間違いが起きにくい。
  2. B型や、ワクチン株とずれた年には2回が効く可能性がある。日本の研究でもB型に対しては2回のほうが効いたシーズンがあり、株が3つとも変わった今シーズンは、体にとって「初めての出会い」に近い状況です。
  3. 2回目の害はごく小さい。2回目で増えるのは主に注射部位の赤みや腫れで、重い副反応が2回目で増えるという証拠はありません(SECTION 08)。上乗せが小さくても、害がさらに小さいなら、安全側に倒す合理性があります。

SECTION 06 フルミスト(鼻に噴霧する生ワクチン)は年齢を問わず1回

2024/25シーズンから、鼻にスプレーする経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(商品名フルミスト点鼻液)が国内でも使えるようになりました。対象は2歳〜19歳未満、0.2 mLを左右の鼻に1噴霧ずつ、年齢にかかわらず1回です。弱めた生きたウイルスが鼻の粘膜で軽く増え、注射とは違うかたちで免疫をつけるため、初めての子でも1回でよいとされています。

図5 注射(不活化)とフルミスト(経鼻生ワクチン)、どちらにするか日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会の推奨(2025/26シーズン指針)にもとづく整理生後6か月〜2歳未満注射 2回フルミストは2歳未満に使えない2歳〜12歳(健康な子)注射 2回フルミスト 1回効果に明確な優劣はなく、どちらも同等に推13歳〜18歳(健康な子)注射 1回フルミスト 1回どちらも1回。痛みが苦手ならフルミストという選び方もあるぜんそくがある注射を推奨学会はぜんそくの子には注射を推奨家に免疫が弱い人・妊婦がいる注射を推奨フルミストのウイルスが周囲にうつる可能性がゼロではないため免疫不全・妊娠中・ゼラチンアレルギー注射のみ本人がこれに当てはまる場合、フルミストは使えない出典:日本小児科学会「2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」(2025年10月7日)

図5 日本小児科学会は2〜18歳の健康な子どもに注射とフルミストを同等に推奨。ぜんそく、周囲に免疫の弱い人がいる場合は注射を推奨。

日本小児科学会は、注射とフルミストのあいだに「インフルエンザ罹患予防効果に対する明確な優位性は確認されていない」として、2〜18歳の健康な子どもには同等に推奨しています。ただし、ぜんそくの子には注射を、そして「授乳中の人や免疫の弱い人が周囲にいる場合」も注射を推奨しています。フルミストのウイルスが、飛沫や接触で周囲にうつる可能性がゼロではないためです。2024/25シーズンのフルミスト接種率はまだ1〜2%程度で、日本での効果の評価はこれからです。

SECTION 07 今シーズン(2026/27)の事情——株が全部変わり、流行が早い

今シーズンのワクチンについて、行政の資料から確認できることを整理します。

  • 3価ワクチン:A型H1N1(A/スイス/6849/2025)、A型H3N2(A/ミシガン/105/2025)、B型ビクトリア系統(B/東京/EIS13-175/2025)の3株。B型山形系統は2020年3月以降検出されておらず、WHOの推奨からも外れています。
  • 3株とも前シーズンから変更:WHOの推奨(2026年2月27日)で、3株すべてが2025/26シーズンから入れ替わりました。
  • 供給量:約5,190万回分(注射0.5 mL換算とフルミスト0.2 mL換算の合算)で、近年の使用量を上回る見込み。9月5週(10月2日)時点で6割超が出荷される予定です。
  • 高用量ワクチン(エフルエルダ):60歳以上向けに承認されていましたが、供給困難で発売が延期され、2026年度の定期接種では使わないことになりました。子どもには関係ありません。
  • 流行の早さ:全国の定点あたり報告数は、2026年第34週(8月17〜23日)に1.11人と流行入りの目安(1.0人)を超え、第35週(8月24〜30日)は1.76人。福岡県は1.31人、福岡地区(福岡市と周辺)は1.85人でした。
図6 2回接種のスケジュール(2026/27シーズンの目安)抗体ができるまで約2週間。2回目から2週間後に「守られた状態」になるワクチン供給開始9月下旬〜10月1回目できるだけ早く2回目1回目の4週間後抗体がつく2回目の約2週間後流行の本番例年12月〜2月4週間あける(最短2週間)約2週間2026年の注意点全国のインフルエンザ患者は8月下旬に流行入りの目安(定点あたり1.0人)を超え、第35週(8月24〜30日)は1.76人、福岡地区は1.85人でした。ワクチンの供給が始まったら、1回目を先延ばしにしないことがいちばん大事です出典:厚生労働省 インフルエンザの発生状況(2026年第35週)、福岡県(令和8年第35週)、インフルエンザHAワクチン電子添文

図6 1回目を早く打ち、4週間後に2回目、その2週間後に抗体が整うのが理想。今年は例年より流行が早い。

「2回打つのに時間がかかるから、1回で済ませたい」という声を毎年聞きます。時間がかかるのは事実です。1回目から2回目まで4週間、2回目から抗体がつくまで2週間。合計6週間かかります。だからこそ、2回が必要な年齢の子ほど、ワクチンの供給が始まったらすぐ1回目を打つことが大事です。1回目だけでも、流行のあいだの一定の守りにはなります(図2の1回だけの有効率を思い出してください。ゼロではありません)。

費用について

子どものインフルエンザワクチンは予防接種法の定期接種ではなく任意接種で、費用は原則自己負担です。市区町村によっては小児の一部助成を行っているところがあります。福岡市の「子どもの予防接種」のページには小児インフルエンザの助成制度の記載はなく(2026年9月4日時点)、原則自己負担になります。お住まいの自治体の予防接種担当課にご確認ください。

SECTION 08 副反応と安全性——2回打つと2倍になる?

不活化ワクチンは感染性のないワクチンで、ワクチンでインフルエンザにかかることはありません。いまの用量で承認されたときの国内試験(60人)では、2回接種後の副反応は6か月〜3歳未満で53.3%、3〜13歳未満で93.3%と高い数字に見えますが、内訳は注射部位の赤み・熱感・しこり・腫れ・痛みといった局所反応が中心で、ほとんどが数日で消えるものです。3歳以上の数字が高いのは、量が0.5 mLと多く、本人が症状を訴えられる年齢だからです。

2回目で局所反応がやや増える傾向はありますが、アナフィラキシーなどの重い副反応が2回目で増えるという証拠はありません。発熱は乳幼児で1回目・2回目ともに数%〜10%台で、多くは1〜2日で下がります。

1回目でこういうことがあったら、2回目の前に相談を

接種後30分以内のじんましん・息苦しさ・ぐったり(アナフィラキシーが疑われる)、38.5℃以上の発熱が3日以上続いた、けいれんを起こした。この場合は、2回目を打つかどうかを含めて、かかりつけの小児科で相談してください。

当院の視点——「子どもの2回」は、家の中の大人を守る話でもある

ふくろう訪問クリニック(訪問診療)から

  1. 当院は子どもの予防接種を行う小児科ではありません。この記事は「かかりつけの小児科で、決まりどおり2回を早めに」と言うために書いています。1回か2回かを家庭で決めるより、小児科で「うちの子は初めてか、去年打ったか、ぜんそくはあるか」を伝えて決めてもらうほうが、ずっと確かです。
  2. 家に免疫の弱い人・高齢の療養者がいる家では、子どもの接種は家族の防波堤です。当院が診ている患者さんの多くは、抗がん剤治療中、がんの末期、難病、認知症の高齢者です。インフルエンザが家に入るときの入口は、たいてい保育園や学校に通う子どもです。この場合、注射(不活化)を選び、2回が必要な年齢なら2回、を強くおすすめします。周囲に免疫の弱い人がいる家でフルミストを避けるのは、学会の推奨でもあります。
  3. 「1回で済ませたい」保護者に、私たちが伝えていること。3歳未満で初めてなら、2回目で有効率が14%から41%に上がる(図2)。この年齢で1回にする理由はありません。小学校高学年で毎年打っている子なら、2回目の上乗せは小さい。それでも日本の決まりは2回で、2回目の害はごく小さい。「上乗せが小さいから打たない」より、「害が小さいから打っておく」が、この場合の考え方です。
  4. 今年は、始めるのが早いほど価値があります。8月下旬に流行入りし、3株すべてが前年から変わりました。ワクチンの供給が始まったら、1回目を先延ばしにしないこと。訪問看護で家に入るスタッフも、同じ理由で毎年接種しています。

SECTION 09 場面別の早見表

場面回数・種類ひとこと
生後6か月未満接種できない本人は打てない。同居の家族と、面倒をみる大人が打って守る。妊娠中の接種で生まれた赤ちゃんに抗体が渡る
6か月〜2歳、初めて注射 0.25 mL×2回2回目の上乗せがいちばん大きい年齢帯(14%→41%)。必ず2回
6か月〜2歳、去年2回打った注射 0.25 mL×2回海外なら1回相当だが、日本の決まりは2回。この年齢は免疫の反応も弱く、2回でよい
3〜8歳、初めて注射 0.5 mL×2回 または フルミスト 1回初めてなら2回。注射が苦手ならフルミスト1回という選択肢がある(ぜんそく・家族の状況に注意)
3〜8歳、去年も打った注射 0.5 mL×2回 または フルミスト 1回2回目の上乗せは小さいが、日本の決まりは2回。害は小さいので決まりどおりで
9〜12歳注射 0.5 mL×2回 または フルミスト 1回2回目の根拠がもっとも弱い年齢帯。ただし電子添文と学会指針は2回。自己判断で1回にせず、小児科で相談
1回目が12歳、2回目が13歳2回目も打つ12歳として2回目を打ってよい(厚生労働省)
13歳以上注射 0.5 mL×1回 または フルミスト 1回免疫が強く抑えられている人は医師判断で2回のことがある
ぜんそくがある注射学会はぜんそくの子には注射を推奨。回数は年齢どおり
家に抗がん剤治療中・移植後・妊婦がいる注射フルミストは避ける。子どもの接種が家族の防波堤になる
卵アレルギーがある原則接種できる国内の注射ワクチンの卵成分はごく微量。重いアレルギーの既往がある場合は、対応できる医療機関で
1回目のあとにインフルエンザにかかった回復後に相談かかった型と別の株への備えとして2回目を打つ意味はある。体調が戻ってから小児科で相談

SECTION 10 よくある質問

Q1.なぜ日本は「13歳未満」で、海外は「9歳未満」なのですか?

日本のルールは、1回より2回のほうが血液中の抗体が高く上がる、という国内の抗体価の研究を根拠にしています。WHOと米国は、実際に発症をどれだけ防いだかのデータをもとに、「9歳未満で初めて打つ子(またはこれまでに2回未満の子)」に2回、それ以外は1回としています。日本の実データでも2回の上乗せがはっきりしていたのは小学2年生までで、日本のルールは安全側に広く線を引いたものと考えると理解しやすいです。

Q2.間隔が4週間より空いてしまいました。1回目からやり直しですか?

やり直しは不要です。電子添文の「およそ2〜4週間」は目安で、「4週間が望ましい」というのは免疫効果の面での推奨です。空きすぎた場合は、そのまま2回目を打てば2回接種として完了します。逆に2週間より短い間隔で打ってしまった場合は、2回目として数えられない可能性があるので、小児科で相談してください。

Q3.1回目のあとにインフルエンザにかかりました。2回目は要りますか?

かかったのがA型なら、B型への備えは1回分しかできていない、という考え方ができます。ワクチンには3つの株が入っているので、かかった型と別の株への備えとして2回目を打つ意味はあります。体調が完全に戻ってからで構いません。かかりつけの小児科で相談してください。

Q4.2回打つと、副反応も2倍になりますか?

2倍にはなりません。2回目でやや増えるのは注射部位の赤みや腫れなどの局所反応で、重い副反応が2回目で増えるという証拠はありません。1回目で強い反応(接種後30分以内のじんましんや息苦しさ、3日以上続く高熱、けいれん)があった場合だけ、2回目の前に相談してください。

Q5.去年2回打ちました。今年は1回でよくないですか?

海外のルールならその考え方は正しく、日本の実データでも小学校高学年では2回目の上乗せは小さいです。ただ、日本の電子添文と日本小児科学会の指針は「13歳未満は2回」で、自治体の助成や副反応の救済もこの枠で動いています。B型やワクチン株とずれた年には2回が効く可能性があり、今年は3株すべてが変わっています。2回目の害はごく小さいので、家庭で1回に決めるより、小児科で「去年2回打った」と伝えたうえで相談するのがよいと思います。

Q6.新型コロナワクチンや他のワクチンと同じ日に打てますか?

打てます。6か月以上の子どもで、新型コロナワクチンと不活化インフルエンザワクチンは同時接種を含めて接種間隔の制限がありません。他のワクチンとの「2週間あける」という制限も撤廃されています。フルミストは生ワクチンなので、他の生ワクチン(MRなど)との間隔は小児科で確認してください。

SECTION 11 ご利用・採用のご案内

当院は訪問診療のクリニックで、子どもの予防接種は行っていません。お子さんのインフルエンザワクチンは、かかりつけの小児科でご相談ください。ご家庭に、通院が難しい高齢者や、がん・難病・認知症・精神疾患で療養中の方がいらっしゃる場合は、当院と訪問看護ステーションがご自宅での医療とケアを担います。

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SECTION 12 参考文献・資料

  1. 厚生労働省.インフルエンザワクチン(季節性)——接種回数・接種量に関するQ&A.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/influenza/index.html
  2. 厚生労働省 健康・生活衛生局感染症対策部予防接種課.2026/27シーズンの季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの供給等について.第40回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会 資料,2026年8月26日.https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001741995.pdf
  3. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会.2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針,2025年10月7日.https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20251022_2025-2026_infuru_shishin.pdf
  4. 日本感染症学会.2025/26シーズンに向けたインフルエンザワクチン接種に関する考え方とトピックス,2025年10月3日.https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/influenza_2501003.pdf
  5. インフルエンザHAワクチン「生研」電子添文(用法及び用量、7.1 接種間隔、17. 臨床成績).https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051008
  6. 一般財団法人阪大微生物病研究会.インフルエンザHAワクチン 用法及び用量変更のご案内,2011年8月.https://www.biken.or.jp/upload/wp-content/uploads/medical-file/201708/news_henkou201108.pdf
  7. Goldsmith JJ, Tavlian S, Vu C, Regan AK, Gibney KB, Campbell PT, Sullivan SG. Comparison of 2 doses vs 1 dose in the first season children are vaccinated against influenza: a systematic review and meta-analysis. JAMA Netw Open. 2025;8(10):e2535250. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.35250. PMID: 41042511.
  8. Shinjoh M, Sugaya N, Furuichi M, et al. Effectiveness of inactivated influenza vaccine in children by vaccine dose, 2013–18. Vaccine. 2019;37(30):4047-4054. doi:10.1016/j.vaccine.2019.05.090. PMID: 31186191.
  9. Shinjoh M, Tamura K, Yamaguchi Y, et al. Influenza vaccination in Japanese children, 2024/25: Effectiveness of inactivated vaccine and limited use of newly introduced live-attenuated vaccine. Vaccine. 2025;61:127429. doi:10.1016/j.vaccine.2025.127429. PMID: 40578174.
  10. Shinjoh M, Furuichi M, Sugimoto R, et al. Effectiveness of inactivated and live-attenuated influenza vaccines in children during the 2025–2026 influenza season with genetically distinct influenza A and B viruses. Vaccine. 2026(2026年6月オンライン公開).
  11. Chua H, Chiu SS, Chan ELY, et al. Effectiveness of partial and full influenza vaccination among children aged <9 years in Hong Kong, 2011–2019. J Infect Dis. 2019;220(10):1568-1576.
  12. World Health Organization. Vaccines against influenza: WHO position paper – May 2022. Wkly Epidemiol Rec. 2022;97(19):185-208.
  13. American Academy of Pediatrics. Preparing for the 2026-27 Influenza Season(2026年7月).https://www.aap.org/en/patient-care/influenza/preparing-for-flu-season/
  14. Centers for Disease Control and Prevention. ACIP Recommendations Summary — Influenza (Flu).https://www.cdc.gov/flu/hcp/acip/
  15. 福岡県.インフルエンザの流行状況についてお知らせします(令和8年第35週,2026年9月3日更新).https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/flu-2025-2026.html
  16. 福岡市.福岡市の予防接種(子どもの予防接種).https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/k-kanri/health/vaccine/kodomo-hukuokashinoyobousesshu.html
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ふくろう訪問クリニックは、福岡市早良区の在宅医療のクリニックです。 ご自宅はもちろん、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームへも医師が伺います。 通院が難しくなってきた、退院後の主治医を探している、施設に移るので医療をどうするか決めたい。 どの段階のご相談でもかまいません。ご家族だけでのお問い合わせも歓迎します。

ふくろう訪問クリニック(訪問診療) 福岡市早良区荒江2-6-37 第2渡辺ビル1階
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