「65歳になって肺炎球菌ワクチンのお知らせが届いたけれど、前に聞いた話と違う」「5年ごとに打ち直すものではなかった?」。高齢者の肺炎球菌ワクチンは、2026年4月から、定期接種で使うワクチンが変わりました。
この記事では、厚生労働省の資料、福岡市の案内、日本呼吸器学会などの合同委員会による「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版)」、国内外の研究をもとに、何が変わったのか、どう受ければよいのか、在宅で療養している方の注意点をまとめました。
SECTION 01 結論:変わったのは「ワクチン」と「自己負担」
定期接種のワクチンが「20価結合型」に
2026年4月1日から、高齢者の肺炎球菌の定期接種には「20価肺炎球菌結合型ワクチン」を使います。これまでの23価のワクチンは、定期接種では使えなくなりました。腕の筋肉に1回注射します[1][2]。
対象は「65歳の1年間」などで変わらず
対象は、65歳の方(65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日まで)と、60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能、またはHIVによる免疫の機能に重い障害がある方です。66歳以上の方への経過措置はありません[1][3][4]。
福岡市の自己負担は5,900円に
2026年3月までの4,200円から上がりました。生活保護を受けている方や市県民税非課税世帯の方などは、確認書類を出せば自己負担がかかりません[3]。
対象外の方は「任意接種」を主治医と相談
以前に定期接種で23価を受けた方や、66歳以上でまだ受けていない方には、自費で20価か21価の結合型ワクチンを受ける方法があると学会は示しています(以前に受けた方は1年以上あける)[5]。
SECTION 02 肺炎球菌とは:肺炎と「侵襲性」の感染症
肺炎球菌は、のどや鼻の奥にすみつくことがある細菌です。日本の高齢者の約5〜10%が保菌しているとされ、せきやくしゃみのしぶきでうつります。体の奥に入り込むと、肺炎や敗血症などの重い病気を起こすことがあります[1]。
国内の研究をまとめた分析では、成人が病院の外でかかる肺炎(市中肺炎)の原因として肺炎球菌が最も多く、全体の約2割を占めていました[6]。また、血液や髄液(脳や脊髄のまわりの液)など、本来は菌がいない場所から肺炎球菌が見つかる重い状態を「侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)」と呼びます[1]。
厚生労働省の人口動態統計(2025年・確定数)では、肺炎による死亡は84,021人で、死因の第5位でした。誤嚥性肺炎は肺炎とは別に数えられていて、64,396人で第6位です[7]。これらがすべて肺炎球菌によるものではありません。
誤嚥性肺炎は、肺炎球菌のほか、口の中にふだんからいる嫌気性菌(酸素の少ない場所で増える菌)なども原因になるとされています[8]。肺炎球菌ワクチンだけで、すべての肺炎を防げるわけではありません。口のケアや食べ方の工夫も大切です。くわしくは「誤嚥性肺炎を防ぐには?」をご覧ください。
SECTION 03 2026年4月から何が変わったのか
決まるまでの流れ
高齢者の肺炎球菌ワクチンは2014年10月から予防接種法の「定期接種(B類)」となり、23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(以下、23価)が使われてきました[4]。B類の定期接種は、ご本人が希望する場合に受けるものです[3]。
国の審議会では2025年7月に、定期接種のワクチンを20価肺炎球菌結合型ワクチン(以下、20価)に変えるのが妥当とされ、同年12月までに「対象者はこれまでどおり」「65歳を超える方への経過措置は今は設けない」「2026年4月1日から開始」とする方針が了承されました[9][4]。
厚生労働省は変更の理由として、ワクチンに含まれる型については結合型のほうが高い効果が期待できること、成人のIPDの原因になる型をカバーする割合は両者でおおむね同じだったこと、安全性はどちらも特段の懸念がないことを挙げています[1]。
肺炎球菌ワクチンの種類
肺炎球菌には100種類以上の「型(血清型)」があり、「20価」「23価」はワクチンに含まれる型の数です[1]。結合型は、菌の表面の成分(莢膜多糖体)にたんぱく質を結びつけたワクチンです。20価にはジフテリアの毒素を無毒化したもの(ジフテリアトキソイド)が含まれているため、ジフテリアトキソイドで強いアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こしたことがある方は受けられません[1]。
図1 高齢者に使われる肺炎球菌ワクチンの種類
左が一般名、右が2026年10月時点の扱いです。かっこ内は資料で使われる略称です。
出典:厚生労働省[1]、第36回ワクチン評価に関する小委員会資料[9]、日本呼吸器学会ほか「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版)」[5]をもとに作成。
国内の調査では、65歳以上のIPDの原因のうち、各ワクチンに含まれる型の割合は、2014〜2016年には20価で67%、23価で65%でしたが、2023〜2025年にはどちらも51%に下がりました。21価は79%と75%でした[9]。
(定期接種)
(任意接種)
(任意接種)
65歳以上のIPD(2023〜2025年、672例)のうち、各ワクチンに含まれる型の割合。出典:第36回ワクチン評価に関する小委員会資料[9]。
子どもへの結合型ワクチンの定期接種の影響で、大人のIPDの原因となる型が変わってきたとされ、21価はそうして増えた型に着目して作られたワクチンで、2025年8月に高齢者への使用が承認されました[9]。2026年9月の小委員会では、21価を高齢者に広く使うことの科学的な意義が認められ、具体的な進め方は基本方針部会で話し合われる予定です[10]。2026年10月時点で決定はなく、定期接種に使えるのは20価だけです[1]。
SECTION 04 あなたはどれ?受け方の目安
図2 肺炎球菌ワクチンの受け方の目安(福岡市・2026年度)
左があてはまる状況、右が接種の区分です。任意接種は全額自己負担です。
出典:福岡市[3]、厚生労働省の定期接種実施要領[2]、日本呼吸器学会ほか「考え方(第8版)」[5]をもとに作成。
定期接種の対象の方(65歳など)
定期接種の機会は65歳の1年間だけで、厚生労働省は、希望する方は機会を逃さないよう呼びかけています[1]。学会の考え方も、医療関係者が医学的な観点から定期接種を積極的に勧めることが必要だとしています[5]。福岡市では、65歳になった方に誕生月の月末にお知らせと予診票が届きますが、届く前でも65歳になれば受けられます[3]。
| 項目 | 内容(福岡市・2026年度) |
|---|---|
| 自己負担 | 5,900円(2026年3月31日までは4,200円) |
| 自己負担なし | 生活保護を受けている方、中国残留邦人等の支援給付を受けている方、市県民税非課税世帯の方など。接種日に確認書類を医療機関へ出す |
| 対象外 | 以前に公費の助成を受けて23価を受けた方(助成は1回) |
| 場所 | 福岡市が指定した医療機関(「予防接種(高齢者用)実施医療機関」のステッカーが目印)や、福岡県内の広域化実施医療機関 |
| 持ち物 | マイナンバーカード、健康保険資格確認書、介護保険被保険者証、運転免許証などのいずれか1つ。60〜64歳の方は身体障害者手帳の写しか診断書。届いた予診票 |
表は福岡市の案内をもとにまとめました。確認書類の種類や医療機関の一覧は、福岡市のページか区の健康課でご確認ください[3]。
定期接種の対象ではない方
対象者でない方の接種や2回目の接種は、公費の助成がない任意接種になります[3]。学会の考え方では、次のように整理されています[5]。
- まだ一度も受けていない方:20価か21価の結合型ワクチンが考えられます。15価結合型のあと1〜4年以内に23価を打つ「連続接種」も選択肢です。
- 23価や、13価・15価・20価の結合型ワクチンを受けたことがある方:前の接種から1年以上あけて、20価か21価を受けることができます。23価をもう一度打つことは、原則として選択肢としないとされています。
- 以前に自費で受けたことがある65歳の方:お知らせが届いていない場合は、定期接種を受けられるか市区町村に問い合わせるのが望ましいとされています。
SECTION 05 どのくらい効く?研究からわかること
国の小委員会のまとめ(2025年)では、20価のワクチンで病気を防ぐ効果を直接確かめた知見はまだないものの、13価結合型ワクチンと比べて劣らない免疫のつき方が確認されていることから、13価の研究結果を当てはめて評価するのが妥当とされました[4]。これまでの主な研究は次のとおりです。
結合型(13価):オランダの大規模試験
地域で暮らす65歳以上の約8万4千人のランダム化比較試験で、ワクチンに含まれる型による市中肺炎は45.6%、同じ型のIPDは75.0%少なくなりました。原因を問わない肺炎全体は、はっきりとは減りませんでした[11]。
23価:国内の介護施設での1件の試験
介護施設に入所している1,006人を対象にした1件のランダム化比較試験で、1,000人あたり1年間の肺炎は、接種したグループで55件、偽薬のグループで91件、肺炎球菌による肺炎は12件と32件でした[12]。
23価:肺炎で受診した高齢者の研究
国内の複数の病院で、肺炎と診断された65歳以上の方を調べた研究では、肺炎球菌による肺炎を防ぐ効果は27.4%、ワクチンに含まれる型に限ると33.5%と推定されました[13]。
23価:国内のIPDの調査
成人のIPDを調べた国内の研究では、ワクチンに含まれる型のIPDを防ぐ効果は42.2%(65歳以上では39.2%)と推定されました[14]。
厚生労働省は、20価は型を問わないIPD全体の3〜4割程度を予防するという研究結果があると説明しています[1]。
対象(介護施設の入所者か、肺炎で受診した方か)、数えたもの(ワクチンに含まれる型の病気か、すべての肺炎か、IPDか)、研究の方法、ワクチンの種類が違うためです。また、肺炎球菌は市中肺炎の原因の約2割で、ワクチンに含まれる型はIPDの原因の約半分です。そのため「肺炎全体」への効果は、ワクチンに含まれる型への効果より小さくなります。介護施設の23価の試験では肺炎全体も少なくなっていましたが、対象の限られた1件の試験で、地域で暮らす方を対象にした結合型の大規模試験とは単純に比べられません。
SECTION 06 副反応と、ほかのワクチンとの同時接種
よくある副反応
20価の臨床試験では、打ったところの痛み(59.6%)、筋肉痛(38.2%)、だるさ(30.3%)、頭痛(21.7%)、関節痛(11.6%)などがみられました。打ったところの赤みや腫れは1〜10%です。頻度はわかっていませんが、ショック・アナフィラキシー(強いアレルギー反応)、けいれん、血小板減少性紫斑病が起こることもあります[1]。強いアレルギー反応は接種後すぐに起こることが多いため、厚生労働省はインフルエンザワクチンについて接種後30分間の安静を案内しています[15]。肺炎球菌ワクチンでも、自宅で受けた場合も含め、30分程度は安静にし、ご家族がそばで様子を見てください。
熱がある日や、重い急性の病気にかかっているときは受けられません。免疫不全と診断されている方、心臓・腎臓・肝臓・血液の病気がある方、けいれんを起こしたことがある方、予防接種のあと2日以内に発熱や全身の発疹などアレルギーが疑われる症状が出たことがある方、このワクチンの成分やジフテリアトキソイドにアレルギーを起こすおそれのある方、血小板が少ない方や血液が固まりにくい方、血液をさらさらにする薬(抗凝固薬)を使っている方は、接種の前に医師に伝えてください[1]。
インフルエンザなどと同じ日に受けられる?
国の定期接種実施要領では、2種類以上のワクチンを同じ日に打つ同時接種は、医師が特に必要と認めた場合にできるとされています[2]。高齢者の肺炎球菌ワクチンについては、ほかのワクチンとの接種間隔の決まりも置かれていません[4]。インフルエンザワクチンについては「高齢者のインフルエンザワクチン、今年はいつ打つ? 2026/27の要点」もご覧ください。
定期接種で健康被害が起きたと国が認めた場合は予防接種法の救済制度、任意接種の場合は医薬品副作用被害救済制度などの対象になります[1][15]。
SECTION 07 在宅で療養している方の受け方と備え
寝たきりの方や通院が難しい方も、65歳であれば定期接種の対象です。次のことを、ご家族と主治医で確認しておくと安心です。
1. 受けるかどうか、どこで受けるかを主治医と相談
訪問診療の医療機関の中には、自宅での予防接種に対応しているところもあります。定期接種として受けられるか、ほかのワクチンの予定も含めて主治医に相談しましょう。福岡県外で受ける場合や、市の指定医療機関・県の広域化実施医療機関以外で受ける場合(指定を受けていない医療機関による自宅での接種など)は、接種前に市の実施依頼書の発行を受ける必要があり、費用をいったん支払い、あとで払い戻しを受ける形になります[3]。
長い療養が必要な病気のために対象の年齢のうちに受けられなかったと認められる場合は、受けられるようになってから1年以内なら定期接種として受けられる特例があります(医学的な判断が必要。市に問い合わせます)[1]。
2. 体調のよい日を選ぶ
熱がある日は受けられません[1]。持病が落ち着いている時期を主治医と選びましょう。注射は原則として腕の筋肉に打ちますが、筋肉の量が明らかに少ない場合などは、太ももの外側に打つこともできるとされています[2]。
3. ご本人の意思を確かめる
高齢者の肺炎球菌ワクチンの定期接種は、ご本人が希望する場合に行うものです。福岡市は、本人の意思を確認できない高齢の方に、家族などが本人のために接種させる場合は、予防接種法による接種ではなく全額自己負担になるとしています[3]。認知症などで意思の確認が難しい場合は、ご家族や主治医の協力を得て、ご本人の意思を確かめます。はっきり確認できない場合は、定期接種としては受けられません[2][3]。
4. 接種の記録を残す
定期接種は1人1回です。予診票の控えや接種済証を保管し、お薬手帳などにも日付とワクチンの種類を書いておくと、入院や施設への入所のときに役立ちます。以前に受けたかわからない場合、福岡市では区の健康課で、定期接種の接種歴を照会できます[3]。
訪問診療で一般にできること
訪問診療では一般に、次のようなことを相談できます。
- 持病や体調をふまえた、予防接種を受けるかどうか・受ける時期の相談
- 熱やせき、元気がないなど、肺炎が疑われるときの診察と、自宅で治療を続けるか入院が必要かの判断
- 接種の記録を含めた、病院・訪問看護・ケアマネジャーとの情報共有
ふくろう訪問クリニックは、福岡市早良区の訪問診療クリニックです。通院が難しい方のご自宅に医師が伺い、定期的に診療しています。肺炎球菌ワクチンの受け方や、肺炎をくり返さないための備えについて気になることがあれば、ご相談ください。お電話・メールのほか、公式LINEでもご相談を受け付けています。
SECTION 08 受診・相談の目安とよくある質問
高齢の方の肺炎は、典型的な症状が出ず、「いつもと様子が変」「ぼーっとする時間が多い」「食欲がない」といった変化で見つかることもあります[16]。次のようなときは、ためらわずに相談してください。
- すぐに119番:呼びかけへの反応が鈍い、急に息が苦しくなった、接種のあとに息苦しさや顔・唇の腫れが出た(この場合は、まず119番)
- 救急車を呼ぶか迷うとき:福岡県の救急医療電話相談(#7119、24時間。#7119がつながらない電話からは092-471-0099)で、看護師に受診の緊急度を相談できます[17]
- その日のうちに主治医へ:熱が出た、せきやたんが増えた、食事や水分がとれない、いつもより元気がない
- 接種した医療機関へ:接種後に打ったところの腫れや痛みが強い、熱が続く[1]
119番の項目以外で、訪問診療・訪問看護を受けている方は、まず主治医や訪問看護に連絡してください。夜間・休日の連絡先も前もって確かめておきましょう。
Q. 5年ごとに打ち直すものだと聞きました。
A. 学会は、23価をもう一度打つことは原則として選択肢としないとしています[5]。結合型(13価)の効果は少なくとも4〜5年続くと報告されています[4]。以前に23価や13価・15価・20価を受けた方は、1年以上あけて20価か21価を受けることができるとされています[5]。
Q. 64歳のときに自費で23価を受けました。65歳の定期接種は受けられますか?
A. 改めて接種する必要がないと認められる場合は、定期接種として受けられません[2]。前の接種の記録を用意して、区の健康課か主治医に相談してください。
Q. 66歳を過ぎてしまいました。もう公費では受けられませんか?
A. 2026年10月時点で、65歳を超える方への経過措置はありません[4]。任意接種として20価か21価を受ける方法があります[5]。65歳を超える方の接種の機会(経過措置)についても、今後、基本方針部会で話し合われる予定です[10]。
この記事の情報は2026年10月時点のものです。制度や接種の考え方は変わることがあります。最新の情報は厚生労働省・福岡市の発表でご確認ください。
SECTION 09 ご利用・採用のご案内
ふくろう訪問クリニック
福岡市早良区の訪問診療クリニック
- 通院が難しい方のご自宅に医師が伺い、定期的に診療します
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参考文献
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- 厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部長通知. 「予防接種法第5条第1項の規定による予防接種の実施について」の一部改正について(感発0331第5号、別添 定期接種実施要領). 2026年3月31日. https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260413H0020.pdf
- 福岡市. 令和8年度 高齢者の肺炎球菌定期予防接種について(2026年4月1日更新). https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/k-kanri/health/vaccine/koreishahaienkyuukin.html(2026年10月閲覧)
- 厚生労働省. 第74回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 資料1「高齢者に対する肺炎球菌ワクチンについて」. 2025年12月19日. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001616906.pdf
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