白血病などの治療で骨髄移植(造血幹細胞移植)を受けたあと、「子どものころに受けた予防接種を、もう一度全部受け直してください」と言われることがあります。母子健康手帳にはきちんと記録が残っているのに、なぜやり直しなのか。ドナーの免疫を引き継ぐのではないのか。そして、その費用は誰が払うのか。2026年6月、この問題をめぐる国の議論が6年ぶりに動きました。医学と制度の両側から整理します。
SECTION 01 結論——先に3つだけ
SECTION 02 免疫は「薄れる」のではなく、工場ごと入れ替わる
予防接種で得た免疫が消える理由として、多くの方が「時間がたって抗体が薄れた」と想像されます。移植の場合は、そこが根本的に違います。
抗体をつくり続けているのは、骨髄のなかにすみついた形質細胞という細胞です。同種移植では、まず前処置(大量の抗がん剤や全身放射線照射)で患者さん自身の血液をつくる細胞を減らし、そこにドナーの造血幹細胞を入れます。ドナー由来の細胞が生着すると、白血病細胞だけでなく、予防接種で免疫を獲得していた患者さん自身の免疫細胞も、免疫学的に排除されていきます。厚生労働省の審議会資料は、この過程をこう説明しています——ドナー由来の免疫担当細胞はワクチンに暴露されていないため、臨床的には予防接種歴がリセットされた状態になる、と。
つまり、抗体が減ったのではなく、抗体をつくる工場が別の会社のものに入れ替わり、その新しい会社は過去の製造記録を一切持っていない、という状態です。母子健康手帳の記録が無効になるわけではありませんが、体のほうがその記録を忘れてしまっている、と考えるとイメージしやすいかもしれません。
出典:第34回 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会 資料3(2026年6月19日)/日本造血・免疫細胞療法学会「造血細胞移植ガイドライン 予防接種 第4版」(2023年12月)。なお自分の細胞を戻す自家移植では、こうした免疫学的な排除は起こりません(詳しくはSECTION 10)。
SECTION 03 どれくらいのスピードで消えるのか
抗体が実際にどう減っていくかは、いくつもの研究で追跡されています。国内の岡山大学のグループは、成人の同種移植を受けた方で、移植前と移植2年後の抗体保有率を比べました。
出典:Yoshida S, et al. Acta Med Okayama 2022;76(3):247-253. doi:10.18926/AMO/63718
減り方には特徴があります。欧州のグループが移植後の抗体を長期に追跡した古典的な研究では、麻しんとおたふくかぜについて、10年で抗体保有率が10%程度まで下がると報告されました。しかもこの研究では、自然にかかって免疫を得た人よりも、予防接種で免疫を得た人のほうが早く抗体を失い、麻しんでは4年ほどで0%になったとされています。抗体が消えやすい条件として挙げられたのは、若年であること、病気にかかった経験がなくワクチンだけで免疫を得ていること、そしてII度以上の急性GVHD(移植片対宿主病)があることでした。
ワクチンを打ち直さないままだとどうなるか。国内の別の報告では、成人の同種移植を受けた方が移植6年後に防御レベルの抗体を保っている割合は、麻しん44%未満、風しん36%未満、おたふくかぜ10%未満と推定されています。
SECTION 04 免疫が戻るまでにかかる時間
「じゃあ、退院したらすぐ打てばいいのでは」とはなりません。ワクチンは、それに反応できる免疫細胞が体内にそろって初めて効きます。そして細胞の種類によって、戻ってくるスピードがまるで違います。
出典:Ogonek J, et al. Front Immunol 2016;7:507. PMID 27909435/日本造血・免疫細胞療法学会「造血細胞移植ガイドライン 予防接種 第4版」(2023年12月)
ここで効いてくるのが年齢です。新しいT細胞を送り出す胸腺は、思春期以降に少しずつ縮んでいきます。同じ移植を受けても、小児は成人より免疫の回復が速いのはこのためです。ガイドラインは、70歳では胸腺上皮の空間が小児の10%以下になっていることに触れつつ、それでもT細胞の産生自体は続くと記しています。
最近の研究では、細胞の数だけを見ていては足りないことも分かってきました。2025年に報告された解析では、移植6か月の時点でCD4陽性T細胞が200/μLを超えていた人は58%、12か月では78%まで増えていました。ところが遺伝子の発現パターンを見ると、6か月時点で機能が落ちていた遺伝子の78%以上が、12か月たってもまだ回復していなかったのです。数が戻っても、働きはもう少し遅れて戻ってくる、ということになります。
SECTION 05 ドナーの免疫は引き継ぐのか
ここが、患者さんやご家族からいちばん多く尋ねられるところです。「ドナーさんは麻しんの抗体を持っているはずだから、その免疫を引き継いだのではないですか」と。
答えは、「一部は引き継ぐ。しかし、あてにはできない」です。
引き継ぐ、という証拠はある
2025年に報告されたフランスの多施設試験は、この点を偶然に近いかたちで示しました。成人の同種移植を受けた104人(年齢中央値58歳)に、移植から中央値11か月の時点で6種混合ワクチンを打つ研究です。ところが接種を始める前の時点で、すでに防御レベルの抗体を持っている人が一定数いました——ジフテリア25.3%、B型肝炎42.6%、Hib(インフルエンザ菌b型)32.6%、ポリオ71.6%。研究チームはこう考察しています。骨髄破壊的な前処置でも記憶B細胞のすべてが壊れるわけではないこと、そしてドナーから移植された細胞のなかに記憶B細胞が含まれていた可能性がある、と。
さらに直接的な証明が、2024年に発表されました。ドナーのB細胞だけを取り出して移植後の患者さんに輸注する第1/2a相試験です。15人に移植後およそ5か月の時点でドナーB細胞を入れ、その7日後に5種混合ワクチンを接種したところ、抗体をつくる細胞が動員され、抗体価が上がりました。決定的だったのは遺伝子解析です。反応して出てきた細胞の遺伝子配列をたどると、それらはドナーの記憶B細胞のクローン由来だった——つまり、ドナーの「記憶」が患者さんの体内でたしかに働いていました。
それでも、標準治療にはならなかった
では、なぜドナーに前もってワクチンを打っておかないのでしょうか。実際、その試みは1990年代から繰り返されてきました。
代表的なのが2004年の研究です。85人を3群に分け、ドナーに移植20日前に接種する群と、しない群を比べました。結果は抗原によってはっきり分かれました。Hibのような結合型ワクチンと破傷風トキソイドでは、ドナー接種を加えた群の抗体値がいちばん高くなりました。一方、多糖体だけの抗原(肺炎球菌の莢膜多糖体など)と、体が初めて出会う抗原(B型肝炎表面抗原)では、ドナーに打っても患者さんに打っても、ほとんど上乗せがありませんでした。
出典:Epaulard O, et al. PLoS One 2025;20(10):e0335224. PMID 41144397/Storek J, et al. Bone Marrow Transplant 2004;33:337-346/Winkler J, et al. Blood Adv 2024;8(10):2373-2383. doi:10.1182/bloodadvances.2023012305
加えて、ドナーは病気を治す側ではなく、善意で細胞を提供してくださる健康な方です。その方に、ご自身には何の医学的利益もない予防接種を追加でお願いすることには、倫理的なハードルがあります。米国血液学会と米国移植・細胞療法学会は、新型コロナワクチンについて明確に「幹細胞採取前のドナー接種が患者さんに一貫した利益をもたらすことは示されておらず、推奨しない」としています。
SECTION 06 「打ち直し」ではなく「初回接種」として組み立てる
英国の3学会が2022年にまとめた共同声明は、この考え方を一文で言い切っています——移植を受けた人は「一度もワクチンを受けたことがない(never vaccinated)」とみなし、包括的な再接種の一式を提供する。米国感染症学会(IDSA)のガイドラインも同じ立場です。
ですから「1回打てば思い出す」のではなく、乳児期と同じように、複数回に分けて基礎免疫からつくり直します。順番と時期には決まりがあります。
出典:日本造血・免疫細胞療法学会「造血細胞移植ガイドライン 予防接種 第4版」(2023年12月)。学会ホームページからスケジュール作成用のエクセルテンプレートが公開されています。
なお、鼻に噴霧するインフルエンザワクチン(フルミスト)は弱毒生ワクチンで、移植後の安全性と有効性のデータがないため、移植後には使うべきでないとされています。移植後の方には注射のインフルエンザワクチンを用います。
SECTION 07 打ち直すと、どれくらい効くのか
手間も費用もかかる打ち直しですが、効果はどうでしょうか。さきほどのフランスの多施設試験の数字を見てみます。移植後の成人104人に、6種混合ワクチンを0・1・2か月と12か月の計4回接種しています。
出典:Epaulard O, et al. PLoS One 2025;20(10):e0335224. doi:10.1371/journal.pone.0335224 ※副反応は軽微で、接種部位の痛み18〜27%、発熱1〜3%、倦怠感3〜5%でした。
5つすべてで9割を超えるか、それに近い水準に達しました。研究チームは「移植後1年以内に開始しても十分に免疫がつく」と結論しています。
33研究1,914人をまとめた総説では、移植後の反応率はインフルエンザ10〜97%、肺炎球菌43〜99%、四種混合やHib 26〜100%、B型肝炎40〜94%、麻しん・おたふくかぜ・風しん19〜72%と、幅がきわめて広く報告されています。さきほどの「9割超」とは、一見して食い違って見えます。理由は4つあります。
まとめると、条件を整えて適切な時期に打てば高い確率で効く。ただし、条件が悪ければ効かないこともある——これが実像です。だから接種後の抗体価測定が推奨される場面があります。
SECTION 08 打ち直さなかったとき、何が起きたか
「打たなくても、まあ大丈夫では」という感覚は、国内で一度、はっきり否定されています。
2001年に国内で麻しんが流行した際、日本小児血液学会の造血細胞移植委員会が全国の骨髄バンク認定施設に調査票を送りました。回収率98%(170/174施設)という、実態をほぼ反映した調査です。結果は、21施設で移植後の麻しん発症が37例、うち3例(8.1%)が死亡。死因は3例とも間質性肺炎でした。発症は移植後平均3.2年(6か月〜10年1か月)と幅広く、亡くなった3例はそれぞれ移植後7か月、18か月、28か月でした。年齢分布は20歳未満と20歳以上が2対1で、成人の死亡例も含まれていました。
この調査が行われた当時、予防接種を実施していた移植施設は18%にとどまっていました。移植後の麻しんによる死亡率は、健康な人のそれより100〜300倍高いと報告されています。
肺炎球菌も同様です。国内の後方視的研究では、同種移植後の侵襲性肺炎球菌感染症の発生頻度は10万移植あたり1,008件と高く、その多くはワクチン未接種の方に起きていました。しかも発症までの中央値は移植後およそ2年——退院してしばらくたち、「もう大丈夫」と感じ始めるころに起きています。
SECTION 09 本当の壁は、お金の制度のほうにある
ここまでで、医学的な結論はほぼ出ています。同種移植を受けたら打ち直す。効果もある。安全性も確認されている。国内外のガイドラインも一致している。
ところが、日本の予防接種法はこの再接種を「定期接種」として扱っていません。定期接種は「〇歳から〇歳までに1回」というかたちで政令に書かれており、移植で免疫を失ったからもう一度、という規定がないためです。結果として再接種は任意接種——原則として全額自己負担になります。
影響は費用だけではありません。万一、接種による健康被害が起きたときの救済制度も変わります。
| 定期接種(A類疾病) | 任意接種としての再接種 | |
|---|---|---|
| 費用 | 市町村が負担(低所得者以外から実費徴収可) | 原則として全額自己負担 |
| 接種の勧奨 | 市町村長による勧奨あり/努力義務あり | なし |
| 健康被害の救済 | 予防接種法にもとづく救済 (障害年金1級 年約548万円、死亡一時金4,800万円) | 医薬品医療機器総合機構(PMDA)の 医薬品副作用被害救済制度 |
| 抗体価の測定 | — | 保険診療にならない項目がある |
出典:第34回ワクチン評価に関する小委員会 資料3(2026年6月19日)/日本造血・免疫細胞療法学会「造血細胞移植ガイドライン 予防接種 第4版」。救済の金額は資料掲載時点のものです。
自治体の助成は、この7年で確かに広がった
この空白を埋めてきたのが、市区町村の独自助成です。ただし、その広がり方には大きな地域差があります。
出典:第34回ワクチン評価に関する小委員会 資料3(2026年6月19日)/福岡県「造血細胞移植後定期予防接種ワクチン再接種費用補助金について」(2026年7月9日更新、令和8年4月1日現在)
福岡市の場合——「先に申請する」ことが決定的に重要です
福岡市にお住まいの方の場合、造血細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)を受けたあとの再接種費用は、市の認定を受ければ助成の対象になります。ただし手続きに、見落とすと取り返しのつかない点があります。
対象は再接種日に20歳未満の方で、ワクチンの種類ごとに助成の上限額があります。また五種混合は14歳まで、BCGは3歳まで、ヒブは9歳まで、小児用肺炎球菌は5歳まで、という年齢の制限もあります。詳しくは福岡市保健所健康危機管理課(092-711-4270)へ、接種の前にご相談ください。
SECTION 10 2026年6月、国の議論が6年ぶりに動いた
この問題は、10年近く止まっていました。経緯を追うと、ようやく動き出した意味が見えてきます。
| 時期 | 何が起きたか |
|---|---|
| 2016年 | 地方分権改革の提案募集で、複数の自治体が「定期接種の受け直し」を制度化するよう要望 |
| 2018年7月 | 厚生労働省が全国の自治体の支援状況を調査(助成事業ありは5.1%) |
| 2018年10月 | 予防接種基本方針部会で議論。「定期接種化を進めるべき」という意見の一方、「骨髄移植以外に免疫が低下する場合との線引きが課題」との指摘 |
| 2020年1月 | 同部会で再び議論。「他の疾病との線引き」「診療行為の一環として医療保険で行うべきでは」との意見。ここで議論が止まる |
| 2024年度 | 厚生労働科学研究(研究代表者:福田隆浩・国立がん研究センター中央病院)で、優先すべき対象者とワクチンを科学的に整理 |
| 2026年2月 | 総務省行政評価局から厚生労働省へ参考通知。「地方公共団体によって助成に差があるのは非常に不公平」「国が責任を持って一律に対応するよう早急な議論・検討が求められる」という有識者意見が示された |
| 2026年6月19日 | 第34回ワクチン評価に関する小委員会で議論を再開 |
2026年6月19日の小委員会で示された論点は、次の3つです。
出典:第34回 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会 資料3「後天的な要因による免疫獲得状況への影響を踏まえた予防接種の考え方について」(2026年6月19日)
なぜ「同種移植」だけに絞られたのか
ここには、学会ガイドラインとのあいだに一見した食い違いがあります。日本造血・免疫細胞療法学会のガイドラインは、自家移植・同種移植の別を問わず、すべての造血細胞移植後にワクチン再接種を推奨しています。それなのに、国の議論は同種に絞られました。
理由は、2020年に議論が止まったときの「線引きの課題」そのものです。免疫が下がる状況は、造血幹細胞移植だけではありません。化学療法、臓器移植、HIV感染症、糖尿病、加齢——どこまでを公費の対象とするのかを決められなければ、公平性の説明がつかない。そこで2024年度の研究班は、抗体価を実測して比べました。
この整理があって初めて、「まずは同種移植後から」という線引きに理屈がつきました。ガイドラインが自家移植にも再接種を勧めていることと、制度の議論が同種から始まっていることは、矛盾しません。前者は「医学的に望ましいこと」、後者は「公費で優先すべきこと」という、別の問いに答えているからです。
ふくろう訪問クリニックでは、緩和ケアや難病・希少疾患の在宅診療のなかで、造血幹細胞移植を受けたご経験のある方にお会いすることがあります。そこで感じていることを4つ、率直に書きます。
SECTION 11 場面別の早見表
| こんなとき | 考え方の目安 |
|---|---|
| 同種移植を受けた | 原則として全ワクチンを打ち直します。不活化から始めて、生ワクチンへ進みます。 |
| 自家移植を受けた | 学会ガイドラインは自家移植でも再接種を推奨しています。ただし同種ほど深く免疫が失われるわけではありません。主治医とご相談ください。 |
| 退院して3か月たった | 不活化ワクチンの開始を検討できる時期です。流行期ならインフルエンザや新型コロナを優先することがあります。 |
| 移植後1年たった | 不活化ワクチンの反応がいちばん良くなる時期の目安です。まだ始めていなければ主治医に確認を。 |
| 移植後2年たった | 生ワクチン(MR・水痘・おたふくかぜ)を検討できる時期ですが、慢性GVHDがないこと・免疫抑制剤が終わっていることが条件です。 |
| まだ免疫抑制剤を飲んでいる | 生ワクチンは打てません。不活化ワクチンについては個別の判断になります。 |
| 慢性GVHDが続いている | 増悪していない時期を選びます。活動性の全身性GVHDがあるあいだは生ワクチンは行いません。 |
| リツキシマブを使った | 最終投与から6か月以上あけることが望ましいとされています。 |
| 輸血やガンマグロブリンを受けた | 生ワクチンは、通常量なら3か月、大量投与なら6か月あけます。 |
| 周囲で麻しんが流行している | 移植後2年以内でも、免疫の回復程度によっては早期接種を検討する余地があります。必ず移植を受けた病院にご相談ください。 |
| 助成を受けたい(20歳未満) | 必ず接種の前にお住まいの市区町村へ相談してください。事後の申請では助成を受けられない自治体があります。 |
| ご家族・介護者の立場 | ご自身の麻しん・風しん・水痘・インフルエンザ・新型コロナの接種状況を確認してください。患者さんが打てない分を、周囲が肩代わりする形になります。 |
SECTION 12 よくあるご質問
母子健康手帳の記録は、もう意味がないのでしょうか。
まったく逆で、いま最も重要な書類のひとつです。助成の申請には「移植前にどの定期接種を受けたか」を証明する書類が必要で、多くの自治体が母子健康手帳の写しを求めます。手帳がないと、そもそも助成の対象として認定されないことがあります。大切に保管してください。
抗体検査で「陽性」と出れば、打たなくてよいのでしょうか。
立場が分かれるところです。欧州のECILや米国IDSAは「抗体が陰性の人だけ再接種すればよい」としており、フランスの当局は「血清の状態にかかわらず全員に接種」としています。米国の血液専門家のなかには「再接種しなければ抗体と長期の免疫記憶はどのみち失われるのだから、検査結果で判断すべきでない」という意見もあります。国内のガイドラインは、接種後も抗体価は年々下がるため、可能な限り抗体価を測ることが望ましい、という立場です。ご自身の主治医の方針に従ってください。
打ち直しには副反応のリスクはないのですか。
不活化ワクチンについては、健康な人と比べて有害事象が増えるという明確なエビデンスはありません。成人104人の試験でも、接種部位の痛みが18〜27%、発熱が1〜3%と軽微でした。注意が必要なのは生ワクチンのほうで、条件を満たさないまま接種すると、ワクチン株そのものによる感染症が起こりえます。だからこそ「2年+条件」という厳しい線が引かれています。
費用はどれくらいかかりますか。
ワクチンの種類と回数、医療機関によって異なるため一概には言えませんが、四種混合・Hib・肺炎球菌をそれぞれ3回、MR・水痘・おたふくかぜをそれぞれ2回といった一式を任意接種で受けると、総額はかなりの金額になります。20歳未満の方は、必ず接種の前にお住まいの市区町村にご確認ください。福岡県内では、2026年4月1日現在56市町村が助成制度を設けています。
20歳を過ぎていると、助成はまったく受けられないのですか。
福岡県が市町村に補助する条件、および福岡市の助成は20歳未満が対象です。ただし県の資料には「市町村によっては上記条件以外の方も助成の対象としている場合があります」との注記があり、自治体ごとに違いがあります。お住まいの市区町村の予防接種担当課に直接お問い合わせください。制度そのものについては、2026年6月から国の議論が再開しています。
家族は何をすればよいですか。
ご自身の予防接種を済ませておくことです。とくに麻しん・風しん・水痘については、患者さんの退院前に、免疫のないご家族が接種を済ませておくことがガイドラインで推奨されています。加えて毎年のインフルエンザワクチン、流行期の新型コロナワクチンも同様です。患者さんが自分で備えをつくれない期間、その代わりを担うのがご家族と周囲の方です。
ご相談ください
ふくろう訪問クリニックは、福岡市早良区を拠点に、緩和ケア・難病・希少疾患・精神科・認知症の在宅診療を行っています。造血幹細胞移植を受けられたあとの療養で、感染症への備えや、移植を受けた病院との連携についてご心配がある方は、ご相談ください。予防接種そのものは、移植を受けた病院や主治医の判断のもとで行うのが原則です。当院はその方針を前提に、在宅での療養と、いざというときの段取りづくりをお手伝いします。
なお、この記事は一般的な情報提供であり、個々の患者さんの接種可否を判断するものではありません。接種の時期や種類については、必ず移植を受けた医療機関の主治医とご相談ください。
REFERENCES 参考文献
- 日本造血・免疫細胞療法学会 ガイドライン委員会.造血細胞移植ガイドライン 予防接種(第4版).JSTCT monograph Vol.95.2023年12月.
- 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会(第34回)資料3.後天的な要因による免疫獲得状況への影響を踏まえた予防接種の考え方について.2026年6月19日.
- 厚生労働行政推進調査事業費(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)令和6年度総括報告書.同種造血幹細胞移植患者に対する優先度の高い公的予防接種の再接種に関する研究(研究代表者:福田隆浩).
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- 福岡県 がん感染症疾病対策課.造血細胞移植後定期予防接種ワクチン再接種費用補助金について.2026年7月9日更新.
- 福岡市 保健医療局保健所健康危機管理課.造血細胞移植により免疫が失われた小児への任意予防接種費用助成について.2024年7月1日更新.
- 日本造血細胞移植データセンター/日本造血・免疫細胞療法学会.日本における造血細胞移植・細胞治療 2024年度全国調査報告書.
この記事の内容は2026年8月22日時点の情報にもとづいています。予防接種の制度は変更されることがあり、とくに造血幹細胞移植後の再接種については現在も国で議論が続いています。最新の情報は、厚生労働省およびお住まいの市区町村のホームページでご確認ください。当院は、記載した製薬企業からの資金提供・便宜供与を受けていません。

