放射線皮膚炎のケア|患者さんとご家族のための図解ガイド

朝の光が差し込む部屋で、家族が椅子に座った治療中の人の肩にそっと手を添え、窓辺のふくろうが見守る水彩風のイラスト

放射線治療を受けると、放射線が当たっている部分の皮膚が、日焼けのように赤くなったり、かゆくなったりすることがあります。これを放射線皮膚炎といいます。毎日のちょっとしたケアが、皮膚を守り、つらさを和らげる助けになります。

この記事は、患者さんご本人とご家族が、治療中・治療後にそのまま使える手引きとしてまとめました。図やチェック表は、ご家族への説明や印刷にもお使いください。

まず覚えておきたい3つのこと
1

洗ってよい。やさしく洗う

照射している部分も、ぬるま湯と石けんの泡でやさしく洗いましょう。清潔に保つことがケアの基本です。

2

刺激を避ける

こする・かく、熱いもの・冷たいもの、湿布やテープは避けましょう。

3

早めに伝える

じくじくしてきた、出血する、熱が出た、痛みで眠れないときは、我慢せずに治療チームへ連絡しましょう。

SECTION 01 放射線皮膚炎とは

放射線は、体の中のがんに届くまでに皮膚を通ります。皮膚の細胞は毎日少しずつ入れ替わっていますが、治療を毎日のように続けると、次の照射までに細胞が回復しきれず、赤み・乾燥・かゆみ・皮むけなどが出てきます[1]。

変化が出るのは、放射線が当たっている範囲の皮膚だけです。体全体に広がるものではなく、人にうつることもありません。

最大95%放射線治療を受ける人のうち、何らかの皮膚炎が起きる割合[2]
約2週治療開始から、赤みなどが出始める目安(1〜4週と幅あり)[1,3]
終了後1〜2週反応がもっとも強くなりやすい時期[4]

「最大95%」には、うすい赤みや乾燥といった軽い変化も含まれます。出始める時期や強さに幅があるのは、照射する部位、1回あたりと合計の放射線の量、照射する範囲の広さ、抗がん剤などとの併用によって、皮膚への負担が変わるためです[2]。乳がんや頭頸部(首まわり)のがんの照射では、皮膚炎が起きやすいことが知られています[5]。

また、わきの下、乳房の下、首のしわ、股やおしりなど、皮膚が重なったりこすれたりする場所は、皮がむけてじくじくしやすい場所です[6]。多くは治療が終われば数週間で落ち着いていきますが[7]、程度には個人差があります。毎日皮膚を見て、変化に早く気づくことが大切です。

SECTION 02 いつ起きて、いつ落ち着く?

皮膚の変化には、おおよその流れがあります。下の図は、平日に毎日照射する一般的な治療の場合の目安です。照射の回数や量によって、出る時期や強さは変わります。

図1 放射線皮膚炎の経過(目安)

右側の囲みは「その時期にしておきたいこと」です

棒の長さ=皮膚の反応の強さ(目安)治療開始〜2週ごろ予防のケア開始見た目の変化はほとんどないことが多い時期。この時期から、洗う・保湿・刺激を避けるケアを。2週ごろ〜治療終了毎日よく見る日焼けのような赤み、乾燥、かゆみ、ヒリヒリ。回数を重ねるほど、少しずつ強くなります。治療終了後1〜2週ケアを続ける反応がいちばん強くなりやすい時期です。治療が終わっても、ケアをやめないことが大切。終了後 数週間保湿と日よけ多くは少しずつ落ち着いていきます。色が濃く残る・乾燥しやすい状態は続くことも。数か月〜数年後気になれば相談皮膚が硬くなる、細い血管が浮き出るなど、遅れて出る変化(晩期の変化)が出ることも。

出典:MedlinePlus(2026年4月レビュー)、Bray FN, et al. 2016、Leventhal J, et al. 2017、国立がん研究センター中央病院看護部(2025年5月)をもとに作成

ポイントは、治療が終わった直後が、いちばん強くなりやすいということです[4]。「治療が終わったから、もう大丈夫」と思わず、終了後もしばらくはケアを続けてください。

SECTION 03 重さの目安と、どうするか

皮膚炎の重さは、医療者のあいだでは4つの段階で表します[6]。ご本人やご家族が様子を見るときは、次の図を目安にしてください。

図2 皮膚の様子と、どうするかの目安

米国国立がん研究所の基準(CTCAE v5.0)の「放射線性皮膚炎」の段階を、わかりやすい言葉に言い換えたものです

皮膚の様子どうする?段階1うすい赤み・カサカサ日焼けのようなうすい赤み。粉をふく、乾いた皮むけ。ケアを続ける毎日よく見る段階2はっきりした赤み・むくみ赤みが強く、腫れぼったい。わきの下・乳房の下などしわの部分が一部じくじく。治療チームに相談次の治療日に伝える段階3広い範囲がじくじくしわ以外の場所まで皮がむけて汁が出る。少しこすれただけで出血。当日中に連絡治療施設に電話段階4えぐれる・自然に出血皮膚がえぐれる、黒っぽくなる、何もしなくても出血する。すぐに連絡夜間・休日でも

出典:National Cancer Institute. CTCAE v5.0(2017年11月)をもとに作成。右側の対応は一般的な目安で、治療施設から指示がある場合はそちらを優先してください。

段階にかかわらず、その日のうちに連絡を

熱が出た、膿が出る、赤みや痛みが急に広がる、といったときは、段階に関係なく、その日のうちに治療施設へ連絡してください(くわしくはSECTION 07)。実際の判断は、医師・看護師が皮膚を見て行います。

SECTION 04 毎日のスキンケア 5つの基本

1

洗う:ぬるま湯と泡で、やさしく

石けんをよく泡立て、泡をのせて手でなでるように洗い、ぬるま湯で流します。日本のガイドラインでも、照射している部分を洗っても皮膚炎は悪化せず、むしろ軽くなる傾向があるとして、洗うことが勧められています[8,9]。

2

拭く:押さえて水けをとる

柔らかいタオルを当てて、押さえるように拭きます[7]。こすると皮膚が傷つきやすくなります。

3

保湿:決められたものを、こすらずに

乾燥はかゆみや皮むけにつながります。乳がんの手術後や頭頸部の照射では、保湿薬を塗ることが弱く勧められています[9]。何を・いつ塗るかは施設によって違うので、治療チームの指示に合わせましょう。

4

着る:柔らかく、ゆったり

綿などの柔らかい素材を選び、締め付けの強い下着や、ウールなどのチクチクする生地は避けます。乳がんの照射中は、ワイヤーのない、ゆったりした下着が勧められています[1]。

5

守る:日光とこすれから

治療中は、照射している部分に直射日光が当たらないよう、帽子や長袖などで覆います[1]。かばんの肩ひもなどが当たる場所は、柔らかい布をはさむなど工夫しましょう。

SECTION 05 避けたいこと 6つ

放射線が当たっている皮膚は、ふだんより傷つきやすくなっています。次のことは、治療中と治療後しばらくは控えましょう。

1

こする・かく

ナイロンタオルやスポンジでの洗体、スクラブ入りの洗浄料は避けます。かゆみが強いときは、我慢せずに相談しましょう。塗り薬で和らげられることがあります。

2

熱いもの・冷たいもの

熱いお湯や長湯、サウナ、カイロ・湯たんぽ・電気毛布の直当て、保冷剤や氷のうは使わないようにします[1]。

3

湿布・絆創膏・テープ

照射している部分には貼りません[1,7]。はがすときに皮膚が傷つきます。

4

カミソリ

ひげそりやムダ毛の処理は、電気シェーバーにします[7]。シェービング剤も控えましょう[1]。

5

自己判断の塗り物

市販のクリームや香料入りの化粧品は、使う前に相談しましょう[7]。国際的なガイドラインでは、アロエやはちみつなどを使った製品の多くは、予防のためには勧められていません[5]。

6

治療の目印を消す

皮膚に書かれた目印(マーキング)は、治療が終わるまでこすって消さないようにします。薄くなってきたら、治療チームに伝えましょう。

SECTION 06 よくある質問

Q1

お風呂やシャワーは大丈夫?

A

大丈夫です。清潔にすることが勧められています[9]。ぬるめのお湯で、短めに。照射している部分を長くお湯につけることや、温泉・プール・海は、治療チームに確認してからにしましょう[1]。

Q2

デオドラント(制汗剤)は使っていい?

A

日本のガイドラインでは、ふだん使っている人が治療中も使い続けることを弱く勧めています[9]。米国がん看護学会(ONS)のガイドラインも、条件つきで使用を認めています[2]。ただし、わきの皮膚がただれている・じくじくしているときは使わずに相談しましょう。アルミニウムなどの金属を含む製品は、注意しながら使います[8]。

Q3

治療の直前に、保湿剤を塗ってもいい?

A

薄く塗った程度なら、拭き取る必要があるという十分な根拠はありません[9]。一方、厚く塗ると皮膚の表面の放射線の量が増える可能性があり、3mm以上の厚塗りで表面の量が増えたという実験もあります[10]。施設によって指示が違うため、「いつ塗るか」は治療チームの指示に従ってください。

Q4

ステロイドの塗り薬が出たけれど、使って大丈夫?

A

照射している部分に副腎皮質ステロイドの塗り薬を使うことは、皮膚炎を軽くする目的で、日本と海外のガイドラインで勧められています[2,5,9]。医師が指示した量と期間を守って使いましょう。皮がむけてじくじくしている場所に塗ってよいかは、確認してください。

Q5

むけかけた皮は、はがしていい?

A

はがさないでください。下の新しい皮膚が傷つきます。自然にとれるのを待ちましょう。

Q6

治療が終わったら、ケアはやめていい?

A

治療終了後1〜2週は反応がいちばん強くなりやすいので、少なくともその間はケアを続けます[4]。日よけは、その後も長く続けましょう[1]。

SECTION 07 すぐに連絡したいサイン

次のような様子があれば、放射線治療を受けている病院に連絡しましょう。夜間・休日の連絡先は、治療の初日に確認しておくと安心です。

  • !皮がむけて、汁が出る範囲が広がってきた
  • !黄色っぽい膿が出る、いやなにおいがする
  • !赤み・腫れ・痛みが急に広がる、熱をもっている
  • !皮膚の変化と一緒に、熱が出ている
  • !少しこすれただけで出血する、何もしなくても出血する
  • !皮膚がえぐれている、黒っぽくなっている
  • !痛みやかゆみで眠れない、食事や着替えがつらい

じくじくしてきたときの手当て

傷にくっつきにくいガーゼや被覆材を使うことがあります。海外のガイドラインでは、皮膚にくっつきにくいシリコーン製の薄い吸収パッドが勧められています[5]。照射している部分にはテープを直接貼らず[1]、ネット包帯や肌着で押さえるなど、医師・看護師の指示に沿って手当てしましょう。

SECTION 08 ご家族ができること

1

毎日、明るい場所で見る

背中、首の後ろ、おしりなど、ご本人から見えにくい場所を一緒に確認しましょう。

2

写真で記録する

同じ場所を、同じ距離・同じ明るさで撮っておくと、変化が伝わりやすくなります。受診や電話相談のときに見せましょう。

3

保湿を手伝う

手を洗ってから、薬をこすらずに、やさしくのせるように塗ります。

4

肌着と寝具を整える

柔らかい綿の肌着を用意し、汗をかいたら押さえるように拭きます。寝ている時間が長い方は、シーツのしわや、体の重みによる圧迫・ずれにも気を配りましょう。

5

見た目の変化に寄り添う

皮膚の色や見た目の変化は、気持ちにも影響します。日本のガイドラインでも、乳がんや頭頸部がんなどで、見た目の変化に対する心理・社会的な支援が勧められています[9]。ひと声かけて話を聞くことも、大切なケアです。

表 毎日の皮膚チェック表(1週間分)

上の「/」に日付を書き、当てはまるものに○を。痛みは0(なし)〜10(最も強い)の数字で記入します

項目 \ 日付///////
赤み(なし・少し・強い)
かゆみ・ヒリヒリ
乾いた皮むけ
じくじく・汁が出る
痛み(0〜10)
保湿・塗り薬をした
写真を撮った
気になること

スマートフォンでは表を横にスクロールできます。印刷するか、ノートに書き写して使ってください。

SECTION 09 治療が終わったあとに

1

色の変化や乾燥

照射した皮膚は、色が濃く残ったり、乾燥しやすかったりすることがあります[1]。保湿を続けましょう。

2

日焼けしやすい状態が続く

照射した部分は日光に敏感な状態が続き、その部分の皮膚がんのリスクも高くなるとされています[1]。皮膚が落ち着いてからも、衣類や日焼け止めで守りましょう。

3

新しい薬で赤くなることがある

治療が終わってしばらくしてから、一部の抗がん剤などを使ったときに、以前照射した場所だけが赤くなることがあります(放射線リコール現象)[3]。新しい薬を始めるときは、放射線治療を受けたことを伝えましょう。

4

遅れて出る変化

数か月〜年単位で、皮膚が硬くなる、細い血管が浮き出るといった変化が出ることがあります[3]。気になったら、主治医に相談しましょう。

在宅医療のこと

SECTION 10 在宅で療養しながら治療を受ける方へ

通院が負担になってきた方や、痛みを和らげる目的の放射線治療を受ける方の中には、在宅医療を受けながら放射線治療に通う方もいます。ご自宅での療養中も、照射している部分の皮膚には同じように気を配りましょう。

1

治療の情報を共有する

照射している場所、治療の予定(何回目か・いつ終わるか)、処方された塗り薬を、訪問診療の医師や訪問看護師にも伝えましょう。放射線治療を受けている病院の連絡先をメモしておくと、相談がスムーズです。

2

訪問のときに皮膚を見てもらう

訪問診療や訪問看護を利用している場合は、訪問のときに照射している部分の皮膚を見てもらいましょう。チェック表や写真の記録も役に立ちます。

3

寝ている時間が長い方

照射している部分が背中・腰・おしりにかかる場合は、体の向きを変える、シーツのしわをのばす、ずり下がりを防ぐなど、圧迫とこすれを減らす工夫が大切です。

4

陰部やおしりに照射している方

排せつのあとは、こすらずに押さえるように拭き、温水洗浄便座は弱い水圧で使います[7]。おむつを使う方は、こまめに交換して、湿った状態が長く続かないようにしましょう。

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参考文献

  1. U.S. National Library of Medicine. MedlinePlus Medical Encyclopedia: Radiation therapy – skin care(Review Date 2026年4月20日). https://medlineplus.gov/ency/patientinstructions/000735.htm(2026年10月20日閲覧)
  2. Gosselin T, Ginex PK, Backler C, Bruce SD, Hutton A, Marquez CM, McGee LA, Shaftic AM, Suarez LV, Moriarty KA, Maloney C, Vrabel M, Morgan RL. ONS Guidelines™ for Cancer Treatment–Related Radiodermatitis. Oncol Nurs Forum. 2020;47(6):654-670. doi:10.1188/20.ONF.654-670. PMID: 33063779
  3. Bray FN, Simmons BJ, Wolfson AH, Nouri K. Acute and Chronic Cutaneous Reactions to Ionizing Radiation Therapy. Dermatol Ther (Heidelb). 2016;6(2):185-206. doi:10.1007/s13555-016-0120-y. PMID: 27250839
  4. Leventhal J, Young MR. Radiation Dermatitis: Recognition, Prevention, and Management. Oncology (Williston Park). 2017;31(12):885-887, 894-899. PMID: 29297172
  5. Behroozian T, Bonomo P, Patel P, Kanee L, Finkelstein S, van den Hurk C, Chow E, Ryan Wolf J, et al. Multinational Association of Supportive Care in Cancer (MASCC) clinical practice guidelines for the prevention and management of acute radiation dermatitis: international Delphi consensus-based recommendations. Lancet Oncol. 2023;24(4):e172-e185. doi:10.1016/S1470-2045(23)00067-0. PMID: 36990615
  6. National Cancer Institute. Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) Version 5.0. 2017年11月27日(日本語訳:有害事象共通用語規準 v5.0 日本語訳JCOG版)
  7. 国立がん研究センター中央病院 看護部. 放射線治療中のスキンケア(患者さん向けサポートカード4). 2025年5月. https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/nursing/division/support_card/4.pdf(2026年10月20日閲覧)
  8. 日本がんサポーティブケア学会 編. がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版. 金原出版; 2021(Minds ガイドラインライブラリで本文公開). https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00688/
  9. 野澤桂子ほか. アピアランスケアガイドライン2021改訂版作成研究(令和3年度 厚生労働科学研究費補助金 がん対策推進総合研究事業「がん患者に対する質の高いアピアランスケア支援の実装に資する研究」分担研究報告書, 資料1・2 推奨一覧). https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202108027A-buntan3.pdf
  10. Baumann BC, Verginadis II, Zeng C, Bell B, Koduri S, Vachani C, et al. Assessing the Validity of Clinician Advice That Patients Avoid Use of Topical Agents Before Daily Radiotherapy Treatments. JAMA Oncol. 2018;4(12):1742-1748. doi:10.1001/jamaoncol.2018.4292. PMID: 30347008