この記事でわかること

ポカリスエットとアクエリアスは、どちらも「汗で失ったものを補う」ための飲みものですが、ナトリウムと糖質の量が違い、想定している場面も少しずつ違います。この記事では、両者の中身を最新の製品情報で並べ、熱中症のとき・二日酔いのとき・毎日の水分補給のときに何を選べばよいかを整理します。後半では、在宅医療の現場で私たちが実際にどう判断しているかを、心不全・腎臓病・糖尿病・飲み込みにくさといった具体的な条件ごとに一段深く解説します。

SECTION 01先に結論:3行でいうと

  • ポカリスエットは、ナトリウムと糖質がやや多め。汗をたくさんかいた後、体調がすぐれないとき、入浴後や起床時など「体液を戻したい」場面向き。
  • アクエリアスは、糖質がやや少なくすっきりした設計。運動中にごくごく飲む、日中こまめに飲むなど「量を飲みたい」場面向き。
  • そして経口補水液(OS-1など)は、この2つとは別カテゴリー。すでに脱水になりかけている人のための「食事療法用の飲みもの」で、健康な人が毎日飲むものではありません。

つまり「どちらが優れているか」ではなく、汗をかいた量・今の体調・持病で選び分けるのが正解です。以下、その理由を数字で見ていきます。

SECTION 02中身を並べて比べる

まずは各社が公表している栄養成分表示を、100mLあたりでそろえて並べます。ペットボトル1本(500mL)に換算した数字も添えました。

100mLあたりポカリスエットアクエリアスOS-1(経口補水液)
エネルギー27 kcal19 kcal10 kcal
炭水化物(糖質)6.7 g(約6.7%)4.7 g(約4.7%)2.5 g(うちブドウ糖1.8g)
食塩相当量0.12 g0.1 g0.292 g
ナトリウム21 mEq/L約17 mEq/L 相当50 mEq/L
カリウム20 mg(5 mEq/L)8 mg78 mg(20 mEq/L)
そのほかカルシウム2mg、マグネシウム0.6mg、クエン酸・乳酸イオンマグネシウム1.2mg、アミノ酸(イソロイシン・バリン・ロイシン)マグネシウム2.4mg、リン6.2mg、塩素177mg
500mLあたりの糖質約33.5 g約23.5 g約12.5 g
500mLあたりの食塩約0.6 g約0.5 g約1.46 g
500mLあたりのカリウム約100 mg約40 mg約390 mg
位置づけ清涼飲料水清涼飲料水特別用途食品(個別評価型病者用食品)

※表は横にスクロールできます。数値は各社公表の栄養成分表示(2026年8月時点)。容量や規格によって微差があります。

気づいていただきたいのは、ポカリとアクエリアスの塩分はほとんど変わらないということです。差が大きいのは糖質(6.7% vs 4.7%)とカリウム(20mg vs 8mg)。アクエリアスは砂糖の一部を甘味料(スクラロース)に置き換えることで、味の満足感を保ったまま糖とカロリーを抑えています。一方ポカリは、ヒトの体液に近いイオン組成をそのまま目指した設計で、カリウム・カルシウム・マグネシウムまで入っています。

図1 「塩分×糖質」で見ると、それぞれの立ち位置がわかる
日本スポーツ協会が示す運動時の目安 食塩0.1〜0.2%/糖質4〜8% 糖質のこさ(%) ナトリウム(mEq/L) 0 2 4 6 8 10 0 10 20 30 40 50 水・お茶 アクエリアス 糖4.7%/Na約17 ポカリスエット 糖6.7%/Na 21 OS-1(経口補水液) ブドウ糖1.8%/Na 50 アクエリアス経口補水液ORS(1.5%/43) ※食塩0.1〜0.2%はナトリウム約17〜35mEq/Lにあたる
ポカリとアクエリアスはどちらも運動時の目安の枠内におさまり、ポカリが枠の上寄り、アクエリアスが下寄りに位置します。一方、経口補水液は「塩は多く、糖は少なく」という、まったく別の場所に置かれた設計であることがひと目でわかります。

SECTION 03「アイソトニック」と「ハイポトニック」って何のこと?

スポーツドリンクの説明でよく出てくる言葉です。難しく聞こえますが、意味はシンプルです。

  • アイソトニック=体液とだいたい同じ濃さ。安静時や運動前・運動後に、水分と糖分を一緒に補給したいときに向く。
  • ハイポトニック=体液より薄め。汗をかいて体液が薄まっている運動中に、水分をすばやく取り込みたいときに向く。

ポカリスエットは体液に近い設計、アクエリアスはそれよりやや薄め、という関係です。ポカリスエットにも、糖質とナトリウムをさらに抑えた「イオンウォーター」(ナトリウム17.5mEq/L)という選択肢があります。

ただし実務的には、この違いを気にしすぎる必要はありません。糖が入っていると腸でのナトリウムと水の吸収が速くなる(ブドウ糖・ナトリウム共輸送)という仕組みは両者に共通で、日常の水分補給レベルなら「飲み続けられる味かどうか」のほうが結果を左右します。飲まなければ、どんな理想的な組成も意味がありません。

SECTION 04熱中症のとき、どちらを飲めばいい?

まず、いまの熱中症は「屋外のスポーツの問題」ではありません

総務省消防庁の集計では、2025年(令和7年)5〜9月の熱中症による救急搬送は全国10万510人で、2008年の調査開始以来もっとも多い数でした。内訳を見ると、65歳以上が57.1%、発生場所は住居が約38%で最多、次いで道路が約20%です。重症度では軽症63.1%、中等症34.2%、重症2.2%、死亡117人でした。

2026年の夏も厳しく、7月13〜19日の1週間だけで全国1万857人が搬送され、前年同時期の倍以上になっています(速報値)。いちばん多いのは「自宅にいた高齢者」という構図は、この数年変わっていません。

熱中症の重症度と、飲みもので対応できる範囲

日本救急医学会は2024年、約10年ぶりに『熱中症診療ガイドライン』を改訂しました。重症度はI度〜IV度の4段階に整理され(IV度は今回新設)、飲みもので対応してよいのはI度と、医療機関でのII度の一部までです。

図2 熱中症の重症度と、家庭でできること/できないこと
I度 立ちくらみ・こむら返り 大量の発汗・筋肉痛 意識ははっきり II度 頭痛・吐き気・嘔吐 倦怠感・集中力の低下 ぐったりしている III度 意識障害・けいれん 肝・腎障害 血液が固まりにくい IV度 深部体温40℃以上 かつ強い意識障害 (2024年に新設) 飲めるなら、水分と電解質を口から 飲ませない。すぐ119番・冷却を始める 涼しい場所へ/衣服をゆるめる 医療機関へ。飲めなければ点滴 ※自分で水分がとれない・様子がおかしいときは、飲ませようとせず救急要請を優先します。
日本救急医学会『熱中症診療ガイドライン2024』の重症度分類をもとに作成。I〜II度は涼しい環境での休息(Passive Cooling)と水分・電解質の補給で軽快しうるとされますが、改善しないときは体温を測ったうえで積極的な冷却(Active Cooling)に進みます。

結論:予防はスポーツドリンク、脱水が始まったら経口補水液

日本スポーツ協会は、運動時の水分補給として食塩0.1〜0.2%(ナトリウム100mLあたり40〜80mg)と、4〜8%程度の糖質を含む飲料を勧めています。ポカリスエットもアクエリアスも、この範囲に入ります。「予防のために飲む」段階なら、どちらでも構いません。

一方、すでにふらつく・頭が痛い・吐き気がする・尿が減っているといった脱水の兆候が出ているときは、ナトリウムが2〜3倍濃い経口補水液のほうが理にかなっています。ただしこれは病者用食品であり、症状が落ち着いたら普段の飲みものに戻すのが本来の使い方です。

「水だけ」を大量に飲むのは、かえって危険なことがあります

汗には塩分が含まれます。大量に汗をかいた後に真水やお茶だけをがぶ飲みすると、血液中のナトリウムが薄まり、頭痛・吐き気・けいれん・意識障害を起こすことがあります(低ナトリウム血症)。長時間の運動や屋外作業のあとは、必ず塩分を含む飲みもの、あるいは水+塩あめ・梅干し・味噌汁などの組み合わせにしてください。

SECTION 05二日酔いには効くのか? 研究が示した意外な答え

「飲みすぎた翌朝はポカリ」——多くの方が信じている習慣ですが、ここ数年の研究は、この常識に少し待ったをかけています。

2024年に発表された系統的レビュー(オランダ・ユトレヒト大学のMackusらによる、二日酔いと脱水の関係を検証した論文)は、これまでの研究を集めて次のように結論づけています。アルコールによる脱水と二日酔いは、同時に起こるけれども別々の現象であり、水を飲むことで二日酔いそのものが軽くなるという明確な証拠はない——。飲酒中や飲酒直後に水を飲んでも、翌日の二日酔いの強さはわずかしか変わらず、二日酔い中に飲んだ水の量と症状の改善にも関係が見られませんでした。

アルコールの利尿作用も、思われているほど強くも長くも続きません。ランダム化比較試験では、差が出るのは飲酒後4時間程度までで、その後は差がなくなると報告されています。また、急性のアルコール摂取で電解質のバランスが崩れるという証拠も乏しいことが指摘されています。

図3 二日酔いは「脱水の裏返し」ではなく、並走する別のプロセス
飲酒 04時間8時間翌朝翌日夕 飲みはじめからの時間 脱水(尿が増える) 軽く、短時間で戻る 二日酔い(頭痛・吐き気・だるさ) 血中アルコールが ゼロに近づく頃がピーク 水分を補えば「のどの渇き」は消える。 でも、二日酔いの山はその後にやってくる。
Mackusら(2024年、Alcohol誌)のレビューをもとに作成。二日酔いの主因としては、体内の炎症反応やアルコール代謝の個人差が注目されています。水分補給は脱水には効きますが、二日酔いそのものを消す手段ではありません。

では、翌朝スポーツドリンクを飲む意味はないのか

意味はあります。ただし「二日酔いを治す薬」ではなく「起きている脱水を直す」ためだと理解してください。飲酒の翌朝は、実際に体内の水分が減っていることが多く、それによる口の渇き・だるさ・立ちくらみ・頭のぼんやり感は、水分と電解質で改善します。糖質が入っていることで、食事がとれないときのエネルギー源にもなります。

ただし、「ポカリを飲めば大丈夫」という感覚が、翌日の飲酒量を増やす方向に働くこともあります。二日酔いの回数と重さは、将来の飲酒関連の健康問題と関連することが指摘されています。二日酔いを繰り返している方は、飲む量そのものを見直すサインとして受け止めてください。

飲酒の翌朝に、現実的に役立つこと

  • のどが渇いていれば、水またはスポーツドリンクをコップ1〜2杯ずつ、時間をあけて。一気に大量を飲む必要はありません。
  • 食欲があれば、味噌汁・うどん・おかゆなど塩分と水分が同時にとれるものを。飲みものだけより早く落ち着きます。
  • 頭痛薬を使う場合は、胃を荒らしにくいものを。持病や常用薬がある方は主治医・薬剤師に確認を。
  • 「迎え酒」は症状を先送りするだけで、飲酒量を増やします。

SECTION 06飲みすぎの落とし穴:糖質という盲点

スポーツドリンクは「体にいい飲みもの」というイメージが強いぶん、量の意識が抜け落ちがちです。500mLのペットボトル1本に入っている糖質を、角砂糖(1個約4g)に換算してみます。

図4 500mL 1本に入っている糖質を角砂糖にすると
水・お茶 OS-1 アクエリアス ポカリスエット 炭酸飲料(例) 0 g 約12.5 g(角砂糖 約3個) 約23.5 g(角砂糖 約6個) 約33.5 g(角砂糖 約8個) 約55 g(角砂糖 約14個)
炭酸飲料は糖質約11%として計算した参考値です。スポーツドリンクは清涼飲料水のなかでは糖が控えめですが、1日に何本も飲めば話は別になります。

とくに注意していただきたいのが、「ペットボトル症候群」(清涼飲料水ケトーシス)です。糖を含む飲料を大量に飲む → 血糖が上がる → のどが渇く → さらに飲む、という悪循環に入り、若い方でも急激に高血糖となって意識障害に至ることがあります。夏場、糖尿病を指摘されたことのある方や、健診で血糖が高めと言われている方は、「のどが渇くから飲んでいる」のか「飲むからのどが渇く」のかを一度立ち止まって考えてみてください。

そのほか、日常的に大量に飲めば、むし歯(酸性かつ糖を含むため)や体重増加のリスクにもつながります。汗をかいていない日の水分補給は、水・お茶・麦茶が基本です。

SECTION 07 ── 在宅医療の現場から 「どっちを飲むか」より前に決めることがある

ここからは、私たちが訪問診療で実際にどう判断しているかを、一段深くお話しします。ご自宅で療養されている方、そのご家族、そして在宅の医療・介護に関わる方に向けた内容です。

なぜ高齢の方は、こんなに簡単に脱水になるのか

訪問診療で夏に最も多く遭遇するのが脱水です。原因は「水を飲まないから」だけではありません。5つの要因が重なるためです。

  1. 体にためておける水の量が少ない。体重に占める水分の割合は、成人でおよそ60%、高齢者ではおよそ50%まで下がります。同じ量を失っても、影響が大きく出ます。
  2. のどの渇きを感じにくい。加齢により口渇感が鈍くなるため、「飲みたい」と思ったときにはすでに不足しています。
  3. 腎臓が尿を濃くする力が落ちる。水分が足りなくても尿量を十分に絞れず、失われ続けます。
  4. 食事から入る水分が減る。私たちは1日の水分のかなりの部分を食事からとっています。食欲が落ちると、飲水量が同じでも総量は大きく減ります。
  5. 意図的に飲むのを控えている。「夜中にトイレに起きたくない」「介助してもらうのが申し訳ない」——これは非常に多く、ご本人からは自発的に語られません。

さらに、認知症のある方では暑さを訴えられない・エアコンを切ってしまう・飲んだことを忘れるという要素が加わります。搬送データで発生場所の最多が「住居」であることの背景は、まさにここにあります。

家で気づける、脱水のサイン

見るところ脱水を疑うサイン見かたのコツ
口の中・舌舌の表面が乾いている、唾液が糸を引かない高齢者では最も気づきやすい所見。口呼吸との区別を
わきの下汗ばんでおらず、乾いている着替えや清拭のときに手を入れて確認
皮膚つまむと戻りが遅い手の甲は加齢で戻りが遅くなるため、前胸部や額で見る
尿色が濃い、におう、回数が減ったポータブルトイレやおむつ交換の記録が手がかり
体重数日で1〜2kg減った最も確実な指標。可能なら週2回同じ条件で測定
ようす日中うとうとする、返事が遅い、活気がない、微熱、脈が速い「いつもと違う」は最重要のサイン。ご家族の直感は当たります

※表は横にスクロールできます。

持病によって、勧める飲みものは変わります

ここが在宅医療でいちばん大切なところです。「熱中症予防に経口補水液を」という一般向けの助言が、そのままでは危険になる方がいます。

状況気をつける成分実際の考え方
心不全ナトリウム(塩分)・水分量塩分制限中の方にとってOS-1は500mLで食塩約1.46g。1日の制限量の2〜3割を1本で使ってしまいます。主治医の指示量の範囲内で。むくみ・体重増加・息切れが出たら中止して連絡を
腎機能低下・慢性腎臓病カリウムOS-1は500mLでカリウム約390mg。カリウム制限中の方には過量になりえます。相対的にはアクエリアス(約40mg)<ポカリ(約100mg)<OS-1(約390mg)。自己判断で経口補水液を常用しない
透析中水分・カリウム・塩分すべてドライウェイトの管理が優先。飲水量の変更は必ず透析主治医と相談
糖尿病糖質ポカリ500mLで糖質約33.5g。頻回に飲めば血糖は確実に上がります。予防目的なら水+塩分、脱水時は糖の少ない経口補水液を選ぶ
高血圧ナトリウム予防目的の常用は不要。汗をかいた日に限定して
肝硬変・腹水ナトリウム塩分制限が治療の柱。経口補水液は原則として医師の指示のもとで
飲み込みにくさがあるむせ・誤嚥さらさらした液体は最もむせやすい。とろみ・ゼリータイプへ(下記参照)

※表は横にスクロールできます。持病のある方は、必ず主治医の指示を優先してください。

薬が「汗をかけない体」「脱水しやすい体」をつくっている

これは在宅の現場で見落とされやすい視点です。日本生気象学会の『日常生活における熱中症予防指針』では、抗コリン作用のある薬(頻尿治療薬、パーキンソン病治療薬、抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、睡眠薬・抗不安薬、鎮痙薬など)は発汗を抑える可能性があり、利尿薬は脱水を来しやすいと明記されています。多くの抗精神病薬は体温調節中枢を抑制しうるとされ、β遮断薬も体温調節に影響します。

実務的に注意しているのはこの4点です。

  • 利尿薬:食欲が落ちて食事量が減っているのに、いつもどおり内服している——夏の脱水で最も多いパターン。減量や一時中止の判断は必ず医師が行いますので、勝手にやめず必ずご相談ください。
  • 抗コリン作用のある薬:夏だけでも減らせないかを検討します。特に頻尿治療薬は「トイレを気にして飲水を控える」問題とも直結します。
  • SGLT2阻害薬:尿から糖と一緒に水分が出ます。脱水傾向のときは早めの相談を。
  • 解熱鎮痛薬(NSAIDs)+降圧薬+利尿薬の組み合わせ:脱水が加わると腎機能が急に悪化することがあります。市販の痛み止めを常用していないか、訪問時に必ず確認します。

夏になったら、薬の見直しをお願いしてよいタイミングです

「暑くなってきて食事量が減っている」「夏は血圧が下がりやすい」——これは薬の調整を検討する立派な理由です。訪問診療では、6月から7月にかけて利尿薬・降圧薬の量を見直すことが少なくありません。遠慮なくお申し出ください。

「飲めない人」に、どう飲んでいただくか

在宅では、飲みものの種類より飲み方の設計のほうが結果を左右します。私たちが実際に提案していることを挙げます。

1|量ではなく、時間割で決める

「1日1.5L」は多くの高齢の方にとって現実的ではありません。「起床時・朝食時・10時・昼食時・15時・夕食時・入浴後・就寝前にコップ1杯ずつ」と時刻に紐づけるほうが、はるかに達成されます。カレンダーに正の字を書く、コップの数を並べておくなど、見える化も有効です。

2|「食べる水分」を数に入れる

味噌汁、おかゆ、そうめん、ゼリー、果物、アイスクリーム、シャーベット。飲水がすすまない方でも、これらは口にできることがあります。塩分と水分が同時にとれる味噌汁は、夏の在宅で非常に優秀な一品です。

3|むせる方には、とろみかゼリーで

飲み込みにくさのある方に、さらさらしたスポーツドリンクは最もむせやすい形態です。とろみ調整食品を使う際は、酸味のある飲料はとろみがつくのに時間がかかり、後からダマになりやすい点に注意が必要です。よく混ぜてから数分置き、必要なら追加調整をしてください。ゼリータイプの経口補水液(OS-1ゼリーなど)は、この手間を省ける選択肢です。ただし、むせが続く方は嚥下の評価が先です。誤嚥性肺炎は、脱水よりずっと重い結果を招きます。

4|経管栄養の方は「白湯の追加」で調整する

胃ろう・経鼻胃管の方は、栄養剤に含まれる水分だけでは夏場に不足しがちです。栄養剤の水分含有率(多くは約75〜85%)を踏まえて、白湯の追加量を計算します。スポーツドリンクを注入する必要は通常ありません——電解質が必要なら、経口補水液や医師の指示による輸液で調整します。糖の多い飲料の注入は、下痢の原因にもなります。

5|好みと温度をあなどらない

「体にいいから」で飲み続けられる方はいません。冷たいほうが飲める方、常温がよい方、甘い味が苦手な方——好みに合わせて、麦茶・経口補水液・スポーツドリンク・ゼリーを組み合わせます。「飲めるものを、飲める形で」が原則です。

それでも足りないとき、在宅でできること

口から十分に入らなくなったとき、入院しか手段がないわけではありません。ご自宅で行える対応があります。

できること内容
採血で状態を確認ナトリウム・カリウム・腎機能(BUN/クレアチニン)・血糖などを訪問時に採取し、脱水の程度と原因(水分不足型か、塩分も失う型か)を判断します
点滴(末梢静脈)訪問診療での実施が可能です。訪問看護師が継続して管理する場合は、在宅患者訪問点滴注射指示書を交付します
持続皮下輸液血管が細く点滴が入りにくい方、自己抜去のリスクがある方に有用。皮下にゆっくり輸液を入れる方法で、高齢者医療・緩和ケアの領域で用いられてきました。静脈より穏やかですが、脱水の補正には十分対応できます
訪問回数を一時的に増やす急に状態が悪化したときは、特別訪問看護指示書によって訪問看護の回数を増やすことができます
環境そのものを整える室温・湿度の確認、エアコンの設定と使い方、遮光、寝室の位置変更。飲みものの調整より、これが効くことが多々あります
介護者の負担を減らす猛暑期は介護する側も消耗します。レスパイト入院やショートステイの活用も、立派な熱中症対策です

※表は横にスクロールできます。

この状態なら、飲みものではなく連絡を

  • 呼びかけへの反応が鈍い、話がかみ合わない、いつもより眠り込んでいる
  • 自分で水分をとれない、飲ませようとするとむせる
  • 半日以上、尿がまったく出ていない
  • 体が熱いのに汗をかいていない、皮膚が乾いて熱い
  • けいれん、まっすぐ歩けない、ろれつが回らない

これらは経口補水液で様子を見る段階ではありません。涼しい場所へ移し、首・わきの下・足の付け根を冷やしながら、かかりつけ医または119番へ。判断に迷うときは、救急安心センター(#7119)も利用できます。

ご家族・支援者の方へ:訪問のたびに見ていただきたい3つ

  1. エアコンが動いているか、設定温度は何度か。リモコンの位置と、切られていないかまで。
  2. 飲みものが手の届く場所にあるか。キャップが自分で開けられるか、コップは持てる重さか。
  3. 体重と、いつもとの違い。数字が最も雄弁です。記録を残しておくと、私たちの判断が格段に速くなります。

SECTION 08場面別・早見表

場面おすすめ理由
デスクワーク中・日常の水分補給水・麦茶・お茶汗をかいていないなら塩分も糖分も不要
運動中・屋外作業中(1時間以上)アクエリアスポカリどちらでもごくごく飲むならアクエリアス、汗の量が多いならポカリ
運動・作業のあとポカリスエット失った塩分と糖を戻しやすい
入浴前後・就寝前・起床時ポカリまたはイオンウォーター、水でも可就寝中に失う水分への備え。高齢者は特に有効
発熱・下痢・嘔吐のとき経口補水液ナトリウムを多く含み、糖は控えめ。ただし持病により注意
ふらつく・頭痛・尿が減っている経口補水液+ためらわず受診すでに脱水。回復しなければ点滴が必要
飲酒の翌朝水・スポーツドリンク・味噌汁脱水は改善するが、二日酔いそのものは時間が解決する
糖尿病・腎臓病・心不全がある主治医に確認を糖・カリウム・塩分が制限に影響する
意識がもうろうとしている飲ませず119番誤嚥の危険。冷却を優先

※表は横にスクロールできます。

SECTION 09よくあるご質問

スポーツドリンクは水で薄めて飲んでもいいですか?

糖質を減らしたいときの方法としては悪くありませんが、同時にナトリウムも薄まります。汗を大量にかいた後に2倍希釈すると、塩分補給としては不十分になります。糖を減らしたいなら、薄めるより糖質を抑えた製品を選ぶか、水+塩分(塩あめ・味噌汁)に分けるほうが確実です。

経口補水液を毎日飲めば、熱中症を防げますか?

推奨しません。経口補水液は病者用食品で、脱水があるときの食事療法に用いるものです。健康な方が常用すると塩分のとりすぎになりますし、腎臓や心臓に持病のある方では負担になります。予防は水+食事の塩分、必要ならスポーツドリンクで十分です。

子どもにはどちらがよいですか?

運動時であればどちらでも構いませんが、日常的に飲ませ続けると糖質摂取が増え、むし歯や体重増加につながります。普段は水・麦茶、汗をかいたときにスポーツドリンクという切り分けを。発熱や胃腸炎で水分がとれないときは、経口補水液を少量ずつ、こまめに与えてください。

高齢の親が、暑くてもエアコンをつけたがりません。

とても多いご相談です。「暑くない」と言われても、加齢で暑さを感じる力自体が落ちています。室温計を目に見える場所に置き、「28℃を超えたらつける」と数字のルールにすると受け入れられやすくなります。冷房が苦手な方には、設定温度を上げて扇風機を併用する、風が直接当たらない配置にするなどの工夫を。それでも難しい場合は、訪問時に私たちからもお話しします。

スポーツドリンクは薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?

多くの薬は問題ありませんが、原則は水またはぬるま湯です。飲料の成分が吸収に影響する薬もありますので、常用薬のある方は薬剤師にご確認ください。

ご自宅での療養について、ご相談ください

ふくろう訪問クリニックは、福岡市早良区を拠点に訪問診療を行っています。緩和ケア、難病、精神科、認知症を専門とし、通院が難しくなった方のご自宅へ医師が伺います。

「夏になると食欲が落ちて、水分もとれていないようだ」「利尿薬を飲んでいるが、この暑さで心配」「点滴が必要かどうか判断してほしい」——こうしたご相談も、日常的にお受けしています。ご本人からでも、ご家族・ケアマネジャー・訪問看護ステーションからでも構いません。まずはお気軽にお問い合わせください。

参考文献・出典

  1. 日本救急医学会 熱中症および低体温症に関する委員会.熱中症診療ガイドライン2024.2024年7月25日公表.https://www.jaam.jp/info/2024/info-20240624.html
  2. 神田潤ほか.熱中症診療ガイドライン2024の作成経緯とその特徴.保健医療科学.2025;74(2):112-.
  3. 総務省消防庁.令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況(確定値).令和7年10月29日.https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r7/heatstroke_nenpou_r7.pdf
  4. 総務省消防庁.熱中症情報(令和8年 週報).https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/
  5. 公益財団法人日本スポーツ協会.スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(第6版).2024.
  6. 日本生気象学会.「日常生活における熱中症予防指針」Ver.4.2022年5月23日改訂.https://seikishou.jp/
  7. 環境省.熱中症環境保健マニュアル2022.令和4年3月改訂.https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php
  8. Mackus M, Stock AK, Garssen J, Scholey A, Verster JC. Alcohol hangover versus dehydration revisited: The effect of drinking water to prevent or alleviate the alcohol hangover. Alcohol. 2024;121:9-18. doi:10.1016/j.alcohol.2024.07.006(PMID: 39069212)
  9. Turner S, Mackus M, Verster JC, et al. Inflammation, oxidative stress and gut microbiome perturbation: A narrative review of mechanisms and treatment of the alcohol hangover. Alcohol Clin Exp Res. 2024;48(7):1451-1465. doi:10.1111/acer.15396
  10. Sasson M, Shvartzman P. Hypodermoclysis: an alternative infusion technique. Am Fam Physician. 2001;64(9):1575-1578.
  11. 大塚製薬.ポカリスエット 製品情報(栄養成分・電解質濃度).https://pocarisweat.jp/products/pocarisweat/
  12. 日本コカ・コーラ株式会社.アクエリアス 原材料・栄養成分表示.https://www.coca-cola.com/jp/ja/brands/aquarius/products
  13. 株式会社大塚製薬工場.経口補水液オーエスワン(OS-1)製品情報.https://www.os-1.jp/products/

※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。持病のある方、内服中の薬がある方は、飲みものの選択についても主治医・薬剤師にご相談ください。製品の成分値は各社公表の栄養成分表示(2026年8月時点)に基づいており、規格変更により変わる可能性があります。
作成:ふくろう訪問クリニック(医療法人ふくろうの樹)/2026年8月