承認された薬と、名前だけ似た自由診療の見分け方
「光免疫療法」は、日本で世界に先がけて承認された、本物のがん治療です。 だからこそ、同じ名前を使った自由診療が、承認の前後から広がりました。 承認された治療は一つだけ、対象は一つのがんだけ。この二つを知っていれば、見分けられます。
この回の結論
- 国が承認した光免疫療法は一つだけで、対象は「切除できない局所進行・局所再発の頭頸部がん」だけです(2020年9月承認)。
- 受けられるのは、学会が認定した限られた病院です。自由診療のクリニックで受けられる「光免疫療法」は、承認された治療ではありません。
- 「頭頸部がん以外への有効性・安全性は確立されていない」と、国立がん研究センター東病院が明記しています。
SECTION 01 本物の光免疫療法とは何か
承認された光免疫療法は、がん細胞の表面にくっつく薬(抗体に光に反応する色素をつけたもの)を点滴し、 翌日にレーザー光を病巣に当てて、がん細胞を壊す治療です。米国国立がん研究所の日本人研究者の成果をもとに開発され、 2020年9月25日に、日本が世界で初めて承認しました。
- 対象は一つのがんだけ「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部がん」。しかも、手術や化学放射線療法ができる場合はそちらが優先されます。
- 受けられる病院が限られる日本頭頸部外科学会の認定施設で、常勤の頭頸部がん指導医がいることなどが条件です。全身麻酔で光を当てます。
- ほかのがんは、いま治験の途中食道がんなどで医師主導の治験が行われています。それ以外のがんで受ける道は、2026年9月時点でありません。
SECTION 02 名前だけ似た「光免疫療法」
承認の前後から、自由診療のクリニックで「光免疫療法」「次世代光免疫療法」「〇〇光免疫療法」と名づけた治療が広がりました。 多くは、承認された薬とは別の薬剤(別の色素や、色素を包んだ微粒子)を点滴し、別の光を当てるものです。 「どのがんにも」「ステージ4でも」「副作用なし」と案内されることが多く、費用は1回数十万円になります。
| 承認された光免疫療法 | 自由診療の「光免疫療法」 | |
|---|---|---|
| 薬 | 承認された1剤(がん細胞にくっつく抗体+色素) | 別の色素・微粒子など。承認された薬ではない |
| 対象 | 切除できない局所進行・局所再発の頭頸部がん | 「どのがんにも」「どの段階でも」 |
| 場所 | 学会認定の病院。全身麻酔で照射 | 自由診療のクリニック。外来で |
| 誰が確かめたか | 承認 臨床試験で国が審査 | 確かめられていない 人で比べた試験がない |
| お金 | 保険適用。高額療養費の対象 | 全額自費。1回数十万円 |
表1 同じ「光免疫療法」という名前の、二つのもの。国立がん研究センター東病院も「インターネットやメディアの“がん光免疫療法”は、上記以外の治療に対しても使われている場合がある」と注意している。
SECTION 03 承認された治療も、万能ではない
本物のほうも、正しく知っておく必要があります。承認の根拠になった臨床試験は小規模でした。
国立がん研究センター東病院の説明によれば、承認の元になった試験では、日本で3例中2例、海外で30例中13例で腫瘍が縮小しました。 同院は「どの試験においても対象患者数が少ないことにご留意ください」と添えています。 注意すべき副作用として、出血、舌や喉の腫れ、痛み、アレルギー反応、光線過敏症、皮膚や粘膜の潰瘍・壊死が挙げられています。 点滴後4週間は強い光や直射日光を避ける必要があります。
つまり、承認された治療でさえ「他に手がない頭頸部がんで、条件を満たす人に、専門施設で」という限られた使い方です。 承認は「万能」の印ではなく、「この条件で、益が害を上回ると国が判断した」という印です。
-
こう言われたら「日本で承認された、光免疫療法です」こう聞き返す「頭頸部がんの承認薬ですか。薬の名前と承認番号を教えてください」
-
こう言われたら「承認薬と同じ原理で、どのがんにも使えます」こう聞き返す「同じ原理でも別の薬ですね。その薬で人を比べた試験はありますか」
-
こう言われたら「病院では受けられないが、うちなら受けられます」こう聞き返す「病院で受けられない理由は、承認されていないからですか」
承認された薬の名前や「厚生労働省承認」という言葉を、別の薬を使う治療の宣伝に使うことは、患者を誤認させる広告として医療広告ガイドラインの規制対象になります。 また、承認されていない薬を自由診療で使うホームページには、未承認であること、入手経路、国内の承認薬の有無、海外の安全性情報、公的な救済制度の対象外であることの5項目を書く義務があります(第1回)。 「光免疫療法」のページにこの5項目がなければ、その時点で信用しないでください。
肺がんや膵臓がんの方のご家族から、「光免疫療法なら、うちの親も受けられると書いてあった」と相談されることがあります。 私たちが伝えるのは、二つだけです。承認された治療の対象は頭頸部がんだけであること。ほかのがんで受けられるとしたら、それは承認された薬ではない別のものであること。 そのうえで、「本物の治験に参加できる可能性はないか」を、病院の担当医に聞いてもらいます。治験なら、費用はかからず、結果は将来の患者さんの役に立ちます。
本物が生まれると、偽物も生まれます。
光免疫療法は、日本の医学が誇ってよい成果です。だからこそ、その名前には力があり、名前だけを借りる人が現れました。 これは光免疫療法に限りません。免疫チェックポイント阻害薬が出れば「免疫療法」が、再生医療が進めば「幹細胞治療」が、同じ道をたどりました。
新しい本物の治療が出たら、私たちは同時に、その名前を借りた自由診療が出ることを覚悟します。 ご家族にお願いしたいのは、「名前」ではなく「薬の名前と、承認された対象」で見ることです。それだけで、本物と名前だけのものは分かれます。
この回のチェックリスト(第8回ぶん)
- 承認された光免疫療法の対象が「頭頸部がんだけ」だと知っている。
- 「光免疫療法」と言われたら、薬の名前と承認番号を聞いた。
- 頭頸部がん以外で勧められたら、「別の薬ですね」と確かめた。
- そのホームページに、未承認の薬に必要な5項目が書いてあるか見た。
- 本物の治験に参加できる可能性を、病院の担当医に聞いた。
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電話番号と受付時間は変わることがあります。最新の内容は各ページでご確認ください。すでに契約した・お金を払ったあとでも相談できます。
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- 福岡市消費生活センター相談専用 092-781-0999(月〜金 9:00〜17:00、土 10:00〜16:00は電話のみ)。クーリングオフや返金の相談はここへ/福岡市「消費生活相談ご利用案内」
- 福岡市 医療安全相談窓口(各区衛生課)市内の医療機関での説明や診療に疑問があるとき。早良区 092-851-6567、城南区 092-831-4208、西区 092-895-7072、中央区 092-761-7325、南区 092-559-5115、博多区 092-419-1090、東区 092-645-1081(月〜金 9:30〜11:30、13:00〜16:00)/福岡市「医療安全相談窓口のご案内」
- がん相談支援センターがんの治療で迷ったとき。県内すべてのがん拠点病院にあり、その病院にかかっていなくても無料で相談できます/福岡県「福岡県内のがん拠点病院がん相談支援センター」
- 「健康食品」の安全性・有効性情報サプリや健康食品の成分を、名前で調べられる公的データベース(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所)/hfnet.nibn.go.jp
- 医療機関ネットパトロール医療機関のホームページの「必ず治る」「副作用なし」などの表示を、厚生労働省の事業に通報できます/通報フォーム
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REFERENCE 参考資料
- 国立がん研究センター東病院「がん光免疫療法全般に関するQ&A」2025年12月改訂(https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/topics/2025/QA_20251217.pdf)
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「アキャルックス点滴静注250mg 審査報告書」2020年(https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20201013001/841001000_30200AMX00942000_B100_1.pdf)
- 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」令和8年3月30日最終改正(https://www.mhlw.go.jp/content/001683594.pdf)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「標準治療と診療ガイドライン」(https://ganjoho.jp/public/knowledge/guideline/index.html)

