手のふるえ、動きの遅さ、歩きにくさ——パーキンソン病は「動きの病気」として知られていますが、実際には便秘や睡眠、気分、血圧まで、からだ全体に関わる病気です。進行はゆっくりで、寿命そのものへの影響は思われているほど大きくありません。だからこそ、「どう診断され、どう治療し、どう暮らしていくか」を早い段階で知っておくことが大きな支えになります。この記事では診断・治療の基本をやさしく整理したうえで、通院が難しくなってからの在宅診療でできることを、一段深く掘り下げて解説します。

01パーキンソン病とはどんな病気か

脳の奥にある黒質(こくしつ)という部分には、ドパミンという物質をつくる神経細胞が集まっています。ドパミンは、思った通りになめらかに体を動かすための“潤滑油”のような役割を担っています。パーキンソン病は、この黒質のドパミン神経細胞が少しずつ減っていくことで起こる病気です。

厚生労働省の指定難病(告示番号6)に指定されており、発症は50〜65歳に多く、年齢が上がるほど発症率が高くなります。40歳以下で発症するものは若年性パーキンソン病と呼ばれ、遺伝子の異常が見つかることもあります。日本での有病率は人口10万人あたりおよそ100〜180人、令和元年度の医療受給者証保持者数はパーキンソン病関連疾患からの推計で約13万5千人とされています。高齢化に伴い、患者さんの数は世界的にも増え続けています。

まず知っておいてほしい「予後」の話

難病と聞くと余命の短い病気を想像されますが、パーキンソン病の生命予後は決して悪くありません。難病情報センターの診療指針でも、平均余命は一般の方より2〜3年短い程度と記載されています。進行の速さにも幅があり、ふるえが主体の方はゆっくり進むことが多いとされています。生命に関わってくるのは病気そのものというより、寝たきりになってからの合併症、とくに誤嚥性肺炎などの感染症です。つまり「転ばない」「食べられる」「動き続ける」を守ることが、そのまま予後を守ることにつながります。

02症状は「動き」だけではない

4つの代表的な運動症状

  • 静止時振戦(せいしじしんせん):じっとしているときに手足が細かくふるえる。左右差があり、片側から始まることがほとんどです。何かをしようとすると、かえって止まるのが特徴です。
  • 筋強剛(きんきょうごう):筋肉がこわばり、他の人が関節を曲げ伸ばしすると歯車のようにカクカクした抵抗を感じます。
  • 運動緩慢・無動:動作がゆっくり、小さくなります。表情が乏しくなる(仮面様顔貌)、声が小さく抑揚がなくなる、字がだんだん小さくなる、といった形でも現れます。
  • 姿勢保持障害:バランスを崩したときに立て直せず、転びやすくなります。これは進行してから出てくる症状で、発症の最初の症状としては現れません

歩き方にも特徴があります。前かがみで歩幅が狭く、腕の振りが減り、進行すると足が床に貼りついたように出なくなるすくみ足が現れます。方向転換や、ドアの敷居・狭い場所を通るときにとくに目立ちます。

運動症状より先に現れる「非運動症状」

近年とくに重視されているのが非運動症状です。便秘・嗅覚の低下・レム睡眠行動異常症(眠っているときに夢の内容に合わせて叫んだり手足を動かしたりする)・うつなどは、手足の症状が出るより何年も前から始まっていることがわかっています。診察のときにこれらを確認することが、診断の重要な手がかりになります。

図1 パーキンソン病の経過のイメージ 前駆期(数年〜20年) 診断・治療が効きやすい時期 進行期 後期 運動症状が出て診断 先に現れるサイン 便秘/においが分かりにくい 夢に合わせて叫ぶ・暴れる 気分の落ち込み・意欲低下 薬がよく効く時期 仕事・家事を続けられる 運動習慣をつくる好機 通院で治療を組み立てる 在宅の支えが要る時期 薬の効き目が波打つ 転倒・飲み込みにくさ 訪問診療・訪問看護へ

図1:経過には個人差が大きく、すべての方がこの通りに進むわけではありません。ふるえが主体の方は進行がゆっくりなことが多いとされています。

03診断はどうやってつけるのか

パーキンソン病には「これ一つで確定できる血液検査」はありません。診断の中心は、問診と診察です。医師は、症状の出方(片側から始まったか)、経過、飲んでいる薬、そして実際に手足を動かしてこわばりを確かめることで判断します。

国内の診断基準(指定難病)

医療費助成の対象となるかを判断する国の診断基準では、次の4項目をすべて満たす場合にパーキンソン病(Definite)と診断されます。

  1. パーキンソニズムがある(典型的な左右差のある静止時振戦、または「歯車様の筋強剛・運動緩慢・姿勢反射障害」のうち2つ以上)
  2. 脳CTまたはMRIに、他の原因を示す特異的な異常がない
  3. パーキンソニズムを起こす薬物・毒物への曝露がない
  4. 抗パーキンソン病薬でパーキンソニズムが改善する

4番目にあるように、「薬が効くかどうか」自体が診断の一部である点が、この病気の特徴です。1〜3を満たすものの薬の反応をまだ確認していない場合は「疑い(Probable)」として扱われます。国際的には、国際パーキンソン病・運動障害学会(MDS)が2015年に発表した診断基準も広く用いられています。

検査は「他の病気を見分ける」ために行う

  • 頭部MRI・CT:脳梗塞や正常圧水頭症など、似た症状を起こす別の病気を除外します。パーキンソン病では基本的に特徴的な異常は写りません。
  • ドパミントランスポーターシンチグラフィ(DaTスキャン):黒質から線条体に伸びる神経の減り具合を画像化します。本態性振戦や薬剤性パーキンソニズムとの区別に役立ちます。
  • MIBG心筋シンチグラフィ:心臓の交感神経の働きを見る検査で、パーキンソン病では低下します。他のパーキンソン症候群との鑑別に用いられます。
「パーキンソン病に似た病気」を見分けることが重要です

薬の副作用によるもの(胃薬や一部の精神科の薬など)、脳梗塞の積み重ねによるもの、進行性核上性麻痺・多系統萎縮症・大脳皮質基底核変性症といった別の神経の病気でも、よく似た症状が出ます。薬剤性であれば原因薬を調整することで改善が期待でき、他疾患であれば治療方針も見通しも変わります。診断は脳神経内科での評価が基本と考えてください。

04治療の全体像——薬・手術・リハビリ

残念ながら、現時点で病気の進行そのものを止める治療法は確立していません。治療はすべて症状をやわらげる対症療法です。しかし、ここは強調しておきたいところですが、パーキンソン病は神経の病気のなかでは「薬がよく効く」ほうの病気です。適切な治療で、長く自立した生活を保つことができます。

薬物療法:足りないドパミンを補う

治療の中心は、脳内で不足しているドパミンを補ったり、その働きを助けたりする薬です。国内では大きく9系統の薬が使われており、必要に応じて組み合わせます。基本となるのはL-ドパ(レボドパ)ドパミンアゴニストの2つです。

状況治療開始の考え方理由
おおむね65歳以下で発症L-ドパ以外の薬から始めることを検討長期のL-ドパ使用で起こる運動合併症(後述)のリスクが高いため
高齢の方・認知症を合併L-ドパから始めることを検討ドパミンアゴニストで幻覚・妄想が誘発されやすく、運動合併症は若年者ほど多くないため

日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」および難病情報センターの診療指針に基づく考え方。実際の選択は症状の程度・効果・副作用をみて個別に決められます。

数年後に出てくる「効き目の波」

治療開始からしばらくは、朝に薬を飲めば一日中安定して過ごせる時期が続きます(いわゆるハネムーン期)。しかし年数が経つと、次のような変動が現れてきます。

  • ウェアリング・オフ:次の服薬時間の前に薬が切れて、動きにくくなる。「オン(効いている)」と「オフ(切れている)」がはっきりしてきます。
  • ジスキネジア:薬が効きすぎる時間帯に、体が勝手にくねくね動いてしまう。
図2 薬の効き目の変化(イメージ) 発症から数年(安定期) ちょうどよく効く範囲 一日を通して効果が続く 進行期(効き目が波打つ) ちょうどよく効く範囲 効きすぎ オフ オフ 服薬の間隔で「動ける/動けない」が入れ替わる

図2:進行期には、服薬のタイミングによって動きやすさが大きく変わります。「何時に飲んで、何時から動きにくくなるか」の記録が、薬の調整にとても役立ちます。

この波に対しては、服薬回数を増やす・薬の組み合わせを変えるといった調整を行います。内服の調整では追いつかない場合、デバイス補助療法という選択肢があります。脳深部刺激療法(DBS)、腸に直接薬を持続的に注入する方法、そして2023年に国内で発売されたレボドパ製剤の24時間持続皮下注射などです。これらは専門施設での導入と管理が必要ですが、内服だけでは埋められない時間帯を補うことができます。

リハビリテーションは「治療の一部」です

運動は、気休めではなく治療の柱の一つです。転倒予防に関するコクラン・レビュー(2022年)では、運動によって転倒の発生率がおよそ26%減少するという中等度の確実性の結果が示されています(率比0.74、95%信頼区間0.63〜0.87)。バランス訓練、大きな動作を意識した練習、有酸素運動、筋力トレーニング、ダンスなど、続けられるものを選ぶのが何より大切です。

薬を自己判断で中止しないでください

パーキンソン病の薬を急にやめたり大幅に減らしたりすると、悪性症候群という重篤な状態(高熱・強い筋肉のこわばり・意識がもうろうとする)を起こすことがあります。他の病気で入院・手術になったときや、食事がとれないときも、必ず「パーキンソン病の薬を飲んでいる」ことを伝えてください。調整が必要なときは、必ず主治医と相談しながら行います。

ここから一段深く

05 在宅診療でできること

通院が難しくなってからが、この病気の本番とも言えます。訪問診療は「通えなくなった人の代わりの手段」ではなく、生活の場でしか分からないことを治療に反映できる方法です。

そろそろ在宅診療を、と考えるタイミング

次のようなサインがあれば、訪問診療への切り替えや併用を検討する時期です。

  • 通院が「一日仕事」になり、その日は疲れ果てて何もできない
  • 待合室で長く待つ間にオフになってしまい、診察室では本来の状態が伝わらない
  • 外出時や院内で転びそうになったことがある
  • 家族が付き添わないと通院できず、家族の仕事や生活に影響が出ている
  • 食事量が減ってきた、むせるようになった

1|薬の「時間」を生活に合わせて組み直す

進行期の治療は、薬の種類より飲むタイミングの勝負になります。1日4〜6回の服薬になることも珍しくなく、「毎食後」という指示では合わなくなります。訪問診療では、実際の起床時間・食事時間・活動したい時間帯に合わせて服薬時刻を組み直します。

  • オン・オフ日誌をつける:「何時に薬を飲み、何時から動きにくくなったか」を1〜2週間書き出すだけで、調整の精度が大きく上がります。ご家族が気づいた変化も貴重な情報です。
  • 食事との関係を整える:レボドパはたんぱく質と一緒だと吸収が落ちることがあります。効きが悪い時間帯があるなら、肉・魚・乳製品を摂る時間との関係を見直します。
  • 飲み忘れ・重複を防ぐ:一包化、日付入りの服薬カレンダー、タイマー、訪問看護師によるセットなど、生活に合った方法を選びます。手指のこわばりでシートから出せない方には、剤形の変更(口の中で溶けるタイプ、貼り薬)も検討します。
  • 飲み込みにくくなったとき:粉砕できる薬とできない薬があります。自己判断で砕かず、貼付剤への変更などを含めて相談してください。

2|転倒を防ぐ——家の中を「見て」対策する

転倒による骨折は、そこから一気に寝たきりへ進んでしまう最大の分かれ道です。訪問診療の強みは、実際の家の中で危険な場所を確認できることにあります。

  • すくみ足が起きやすいのは、歩き始め・方向転換・ドアや廊下の狭い場所・目的地の直前です。この場所に手すりを付けるだけで転倒が減ります。
  • すくみ足には「きっかけ(キュー)」が有効です。床に貼ったテープの線をまたぐ、「イチ、ニ」と声をかける、メトロノームや音楽のリズムに合わせる、といった方法を試します。
  • 夜間のトイレは危険地帯です。足元灯、ポータブルトイレの配置、ベッドの高さと手すりの位置を調整します。
  • 敷居の段差、めくれたカーペット、コード類、キャスター付きの椅子は、その場で取り除けるものから減らします。
  • 訪問リハビリで、その家の動線に合わせた立ち上がり・方向転換の練習を行うと、病院のリハビリ室での訓練より実生活に直結します。

3|食べること・飲み込むことを守る

前述のとおり、生命予後を左右するのは誤嚥性肺炎などの合併症です。飲み込みの障害は本人の自覚が乏しいまま進むことがあり、「むせないから大丈夫」とは限りません。

  • 食事の姿勢:あごを引き、深く腰かけ、足底を床につける。ベッド上なら角度を調整する。この基本だけで誤嚥はかなり減ります。
  • 薬が効いている時間に食べる:オフの時間帯の食事は、飲み込みも危険で時間もかかります。服薬時刻と食事時刻を合わせて設計します。
  • 口腔ケア:口の中の細菌を減らすことは、誤嚥性肺炎の予防に直結します。訪問歯科との連携も検討します。
  • 体重を測る:食事量の減少は数字に先に出ます。体重減少は治療方針を見直すサインです。
  • 便秘の管理:この病気では便秘が非常に多く、ひどい便秘は薬の吸収も食欲も落とします。水分・食物繊維・運動に加え、下剤の調整も在宅で行えます。

4|血圧・排尿・睡眠——「動き以外」の困りごと

  • 起立性低血圧:立ち上がったときのふらつきは転倒の原因になります。ゆっくり起き上がる、水分と塩分、弾性ストッキング、そして薬の見直しで対応します。食後に強く下がる方もいます。
  • 頻尿・排尿困難:夜間のトイレ回数は転倒と睡眠不足に直結します。泌尿器の評価と併せて調整します。
  • レム睡眠行動異常症:夢に合わせて動き、ベッドから落ちたり、隣で寝ている方が怪我をしたりすることがあります。寝床の安全対策と薬の調整の両面で対応します。
  • 日中の眠気:薬の影響のこともあります。運転をされる方には特に注意が必要です。

5|幻覚・気分の落ち込みへの向き合い方

進行すると、実際にはいない人や動物が見える(幻視)ことがあります。ご家族が「そんなものはいない」と強く否定すると、かえって混乱と不安が強まります。まずは本人の体験を否定せず、安心できる声かけをすることが基本です。

医学的には、幻覚の背景に薬の影響がないかを順番に確認し、必要に応じて減量・整理していきます。同時に、脱水・感染・便秘といった身体の不調が引き金になっていないかを探すことが、在宅では特に重要です。一般的な抗精神病薬はパーキンソン症状を悪化させることがあるため、使う場合は薬剤選択に慎重さが必要です。気分の落ち込みや意欲の低下も頻度の高い症状で、「本人のやる気の問題」ではなく病気の一部として治療の対象になります。

6|訪問看護・訪問リハビリを組み合わせる

パーキンソン病は、重症度によっては訪問看護を医療保険で、回数の制限をゆるめて利用できる対象疾患です(厚生労働大臣が定める疾病等=いわゆる「別表第七」に、ホーエン・ヤール重症度分類3度以上かつ生活機能障害度2度以上のパーキンソン病関連疾患が含まれます)。介護保険の区分支給限度額を気にせず、必要な回数の訪問看護を組み立てられるのは大きな利点です。

在宅チームがそれぞれ担うこと
  • 訪問診療(医師):薬の調整、合併症の診断と治療、書類の作成、急変時の対応、看取りまで
  • 訪問看護:体調の観察、服薬管理、排泄・栄養・皮膚の管理、家族への助言、状態変化の早期発見
  • 訪問リハビリ(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士):歩行と転倒予防、生活動作の練習、飲み込みと発声の訓練
  • 薬剤師:一包化、剤形の工夫、飲み合わせの確認
  • ケアマネジャー:介護保険サービスの調整、福祉用具、レスパイト(家族の休養)の手配
  • 脳神経内科の専門医:診断の確認、デバイス補助療法の適応判断。在宅医と専門医の「二人主治医制」が理想的です

7|急変にどう備えるか

発熱、食事がとれない、急に動けなくなった——こうしたときに、24時間つながる先があることが在宅療養の安心の核になります。パーキンソン病の方では、次のような場面が起こりえます。

  • 誤嚥性肺炎・尿路感染:早期に気づけば、点滴と抗菌薬で自宅治療が可能なことも多くあります。
  • 脱水:夏場や下痢のあと、薬の吸収も悪くなり動けなくなります。
  • 薬が飲めなくなったとき:吐き気や意識レベルの低下で内服が途切れると、悪性症候群のリスクがあります。速やかな連絡が必要です。

そのうえで、入院するのか、自宅で治療するのかを、あらかじめご本人・ご家族と話し合っておきます。入院は治療のためには有効ですが、環境の変化でせん妄が起きたり、動かない時間が続いて一気に体力が落ちたりするリスクもあります。「どちらが正解」ではなく、その方の希望と状態から一緒に選びます。

8|これから先のことを、元気なうちに話しておく

進行した段階では、食べられなくなったときに胃ろうをつくるか、肺炎を繰り返したときにどこまで治療するか、最期をどこで迎えたいか、といった判断が必要になることがあります。判断力があるうちに、ご本人の考えを聞き、ご家族と共有しておく話し合い(アドバンス・ケア・プランニング)は、あとで残される方の負担を大きく減らします。

これは「終わりの準備」ではなく、これからどう生きたいかを決める作業です。一度決めたら変えられないものでもありません。訪問診療では、こうした対話を診療の中で、時間をかけて重ねていくことができます。

図3 パーキンソン病を支える在宅チーム ご本人と ご家族 訪問診療(医師) 訪問看護 訪問リハビリ 脳神経内科の専門医 ケアマネジャー 薬剤師・訪問歯科

図3:それぞれが別々に動くのではなく、情報を共有して一つのチームとして支えることが、在宅療養の質を決めます。

06使える制度とお金のこと

パーキンソン病は長い付き合いになる病気です。使える制度を知っているかどうかで、経済的な負担は大きく変わります。

難病医療費助成制度(指定難病6)

項目内容
対象となる重症度ホーエン・ヤール重症度分類3度以上、かつ生活機能障害度2度以上
重症度が届かない場合軽症高額該当:申請月以前の12か月以内に、医療費総額(10割)が33,330円を超える月が3回以上あれば対象
認定されると自己負担割合が2割に引き下げられ、所得に応じた月額自己負担上限額を超えた分が助成される
重症度の判定時期治療開始後は、適切な医学的管理のもとで直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断する
手続き難病指定医が作成する臨床調査個人票を添えて、お住まいの自治体窓口へ申請。原則1年ごとに更新

出典:難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」(令和6年4月1日適用の診断基準・重症度分類)。上限額など制度の詳細は自治体窓口でご確認ください。

ホーエン・ヤール重症度分類と生活機能障害度

ヤール状態生活機能障害度
1度症状が体の片側だけ1度:日常生活・通院にほとんど介助を要しない
2度症状が両側にある(姿勢反射障害なし)
3度軽〜中等度。姿勢反射障害あり。日常生活に介助は不要2度:日常生活・通院に部分的介助を要する
4度高度の障害。歩行は介助なしにどうにか可能
5度介助なしにはベッドまたは車椅子生活3度:全面的介助を要し、独力では起立・歩行不能

ヤール分類と生活機能障害度は別々の指標で、必ずしも上表のとおり対応するわけではありません(医師が個別に判定します)。医療費助成は「ヤール3度以上かつ生活機能障害度2度以上」が対象です。

そのほかに使える制度

  • 介護保険:65歳以上はもちろん、40〜64歳の方も、パーキンソン病関連疾患(ヤール3度以上かつ生活機能障害度2度以上)は16特定疾病に含まれるため申請できます。訪問介護、デイサービス、福祉用具貸与、住宅改修などが利用できます。
  • 訪問看護の医療保険適用:重症度の条件を満たすと、いわゆる「別表第七」の対象となり、必要な回数の訪問看護を医療保険で受けられます。
  • 身体障害者手帳・障害年金:症状の程度により対象となります。手帳があれば税制上の優遇や各種割引も受けられます。
  • 難病相談支援センター・患者会:制度の相談だけでなく、同じ病気の方とつながれる場としても心強い存在です。

07この病気と長く付き合うために

  1. 動き続けること。運動は転倒を減らし、体力を保ちます。「毎日少し」を、続けられる形で。
  2. 記録すること。服薬時刻と体調の記録は、最も価値のある診療情報です。
  3. 薬を自己判断で変えないこと。とくに急な中止は危険です。
  4. 転ばない工夫を先回りしてすること。転んでからでは遅い、が本当のところです。
  5. 非運動症状も遠慮なく伝えること。便秘も、眠れないことも、気分の落ち込みも、治療の対象です。
  6. 家族が抱え込まないこと。介護者の疲弊は、本人の療養の質を直接下げます。レスパイトの利用は「甘え」ではありません。
  7. 相談できる医療者を、通える距離に持っておくこと。困ってからではなく、困る前に。

08よくあるご質問

Q. パーキンソン病は遺伝しますか?

大多数の方は原因不明で、遺伝しません。ごく一部、とくに若年で発症する方では遺伝子の異常が関わることがあります。気になる場合は主治医にご相談ください。

Q. 薬は早く始めると効かなくなると聞きました。

かつてはそう言われた時期もありましたが、現在は「必要な症状があるなら治療を始める」のが基本です。ただし発症年齢や併存する症状によって、どの薬から始めるかの考え方は変わります。

Q. 訪問診療にすると、これまでの専門医にかかれなくなりますか?

いいえ。専門医の外来を年に数回続けながら、日常の管理を訪問診療が担う形(二人主治医制)がよく取られます。当院からも診療情報を共有しながら連携します。

Q. まだ自分で歩けますが、訪問診療は早すぎますか?

早すぎることはありません。むしろ、転倒や飲み込みの問題が起きる前から家の環境と生活のリズムを知っておくほうが、いざというときに素早く動けます。

ふくろう訪問クリニックにご相談ください

当院は福岡市早良区を拠点に、緩和ケア・神経難病・精神科・認知症を専門とする在宅医療を行っています。パーキンソン病では、服薬時刻の組み直し、転倒予防のための住環境の確認、嚥下や栄養の評価、ご家族への助言までを、ご自宅で、時間をかけて行うことができます。法人内の「ふくろう訪問看護リハビリステーション」と連携し、訪問看護・訪問リハビリを含めた体制でお支えします。

「通院がつらくなってきた」「薬の効き目にムラがある」「家族だけでは不安」——そうお感じになったら、どうぞお気軽にご相談ください。

参考文献
  1. 難病情報センター.パーキンソン病(指定難病6)診断・治療指針(医療従事者向け).令和6年4月1日.https://www.nanbyou.or.jp/entry/314(2026年7月25日閲覧)
  2. 日本神経学会 監修.パーキンソン病診療ガイドライン2018.医学書院,東京,2018.https://www.neurology-jp.org/guidelinem/parkinson_2018.html(2026年7月25日閲覧)
  3. Postuma RB, Berg D, Stern M, et al. MDS clinical diagnostic criteria for Parkinson’s disease. Mov Disord. 2015;30(12):1591-1601. doi:10.1002/mds.26424
  4. Allen NE, Canning CG, Almeida LRS, et al. Interventions for preventing falls in Parkinson’s disease. Cochrane Database Syst Rev. 2022;6(6):CD011574. doi:10.1002/14651858.CD011574.pub2
  5. Ernst M, Folkerts AK, Gollan R, et al. Physical exercise for people with Parkinson’s disease: a systematic review and network meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2024;4(4):CD013856. doi:10.1002/14651858.CD013856.pub3
  6. 厚生労働省.指定難病の概要、診断基準等、臨床調査個人票(告示番号1〜341)※令和6年4月1日より適用.https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36011.html(2026年7月25日閲覧)
  7. 神経変性疾患領域の基盤的調査研究班.パーキンソン病の療養の手引き(2016年発行・2023年追補版).https://plaza.umin.ac.jp/neuro2/parkinson.pdf(2026年7月25日閲覧)

本記事は一般の方向けの情報提供を目的としたもので、個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療についてのご判断は、必ず主治医にご相談ください。制度の内容・金額は改定されることがあります。最新の情報は各自治体の窓口等でご確認ください。