医者が飲みたがらない薬10選

「医者が飲みたがらない薬」という見出しを、書店やスマートフォンで一度は見たことがあると思います。
結論から言うと、誰にとっても危険な薬というものは、ほとんど存在しません。あるのは「この人にとって、いまの量で、この目的で続ける理由があるかどうか」という問いだけです。
ただ、その問いを立て直したほうがよい薬は、確かにあります。ここでは日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025」厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針」をもとに、私たちが在宅の現場で「年齢が上がったら、もう一度確かめたい」と考えている薬を10種類挙げます。あわせて、同じような見出しの記事に振り回されないための読み方もお伝えします。

SECTION 01 先に結論を3つ

1
「危ない薬」ではなく「割に合わなくなった薬」を探す

同じ薬でも、50歳のときは利益のほうが大きく、80歳になると害のほうが大きくなることがあります。体が変わったのであって、薬が突然危険物になったわけではありません。

2
やめるより「置き換える」ほうが多い

この10年で、同じ目的をより安全に果たせる薬がいくつも登場しました。2025年に10年ぶりに改訂されたガイドラインの変更点も、多くは「やめなさい」ではなく「こちらに替えられます」という内容です。

3
いちばん危険なのは、記事を読んで自分で止めること

薬を減らすこと自体は、いまや国が旗を振っている方針です。ただし順番と速度がすべてで、急に止めると本来の病気が悪化したり、離脱症状が出たりします。次の受診で「この薬、まだ要りますか」と聞く。それが最も安全で、最も効果のある一手です。

SECTION 02 なぜ高齢になると、同じ薬の意味が変わるのか

年齢とともに、肝臓での分解が遅くなり、腎臓からの排泄が落ちます。体の水分が減って脂肪の割合が増えるため、脂に溶けやすい薬(睡眠薬など)は体内に長くとどまります。さらに、睡眠薬や抗コリン薬に対する感受性そのものが高くなることも知られています。つまり同じ1錠が、以前より強く、長く効くようになるということです。

そこに「薬の数」が重なります。厚生労働省の指針では、服用薬剤数が6種類以上になると薬物有害事象の発生頻度が高くなることが示されています。そして75歳以上では、1か月に受け取る薬が7種類以上という人が約4人に1人です。

図1 1か月に受け取る薬の種類数(年齢層別)同一の保険薬局で調剤された薬剤種類数。平成28年社会医療診療行為別統計1〜2種類3〜4種類5〜6種類7種類以上40〜64歳47%30%14%10%65〜74歳44%29%14%14%75歳以上34%25%16%25%▲ 7種類以上が4人に1人服用薬剤数が6種類以上になると、薬物有害事象の発生頻度が高くなることが示されている(厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」)

図1:年齢が上がるほど薬の種類は増えます。ここで大事なのは「多い=悪い」ではないという点です。厚生労働省は、単に数が多い状態と、それによって害が出ている状態(ポリファーマシー)を区別しています。10種類でも整理されていれば問題なく、5種類でも噛み合っていなければ問題です。

SECTION 03 「年のせい」に見える症状が、薬のせいであることがある

高齢者診療でいちばん大切な発想がこれです。ふらつき、物忘れ、便秘、尿が出にくい、食欲がない、気分が落ち込む――どれも「年のせい」で片づけられがちですが、厚生労働省の指針にはこれらを薬剤起因性老年症候群として、原因になりうる薬の一覧が載っています。

図2 薬が原因で起こりうる「年のせい」に見える症状厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」表1より作成ふらつき・転倒降圧薬(中枢性・α遮断薬・β遮断薬)、睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、てんかん治療薬、抗精神病薬、抗ヒスタミン薬、メマンチン記憶障害睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン)、三環系抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、パーキンソン病治療薬、てんかん治療薬、一部の降圧薬せん妄パーキンソン病治療薬、睡眠薬、抗不安薬、三環系抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、ジギタリス、抗不整脈薬、気管支拡張薬、副腎皮質ステロイド抑うつ中枢性降圧薬、β遮断薬、抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、抗甲状腺薬、副腎皮質ステロイド食欲低下NSAIDs、アスピリン、緩下剤、抗不安薬、抗精神病薬、SSRI、コリンエステラーゼ阻害薬、ビスホスホネート、ビグアナイド便秘ベンゾジアゼピン、三環系抗うつ薬、過活動膀胱治療薬(抗コリン薬)、腸管鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、パーキンソン病治療薬排尿障害・尿失禁三環系抗うつ薬、過活動膀胱治療薬(抗コリン薬)、腸管鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン、抗精神病薬、α遮断薬、利尿薬これらの症状が出たとき、まず「加齢」ではなく「薬」を疑うのが高齢者医療の基本です。

図2:この表の使い方は簡単です。困っている症状を左から探し、右に並んだ薬を自分が飲んでいないか確かめる。当てはまるものがあれば、それを次の受診で伝える。それだけで話が早く進みます。

気をつけたい「処方カスケード」

薬の副作用を新しい病気と勘違いして、そこに薬が足されることがあります。血圧の薬でむくむ→利尿薬が出る→脱水と電解質異常→さらに薬が足される、という連鎖です。厚生労働省の指針も、これを多剤服用が生まれる典型的な経路として挙げています。症状が出たとき「薬を足す前に、引けないか」を一度考えるのが原則です。

SECTION 04 年齢が上がったら、もう一度確かめたい薬10選

以下は、ガイドラインで「特に慎重な投与を要する薬物」に挙げられているもの、および現場で見直しの相談が多いものから選びました。いずれも「飲んではいけない薬」ではありません。必要な人には必要です。読み方は「自分が当てはまるかどうかを確かめて、主治医に相談する材料にする」です。

1
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬・抗不安薬

デパス、ハルシオン、レンドルミン、サイレース、ソラナックスなどが代表です。「非ベンゾジアゼピン系」と呼ばれるマイスリー、アモバン、ルネスタも、転倒・骨折のリスクが報告されています。後述する週刊誌記事の分析でも、名指しされる回数がいちばん多い薬効群でした。

気になる点
過鎮静、認知機能の悪化、ふらつき、転倒・骨折、せん妄、依存。長時間作用型(ダルメート、セルシンなど)は高齢者では使うべきでないとされています。
代わりの手
まず睡眠衛生の見直し。薬が必要なら、より新しい作用のしくみを持つ薬(オレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬)への置き換えを検討します。
自己判断は
不可。急に止めると離脱症状(不眠の悪化、不安、けいれん)が出ます。減らすときは時間をかけます。
2
第一世代の抗ヒスタミン薬(市販のかぜ薬・鼻炎薬・かゆみ止めを含む)

クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジンなど。処方薬だけでなく、ドラッグストアの総合感冒薬・鼻炎薬・「よく眠れる」とうたう薬にも入っています。10選のなかで、いちばん本人の自覚がない薬です。

気になる点
強い抗コリン作用。認知機能の低下、せん妄、口の渇き、便秘、尿が出にくくなる。緑内障や前立腺肥大がある方では特に注意が要ります。
代わりの手
第二世代の抗ヒスタミン薬。かぜそのものには、そもそも抗ヒスタミン薬が必須ではありません。
自己判断は
市販薬なら中止して構いませんが、処方されているものは目的を確認してからにしてください。
3
過活動膀胱に使う抗コリン薬(とくに経口オキシブチニン)

頻尿・尿もれの薬です。ポラキス(オキシブチニン経口)はガイドラインで「可能な限り使用しない」とされ、ベシケア、デトルシトール、バップフォーなどのムスカリン受容体拮抗薬も慎重投与の対象です。

気になる点
尿閉、認知機能の低下、せん妄、口の渇き、便秘。トイレの回数を減らすつもりが、出なくなって救急搬送になることがあります。
代わりの手
β3受容体作動薬(ミラベグロン、ビベグロン)。2025年版のガイドラインで「開始を考慮するべき薬物」に新しく加わりました。ただし頻脈・血圧上昇には注意が必要です。
自己判断は
置き換えが基本なので、泌尿器科・かかりつけ医に相談を。
4
痛み止め(NSAIDs)の、漫然とした内服

ロキソニン、ボルタレン、セレコックスなど。単発で使う分には有用ですが、「腰が痛いから」と何年も続いている処方が問題になります。

気になる点
上部消化管出血、腎機能障害、心血管障害、むくみ、血圧上昇。降圧薬(ARB・ACE阻害薬)や利尿薬と併用すると腎機能が落ちやすくなります。抗血栓薬やステロイドとの併用では潰瘍のリスクが上がります。
代わりの手
アセトアミノフェン、外用薬、リハビリや装具などの非薬物療法。ただし貼り薬もNSAIDsであることが多く、飲み薬との重複に注意が要ります。市販の解熱鎮痛薬・総合感冒薬との重複も同じです。
自己判断は
頓用に切り替えられることが多い薬です。まず「毎日必要か」を主治医と確認してください。
5
スルホニル尿素薬(SU薬)と、下げすぎている糖尿病治療

アマリール、グリミクロン、オイグルコン/ダオニールなど。とくにグリベンクラミド(オイグルコン、ダオニール)は作用が強く、避けるべきとされています。

気になる点
重症低血糖。高齢者では低血糖の自覚症状が出にくく、冷や汗や動悸ではなく「ぼんやりする」「ふらつく」という形で現れます。転倒・骨折・認知機能障害・心血管イベントの引き金になります。
代わりの手
ガイドラインは「可能な限りDPP-4阻害薬への代替を考慮する」としています。加えて、SU薬やインスリンを使っている高齢者ではHbA1cに下限値が設けられている点が重要です(例:75歳以上で認知機能・ADLが保たれている方は8.0%未満・下限7.0%)。数値が良すぎるときこそ相談の合図です。
自己判断は
不可。中止すると高血糖・脱水を起こします。量の調整は必ず主治医と。
6
吐き気止め・胃薬として長く続くメトクロプラミド、スルピリド

プリンペラン、ナウゼリン系統の薬や、ドグマチール/アビリット(スルピリド)です。「胃薬」として出されているため、本人が精神・神経に作用する薬だと認識していないことがよくあります。

気になる点
ドパミンを抑える作用による薬剤性パーキンソニズム(手のふるえ、動作が遅い、小刻み歩行)と遅発性ジスキネジア。「パーキンソン病が始まった」と紹介されてきた方の原因が、この薬だったことは珍しくありません。スルピリドは腎排泄型で、腎機能が落ちた方では特に注意が要ります。
代わりの手
吐き気の原因に応じた対応。胃薬としてなら他の選択肢があります。ガイドラインは制吐薬について「可能な限り使用を控える」としています。
自己判断は
症状が出ているなら早めに相談を。中止で改善することがありますが、数か月かかる場合もあります。
7
三環系抗うつ薬

トリプタノール、アナフラニール、トフラニールなど。うつだけでなく、しびれや神経の痛み、夜間頻尿に対して少量で使われていることもあります。

気になる点
抗コリン作用(便秘、口の渇き、認知機能低下)、眠気、めまい、起立性低血圧。副作用による中止率も高い薬です。緑内障や心筋梗塞回復初期には禁忌です。
代わりの手
SSRIなど。ただしSSRIも高齢者では転倒、消化管出血、低ナトリウム血症のリスクがあり、無条件に安全というわけではありません(2025年版では、低ナトリウム血症のある方へのSSRIも慎重投与に挙げられました)。
自己判断は
不可。急な中止で離脱症状が出ます。
8
認知症の行動・心理症状に対する抗精神病薬

リスパダール、セロクエル、ジプレキサ、セレネースなど。興奮、易怒性、幻覚に対して使われますが、認知症への使用は適応外であることが指針にも明記されています。

気になる点
プラセボと比べたランダム化比較試験のメタ解析では、死亡は3.5%対2.3%(オッズ比1.54)でした。米国FDAは2005年に警告を出しています。ほかに脳血管障害、過鎮静、誤嚥、転倒、錐体外路症状。
代わりの手
まず非薬物療法。加えて、痛み・便秘・脱水・尿路感染・環境や薬そのものが原因になっていないかを探します。使う場合も最小限・短期間で、効いていても漫然と続けず、減量・中止を検討します。
自己判断は
不可。介護している家族が限界を迎えている場面で処方されていることが多く、単純に止めると共倒れになります。減らすなら支援の組み替えとセットで。
9
心臓病のない人が「予防のために」飲んでいるアスピリン

バイアスピリン、バファリンA81など。心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがある人(二次予防)にとっては、いまも極めて重要な薬です。問題になるのは、起こしたことがない人が予防目的で飲んでいる場合(一次予防)です。

気になる点
70歳以上の健康な高齢者19,114人を約4.7年追跡したASPREE試験では、心血管イベントは減らず、大出血だけが増えました(詳細は図5)。
代わりの手
血圧・脂質・血糖の管理と禁煙。2025年版ガイドラインでは、心房細動に対する抗血小板薬が「特に慎重な投与を要する薬物」から削除されましたが、これは安全になったからではなく、心房細動にはDOACという適切な薬が普及したためです。
自己判断は
絶対に不可。二次予防の方が中止すると命に関わります。「自分がどちらか」は自己判断が難しいので、必ず確認してください。
10
目的を失ったまま続いている胃酸を抑える薬(PPI・P-CAB)

タケプロン、ネキシウム、パリエット、タケキャブなど。よく効く薬で、必要な人には確実に必要です。ここで挙げるのは「なぜ始まったか誰も覚えていない」タイプの処方です。

気になる点
週刊誌が並べる「認知症・骨折・腎臓病」は、じつは大規模な比較試験では確認されていません(図6)。それでも指針は、難治性の逆流性食道炎や重症の食道炎、痛み止めによる出血リスクが高い場合を除き、8週間を超える投与は控えるとしています。理由は、目的のない薬は相互作用と飲み間違いを増やすからです。
代わりの手
症状が出たときだけ使う方式への切り替え、原因(痛み止めの併用など)の整理。
自己判断は
止めると胸やけが戻ることがあります。相談してからにしてください。

番外:あと3つ、確かめておきたいもの

気になる点確認したいこと
受容体サブタイプ非選択的なα1遮断薬(カルデナリン、エブランチルなど)起立性低血圧、転倒前立腺肥大症なら選択的α1遮断薬やPDE5阻害薬(タダラフィル)に置き換えられることがある
ジゴキシン(ジゴシン)ジギタリス中毒。高齢者では少量でも起こりうる1日0.125mg以下に減量。血中濃度や心電図で確認できないなら中止も検討
活性型ビタミンD+カルシウム製剤・サプリの併用高カルシウム血症による認知機能低下、せん妄アルファカルシドールは1日1μg以上を控える。サプリの重複を確認

SECTION 05 抗コリン作用は「1剤ずつ」ではなく「合計」で効く

10選のうち2、3、6、7は、いずれも抗コリン作用という共通点を持っています。口の渇き、便秘、尿が出にくい、頭がぼんやりする、といった症状の犯人です。

やっかいなのは、1剤ずつ見ると「たいした薬ではない」ものが多いことです。指針も、抗コリン作用は単独の薬の問題ではなく服用薬剤の総抗コリン負荷が重要だと述べています。2025年版のガイドラインには、この負荷を点数化する「日本版抗コリン薬リスクスケール」が新たに収載されました。

図3 抗コリン作用は1剤ずつではなく「合計」で効く日本版抗コリン薬リスクスケールによる採点例(厚生労働省 第21回検討会 資料3)メトホルミン糖尿病1点シタグリプチン糖尿病1点トルテロジン過活動膀胱1点ドネペジル認知症0点リスペリドン興奮・不穏1点アセトアミノフェン痛み止め0点トラマドール痛み止め2点合計7点1剤ずつは「弱い薬」でも、足し算になると口の渇き・便秘・尿が出にくい・頭がぼんやりするといった症状が出てきます。スケール収載158薬物のうち、最も強い「3点」は37薬物。その15薬物(40.5%)は市販薬です。

図3:厚生労働省の検討会に示された採点例です。糖尿病・過活動膀胱・認知症・慢性疼痛を持つ方で、一つひとつは標準的な処方でも合計7点になります。注目していただきたいのは最後の一行です。最も強い「3点」の37薬物のうち15薬物(40.5%)が市販薬でした。処方薬をどれだけ整理しても、ドラッグストアで買った薬が入っていれば意味がありません。

今日からできること:お薬手帳に「買った薬」も書く

市販のかぜ薬、鼻炎薬、乗り物酔いの薬、睡眠改善薬、胃薬、サプリメント、栄養ドリンク。これらは診察室から見えません。指針も、一般用医薬品や健康食品の使用状況を患者・家族・介護職員にも把握を促して確認するよう求めています。パッケージの写真をスマートフォンで撮って持ってきていただくだけでも十分です。

SECTION 06 いまは「やめる」より「置き換える」時代

2025年6月、日本老年医学会は「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を10年ぶりに改訂しました。改訂の中身を見ると、この10年で変わったのは薬の危険性というより選択肢の数だとわかります。

図4 「危ないからやめる」ではなく「より安全な薬に替える」日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025」ほかをもとに作成ワルファリンDOAC(直接経口抗凝固薬)心房細動で腎機能が保たれている場合経口オキシブチニンなどの抗コリン薬β3受容体作動薬過活動膀胱。2025年版で開始を考慮すべき薬に第一世代の抗ヒスタミン薬第二世代の抗ヒスタミン薬かゆみ・鼻炎。市販のかぜ薬にも注意SU薬(特にグリベンクラミド)DPP-4阻害薬など低血糖を起こしにくい薬へNSAIDsの長期内服アセトアミノフェン・外用薬胃と腎臓への負担を下げる非選択的なα1遮断薬選択的α1遮断薬・PDE5阻害薬前立腺肥大症。立ちくらみと転倒を避ける

図4:左が従来よく使われてきた薬、右がより安全性の高い選択肢です。「危ないからやめる」ではなく「同じ目的をより安全に果たす」という考え方をとります。

とくに象徴的なのがワルファリンです。長年、心房細動の脳梗塞予防の中心だった薬ですが、2025年版では「正常腎機能〜中等度腎機能障害の心房細動」に対して、特に慎重な投与を要する薬物のリストに新しく加わりました。ワルファリンが急に悪い薬になったのではありません。DOACという、食事制限がなく定期採血の負担も小さい薬の有効性と安全性が確立したため、相対的に第一選択ではなくなった、ということです。

逆方向の変化もあります。過活動膀胱のβ3受容体作動薬、前立腺肥大症のPDE5阻害薬(タダラフィル)、COPDの吸入薬(長時間作用性の気管支拡張薬)は、「高齢者にも有用なのに使われていない薬」として開始を考慮するべき薬物のリストに追加されました。減らす話ばかりが注目されますが、ガイドラインには「足したほうがよい薬」の話も書かれています。

SECTION 07 リストから外れた薬もある、という事実

ここは、この記事でいちばんお伝えしたい部分かもしれません。2025年の改訂では、慎重投与のリストから外された薬もあります。

リストから外れたもの理由(ガイドライン作成委員の説明より)
心房細動に対する抗血小板薬心房細動にはDOACなど新しい薬が広く使われるようになったため
複数の抗血栓薬の併用療法抗凝固薬単剤で置き換えられるようになり、併用はすでに必要最小限の使用になっているため
すべてのH2受容体拮抗薬(ガスターなど)認知機能低下が懸念されていたが報告数は少なく、海外のガイドラインでも見直されたため

H2ブロッカーは、かつて「高齢者のせん妄の原因になる」として慎重投与の代表格でした。10年経って、その評価が見直されたわけです。
一方で、厚生労働省の指針(2018年)には、いまもH2受容体拮抗薬について「せん妄や認知機能低下のリスクの上昇があり、可能な限り使用を控える」という記述が残っています。同じ国の資料でも、作られた年によって書いてあることが違うのです。これは矛盾ではなく、医学の知見が更新され、行政の文書がそれを追いかけている途中だということです。

ここから言えることは一つです。「あの薬は危ない」という情報には、必ず賞味期限がある。2016年の週刊誌の切り抜きを持ってこられても、2026年のあなたの体には当てはまらないかもしれません。

SECTION 08 「飲んではいけない薬」という記事の読み方

名指しされる薬は、実はそれほど的外れではない

週刊誌の薬特集を研究として評価した論文があります。北海道大学のグループが週刊誌10誌・1,064記事をふるいにかけ、条件を満たした19記事を「メディアドクター指標」という9項目の基準で2人の評価者が独立に採点したものです(医薬品情報学 2022年)。

結果は次のとおりでした。取り上げられていた薬は179種類(34の薬効分類)。最も多く名指しされた薬効群は催眠鎮静薬で、個別の薬ではトリアゾラム(ハルシオン)が最多でした。ここは、率直に言って的外れではありません。この記事の10選でも1番目に挙げていますし、ガイドラインも同じ薬を挙げています。

問題は書き方でした。19記事のうち11記事で、2人の評価者がともに「満足」と判定した項目がゼロ。同じく11記事で、5項目以上が2人ともに「不満足」と判定されました。新聞記事を同じ手法で評価した先行研究では、2人とも満足と判定した項目数の平均が4.4だったのと比べると、明らかに低い水準です。論文の結論は「科学的妥当性の点で不十分かつ不完全で、改善すべき点が多い」でした。

つまり、選ばれる薬は当たっているのに、伝え方が抜けている。抜けているのは「誰にとって」「どのくらいの確率で」「代わりに何があるか」「やめたらどうなるか」です。そして、その4つこそが患者さんの役に立つ情報です。

読み方1:「増える」と「どれだけ増える」は別の話

アスピリンの一次予防を例に見てみます。

図5 心臓病のない高齢者が予防でアスピリンを飲んだら(ASPREE試験)70歳以上19,114人・中央値4.7年。1,000人・1年あたりの件数心血管イベント減らなかったアスピリン10.7件偽薬11.3件大出血増えたアスピリン8.6件偽薬6.2件心筋梗塞や脳梗塞をすでに起こした人の「二次予防」は話が別で、こちらは自己判断で中止してはいけません。

図5:ASPREE試験(70歳以上19,114人、中央値4.7年)。「アスピリンで出血が1.38倍」と書くと恐ろしく聞こえますが、実際の差は1,000人が1年飲んで2.4件です。逆に、心血管イベントの予防効果はありませんでした。この2つを並べて初めて「この人には割に合わない」という判断ができます。

ちなみに、この記事で紹介した抗コリン薬と認知症の関係(英国の58,769人と対照225,574人を比べた研究で、曝露量が最も多い群のオッズ比1.49)も、10年以上にわたる累積使用量を見た観察研究です。研究者自身が、因果関係は証明されていないと述べています。1.49倍という数字だけが独り歩きすると、「頻尿の薬を飲んだら5割認知症になる」という誤読が生まれます。

読み方2:観察研究とランダム化比較試験の差

PPI(胃酸を抑える薬)は、観察研究で次々に「関連」が報告されてきました。肺炎、骨折、慢性腎臓病、認知症、胃がん、死亡率。週刊誌の定番ネタです。

ところが、17,598人を薬と偽薬にランダムに割り付けて中央値3年追跡した試験では、結果が違いました。

図6 胃薬(PPI)の「こわい話」を厳密に調べたらCOMPASS試験:17,598人をパントプラゾールと偽薬に割り付け、中央値3年追跡肺炎差なし骨折差なし慢性腎臓病差なし認知症差なし糖尿病差なし胃の萎縮差なしがん差なし総死亡差なし腸管感染症増えた可能性観察研究でくり返し報じられてきた懸念の多くは、割り付け試験では再現されませんでした。それでも「必要がないなら続けない」という原則は変わりません(理由は本文08)。

図6:COMPASS試験のPPI部分。差がついたのは腸管感染症だけで、それも過去の観察研究が見積もっていたより小さいものでした。研究者は「長期使用の害を懸念してPPIの処方を制限することは適切ではない」と結論しています。

観察研究では、もともと具合の悪い人ほど薬を飲んでいるため、薬のせいなのか病気のせいなのかを切り分けきれません。だから「関連あり」の見出しは量産できるのに、割り付け試験で確かめると消えてしまうことがあるのです。見出しの強さと、根拠の強さは比例しません。

読み方3:記事を読んだあとに症状が出るのは、自然なことです

ここが、この記事でどうしても書いておきたかった話です。

副作用でスタチン(コレステロールの薬)をやめた60人に、本物・偽薬・何も飲まない月をランダムな順で1か月ずつ繰り返してもらい、毎日スマートフォンで症状の強さを記録してもらった試験があります。

図7 「副作用かもしれない」と思ったときに起きていることSAMSON試験:副作用でスタチンをやめた60人。症状の強さ0〜100点の平均何も飲まない月8.0点偽薬を飲んだ月15.4点本物を飲んだ月16.3点薬をやめた人が感じていた症状の約9割は、中身が入っていない偽薬でも同じように起きていました。この結果を伝えたところ、60人のうち30人がスタチンを再開できました。

図7:SAMSON試験。症状の強さは、何も飲まない月8.0点、偽薬の月15.4点、本物の月16.3点でした。つまり症状の約9割は、中身が入っていない錠剤でも同じように起きていたということです。「気のせい」という意味ではありません。症状は本物です。ただ、その原因の大半は薬の成分ではなく「薬を飲むという行為」のほうにあった、ということです。

この現象をノセボ効果と呼びます。そして、これがまさに「危ない薬」の記事が引き起こしうることです。記事を読む→自分の薬が載っている→意識してみる→だるさやふらつきに気づく→「やっぱり副作用だ」。この流れは、成分とは無関係に成立します。

救いもあります。SAMSON試験では、この結果を本人に伝えたところ、60人中30人がスタチンを再開できました。仕組みを知ることには、それだけの力があります。

読み方4:いちばんの害は、記事を読んで黙って止めること

この記事の10選のうち、5つは自己判断での中止が危険だと書きました。それは脅しではなく、離脱症状や原疾患の悪化が実際に起きるからです。

では、患者さん側から動くのは無意味かというと、まったく逆です。カナダで行われたEMPOWER試験では、ベンゾジアゼピンを長く飲んでいる65〜95歳の方に「この薬の害と、段階的な減らし方」を書いた冊子を郵送しました。それだけで62%が医師か薬剤師に自分から相談を始め、6か月後には27%が中止できました(何もしなかった群は5%)。必要な人数は4人。これは薬剤の臨床試験としてもかなり大きな効果です。

効いたのは「情報を得て、専門職と話し始めたこと」でした。黙ってやめるのではなく相談を始める。同じ記事を読んでも、この一歩の違いで結果が正反対になります。

SECTION 09 これだけは、自分の判断で切らないでください

急に止めると命に関わる、あるいは強い離脱が出る薬

  • 抗てんかん薬:中断でけいれん重積を起こすことがあります
  • 副腎皮質ステロイド:長期服用者の突然の中止は副腎不全につながります
  • 抗パーキンソン病薬:中断で症状が急激に悪化します
  • 抗凝固薬・抗血小板薬(二次予防):脳梗塞・心筋梗塞の再発リスクが上がります
  • インスリン・糖尿病治療薬:高血糖・脱水を招きます
  • ベンゾジアゼピン系(睡眠薬・抗不安薬):不眠の反跳、不安、けいれんなどの離脱症状が出ます
  • 抗うつ薬(SSRI・三環系):急な中止で離脱症状が出ます
  • 医療用麻薬:痛みの再燃と離脱症状が起こります
  • 心不全・不整脈の薬、甲状腺の薬:病状が直接悪化します

迷ったときの原則はシンプルです。「次の受診まで、いつもどおり飲んで、質問を用意する」。1〜2か月飲み続けたことによる害より、突然止めたことによる害のほうが、実際の現場でははるかに多く見られます。

SECTION 10 減らすときの、正しい順番

図8 薬を減らすときの順番自己判断で一度に何種類も止めるのがいちばん危険です1全部を1か所に集める市販薬・サプリメント・湿布・目薬・他院の薬も含めて、お薬手帳にまとめる2困っている症状と薬を突き合わせるふらつき・便秘・尿が出にくい・頭がぼんやり。図2の表と見比べる3やめる順番を決める症状の原因になっている薬から。1回に減らすのは原則1剤まで42〜4週間あけて様子を見る減らしたあとに症状が戻らないかを確認してから、次の1剤へ5切ってはいけない薬を確認する抗てんかん薬・ステロイド・抗パーキンソン病薬・抗凝固薬などは別扱い

図8:厚生労働省の指針が示す処方見直しのプロセスを、患者さん・ご家族の側から書き直したものです。医療者側は、①推奨される使い方の範囲内か ②効果はあるか ③減量・中止は可能か ④代替薬はあるか、という順で検討します。

相談するときは、次の言い方が具体的で伝わりやすいです。

そのまま使える聞き方

・「この薬は、いま何のために飲んでいますか」

・「やめたら何が起きますか。いつまで続ける予定ですか」

・「ふらつく(便秘がひどい/尿が出にくい/頭がぼんやりする)のですが、薬の影響はありそうですか」

・「もっと安全な薬に替えられるものはありますか」

・「市販のかぜ薬とサプリも飲んでいます。重なっていませんか」

SECTION 11 国も「減らす」側に舵を切っています

薬を減らす相談は、わがままでも、医師への当てつけでもありません。国の方針そのものです。

これまでの流れ

2017年4月 厚生労働省に「高齢者医薬品適正使用検討会」が設置

2018年5月 「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」を通知

2019年6月 「各論編(療養環境別)」を通知。外来・在宅・介護施設などの場面別に整理

2021年3月/2024年7月 「病院における」「地域における」ポリファーマシー対策の始め方と進め方を通知

2025年6月 日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025」刊行。日本版抗コリン薬リスクスケールを新たに収載

2026年7月31日 厚生労働省がポリファーマシー対策の普及啓発資材を新たに作成し、都道府県等に通知(医薬安発0731第1号)。指針4本それぞれについて、要点をまとめた資材が公開されました

診療報酬(医療機関に支払われる公定価格)の面でも、方向ははっきりしています。2026年6月に施行された令和8年度改定でも、外来で内服薬が6種類以上の方の処方を見直して2種類以上減らした場合に算定できる薬剤総合評価調整管理料が置かれ、抗不安薬・睡眠薬などの種類数や量を減らして薬剤師と連携し症状の変化を確認した場合の向精神薬調整連携加算(月1回12点)も設けられています。

逆に、不安や不眠に対してベンゾジアゼピン受容体作動薬を1年以上、同じ成分・同じ1日量で出し続けている場合、処方料は42点から29点に下がります(適切な研修を修了した医師の処方、あるいは直近1年以内に精神科医の助言を得ている場合などは対象外)。つまり漫然と続けることには不利がつき、見直すことには評価がつく制度設計になっています。

「先生に悪いから言い出しにくい」と感じる必要はまったくありません。むしろ制度上、歓迎される相談です。

当院の視点|在宅の現場では、こう考えています

ふくろう訪問クリニックは、福岡市早良区を中心に緩和ケア・難病・精神科・認知症の在宅診療を行っています。ご自宅にうかがう立場から、4つ補足します。

1
まず「飲めているか」を見ます。減薬の前に、実態の把握です。 訪問して薬箱を開けると、処方どおりに飲まれていないことがよくあります。飲み忘れではなく、朝の分だけ大量に残っている、複数の医療機関の同じ薬が並んでいる、湿布と飲み薬のNSAIDsが重なっている、といった形です。残薬は「守れていない証拠」ではなく、その処方が生活に合っていないという情報です。まず全部を見せていただき、そこから始めます。一包化や服薬カレンダー、訪問看護での服薬支援で解決することも少なくありません。
2
減らす順番は「困っている症状の犯人」からです。 数を減らすことが目的ではありません。転倒がある方なら睡眠薬・抗不安薬・α遮断薬から、便秘と尿閉があるなら抗コリン薬から、というように、いま起きている症状に直結する薬を先に扱います。原則は1回に1剤、2〜4週間あけて次へ。同時に何剤も動かすと、良くなっても悪くなっても原因がわからなくなります。急ぐ必要はまったくありません。
3
予防の薬は「効果が出るまでの時間」と「見通し」を比べます。 骨粗鬆症やコレステロールの薬のように、効果が数年かけて現れる薬があります。年齢や病状によっては、その数年より先に別の場面が来ることもあります。そのとき私たちは、薬を「危険だから」ではなく「この方にとって、いま報われる薬かどうか」で考えます。フレイルが進んだ方や終末期の方では、予防の薬から順に降ろし、痛みや息苦しさを和らげる薬を残します。これは治療の放棄ではなく、優先順位の付け替えです。
4
ご家族が「この薬は危ないと聞いた」と言ってくださるのは、良い機会です。 実際、そう言われて処方を見直し、ふらつきが消えた方は何人もいらっしゃいます。困るのは、黙って止められていた場合だけです。記事でも、テレビでも、ご近所の話でも構いません。持ってきていただければ、その薬がその方に当てはまるかどうかを一緒に確認します。かかりつけの薬局・薬剤師さんに聞いていただくのも、同じくらい有効です。

SECTION 12 場面別の早見表

こういうときこう考える
週刊誌に自分の薬が載っていた相談 切り抜きを持って次の受診へ。自己判断で止めない
最近ふらつく、転びやすくなった早めに相談 睡眠薬・抗不安薬・降圧薬・α遮断薬・抗ヒスタミン薬を確認
物忘れが増えた気がする相談 抗コリン薬の合計負荷を確認。市販薬も含めて数える
便秘と、尿が出にくいのが同時にある相談 抗コリン作用の典型的な組み合わせ。放置すると尿閉に
手がふるえる、動きが遅くなった早めに相談 胃薬・吐き気止め(スルピリド、メトクロプラミド)を確認
HbA1cが「とても良い」と言われた相談 SU薬やインスリンを使っているなら下げすぎの可能性
心筋梗塞・脳梗塞の既往があり、アスピリンを飲んでいる継続 二次予防。自己判断での中止は危険
持病がなく、予防でアスピリンを飲んでいる相談 一次予防。続ける根拠を主治医と確認する
いつ始まったかわからない胃薬が続いている相談 目的を確認。必要なら継続、不要なら整理
複数の医療機関にかかっている相談 かかりつけ薬局を1つに。お薬手帳を1冊にまとめる
市販のかぜ薬・鼻炎薬をよく買う相談 第一世代抗ヒスタミン薬とNSAIDsの重複を確認
入院・退院の前後好機 処方を見直す3つのタイミングの1つ。まとめて整理できる

SECTION 13 よくあるご質問

Q1. 結局、薬は何種類までなら大丈夫ですか?

明確な上限はありません。厚生労働省の指針では6種類以上で薬物有害事象が増えるとされていますが、これは目安であって、6種類を超えたら削るという意味ではありません。指針自身が「単に服用する薬剤数が多いこと」と「それによって害が出ている状態(ポリファーマシー)」を区別しています。心不全のように、複数の薬を組み合わせることで予後が良くなる病気もあります。数より中身です。

Q2. 医師に「この薬を減らしたい」と言うと、機嫌を損ねませんか?

ご心配は理解できますが、いまは処方の見直しが国の方針であり、診療報酬でも評価されています。言い方としては「やめたい」より「この薬は何のために飲んでいるか教えてください」のほうが、話が具体的に進みます。それでも取り合ってもらえないときは、かかりつけ薬局の薬剤師に相談してください。薬剤師から医師へ照会する仕組みがあります。

Q3. 「医者は自分では飲まない」というのは本当ですか?

個々の医師の好みとしてはあり得ますが、それは根拠にはなりません。1人の医師が経験した1例は、あなたに当てはまるかどうかわからないからです。判断の材料になるのは、多くの人を集めて比較した研究と、それをまとめたガイドラインです。この記事で挙げた10選も、私個人の好き嫌いではなく、学会と厚生労働省の文書に基づいて選んでいます。

Q4. サプリメントや漢方薬は「自然だから安全」ですか?

いいえ。カルシウム製剤やサプリメントは活性型ビタミンDと併せると高カルシウム血症を起こすことがありますし、抑肝散に含まれる甘草は低カリウム血症の原因になります。セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)は多くの薬の効き目を弱めます。ワルファリンを飲んでいる方は納豆・クロレラ・青汁を避ける必要があります。「薬ではないもの」も、必ず申告してください。

Q5. 眠れないのに睡眠薬をやめろと言われました。どうすればいいですか?

「やめる」と「減らす・置き換える」は別です。まず睡眠の環境と生活リズムを整えたうえで、必要なら作用のしくみが異なる薬に置き換える方法があります。ベンゾジアゼピン系は、海外のガイドラインでも投与期間を4週間以内にとどめるとされていますが、すでに長く飲んでいる方の場合は数か月かけて少しずつ減らすのが標準的です。急がず、担当医と計画を立ててください。

Q6. 家族が認知症で、薬で落ち着いています。減らすべきでしょうか?

一律に減らすべきとは言えません。抗精神病薬には死亡や脳血管障害のリスクがあり、認知症への使用は適応外ですが、介護が破綻しかけている状況で唯一の支えになっていることもあります。大切なのは「効いているか」「量は最小限か」「別の原因(痛み・便秘・脱水・感染・環境)が残っていないか」を定期的に見直すことです。減らす場合は、訪問看護やデイサービスなど支援の組み替えとセットで進めます。

SECTION 14 参考文献

  1. 厚生労働省. 高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編). 薬生安発0529第1号, 平成30年5月29日.
  2. 厚生労働省. 高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別)). 令和元年6月14日.
  3. 厚生労働省医薬局医薬安全対策課. 高齢者におけるポリファーマシー対策の普及啓発資材について. 医薬安発0731第1号, 令和8年7月31日.
  4. 厚生労働省. 令和7年度医薬安全対策課委託事業 調査検討会. ポリファーマシー対策の普及啓発資材「高齢者の医薬品適正使用の指針 総論編の概要」. 2026年3月31日確定版.
  5. 小島太郎. 新しい高齢者の安全な薬物療法ガイドライン(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025). 第21回高齢者医薬品適正使用検討会 資料3, 令和7年12月25日.
  6. 日本老年医学会 編. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025. メジカルビュー社, 2025.
  7. 日本老年医学会・日本糖尿病学会 合同委員会. 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について. 2016年5月.
  8. 日本老年医学会・日本糖尿病学会 編著. 高齢者糖尿病診療ガイドライン2023.
  9. 今井俊吾, 柏木仁, 佐藤夕紀, 武隈洋, 菅原満. 週刊誌に掲載された「危ないクスリ」に関する情報の整理とその適切性評価. 医薬品情報学 2022;24(1):1-10. DOI:10.11256/jjdi.24.1
  10. Coupland CAC, Hill T, Dening T, Morriss R, Moore M, Hippisley-Cox J. Anticholinergic drug exposure and the risk of dementia: a nested case-control study. JAMA Intern Med 2019;179(8):1084-1093. DOI:10.1001/jamainternmed.2019.0677(PMID 31233095)
  11. Tannenbaum C, Martin P, Tamblyn R, Benedetti A, Ahmed S. Reduction of inappropriate benzodiazepine prescriptions among older adults through direct patient education: the EMPOWER cluster randomized trial. JAMA Intern Med 2014;174(6):890-898. DOI:10.1001/jamainternmed.2014.949(PMID 24733354)
  12. Moayyedi P, Eikelboom JW, Bosch J, et al. Safety of proton pump inhibitors based on a large, multi-year, randomized trial of patients receiving rivaroxaban or aspirin. Gastroenterology 2019;157(3):682-691.e2. DOI:10.1053/j.gastro.2019.05.056
  13. McNeil JJ, Wolfe R, Woods RL, et al. Effect of aspirin on cardiovascular events and bleeding in the healthy elderly. N Engl J Med 2018;379(16):1509-1518. DOI:10.1056/NEJMoa1805819(PMID 30221597)
  14. Wood FA, Howard JP, Finegold JA, et al. N-of-1 trial of a statin, placebo, or no treatment to assess side effects. N Engl J Med 2020;383(22):2182-2184. DOI:10.1056/NEJMc2031173
  15. Howard JP, Wood FA, Finegold JA, et al. Side effect patterns in a crossover trial of statin, placebo, and no treatment. J Am Coll Cardiol 2021;78(12):1210-1222. DOI:10.1016/j.jacc.2021.07.022
  16. Schneider LS, Dagerman KS, Insel P. Risk of death with atypical antipsychotic drug treatment for dementia: meta-analysis of randomized placebo-controlled trials. JAMA 2005;294(15):1934-1943.(PMID 16234500)
  17. Yeh TC, Tzeng NS, Li JC, et al. Mortality risk of atypical antipsychotics for behavioral and psychological symptoms of dementia. J Clin Psychopharmacol 2019;39(5):472-478.(PMID 31433335)
  18. Maust DT, Kim HM, Seyfried LS, et al. Antipsychotics, other psychotropics, and the risk of death in patients with dementia: number needed to harm. JAMA Psychiatry 2015;72(5):438-445.(PMID 25786075)
  19. 厚生労働省. 診療報酬の算定方法(令和8年度診療報酬改定, 2026年6月1日施行)F100処方料, F400処方箋料, B008-2薬剤総合評価調整管理料.
  20. 厚生労働省. 平成28年社会医療診療行為別統計.

SECTION 15 ご利用・採用のご案内

ふくろう訪問クリニック

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  • 通院が難しい方のご自宅・施設へうかがいます
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他院にかかっている方もご利用いただけます。ケアマネジャーさんからのご相談も承ります。

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