「筋トレで乳酸をためると脳が活性化して、仕事や勉強がはかどる」——SNSでも書籍でもよく見かける話です。乳酸が脳の燃料であることも、遺伝子のスイッチを押す信号であることも、事実です。ただ、そこから「だから筋トレのあとは頭が冴える」まで一直線につながるかというと、話はもう少し込み入っています。2025年に出たヒトでの試験は、むしろ慎重な読み方を求める結果でした。何がわかっていて、何がまだわかっていないのかを、原著と国の資料に当たって整理します。
SECTION 01
結論——先に3つだけ
安静時の脳はブドウ糖を主に使いますが、運動して血液中の乳酸が増えると、脳は乳酸を取り込んで燃やします。取り込む量は血液中の濃度にほぼ比例します。さらに乳酸は、受容体を介して血管を増やしたり、タンパク質に結合して遺伝子の読まれ方を変えたりもします。ここまでは、しっかりした裏づけがあります。
2025年に発表された、30本のメタ解析(383研究・約1万8千人)を統合した解析では、運動直後に認知機能はわずかに上がっていました。しかしその伸びの大きさは、運動の強度・種類・時間のどれによっても変わっていませんでした。乳酸をたくさん出すほど効く、という用量反応の関係は、いまのところ人間では見えていません。
1回の筋トレで得られる冴えは、大きさでいえば「集団平均でわずかに良い」程度で、続くのも30分ほどです。長期の効果は動物では説得力がありますが、2026年に報告された高齢者90人の質の高い試験では、24週続けても対照群との差はつきませんでした。国が筋トレを週2〜3日すすめている理由も、認知機能ではなく生活機能と死亡リスクの側にあります。
SECTION 02
そもそも乳酸とは何なのか
糖を分解していくとピルビン酸ができます。酸素の供給が需要に追いつかないとき、あるいは糖を分解する速度が一気に上がったとき、ピルビン酸は乳酸に変えられます。ここで大事なのは、乳酸が行き止まりではないことです。
つくられた乳酸は、その場にたまり続けるわけではありません。すぐに細胞の外へ運び出され、血液に乗って、乳酸を使いたい別の場所へ運ばれます。速筋でつくられた乳酸を遅筋が使う。脚でつくられた乳酸を心臓や肝臓が使う。この受け渡しは「乳酸シャトル」と呼ばれ、いまでは運動生理学の基本的な考え方になっています。
図1:乳酸は燃料であり、信号であり、遺伝子の読まれ方を変える材料でもある。
「乳酸=疲労物質」「乳酸が筋肉痛の原因」はもう使われていない
この2つは、いまの生理学の教科書には出てきません。理由は単純で、時間が合わないからです。運動でたまった血中乳酸は、運動をやめれば30分から1時間ほどでほぼ元の値に戻ります。一方、いわゆる筋肉痛(遅発性筋痛)が強くなるのは翌日から翌々日です。乳酸がとっくに消えたあとにやってくる痛みを、乳酸のせいにはできません。
運動中のきつさや灼けるような感覚には、乳酸そのものではなく、同時に発生する水素イオンや無機リン酸、カリウムの動き、神経側の要因などが複雑にかかわっています。乳酸はむしろ、その場面で「燃料として持ち出される側」です。
SECTION 03
脳は本当に乳酸を食べているのか
「脳はブドウ糖しか使えない」と習った方も多いと思います。これは半分正しく、半分は古い理解です。
脳が何を使っているかは、脳に入る血(動脈)と脳から出る血(頸静脈)を同時に採って、その差を見ればわかります。この方法で調べると、安静時の脳は確かにほぼブドウ糖だけで動いています。ところが運動して血液中の乳酸が増えると、脳は乳酸を取り込みはじめます。しかも取り込む量は、動脈血の乳酸濃度に比例して増えていきます。
図2:脳代謝比(CMR)は、酸素の取り込み量を「ブドウ糖+乳酸の半分」で割った値。安静時のおよそ6から、激しい運動中には2を下回るところまで落ちます。
脳代謝比が下がるということは、取り込んだ燃料の量に対して酸素の消費が追いついていない、つまり脳がその場で燃やしきる以上の量の糖と乳酸を取り込んでいることを意味します。さらに、高強度の運動中には脳全体のブドウ糖の取り込みがむしろ減ることも報告されています。乳酸が肩代わりしている、と考えると筋が通ります。
脳の中でも同じことが起きています。神経細胞を取り巻くアストロサイトという細胞が糖を分解して乳酸をつくり、それを神経細胞に渡す。この受け渡しを担うのがMCT(モノカルボン酸トランスポーター)という運び屋で、これを止めると動物では長期記憶が定着しなくなることがわかっています。
SECTION 04
燃料であるだけでなく、信号でもある
もし乳酸が「代わりの燃料」というだけなら、話はここで終わりです。注目を集めているのは、乳酸が同時に「合図」としてはたらくからです。
脳には HCAR1(GPR81)という、乳酸を受け取るための受容体があります。マウスに高強度インターバル運動をさせるか、乳酸を注射するかを7週間続けると、脳の血管新生因子(VEGF)が増えて毛細血管が増えました。この受容体を持たないマウスでは、同じことが起きませんでした。
マウスで、乳酸の運び屋であるMCT1/2をふさぐと、運動しても海馬のBDNFが増えなくなりました。逆に、運動させずに乳酸を繰り返し注射するだけで、30日後には海馬のBDNFが増え、学習と記憶が改善しました。SIRT1という酵素を介した経路が関与していると報告されています。
2019年に、乳酸がヒストンというタンパク質に直接くっついて、遺伝子の読まれ方を変えることが報告されました。「乳酸化(ラクチル化)」と呼ばれるこの現象は、代謝の状態がそのまま遺伝子のスイッチに翻訳されるしくみとして、いま非常に活発に研究されています。
SECTION 05
ヒトで確かめたら、話が慎重になった
2025年、スウェーデンのグループが、きれいな設計の実験を報告しました。運動という要素をまるごと取り除いて、乳酸だけを静脈から点滴するという方法です。健康な18人(半数が女性)に、乳酸ナトリウムを1時間かけて点滴し、血液中の乳酸を5.9 mmol/Lまで上げました。中強度から高強度の運動で到達する程度の濃度です。生理食塩水を点滴する日と比較する、クロスオーバー試験でした。
図3:乳酸だけを入れたとき、BDNFの前駆体は上がったが、実際にはたらく成熟型は動かなかった。
BDNFには、切断される前の前駆体(pro-BDNF)と、切断されたあとの成熟型(mBDNF)があります。神経細胞の生存やシナプスの強化にはたらくのは成熟型のほうです。この試験では、前駆体は55〜68%も増えたのに、成熟型はまったく動きませんでした。筋肉の中のBDNFも変わりませんでした。
同じグループはもう一つ、より直接的な研究を報告しています。運動をしてもらいながら、脳に入る血と脳から出る血を採って比べたのです。結果は、運動の強度を変えても、脳から成熟型BDNFが出ていく様子は捉えられなかったというものでした。運動後に血液中のBDNFが増えるのは、骨格筋から出たぶんと、血小板が刺激されて放出したぶんで説明がつきそうだ、という結論です。
SECTION 06
では、あの「頭が冴える感じ」は何なのか
実験室の数字がどうであれ、運動のあとに気分がよくなり、集中しやすくなる感覚は多くの人が経験します。これは気のせいではありません。ただ、その正体はBDNFよりも手前にありそうです。
運動をすると、アドレナリンやノルアドレナリンが増え、心拍と体温が上がり、前頭前野の血流が増えます。要するに覚醒の水準が上がるのです。覚醒が上がると、注意を向ける・余計なものを抑える、といったはたらきが一時的にやりやすくなります。乳酸は、この覚醒に必要な燃料を脳に届けている側の役者だと考えると、実感と研究のあいだの距離が縮まります。
実際、脳の乳酸の出入りと実行機能を同時に測った研究があります。健康な男性14人に高強度インターバル運動を2回行ってもらい、脳への乳酸の取り込みとストループ課題の成績を調べたところ、脳が乳酸をよく取り込んでいる人ほど、実行機能の改善が大きいという関係が見られました。しかも2回目の運動では改善が薄れ、そのとき脳が取り込める乳酸も減っていました。
SECTION 07
数字が食い違って見える理由
「運動は頭にいい」という研究の効果の大きさは、論文によってかなり違います。同じ物差し(効果量)に揃えて並べると、その差がよく見えます。
図4:どれも「運動と認知機能」の研究ですが、比較の相手も対象者も違うため、数字を並べただけでは比べられません。
この食い違いは、次の5つに分解できます。
「筋トレ vs 何もしない」なら差はつきやすくなります。同じ研究でも「筋トレ vs 有酸素運動」で比べると、筋トレが優れているとは言えなくなりました。何と比べたかで、答えは変わります。
もともと成績が高い若い人では、伸びしろが小さくなります(天井効果)。逆に認知機能が落ちかけている人では、差がつきやすくなります。
同じ統合解析の中でも、注意が0.37、実行機能が0.36、記憶が0.23、情報処理速度が0.20と、領域によって効果の大きさが違います。「認知機能が上がった」という一言に、これだけの幅が隠れています。
効果がなかった研究は発表されにくい、という偏りがあります。これを統計的に補正した解析では、若年成人での効果量が0.13まで下がりました。補正しない数字だけを見ると、実態より大きく見えます。
「30本のメタ解析を統合した」といっても、それぞれのメタ解析は同じ元研究を含んでいます。数を積み上げても、独立した証拠が積み上がるとは限りません。
SECTION 08
効くとしたら、いつ、どれくらい
もう一つ、実用上たいせつなのが時間の問題です。「筋トレのあとに勉強する」という使い方をするなら、いつ机に向かうべきかが気になります。
図5:運動の最中はむしろ落ちることがあり、いちばん上がりやすいのは終了から11〜20分後。20分を過ぎると薄れていきます。
意外に思われるかもしれませんが、運動している最中は、認知機能がむしろ落ちることがあります。とくに開始から15分ほどの、体が適応しきっていない時間帯に、課題の正確さが下がるという報告が多くあります。「歩きながら考えると閃く」という体験はあると思いますが、それは軽い運動のときの話で、息が上がる強度では逆になります。
効果が最も出やすいのは、複数の統合解析が一致して、運動終了から11〜20分後です。そして20分を過ぎると薄れていきます。つまり実用的には、「トレーニングを終えて、シャワーを浴びて、机に向かうまで」がちょうど良い間合いということになります。半日にわたって集中力が高まる、という話ではありません。
SECTION 09
では、続けたらどうなるのか
1回の効果が小さいなら、続けたときはどうか。ここは期待の持てる話と、冷や水を浴びせる話が両方あります。
期待の持てるほう
高齢者を対象に筋トレの効果をまとめた2025年の統合解析では、全般的な認知機能が0.40、作業記憶が0.44、空間記憶が0.63と、はっきりした改善が出ています。一方で、処理速度・実行機能・注意については有意な差が出ませんでした。効くところと効かないところがある、という結果です。運動の種類を比較したネットワークメタ解析では、筋トレが最も大きな効果を示したという報告もあります。
血液中のBDNFについても、4週間以上の運動を調べた35のランダム化比較試験をまとめた解析で、安静時のBDNFが上がることが示されています。しかも筋トレ(0.76)は有酸素運動(0.48)より大きな効果でした。
冷や水を浴びせるほう
2026年、認知機能が正常な65〜80歳の90人を、筋トレ群と対照群にくじ引きで分け、24週間追いかけた試験の結果が報告されました。週180分の指導つきトレーニングという、かなりしっかりした介入です。
図6:筋トレ群は確かに伸びました。しかし対照群も同じくらい伸びたため、主要な評価項目では差がつきませんでした。
筋トレ群は開始前より0.39ぶん成績が上がりました。ここだけ切り取れば「筋トレで認知機能が上がった」という見出しになります。しかし対照群も同じくらい上がっていたため、両群の差は0.13で、統計的には差がありませんでした(p=0.37)。同じ検査を2回受ければ、慣れによって点数は上がります(練習効果)。対照群を置く意味は、まさにこれを差し引くためにあります。
ただし、注意と抑制のはたらきに絞ると0.43の差がつきました。年齢が高い人、教育年数が短い人、もの忘れの自覚がある人ほど効果が大きい傾向も見られています。「誰にでも効く」のではなく「弱っている人にこそ効く」可能性を示す結果です。
SECTION 10
病気の脳では、どうなのか
ここまでは健康な人の話でした。アルツハイマー病の脳ではブドウ糖の使い方が落ちることがわかっているので、「なら乳酸を代わりに使えないか」という発想は自然です。
2025年に、その考えを直接試した試験が報告されました。認知機能が正常な高齢者24人と、認知機能が低下している12人に、安定同位体で標識した乳酸を点滴し、代謝の速さと認知機能、血液のバイオマーカーを測ったものです。
結果は2つに分かれます。一つ目は明確です。乳酸を代謝する速さは、認知機能が低下している人でも健常者と変わりませんでした(p=0.988)。アルツハイマー病でブドウ糖の代謝が落ちても、乳酸を使う能力は保たれている、ということになります。これは重要な発見です。
二つ目は、点滴のあとに全般的な認知機能が改善し、アルツハイマー病の血液マーカーが軒並み下がったという結果です。pTau217が33.8%、GFAPが39.7%、NfLが19.5%の低下でした。
乳酸化は、良い方にも悪い方にも働く
もう一つ、話を単純にできない事情があります。SECTION 04で触れた乳酸化(ラクチル化)が、脳のなかでは正反対の役割を持ちうることです。
図7:同じ乳酸化でも、どの細胞のどの部位で起きるかによって、意味が逆になります。
アルツハイマー病のモデルでは、脳の免疫細胞であるミクログリアで特定の部位の乳酸化が進むと、炎症を起こす状態が固定され、糖の分解がさらに進んで乳酸が増える——という悪循環が回ることが報告されています。一方で、運動でつくられた乳酸が別の部位の乳酸化を進めると、同じミクログリアが修復寄りの状態に切り替わり、炎症が減って認知機能が改善したという報告もあります。
「乳酸が増えれば脳に良い」と一方向に読むことはできない、というのが現時点の理解です。乳酸サプリメントを飲めばいい、という話にはなりません。いま人間で確かめられているのは、あくまで「運動をする」という入り口のほうです。
SECTION 11
国はどう言っているのか
ここで、公的な資料が何を推奨しているかを確認しておきます。研究の話と、国が国民に向けて出している推奨とは、性質が違うからです。
図8:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の成人向け推奨と、直近の実態。
厚生労働省は2023年11月の検討会を経て、10年ぶりの改訂となる「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を策定しました。ここで初めて、成人にも高齢者にも「筋力トレーニングを週2〜3日」が明記されました。マシンを使うウエイトトレーニングだけでなく、腕立て伏せやスクワットのような自重の運動も含まれます。
高齢者向けには、週15メッツ・時以上(1日40分以上)の身体活動に加えて、筋力・バランス・柔軟性など多要素な運動を週3日以上、そのなかに筋トレを週2〜3日、という形になっています。
日本の実態と、目標
2024年から始まった「健康日本21(第三次)」は、2035年度までの国民健康づくり運動です。ここでは運動習慣者の割合を全体で40%にする目標が掲げられています(20〜64歳は男女各30%、65歳以上は男女各50%)。運動習慣者の定義は「週2日以上・1回30分以上・1年以上継続」の3つをすべて満たす人です。
2025年12月に公表された令和6年国民健康・栄養調査によれば、運動習慣のある人の割合は34.6%(年齢調整値31.3%)で、男性38.5%、女性31.5%でした。男女とも30〜40歳代でとくに低くなっています。仕事と子育てがいちばん重なる世代が、いちばん動けていないという構図です。
認知症施策の側から見ると
2024年12月3日、認知症基本法にもとづく「認知症施策推進基本計画」が初めて閣議決定されました。2022年時点で認知症の高齢者が約443万人、軽度認知障害(MCI)が約559万人と推計され、合計すると1,000万人を超えます。高齢者のおよそ3.6人に1人という計算です。2040年にはこれが約1,200万人になると見込まれています。
この計画は「新しい認知症観」を掲げ、予防だけでなく、認知症になってからの暮らしを支えることに重心を置いています。運動が認知症を確実に防ぐ、という書き方はされていません。予防が空振りしたときに本人と家族が責められない社会をつくる——という方向に、国の姿勢は移ってきています。
SECTION 12
場面別・どう考えればいいか
| 場面 | どう考えるか | 具体的にどうするか |
|---|---|---|
| 集中したい仕事の前に運動したい | 効果は小さく、短い。ピークは終了11〜20分後 | 軽〜中強度で20分ほど。終えてから15分ほど置いて机に向かう |
| 追い込むほど頭に効く? | 強度は効果の大きさを左右していない | 続けられる強度でよい。追い込みは筋肉のためであって、頭のためではない |
| 筋トレと有酸素、どちらが頭にいい? | 直接比べた解析では差がついていない | 好きなほう、続くほうを選ぶ。国のガイドは両方をすすめている |
| 認知症が心配で運動を始めたい | 「防げる」という証拠は確立していない | 転倒予防と生活機能を目的に置く。脳への効果はおまけと考える |
| 高齢の親にすすめたい | 弱っている人ほど効きやすい可能性がある | 週2〜3日。椅子からの立ち上がりや自重の運動から始める |
| 乳酸のサプリメントを飲めば? | 人での有効性は示されていない。乳酸化は良し悪し両方に働く | すすめられない。「運動をする」という入り口のほうを取る |
| 筋肉痛が出ないと効いていない? | 筋肉痛と乳酸は関係がない。時間も合わない | 筋肉痛の有無で効果を判断しない。翌日に残らない量から始める |
| 採血で乳酸が高いと言われた | 運動でできる乳酸とは、置かれている文脈が違う | 自己判断で運動量を変えず、まず主治医に理由を確認する |
| 血圧が高い・心臓に持病がある | 息を止めていきむと、その瞬間に血圧が跳ね上がる | 事前に主治医へ。息を止めない、会話ができる程度の負荷にする |
| 抗凝固薬を飲んでいる | 転倒・打撲そのものがリスクになる | 支えのある場所で。バランスを崩しやすい種目は手すりの近くで |
| 30〜40代で時間がない | 運動習慣がいちばん少ないのがこの世代 | 週2〜3日、1回20分から。通勤や家事に足す形で組み込む |
| すでに介護が必要な状態 | 「筋トレ」という形にこだわらなくてよい | 座ったままの足踏み、立ち上がり、家事動作。訪問リハビリで組み立てられる |
※持病のある方の運動は、内容によって注意点が変わります。この表は一般的な考え方の整理で、個別の指示ではありません。
SECTION 13
よくある質問
その根拠は、いまのところ人間のデータにはありません。30本のメタ解析を統合した2025年の解析では、運動の強度も種類も時間も、認知機能の伸びを左右していませんでした。灼ける感覚は乳酸そのものではなく、水素イオンなど別の要因によるものです。「きつくした分だけ脳に効く」という関係は、確認されていないと考えてください。
すすめられません。乳酸を直接点滴した2025年の試験では、BDNFの前駆体は増えたものの、実際にはたらく成熟型は動きませんでした。また、脳の中の乳酸化は、起きる場所によっては炎症の悪循環をつくる側にも働きます。「乳酸が増えれば脳に良い」と単純に読めない以上、乳酸だけを外から入れる方法を今の段階ですすめる理由はありません。
頭への効果という点で、時間帯を比べた質の高いデータは十分ではありません。効果が出るのが終了後11〜20分の短い窓なので、「その後に頭を使う予定がある時間帯」に置くのが理屈には合います。ただし就寝直前の激しい運動は寝つきを悪くすることがあるので、そこは避けたほうがよいでしょう。いちばん確実なのは、続けられる時間帯を選ぶことです。
わかりません。2025年の研究では、運動中に脳から成熟型BDNFが出ていく様子は捉えられず、運動後に血液中で増えるBDNFは骨格筋と血小板から来ている可能性が高いと結論されています。血液のBDNFは、いまのところ「脳がどうなっているか」の代わりにはなりません。健診の追加項目として測る意味も、現時点ではありません。
「認知症を良くするため」という目的で無理にさせることはすすめません。ただ、体を動かすこと自体には、転倒予防、便通、睡眠、気分といった確かな利点があります。デイサービスの体操、散歩、家事の一部を一緒にやる、といった形で十分です。本人が嫌がることを続けさせると、介護する側の負担も、本人との関係も悪くなります。訪問リハビリを使えば、その方の状態に合わせた形を一緒に考えられます。
そんなことはありません。国のガイドでも、歩行以上の身体活動を1日60分以上(およそ8,000歩以上)が推奨の柱になっています。そのうえで、筋トレを週2〜3日足すとさらに良い、という構成です。認知機能に関しても、筋トレと有酸素運動を直接比べた解析で差はついていません。歩くことがすでに習慣になっているなら、そこに自重のスクワットを数セット足すだけで、推奨の形にかなり近づきます。
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SECTION 14
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この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。持病のある方、薬を飲んでいる方が運動の内容を変える際は、主治医にご相談ください。記事の作成にあたり、企業からの資金提供・便宜供与は受けていません。参考文献は査読つき論文および公的機関の資料に限り、内容は執筆時点の情報にもとづきます。

