「お尻のあたりが赤くなっている」「寝ている時間が長くなって、床ずれができないか心配」。病気や年齢のために自分で寝返りを打つことが減ると、体の重みがかかり続ける場所の皮膚が傷みやすくなります。これが床ずれ(褥瘡=じょくそう)です。がんの終末期や神経の難病、認知症などで横になっている時間が長いご家族を介護している方にとって、身近な心配の一つです。
この記事では、日本褥瘡学会や国際的な診療ガイドライン、コクランレビュー、厚生労働省と福岡市の資料をもとに、床ずれのできやすい場所と早く気づく見方、ご家族にできる体の向きの工夫と皮膚のケア、相談の目安をまとめました。
SECTION 01 結論:床ずれを防ぐ4つのポイント
毎日、皮膚を見る
おむつ交換や着替えのときに、お尻・かかと・腰の横など、骨が出っ張った場所を見ます。押しても白くならない赤みは、初期の床ずれのサインです。
同じ場所に体重をかけ続けない
体の向きを変え、クッションや体圧分散マットレス(体の重みを広く分ける寝具)を使います。向きを変える間隔は、マットレスや本人の状態によって変わります。
「ずれ」と「湿り」から皮膚を守る
頭を上げたあとの皮膚のずれをとり、尿や便で汚れたらやさしく洗って保護します。骨の出っ張ったところは、もんだり強くこすったりしません。
栄養と、早めの相談
食事の量が減った、やせてきたときは主治医に相談を。介護保険で床ずれ防止用のマットレスなどを借りられることもあります。
SECTION 02 床ずれとは:できる仕組みと、できやすい場所
体の重みで血の流れが滞って起こる
日本褥瘡学会は床ずれを、寝たきりなどで体重に圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ったりして、皮膚の一部が赤みをおびたり、ただれたり、傷ができたりすること、と説明しています。骨が突き出した場所は強く圧迫されるためできやすく、圧迫に加えて摩擦や「ずれ」が繰り返されることや、栄養状態が悪いこと、尿・便・汗で皮膚がふやけていることも、床ずれのできやすさにかかわるとされています[1]。
数字でみる床ずれ
日本褥瘡学会が2021年10月に全国の病院・介護保険施設・訪問看護ステーションで行った調査では、体の重みによる床ずれ(自重関連褥瘡)がある方の割合(有病率)は、調査した施設全体で0.37〜2.03%の範囲でした[2]。
2016年の調査で、訪問看護ステーションの利用者にあった床ずれの場所は、多い順に下のとおりでした。続いて大転子部(太ももの付け根の外側)9.0%、尾骨部8.4%です[3]。
(仙骨部)
(坐骨結節部)
(踵部)
訪問看護ステーションの利用者にあった床ずれ391か所の場所の内訳(2016年10月の調査、左右両方にあれば2か所と数えています)[3]。
有病率は、調査の日に床ずれがあった方の割合で、療養の場所や対象となる方の状態によって変わるため、幅があります。場所の内訳は訪問看護の利用者の調査で、在宅療養の方全体を表すものではありません。調査の年も違います(2021年と2016年)。
図1 床ずれができやすい場所と体位の工夫
左が姿勢、右がその姿勢で体重がかかりやすい場所と、ご家庭でできる工夫です。
出典:日本褥瘡学会の一般向け解説[1][4]、実態調査[3]、国際ガイドライン[5]をもとに作成。
SECTION 03 早く気づく:「押しても白くならない赤み」
床ずれは、傷ができる前に「赤み」として始まることが多くあります。国際的な診療ガイドラインも、体の向きを変えるときなどに骨の出っ張った場所の皮膚を見ることを、基本的なケアとしています[5]。おむつ交換や着替え、入浴のときなどに、図1の場所を毎日見る習慣をつけましょう。
指で押して確かめる(指押し法)
赤みを見つけたら、人差し指で赤いところを軽く3秒ほど押し、白っぽく変わるかどうかを見ます。押しても赤みが消えずにそのままであれば、初期の床ずれと考えます[1]。日本皮膚科学会のガイドラインも、この指押し法や、透明な板を当てて押すガラス板圧診法が、初期の床ずれの見分けに役立つとしています[6]。
赤みが見えにくいこともあります。周りと比べて熱をもっている、むくんでいる、硬さが違う、といった変化も手がかりになります[5]。
赤みを見つけたら
- その場所に体重がかからない向きにします[1]
- 骨の出っ張ったところのマッサージはしません(日本褥瘡学会の第4版ガイドライン、2015年)[7]
- 主治医や訪問看護師に伝えます。日付を入れて写真を撮っておくと、変化を説明しやすくなります
SECTION 04 体の向きを変えて、体の重みを分ける
体位変換の間隔はマットレスと本人の状態で決める
日本褥瘡学会の一般向けの解説では、体の向きを変える体位変換は基本的に2時間を超えない範囲で行い、粘弾性フォームマットレスや二層式エアマットレスなどを使っている場合は、4時間を超えない範囲で行ってもよいとされています[4]。同学会のガイドライン(第5版)も、体圧分散マットレスを使っている高齢の方の4時間を超えない間隔を、CQ(臨床上の問い)として取り上げています[8]。一方、国際ガイドライン(第4版)は、間隔を一人ひとりに合わせて決めることを基本としたうえで、適切なマットレスの上で2〜3時間ごとを目安とし、4時間以上に一律に延ばさないことを提案しています(根拠の確実性は非常に低い)[5]。
体位変換の間隔や向きの違いを比べた8件の試験(3,941人)をまとめたコクランレビュー(2020年)でも、どの間隔・どの体位が最も床ずれを減らすのかははっきりせず、根拠の確実性は低い〜非常に低いとされました[9]。夜中も体の向きを変え続けるのは、ご家族にとって大きな負担です。マットレスの見直しも含めて、主治医や訪問看護師と相談して決めましょう。
横向きは「30度」が目安
横向きにするときは、真横(90度)にするのではなく、背中側に枕やクッションを入れて30度ほど傾け、骨の出っ張りではなくお尻の筋肉で体重を受ける「30度側臥位」がよく使われます。日本褥瘡学会は30度を目安とし[4]、国際ガイドライン(第4版)も30度の横向きを提案して、角度は体格などに合わせるとしています(根拠の確実性は非常に低い)[5]。クッションの当て方は、訪問看護師やリハビリ職に見てもらうと安心です。
頭を上げるときは「ずれ」に注意
ベッドの頭側を上げると体が足元へずり落ちようとして、お尻の皮膚とその奥の組織の間に「ずれ」が生じます。国際ガイドライン(第4版)は、ベッドの頭側の角度を30度以下に保つことを提案しています。ただし、誤嚥の危険が高いときなど、病状によってはもっと高くする必要があります(根拠の確実性は低い)[5]。食事のときの姿勢は「誤嚥性肺炎を防ぐには?」で紹介しています。
頭を上げたあとは、背中や腰、足をいったんマットレスから少し離してから戻す「背抜き」で、皮膚のつっぱりやずれをとる方法が介護の現場で広く行われています。体を上のほうへ引き上げるときは、引きずらずに持ち上げるようにし、できれば2人で行いましょう[4][5]。
かかとは「浮かせる」
あお向けでは、かかとに体重が集まります。国際ガイドライン(第4版)は、かかとを浮かせることを基本的なケアとしています。専用の用具がなければ、ふくらはぎの下に枕やクッションを入れ、脚の重みをふくらはぎ全体で受けて、かかとをマットレスから浮かせます。アキレス腱やひざの裏を圧迫しないようにし、ひざは軽く曲げます[5]。
座る時間も区切る
車いすやいすに座っていると、お尻の下の骨(坐骨)に体重が集まります。国際ガイドライン(第4版)は、座ったまま自分で姿勢を変えられない方では、座る時間をできるだけ短くすることを提案し、座るときは体圧分散用のクッションを使うことを強く勧めています[5]。座ることは生活の楽しみにもなるので、時間やクッションはリハビリ職やケアマネジャーに相談しましょう。
体圧分散マットレスを使う
日本褥瘡学会は、体圧分散マットレスを使うと床ずれができる割合を下げられるとし、自分で体の向きを変えられない方には空気の圧が自動で入れ替わる「圧切替型」のエアマットレスを、皮膚のたるみや骨の出っ張りがある高齢の方には二層式などの多層式エアマットレスを勧めています[4]。
コクランの4つのレビューをまとめ直し、そのうちマットレスどうしを比べられた40件の試験(12,517人)を解析した研究でも、空気を使うマットレス(圧切替型・静止型)は、ウレタンフォームのマットレスより床ずれのリスクを下げる可能性があるとされました。ただし根拠の確実性は低く、どれが最もよいかはまだはっきりしていません[10]。エアマットレスでは体が沈み込んで、起き上がりにくくなることもあります。床ずれの危険の程度や、ベッドの上で自分で動ける力に合うものを選びましょう[5]。
- 借りられる用具:床ずれ防止用具(送風装置や空気圧の調整装置がついたエアマットのほか、ウレタンやゲルなどで体圧を分散する全身用のマットも含まれます)と、体位変換器(空気のパッドなどを体の下に入れて、向きを変えやすくするもの。姿勢を保つだけのものは対象外)[11]
- 自己負担:費用の1割(一定以上の所得がある方は2割または3割)。要介護度ごとの1か月の支給限度額の範囲で、ほかのサービスとあわせて使います[12]
- 要支援1・2、要介護1の方:原則として対象外です[12]。ただし、要介護認定の調査で寝返りが「できない」とされた方は対象になります[13]。また、がん末期で急に状態が悪くなることが確実な場合などに、医師の医学的な所見とケアマネジャーの判断をもとに福岡市が確認して、例外的に認められる仕組みもあります[13]
- 相談先:担当のケアマネジャー。要介護認定をまだ受けていない方は、「まず、どこに相談するか:親の施設の選び方」で相談先と申請の流れを紹介しています
SECTION 05 皮膚を守る:清潔と保湿、こすらないこと
国際ガイドライン(第4版)は、皮膚を定期的に見て、決まった手順でスキンケアを行うことを基本としています。実際の工夫として、弱酸性(pH4.5〜5.5)の洗浄剤を選ぶこと、洗うときも拭くときも軽い力で行うこと、失禁のあとはおむつなどをできるだけ早く替えることなどを挙げています[5]。ご家庭では、次のことを心がけましょう。
- ✓おむつが汚れたら早めに替え、ゴシゴシこすらず、やさしくていねいに洗う[4]
- ✓洗ったあとは、尿や便から皮膚を守る保護クリームなどを使う。何を使うかは訪問看護師などに相談する[4]
- ✓乾燥している皮膚には保湿クリームを塗る[4][6]。塗るときも強くもんだり、こすったりしない[5]
- ✓骨の出っ張ったところはマッサージしない[7]
- ✓シーツや寝間着のしわ、体の下に入りこんだ管やボタンなどを取り除く
床ずれの心配が大きい場合は、骨の出っ張った場所に保護用のフィルムやフォーム材を貼ることもあります[6]。訪問看護師などに相談しましょう。
傷になったところに、家にある塗り薬や市販薬を自己判断で使い続けるのはやめましょう。日本褥瘡学会は、傷の状態に合わない塗り薬を漫然と使うと、かえって悪化させる可能性があると注意しています[14]。
SECTION 06 栄養:食べる量が減ったら早めに相談
日本褥瘡学会は、床ずれ予防の栄養管理の基本は、低栄養を避け、改善することだとしています。低栄養の方には高エネルギー・高たんぱくの栄養補助食品が勧められ、口から食べるのが難しい場合は、胃ろうなどからの経腸栄養や、点滴による栄養も選択肢になります[4]。国際ガイドライン(第4版)も栄養状態を確かめることを基本とし、低栄養かそのおそれがあって食事で足りない方には栄養補助を提案しています[5]。
ただし、同じガイドラインは、床ずれの予防だけを目的に経管栄養を始めることは勧めていません。口から食べることをできるだけ支え、胃ろうや点滴を始めるかどうかは、本人の病状や希望、療養の目標をふまえて主治医と話し合って決めます。終末期には、食べる量を増やすことより本人の楽さを大切にすることもあります[5]。「胃ろうをつけるか迷ったら」と「食べられなくなったら点滴は必要?」もご覧ください。
また、栄養補助食品で床ずれの発生そのものが減るかを調べた試験(3件、1,634人)をまとめたコクランレビュー(2024年)では、ふつうの食事と比べてほとんど差がないかもしれない(根拠の確実性は低い)とされました[15]。それでも栄養は、体力や傷の治りを支える土台です。食事の量が減った、やせてきた、むせるようになったときは主治医に相談しましょう。医師が処方できる栄養剤については「処方できる経腸栄養剤の使い分け」もご覧ください。
SECTION 07 在宅療養:訪問診療・訪問看護とご家族ができること
訪問診療・訪問看護で一般にできること
通院が難しい方には、医師が月1〜2回など計画的にご自宅を訪れる訪問診療や、看護師が訪れる訪問看護という選択肢があります。床ずれについては一般に、次のようなことを相談できます。
- 皮膚の観察と、床ずれの深さや状態の評価
- 傷の処置の方法の指示、傷があるときの塗り薬や、傷を覆う被覆材の処方と使い分け
- 主治医が、一時的に頻回の訪問看護が必要と判断して「特別訪問看護指示書」を出すと、その診察の日から14日以内に限り、週4日以上の訪問看護を受けられることがあります。この指示書はふだん月1回までですが、深い床ずれ(真皮を越える褥瘡)がある方は月2回まで出せます[16]
- マットレスや体位変換器など、福祉用具の見直しをケアマネジャーと相談する(軽度の方の例外的な貸与に必要な医師の所見を含む)[13]
- 食事の量や体重の変化の確認と、栄養剤の処方
- 痛みのケア、熱が出たときの診察、皮膚科など専門の医療機関への紹介が必要かの判断
終末期には防ぎきれない床ずれもある
がんの終末期など、体の状態が大きく変わる時期には、ていねいにケアしていても床ずれができてしまうことがあります。日本褥瘡学会は、医療者が状態と危険因子を評価し、標準的なケアをふまえて対策を試み、計画を見直してきたにもかかわらずできた床ずれを「不可避褥瘡」と呼んでいます[17]。床ずれができたことが、ご家族のケアが足りなかったせいとは限りません。この時期は、本人の楽な姿勢や眠りも大切にしながら、体の向きを変える回数や方法を主治医や訪問看護師と話し合いましょう。
ご家族ができること
- ✓おむつ交換や着替えのたびに、図1の場所の皮膚を見る
- ✓赤みがあれば指で軽く押して確かめ、白くならなければ主治医・訪問看護師に伝える
- ✓体の向きを変えた時刻と向きをメモし、家族で共有する
- ✓汚れたらやさしく洗って保護し、乾燥には保湿をする。もまない、こすらない
- ✓食事の量や体重の変化をメモしておく
- ✓介護する人も休む。夜の体位変換がつらいときは、マットレスの見直しを相談する
訪問診療を依頼するときに準備するもの
訪問診療を依頼するときは、一般に次のものを用意しておくと手続きがスムーズです。
- ✓健康保険の資格が確認できるもの(マイナ保険証または資格確認書)
- ✓(可能なら)今かかっている医療機関の紹介状
- ✓(あれば)お薬手帳、またはお薬のデータ
- ✓(あれば)介護保険証
- ✓(あれば)公費の受給者証
ふくろう訪問クリニックは、福岡市早良区の訪問診療クリニックです。通院が難しい方のご自宅に医師が伺い、定期的に診療しています。寝ている時間が長くなり、床ずれが心配なときや、皮膚の赤みが気になるときは、ご相談ください。お電話・メールのほか、公式LINEでもご相談を受け付けています。
SECTION 08 受診・相談の目安
図2を目安に、早めに連絡しましょう。日本褥瘡学会も、感染が疑われるときや大きく張った水ぶくれがあるときは、早めに医師や看護師に相談するよう勧めています[14]。
図2 床ずれで連絡する目安
上ほど急ぎます。連絡先は、訪問診療・訪問看護を受けている方は主治医・訪問看護、そうでない方はかかりつけ医です。
出典:日本褥瘡学会の一般向け解説[1][14]をもとに作成。ほかは一般的な目安で、病状によって判断は変わります。主治医から受けている説明を優先してください。
呼びかけへの反応が鈍い、息が苦しそうなど、命にかかわるおそれがあるときは、ためらわずに119番を。ただし、ご自宅での看取りについて主治医と話し合っている方は、まず主治医や訪問看護の緊急連絡先に連絡してください。訪問診療や訪問看護を受けている方は、夜間・休日の連絡先を、あらかじめ主治医や訪問看護ステーションに確かめておきましょう。
この記事の情報は2026年10月時点のものです。制度の内容は変わることがあります。
SECTION 09 ご利用・採用のご案内
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参考文献
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- 日本褥瘡学会 実態調査委員会(執筆:石澤美保子, 玉井奈緒, 北村言). 第5回(2021年度)日本褥瘡学会実態調査委員会報告4:「防ぎきれない褥瘡」に関連する新規追加項目の分析結果とその考察. 褥瘡会誌 26(1): 46-56, 2024(考察で、同報告2「療養場所別自重関連褥瘡の有病率,有病者の特徴,部位・重症度およびケアと局所管理」〈褥瘡会誌 25(2): 119-171, 2023〉の有病率を引用). https://www.jspu.org/medical/investigation/docs/survey5-4.pdf(2026年10月閲覧)
- 日本褥瘡学会 実態調査委員会. 第4回(平成28年度)日本褥瘡学会実態調査委員会報告2:療養場所別自重関連褥瘡の有病率,有病者の特徴,部位・重症度およびケアと局所管理. 褥瘡会誌 20(4): 446-485, 2018(表11 訪問看護ステーションの総自重関連褥瘡の保有部位). https://www.jspu.org/medical/investigation/docs/survey4-2.pdf(2026年10月閲覧)
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