病気やけがで自分で尿を出すことが難しくなったとき、膀胱に管を入れたままにして、尿を袋に流す「膀胱留置カテーテル」(尿道カテーテル。いわゆるバルーン)を使うことがあります。カテーテルをつけたまま退院して、「毎日どう扱えばいいの?」「尿がにごっているけれど大丈夫?」と不安を感じるご家族は少なくありません。
この記事では、米国疾病予防管理センター(CDC)の指針[1]、米国感染症学会(IDSA)の指針(2009年・2019年)[2][3]、英国の国立医療技術評価機構(NICE)の指針[4]、日本泌尿器科学会のガイドライン[5]などをもとに、家での毎日のケア、「しなくてよいこと」、尿路感染や詰まりのサインと連絡の目安を整理します。退院の準備全体については「親が退院して家に帰るとき、何を準備する?」もあわせてご覧ください。
SECTION 01 結論:清潔に・つないだまま・バッグは低く。熱や痛みは早めに連絡を
必要なときだけ使い、要らなくなったら早めに抜く
カテーテルは、入れている期間が長いほど尿路感染の危険が高くなります[1][6]。今も必要かどうかを、主治医と定期的に見直すことが勧められています[4]。
毎日のケアは「手洗い・つないだまま・バッグは低く」
触る前後の手洗い、つなぎ目を外さない、バッグを膀胱より低く床につけない、管を折らない、が基本です。陰部は石けんと水で洗えば十分です[1][4]。
決まった間隔の膀胱洗浄や予防の抗菌薬は、ふつうは必要ない
感染を防ぐ目的で膀胱を洗ったり、抗菌薬(細菌に効く薬)を飲み続けたりすることは、指針で勧められていません[1][2][4]。
にごり・においだけでは感染とは言えない。熱・痛み・様子の変化に注意
長く使うと、ほぼ全員の尿に細菌が見つかります。症状がなければ治療しないのが原則です[6][3]。熱や寒け、わき腹や下腹部の痛み、いつもと様子が違うといった変化があれば連絡しましょう[2][6]。
SECTION 02 膀胱留置カテーテルとは?なぜ使うの?
しくみ
膀胱留置カテーテルは、尿道から膀胱まで入れたままにしておく、やわらかい管です。先端近くの小さな風船(バルーン)を膀胱の中でふくらませて抜けないようにし、尿は管を通って蓄尿バッグ(尿をためる袋)に流れます。風船をふくらませる水には滅菌蒸留水を使います(理由は「抑えておきたい!精製水と蒸留水の違い」で解説しています)。
どんなときに使う?
米国CDCの指針は、膀胱留置カテーテルを使うのが適切な場面として、次のようなものを挙げています[1]。
- 尿閉(膀胱に尿がたまっているのに、自分で出せない状態)や、尿の出口がふさがっているとき
- 失禁があり、おしりや陰部の傷(床ずれなど)を治す必要があるとき(関連記事:床ずれ(褥瘡)を防ぐには?)
- 終末期に、必要に応じて本人を楽にするため
- 背骨や骨盤の骨折などで、体を動かすこと自体を避けなければならない期間
一方で、失禁があるというだけでカテーテルを使うことや、おむつ交換などのケアの代わりに使うことは、勧められていません[1]。寝たきりというだけでは、使う理由になりません。
要らなくなったら、早めに抜くのが原則
尿路感染の危険は、カテーテルを入れている期間が長いほど高くなります[6]。CDCは、特に女性、高齢者、免疫の弱い人では、使う期間をできるだけ短くするよう勧めています[1]。長く使う場合も、必要かどうかを定期的に見直し、できるだけ早く抜くことが勧められています[4]。
入れたままのカテーテルのほかにも、次のような方法があります。どれが合うかは、尿が出にくい理由、体の状態、本人やご家族の希望によって変わるので、主治医と相談して決めます[4]。
- 間欠導尿:決まった時間に細い管を入れて尿を出し、すぐに抜く方法です。膀胱から尿を出しきれない人では、入れたままのカテーテルより望ましいとされています[1][4]。
- 体の外に当てて尿を集める器具:尿閉がない場合の選択肢です。男性用のほか女性用もありますが、女性用は主に病院で使われ、家で使えるかは主治医と相談します[1][7]。
- 膀胱瘻(ぼうこうろう):おなかの皮膚から膀胱に直接管を入れる方法で、尿道カテーテルに代わる方法のひとつです[6]。
SECTION 03 毎日のケア:家でできる7つのこと
毎日のケアの目的は、細菌が入り込む機会を減らすことと、尿の流れを保つことです。CDCとNICEの指針、英国の国民保健サービス(NHS)の患者向けの説明から、家でできることを図1にまとめました[1][4][8]。
図1 家での毎日のケアの7つのポイント
お使いの器具の説明書や、主治医・訪問看護師から受けている指導がある場合は、そちらを優先してください。
出典:CDC(2009年)[1]、NICE(2012年、2017年更新)[4]、NHS(2023年確認)[8]をもとに作成。
バッグの尿の捨て方
- ✓手を洗ってから始める
- ✓尿を受ける容器は、その人専用の清潔なものを使う
- ✓排出口を容器や床に触れさせず、尿がはねないように注ぐ
- ✓捨て終わったら排出口を閉じ、元の位置に戻す
- ✓最後にもう一度手を洗う
CDC[1]、NHS[8]の資料をもとに作成。
水分と便秘にも気をつけて
NHSは、尿が薄い色を保てるくらいに水分をとること、水分や食物繊維をとって便秘を防ぐことを勧めています[8]。ただし、心臓や腎臓の病気などで水分を控えるよう言われている方は、その指示を守ってください。入浴の方法やバッグの交換は、主治医・訪問看護師に確かめましょう。
SECTION 04 「しなくてよいこと」もあります
決まった間隔の膀胱洗浄
膀胱に液を入れて洗い流す膀胱洗浄は、感染を防ぐ目的では勧められていません[1][4]。海外の指針は、詰まりを防ぐためでも決まった間隔の洗浄は勧めておらず[2]、長く使う人を対象にした系統的レビュー(複数の研究をまとめた分析)でも、益があるか害があるかを判断できるだけの研究はありませんでした[9]。日本のガイドラインは、詰まりの予防には必要な処置としつつ、日常的な感染予防策としては勧めておらず、抗菌薬や消毒薬を使った洗浄は行わないとしています[5]。詰まりやすい方では、主治医の判断で行うことがあります。
予防のための抗菌薬
感染を防ぐ目的で抗菌薬を使い続けることは、薬の効かない細菌(耐性菌)が増える心配もあり、勧められていません[1][2][10]。なお、以前に交換のあとで尿路感染を起こした人や、交換のときに出血などの傷ができた人では、交換のときに限って予防の抗菌薬を検討することがあります[4]。
症状がないのに尿を調べて治療すること
カテーテルを入れていると、細菌尿になる人が1日あたり3〜8%ずつ増え、1か月ほどでほぼ全員の尿に細菌が見つかります[2][6]。症状のない細菌尿(無症候性細菌尿)は、調べることも治療することもしないよう、強く勧められています[3]。
陰部の消毒
カテーテルが入っているまわりを、感染予防のために消毒薬で拭くことは勧められていません。毎日の入浴やシャワー、清拭のときに、石けんと水で洗えば十分です[1][4]。
CDCの指針は、カテーテルやバッグを決まった間隔で交換することは勧めず、感染したとき、詰まったとき、つなぎ目が外れたり漏れたりしたときなど、必要に応じて交換するよう示しています[1]。長く使う人の交換の方針を比べた系統的レビューでも、どの方針がよいかを判断できる研究は不十分でした[11]。NICEは、必要なときか、製品の説明書の推奨に沿って交換するとしています[4]。
日本泌尿器科学会のガイドライン(2021年)は、交換の間隔に確定した基準はないとしたうえで、詰まったときや詰まりそうな兆しがあるときは早めの交換が必要とし、在宅診療では4週間ごとか2週間ごとに交換していることが多いと紹介しています(裏づけとなる研究は限られています)[5]。実際の交換の時期は、詰まりやすさや尿の状態、使っている器具などを見て、主治医が決めます。
SECTION 05 尿路感染のサイン:熱・痛み・様子の変化
カテーテルを使っている人に起こる膀胱や腎臓の感染を、カテーテル関連尿路感染といいます。IDSAの2009年の指針と欧州泌尿器科学会(EAU)の2026年版ガイドラインは、そのサインとして次のようなものを挙げています(尿をするときの痛みやトイレが近いといった症状は、カテーテルを抜いたあとのサインとされています)[2][6]。
- ✓熱が出た、寒けがする、がたがた震える
- ✓わき腹や腰の痛み、下腹部の痛みや不快感
- ✓意識がぼんやりする、元気がない、だるそうにしているなど、いつもと様子が違う
- ✓急に尿に血が混じるようになった
高齢の方や認知症のある方では、熱やはっきりした痛みが出ず、「なんとなく元気がない」「ぼんやりしている」といった変化だけのことがあります。IDSA(2009年)とEAUは、ほかに原因が見当たらない意識の変化やだるさも、カテーテル関連尿路感染を疑うサインに含めています[2][6]。一方で、こうした変化は脱水や便秘、ほかの感染症、薬の影響などでも起こります。熱などがなく、尿に細菌がいるだけの場合は、ほかの原因を調べて注意深く様子を見ることが勧められています[3]。
にごり・においだけでは、感染とは言えません
カテーテルを使っている人の尿には細菌がいることが多く、にごったり、においが強くなったりすることもよくあります。IDSA(2009年)とEAUのガイドラインは、尿のにごりやにおいだけで、症状のない細菌尿と尿路感染を見分けないよう示しています[2][6]。気になるときは記録しておき、次の訪問で伝えましょう。ただし、浮遊物(尿の中のかす)や血のかたまりが多く出るときは、詰まりにつながることがあるので、早めに相談します[8]。
バッグや管が紫色になったら(紫色採尿バッグ症候群)
長くカテーテルを使っている人で、バッグや管が紫色に染まることがあります。紫色採尿バッグ症候群と呼ばれ、腸でできる物質が尿に出て、尿の中の細菌の働きで青や赤の色素に変わることで起こります。2017年までに報告された98報・246人をまとめた研究では、高齢、女性、便秘、寝たきり、長期のカテーテル使用、アルカリ性の尿などが多くみられました。多くは害のない変化とされていますが、尿に細菌が増えているしるしであり、まれに重い感染症を伴った報告もあります[12]。日本のガイドラインも、着色のほかに症状がなければ細菌尿の治療は必要ないとしています[5]。熱などほかの症状がなければ次の訪問で、熱や様子の変化があればすぐに、主治医・訪問看護に伝えましょう。
Q. 尿の検査で「細菌がいる」と言われました。薬は必要ですか?
A. 熱や痛みなどの症状がなければ、ふつうは治療しません[3]。症状のない細菌尿を治療しても益は示されておらず[2][6]、かえって耐性菌が増えるなどの害が心配されるためです[3]。
Q. クランベリージュースで予防できますか?
A. 50件の研究をまとめた系統的レビュー(2023年)では、尿路感染をくり返す女性、子ども、処置のあとで感染しやすい人で予防効果が示された一方、施設で暮らす高齢の方や、膀胱から尿を出しきれない方では、効果はほとんど見られませんでした[13]。予防の基本は、毎日のケアです。
SECTION 06 詰まり・漏れ・抜けたときは
NHSは、カテーテルが詰まった・横から漏れる・抜けたときや、尿に血が混じるとき、強い膀胱のけいれん(下腹部がつるような痛み)が続くときは、すぐに担当の看護師に連絡するよう勧めています[8]。
表1 よくある困りごとと、まずすること
| こんなとき | まずすること |
|---|---|
| 尿がバッグにたまらない、下腹部が張って苦しい | 管の折れやねじれ、体の下敷き、バッグの位置(膀胱より低いか)を確かめます。直しても流れないときは、詰まって膀胱に尿がたまっているおそれがあるので、すぐ連絡します。 |
| カテーテルの横から尿が漏れる | 詰まりのサインのことがあります。バッグに尿が流れているかを確かめ、連絡します。膀胱のけいれんや、排便のときに漏れることもあります。 |
| 尿が赤い、血のかたまりが出る | 管が引っぱられて傷ついたこともあります。管の位置を確かめ、連絡します。 |
| カテーテルが抜けた | 入れ直しの指導を受けていなければ、自分で入れ直そうとせず、連絡します。抜けた時刻と、そのあと尿が出ているかを伝えます。 |
CDC[1]、NHS[8]の資料をもとに作成。
SECTION 07 在宅療養:訪問診療・訪問看護で一般にできることとご家族ができること
訪問診療・訪問看護で一般にできること
通院が難しい方には、医師が月1〜2回など計画的にご自宅を訪れる訪問診療と、看護師などがご自宅を訪れ、主治医の指示に基づいて療養上の世話や診療の補助を行う訪問看護があります[14]。カテーテルについては、一般に次のようなことを相談できます。
- カテーテルが今も必要か、抜けないか、ほかの方法がないかの見直し
- ご自宅でのカテーテルの交換と、詰まりや漏れなどのトラブルへの対応
- 熱や痛みなどが出たときの診察と、尿の検査(バッグにたまった尿ではなく、管の採尿口から、または交換した新しいカテーテルから尿をとります)[1][2]
- 尿路感染と診断されたときの治療(長く入っているカテーテルは、治療を始めるときに交換することが勧められています。目安は1〜2週間以上入っているとき)[2][10][5]。状態によってはご自宅で点滴の治療を行うこともありますが、重い場合は入院が必要です(関連記事:高齢者の肺炎・尿路感染症入院と在宅で「医療費」はどう違う?)
- バッグの扱い方や陰部の洗い方など、毎日のケアの方法の助言[4]
- 訪問看護、ケアマネジャー、介護サービスとの情報共有
泌尿器科での診療が必要かどうかも、主治医が判断します。
ご家族ができること
- ✓尿の量や色、熱、様子をふだんから見ておき、気になる変化はメモする(いつから、どんな様子か)
- ✓カテーテルを交換した日や、詰まった日時を記録しておく
- ✓どんなときに誰へ連絡するか、夜間・休日の連絡先を、あらかじめ主治医・訪問看護と決めておく
- ✓ケアのやり方でわからないことは、遠慮せず訪問看護師に実際に見てもらう
- ✓介護の負担が大きいときは、ケアマネジャーに相談する
訪問診療を依頼するときに準備するもの
訪問診療を依頼するときは、一般に次のものを用意しておくと手続きがスムーズです。
- ✓健康保険の資格が確認できるもの(マイナ保険証または資格確認書)
- ✓(可能なら)今かかっている医療機関の紹介状
- ✓(あれば)お薬手帳、またはお薬のデータ
- ✓(あれば)介護保険証
- ✓(あれば)公費の受給者証
ふくろう訪問クリニックは、福岡市早良区の訪問診療クリニックです。通院が難しい方のご自宅に医師が伺い、定期的に診療しています。尿道カテーテルを使っている方の療養のことで気になることがあれば、ご相談ください。お電話・メールのほか、公式LINEでもご相談を受け付けています。訪問エリアは、福岡市の早良区・西区・城南区・中央区です。
SECTION 08 受診・相談の目安
カテーテルを使っている方の様子が気になったときは、図2を目安にしてください。
図2 尿道カテーテルを使っている方の連絡の目安
上ほど急ぎます。最上段は、主治医への連絡を待たずに119番を(看取りの方針を話し合っている方は、図の下の説明もご覧ください)。2段目より下で、夜間などに連絡がつかず迷うときは#7119へ。次の訪問を待てないと感じたら、早めに連絡してください。
NHS[8]、IDSA(2009年)[2]、EAU[6]、総務省消防庁[15]、福岡市[16]の資料をもとに作成。一般的な目安です。持病や病状によって判断は変わるので、主治医から受けている説明を優先してください。
呼びかけても返事がない、意識がもうろうとしてはっきりしない、急に息が苦しくなったといった様子は、消防庁が「すぐに119番」としている症状です[15]。主治医への連絡を待たずに119番に連絡し、そのあと主治医・訪問看護にも知らせてください。ただし、自宅での看取りの方針を主治医と話し合っている方は、予想されていた病状の変化であれば、まず決めておいた連絡先へ連絡してください。迷うときは、#7119(福岡県救急医療情報センター。24時間365日、救急医療機関での経験がある看護師が相談に応じます。092-471-0099でも受付)に相談できます[16]。
呼びかけには答えるけれど、いつもよりぼんやりしている・元気がないといった変化は、尿路感染のサインのことがあります[2][6]。高齢の方は熱などがはっきり出ないこともあるので、夜間や休日でも、決めておいた主治医・訪問看護の連絡先に早めに相談してください。
この記事の情報は2026年10月時点のものです。
SECTION 09 ご利用・採用のご案内
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参考文献
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