ふくろう訪問クリニック|こころとからだのコラム

大地震のニュースを追いかけてしまって落ち着かない人へ

画面から目が離せない。何度も同じ映像を見てしまう。眠れない、動悸がする——。それは「気にしすぎ」ではなく、体が正しく反応している証拠です。同時に、見続けること自体が、心と体の負担になることも分かっています。

2026年7月28日|医療法人ふくろうの樹 ふくろう訪問クリニック

2026年7月28日 熊本県熊本地方の地震について

28日16時27分ごろ、熊本県熊本地方を震源とする地震が発生しました。マグニチュードは7.1と推定され、熊本県の宇城市・氷川町で最大震度7が観測されています。有明海・八代海には津波注意報が発表され、九州の広い範囲で交通機関が止まりました。福岡県内でも柳川市・大川市などで震度5弱、福岡市を含む多くの地域で揺れが観測されています。

気象庁は、今後1週間程度、特に2〜3日は同程度の揺れに注意するよう呼びかけています。避難や備えについては、必ずお住まいの自治体と気象庁の最新情報に従ってください。

本コラムは、被災された方へのお見舞いを申し上げるとともに、直接被災していない地域の方も含めて、この数日をどう過ごすとよいかを医学の視点から整理したものです。

SECTION 01

今のあなたの体は、正常に働いています

大きな災害の直後、多くの人に次のような変化が起こります。

  • 胸がドキドキする、息が浅くなる、体が緊張してほぐれない
  • 寝つけない、途中で目が覚める、夢見が悪い
  • 小さな物音や揺れにびくっとする(過敏になる)
  • 集中できない、仕事や家事が手につかない
  • 涙が出る、イライラする、逆に何も感じなくなる
  • 食欲が落ちる、または食べすぎる。頭痛や胃の不快感が出る

これらは「急性ストレス反応」と呼ばれ、危険を察知した脳と自律神経が「身を守るモード」に切り替わったときに起きる、異常ではない反応です。心が弱いから起きるのではありません。むしろ、危険を正しく検知している証拠です。

そして大切なのは、その多くが数日から数週間のうちに自然に軽くなっていくということです。すべての人に専門的な治療が必要になるわけではありません。まずは「今の自分はこういう時期にいる」と知っておくだけで、少し肩の力が抜けます。

図1 発災後の時間経過と、起こりやすい心身の変化 発災直後〜数時間 数日 1〜2週間 1か月以降 ・強い緊張、動悸 ・現実感がうすい ・情報を探し続ける ・眠れない ※血圧が上がりやすい ・不眠が続く ・余震への恐怖 ・「地震酔い」 ・食欲低下、疲労 ※飲酒が増えやすい ・多くは徐々に軽快 ・持病の悪化 ・介護者の疲弊 ・気分の落ち込み ※薬の飲み忘れ注意 ・大半は日常に戻る ・一部は症状が持続  (不眠・フラッシュバック  ・回避・過覚醒) → ここが相談のタイミング オレンジ色の線は「心身の反応の強さ」のイメージ。多くの人は時間とともに下がっていきますが、下がり方には個人差があります。
図1 災害後の反応には、おおまかな時間経過があります。「1か月たっても生活に支障がある」ときは、自然経過を待つより相談したほうがよい段階です。
SECTION 02

「見続けること」がストレスを強める

ここからが本題です。ニュースを追いかけるのは、不安を減らそうとする、とても自然な行動です。「状況を知れば落ち着けるはずだ」と脳が判断しているからです。ところが研究の結果は、その方法が裏目に出やすいことを示しています。

現場にいた人より、画面を見続けた人のほうが

2013年のボストンマラソン爆破事件のあと、米国の研究チームが全米の成人4,675人を対象に調査を行いました。事件の2〜4週間後に、「爆破事件に関するテレビ・ラジオ・新聞・ネット・SNSにどれくらい接触したか」と、急性ストレス症状との関係を調べたものです。

結果は驚くべきものでした。事件前の精神状態や過去のトラウマ歴などを調整したうえで、事件後の1週間に1日6時間以上そのニュースに接していた人は、実際に爆破現場やその近くにいた人よりも、急性ストレス症状が強かったのです(メディア接触の回帰係数 b=15.61 に対し、直接被曝は b=5.69)。しかも、接触時間が1時間増えるごとに症状が強くなる関係が見られました[1]

読み方の注意。これは「見たから症状が出た」と一方向に断定できる研究デザインではありません。もともと不安の強い人ほど長く見てしまう、という逆の流れもあり得ます。ただし、この研究では事件のメンタルヘルスを事前に測ったうえで調整しており、また後述する3年間の追跡研究でも同じ方向の結果が繰り返し確認されています。「見続けることが心の負担になり得る」という結論は、実務的に十分信頼できるものと考えてよいでしょう。

不安が視聴を呼び、視聴が不安を育てる

同じ研究チームは、その後3年間にわたって全米4,165人を追跡しました。すると、次のような循環が見えてきました[2]

  • 事件直後にニュースに多く接した人ほど、6か月後のトラウマ関連症状が強い
  • その症状がある人ほど、2年後に「また何か起きるのでは」という将来への心配が強い
  • その心配が強い人ほど、次の事件が起きたときにまたニュースを大量に見て、より強い急性ストレス反応を示す

つまり、不安 → もっと知りたい → 見続ける → 刺激が積み重なる → さらに不安、というループが回り始めるのです。「知れば安心できる」はずの行動が、いつのまにか「知るほど不安になる」に反転してしまう。ここに気づくことが、最初の一歩になります。

図2 「知れば安心できるはず」が反転するループ 不安・落ち着かなさ 「何が起きているか知りたい」 見続ける・調べ続ける 通知・SNS・繰り返しの映像 刺激が積み重なる 脳が「まだ続いている」と判断 結果:不眠・過覚醒・動悸が長引き、次の災害報道への反応も強くなる (米国成人4,165人・3年間の追跡調査より/文献[2])
図2 このループは意志の弱さではなく、脳の仕組みによるものです。だからこそ「気合いで見ない」ではなく、仕組みで見ないようにする(通知を切る、時間を決める)ほうが確実です。

専門学会が示す、視聴のときの留意点

日本トラウマティック・ストレス学会は、惨事報道の視聴に関する留意点を公開しています[3]。要点は次のとおりです。

負担を大きくしやすい見方
  • 同じ内容の報道を繰り返し見る
  • 衝撃的な映像・音声を見る/聞く
  • テレビをつけっぱなしにして「ながら見」する
  • 寝る直前まで見る
とくに配慮が必要な方
  • 過去につらい体験をされた方
  • こころの不調で治療中の方
  • お子さん(年齢・発達に応じて大人が視聴を管理)
  • 被災地に身近な人がいる方

「ながら見」が挙げられている点は見落とされがちです。家事や仕事をしながらテレビをつけっぱなしにしていると、自分では選んでいない衝撃的な情報に、無防備な状態で不意に触れてしまいます。刺激としてはむしろこちらのほうが強く残ることがあります。

SECTION 03

こころだけでなく、血圧と心臓にも出る

「気持ちの問題でしょう」と片づけられないのが、災害後の身体反応です。日本循環器学会・日本心臓病学会・日本高血圧学会は、震災後に循環器の病気が増えることを踏まえて「災害時循環器疾患の管理・予防に関するガイドライン」をまとめています[4]

災害高血圧

阪神・淡路大震災のとき、震源近くに住む高血圧の高齢者を調べた研究では、震災の7〜14日後に血圧・血液の粘度・血栓に関わる指標がそろって上昇していました[5]。自治医科大学の苅尾七臣氏らの報告では、震災後1〜2週間で収縮期血圧が約17mmHg上昇し、多くの人は3〜5週で元に戻る一方、腎機能が低下している人などでは高いまま持続したとされています。

また同じ地域(淡路島・津名郡)の調査では、震災後の数か月間に冠動脈疾患による死亡が前年比で約1.5倍、脳卒中による死亡が約1.9倍に増えたことが報告されています[6]。血圧が20/10mmHg上がるごとに心血管死亡はおよそ2倍になるとされており、この程度の上昇は決して無視できません。

図3 震災後に体に起きること(阪神・淡路大震災の報告をもとにした模式図) 収縮期血圧の変化(震災前を0とした差) 0 +10 +20 震災前 1〜2週 3〜5週 約+17mmHg 多くは戻る 震災後の死亡(前年同期を1.0とした比) 1.0 1.5 1.9 前年 冠動脈疾患死 脳卒中死 約1.5倍 約1.9倍 ※兵庫県淡路島・津名郡での後ろ向き調査(1995年1〜4月/文献[5][6])をもとにした模式図です。数値は当時の地域・集団に基づくもので、  今回の地震で同じことが起きると予測するものではありません。
図3 災害後は「血圧が上がりやすく、血が固まりやすくなる」時期です。不眠・塩分の多い食事・運動不足・脱水・水分制限(トイレを我慢する)が重なると、さらに拍車がかかります。

揺れていないのに揺れて感じる——「地震酔い」

地震のあと、実際には揺れていないのに、ふわふわと揺れているように感じることがあります。これは「地震酔い(地震後めまい症候群)」と呼ばれます。東日本大震災後に3,000人以上を対象に行われた調査では、女性に多く、青壮年に多く、乗り物酔いをしやすい人に起こりやすいこと、めまいの既往とは関係しないことが報告されています。症状は静かに座っているときに1分程度の揺れ感として自覚されることが多く、通常のめまい疾患に伴う自律神経症状は少ないのが特徴です[7]

多くは数日から数週間で自然に軽くなります。横になり続けるより、体を起こして日常の動作を少しずつ行うほうが回復が早いとされています。ただし、ぐるぐる回る強いめまい、手足のしびれ、ろれつが回らない、片側の力が入らない、突然の激しい頭痛を伴う場合は別の病気を考える必要があるため、すぐに受診してください。

SECTION 04

今日からできる、ニュースとの距離のとり方

大事なのは「見ない」ことではありません。必要な情報は必ず取る。そのうえで、必要のない刺激だけを減らす。この使い分けです。

図4 情報の「つまみ」をどこに置くか 必要な分だけ、決めた時間に まったく見ない 避難情報を逃す 見続ける 刺激が積み重なる 1日2〜3回・1回5〜10分/気象庁・自治体・NHKなど発信元を絞る 避難情報や緊急地震速報の通知は切らない。切るのは「まとめ・切り抜き・SNSの動画」
図4 目標は「ゼロ」ではなく「適量」です。命に関わる情報だけは確実に受け取れるようにしたうえで、それ以外の刺激を減らします。
  1. 見る時間と発信元を、先に決める 「朝・昼・夜の3回、それぞれ5〜10分だけ」「情報源は気象庁・自治体・NHKの3つ」と決めてしまいます。決めておくと、脳が「あとで確認できる」と学習し、確認衝動が落ち着いていきます。
  2. 通知と自動再生を切る(避難情報は残す) ニュースアプリやSNSのプッシュ通知、動画の自動再生をオフにします。一方で、緊急地震速報・自治体の避難情報の通知は必ず残してください。切るのは「刺激」、残すのは「命に関わる情報」です。
  3. 衝撃的な映像は見ない。「ながら見」をやめる 被害の瞬間をとらえた映像や、繰り返し流れる同じ場面は、心の負担になることが分かっています。テレビはつけっぱなしにせず、必要なときだけつけて、終わったら消します。
  4. 寝る1時間前は情報を断つ 睡眠は、災害後の心身を守るいちばんの土台です。寝室にスマートフォンを持ち込まない、枕元で充電しない、それだけでも変わります。
  5. お酒で眠ろうとしない アルコールは寝つきをよくしますが、睡眠の後半を浅くし、夜中に目が覚めやすくします。災害のあとは飲酒量が増えやすく、長期的な問題につながることが繰り返し報告されています。眠れないつらさは、お酒ではなく相談で解決してください。
  6. 体を動かし、いつもの生活を少しでも戻す 散歩、洗濯、料理、いつもの時間に起きる。「日常の型」を取り戻すことは、それ自体が治療的です。血圧・血栓の面でも、座りっぱなしを避けることには意味があります。
  7. 子どもの前でつけっぱなしにしない 子どもは大人より「安全が脅かされた」という不安が強く出ます。年齢に合わせて見る量を大人が管理し、「怖かったね」と気持ちを受け止めたうえで、今ここは安全だということを繰り返し伝えてください。
デマ・誤情報について。災害直後は、真偽の不確かな情報や、生成AIでつくられた画像・動画が拡散しやすい時期です。過去の災害でも、虚偽の投稿が広く拡散し、救助活動の妨げになった例がありました。発信元が公的機関かどうかを見る、拡散する前に一呼吸置く——これは自分の心を守ることにも、被災地を守ることにもつながります。
SECTION 05 ── 在宅診療の視点から

家で療養している方と、そのご家族へ

在宅療養の現場では、「ニュースを見すぎる」ことの影響が、健康な方とはまったく違う形で現れます。ここは一段深く掘り下げます。

1. 認知症のある方は、テレビが「今起きていること」になる

認知症のある方にとって、テレビに映る崩れた建物や避難所の映像は、しばしば「今、ここで起きていること」として体験されます。時間や場所の見当識が保ちにくいため、映像と現実の区別がつきにくいのです。緊急地震速報の警報音も、それだけで強い不安と混乱を引き起こします。

その結果、次のようなことが起こります。

  • 同じ質問を何度も繰り返す(「逃げなくていいの?」「家は大丈夫なの?」)
  • 落ち着かず歩き回る、外に出ようとする
  • 夕方から夜にかけて不穏が強まる、夜間眠らない
  • 被害妄想が強まる、介護への抵抗が増える
  • 環境変化と不眠が重なり、せん妄を起こす

対応の基本は、シンプルです。

  • 情報番組のつけっぱなしをやめる。音楽や普段見ている番組に切り替えるだけで、落ち着くことが少なくありません。
  • 繰り返しの質問には、毎回同じ答えを、同じ落ち着いたトーンで返す。「大丈夫ですよ。ここは無事です。私がいます」——内容よりも、穏やかな口調そのものが伝わります。
  • 正そうとしない。「さっきも言ったでしょう」は不安を増やすだけです。
  • 日課を崩さない。食事・入浴・就寝の時間を普段どおりに保つことが、いちばんの安定剤になります。
  • 急な不穏は、心の問題と決めつけない。脱水、便秘、尿路感染、痛み、発熱でも同じように見えます。せん妄を疑ったら、まず身体を確認してください。

2. 精神疾患のある方は、報道が引き金になりうる

過去につらい体験をされた方、PTSD・うつ病・不安症・統合失調症などで治療中の方は、惨事報道によって過去の記憶が呼び起こされたり、今の症状が強まったりすることがあると、専門学会も明確に注意を促しています[3]

具体的には、フラッシュバック、悪夢、過覚醒、パニック発作の再燃、抑うつの悪化、被害的な考えの強まりなどです。「テレビを見なくなった」「急に部屋にこもるようになった」も、回避というかたちで現れたサインのことがあります。

ここで大切なのは、無理に語らせないことです。災害後の心理的支援の基本(サイコロジカル・ファーストエイド)では、体験を掘り下げて語らせることは推奨されていません。安全の確保、落ち着ける環境、必要な情報、人とのつながり——この4つを整えることが先です。ご家族が「聞き出さなきゃ」と気負う必要はありません。

3. 切らせてはいけない薬がある

不安や生活の乱れが続くと、服薬が崩れます。在宅療養の現場では、これが最も具体的で、最も防げるリスクです。

薬の種類中断・自己調整で起こりうること
降圧薬災害後はもともと血圧が上がりやすい時期。中断が重なると脳卒中・心不全のリスクが上がります
抗てんかん薬血中濃度が下がるとけいれん発作。睡眠不足そのものも発作の誘因になります
抗パーキンソン病薬時間どおりに飲めないと動けなくなる。急な中止は高熱・筋強剛(悪性症候群)の危険
ステロイド急な中止で副腎不全。ストレス下ではむしろ増量が必要になることがあります
インスリン・糖尿病薬食事量が乱れる時期。自己判断の中止も継続も危険で、必ず相談を
抗凝固薬・抗血小板薬災害後は血が固まりやすい時期。中断は脳梗塞・心筋梗塞に直結します
医療用麻薬(オピオイド)疼痛管理の破綻。退薬症状で不穏・不眠が強まり、原因が分かりにくくなります
抗精神病薬・気分安定薬中断による再燃。災害後のストレスと重なると回復に時間がかかります

あわせて、眠れないからと安易に睡眠薬を増やさないことも重要です。とくに高齢の方では、ベンゾジアゼピン系の薬はふらつき・転倒・骨折・せん妄の原因になります。災害後の不眠は、まず環境(音・光・寝る場所)と生活リズムを整えることから。薬が必要なときも、種類・量・期間は主治医と決めてください。

4. 訪問診療・訪問看護だからできること

外来では見えないものが、家では見えます。私たちが訪問時に見ているのは、患者さんの症状だけではありません。

  • テレビがつけっぱなしになっていないか。音量、置き場所、ベッドから見える位置か
  • 寝室の環境。眠れる状態になっているか、夜中に転ぶ導線がないか
  • 薬の残数。残薬から、実際に飲めているかが分かります
  • ご家族の表情と睡眠。ここが一番の観察点になることが少なくありません
  • 血圧の推移。災害後は普段より測る回数を増やし、数値を記録しておくと判断材料になります

症状が急に悪化したときには、主治医が特別訪問看護指示書を交付することで、一定期間、訪問看護の回数を増やすことができます。精神科の訪問看護を利用されている方も、状態に応じて訪問の頻度や内容を調整できます。「こんなことで連絡していいのか」と迷う必要はありません。迷った時点で連絡していただくのが、いちばん早くて確実です。

5. 介護されているご家族が、先に倒れないために

実は、在宅の現場でいちばん心配なのは、ご本人よりも介護されているご家族であることが多いのです。

  • 夜間の不穏対応で、介護者自身が眠れていない
  • 被災地の映像を見て「もし自分の家がこうなったら、この人を連れて逃げられるだろうか」と考え続けてしまう
  • 遠方のご家族から心配の電話が集中し、そのたびに説明を繰り返して消耗する
  • 「自分が弱音を吐くわけにはいかない」と抱え込む

報道を見続けることによる負担は、介護者にもそのまま当てはまります。図4の「つまみ」は、介護される方だけでなく、介護する方にも必要です。

そして、レスパイト(介護者の休息)は甘えではなく、在宅療養を続けるための医療的な手段です。ショートステイやレスパイト入院は、こういう時期のためにあります。限界が来る前にご相談ください。

図5 在宅療養の場で、この1〜2週間に守りたい5つのこと 1 音と映像を 減らす つけっぱなしを やめる 2 日課を 崩さない 食事・入浴・就寝を いつもの時間に 3 薬を 切らさない 自己判断で 減らさない 4 血圧を 記録する 回数を増やし 水分もとる 5 介護者を 休ませる レスパイトは 医療的な手段 迷ったら、迷った時点で連絡を ・急に落ち着かなくなった/夜眠らなくなった  ・食べる量、水分量が明らかに減った ・薬が飲めていない、残薬が合わない      ・血圧がいつもより明らかに高い/低い ・介護しているご家族が眠れていない      ・「もう限界かもしれない」と感じている
図5 停電・断水時の在宅酸素、人工呼吸器、吸引器、経管栄養などの具体的な備えについては、別コラム「大きな地震の時に医学的に気をつけること」で詳しく解説しています。
SECTION 06

こんなときは相談を——受診の目安

災害後の反応の多くは自然に回復します。ただし、次のような場合は、時間の経過を待つより相談したほうが早く楽になります。

タイミングこんなとき
すぐに救急へ 強い胸の痛み、急な息切れ、片側の手足に力が入らない、ろれつが回らない、突然の激しい頭痛、意識がはっきりしない。
片足のふくらはぎの痛みや腫れ(避難生活・車中泊のあと)も、すぐに受診を。
数日以内に相談 血圧がいつもより明らかに高い/薬が飲めていない/眠れない日が続く/食事や水分がとれない/持病の症状が悪化している。
在宅療養中の方の急な不穏、混乱、食欲低下も含みます。
2週間〜1か月続くとき 不眠、動悸、過度の警戒、フラッシュバック、悪夢、現実感のなさ、地震の話題や場所を避ける、気分の落ち込み、興味がわかない——これらが続き、仕事・家事・生活に支障が出ている。
ためらわず、今すぐ 「消えてしまいたい」「生きているのがつらい」という気持ちが出てきたとき。ひとりで抱えず、下記の窓口か、かかりつけ医にご連絡ください。

相談できるところ

こころの健康相談統一ダイヤル(厚生労働省) 0570-064-556 全国どこからでも、電話をかけた地域の公的な相談窓口につながります。受付日時は都道府県・政令市によって異なります。

よりそいホットライン 0120-279-338 24時間365日。災害による悩みを含め、幅広い相談を受け付けています。

お住まいの市区町村の保健センター、精神保健福祉センターでも相談できます。

まとめ

知ることと、見続けることは違う

ニュースを追ってしまうのは、大切なものを守ろうとする気持ちの表れです。それ自体は責めるようなことではありません。

ただ、その方法をほんの少し変えるだけで——時間を決める、通知を切る、衝撃的な映像は見ない、寝る前は断つ——心と体の負担は確実に軽くなります。必要な情報は取る。それ以外の刺激は減らす。この使い分けが、この数日をしのぐ現実的な方法です。

そして、在宅で療養されている方とご家族には、もうひとつお伝えしたいことがあります。この時期は、薬・睡眠・血圧・介護者の休息という、ごく具体的なところに危険が集まります。「気持ちの問題」ではなく、医療で対応できる問題です。

不安なとき、遠慮なくご連絡ください。それが、私たちが家に伺っている理由です。

ふくろう訪問クリニック

福岡市早良区を中心に、緩和ケア・難病・精神科・認知症の在宅医療に取り組んでいます。訪問診療・往診に加え、ふくろう訪問看護リハビリステーションと連携し、療養中の方とご家族を支えています。

災害後の不眠、不安、血圧の変動、認知症の方の不穏、介護されるご家族の疲れ——どれも、ご相談いただいてよい内容です。すでに当院をご利用の方は、いつもの連絡先へお電話ください。新たなご相談も承っています。

緊急時は119番、または最寄りの救急医療機関へ。避難に関する判断は、必ずお住まいの自治体および気象庁の最新情報に従ってください。

参考文献

  1. Holman EA, Garfin DR, Silver RC. Media’s role in broadcasting acute stress following the Boston Marathon bombings. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014;111(1):93–98. doi:10.1073/pnas.1316265110(PMID: 24324161)
  2. Thompson RR, Jones NM, Holman EA, Silver RC. Media exposure to mass violence events can fuel a cycle of distress. Sci Adv. 2019;5(4):eaav3502. doi:10.1126/sciadv.aav3502
  3. 重村 淳、新井陽子、黒澤美枝.惨事報道の視聴とメンタルヘルス.日本トラウマティック・ストレス学会、2022年3月3日公開.
  4. 日本循環器学会・日本心臓病学会・日本高血圧学会.災害時循環器疾患の管理・予防に関するガイドライン(循環器病ガイドシリーズ2014年度版).2015年3月.
  5. Kario K, Matsuo T, Kobayashi H, Yamamoto K, Shimada K. Earthquake-induced potentiation of acute risk factors in hypertensive elderly patients: possible triggering of cardiovascular events after a major earthquake. J Am Coll Cardiol. 1997;29(5):926–933. doi:10.1016/S0735-1097(97)00002-8(PMID: 9120177)
  6. Kario K, Ohashi T. Increased coronary heart disease mortality after the Hanshin-Awaji earthquake among the older community on Awaji Island. J Am Geriatr Soc. 1997;45(5):610–613./Kario K. Disaster hypertension: its characteristics, mechanism, and management. Circ J. 2012;76(3):553–562.
  7. 野村泰之、鴫原俊太郎、池田稔.「地震後めまい症候群」に関する研究.日本大学医学部総合医学研究所紀要 2014;2:36–38.
  8. 厚生労働省.こころの健康相談統一ダイヤル.(2026年7月28日閲覧)
  9. 気象庁.地震情報(2026年7月28日16時27分 熊本県熊本地方 M7.1 最大震度7)/津波情報.(2026年7月28日閲覧)

本コラムは、一般の方向けに医学情報を分かりやすくお伝えすることを目的としています。個々の症状の診断・治療方針は、必ず主治医にご相談ください。掲載内容は2026年7月28日時点の情報に基づいています。地震の被害状況・避難情報は刻々と変わりますので、最新情報は気象庁および各自治体の発表をご確認ください。
文責:医療法人ふくろうの樹 ふくろう訪問クリニック 院長 植松 正和