セツキシマブとパニツムマブ:優秀な抗がん剤

優秀な抗がん剤第24回/全50回
セツキシマブとパニツムマブ

皮疹が出る人ほど効く、大腸がんの抗体薬

細胞の表面にある「増えろ」の受け皿をふさぐ抗体は、インサイダー事件で評判を落としながら、試験の数字で薬になりました。そして2008年、思いがけないことが分かります。がんの遺伝子「RAS」に変異がある人には、まったく効かない。 「効かない人には使わない」ための遺伝子検査が世界で初めて標準になった経緯、ニキビのような皮疹が「効いている印」である理由、牛肉アレルギーと点滴反応の関係、1回15〜22万円の薬代と高額療養費まで書きます。

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この回の結論

  1. セツキシマブとパニツムマブは、細胞の表面にある「増えろ」の受け皿(EGFR)をふさぐ抗体です。前者はマウスと人のキメラ型で2008年、後者は全部が人の型で2010年に日本で承認され、大腸がんと頭頸部がんに使われます。
  2. 大腸がんでは、がんの遺伝子「RAS」に変異があると効きません。この発見で、「効かない人には使わない」ための遺伝子検査が世界で初めて標準になりました。RAS野生型の人では、生存が数か月延びます。
  3. 副作用はニキビのような皮疹がほぼ全員に出ます。皮疹が強い人ほど効く傾向があり、保湿と日焼け対策で乗り切ります。薬価は1回15〜22万円と高く、高額療養費の上限に届きます。

この薬のプロフィール

一般名(商品名)セツキシマブ(アービタックス注射液)、パニツムマブ(ベクティビックス点滴静注)
薬の家族分子標的薬(抗EGFRモノクローナル抗体。セツキシマブはキメラ型、パニツムマブは完全ヒト型)
主に使うがんRAS遺伝子野生型の進行・再発の大腸がん(一次治療からFOLFOXやFOLFIRIと組む、後半は単独でも)、頭頸部がん(セツキシマブ。放射線や化学療法と組む)
使い方点滴。セツキシマブは週1回または2週ごと、パニツムマブは2週ごと。初回はゆっくり、点滴中の反応を見張る
日本での承認セツキシマブ2008年7月(大腸がん)、2012年頭頸部がん。パニツムマブ2010年4月(大腸がん)
薬価の目安アービタックス500mg 96,687円、100mg 20,171円。ベクティビックス400mg 223,997円、100mg 53,386円(薬価基準、令和8年8月13日適用)

SECTION 01 生まれた日:受け皿をふさぐ抗体と、スキャンダル

細胞の表面には、成長因子を受け取る受け皿(EGFR)があり、多くのがんで数が増えています。1980年代、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校のメンデルソーンと佐藤純一は、この受け皿をふさぐマウスの抗体を作りました。 「受け皿をふさげば、がんは増えろの合図を受け取れない」。第22回のHER2と同じ発想を、より広いがんに向けたものです。

この抗体をキメラ型にして薬にしようとしたのが、米国のベンチャー企業イムクローンでした。2001年、同社は承認申請の不備で米国当局に受理を拒まれ、経営者が事前にそれを知って株を売った疑いで逮捕されます。 著名な実業家マーサ・スチュワートまで巻き込んだこの事件で、薬の評判は地に落ちました。それでも2004年、大腸がんの比較試験で効き目が示され、米国で承認されます。薬に罪はありませんでした。

  • 1980年代メンデルソーンと佐藤が、EGFRをふさぐマウス抗体を作る。
  • 2001年イムクローン社の承認申請が受理されず、インサイダー取引事件に。
  • 2004年イリノテカンが効かなくなった大腸がん329人で、セツキシマブを足すと腫瘍が縮む人が増えると証明。米国で承認。
  • 2006年頭頸部がんで、放射線に足すと生存が延びると報告。全部が人の型のパニツムマブが米国で承認。
  • 2008年KRAS遺伝子に変異がある大腸がんには効かないことが、複数の試験で判明。「効かない人を検査で除く」時代の始まり。7月、日本でセツキシマブ承認。
  • 2010年4月、日本でパニツムマブ承認。2012年、セツキシマブに頭頸部がんが加わる。2013年、KRAS以外のRAS変異でも効かないと分かり、検査の範囲が広がる。
RAS遺伝子は、EGFRの受け皿から細胞の中へ「増えろ」を伝える中継の遺伝子です。ここに変異があると、受け皿をふさいでも中継が勝手に合図を出し続けるので、この薬は効きません。 大腸がんの約半数にRAS変異があります。RASそのものを狙う薬の話は第33回で扱います。
ここだけ覚える受け皿をふさぐ抗体。事件で評判を落としても、試験の数字が薬を守った。

SECTION 02 どうやって効くのか:ふさぐ。ただし中継が壊れていたら無駄

セツキシマブとパニツムマブは、EGFRの受け皿に成長因子より強く結びつき、合図を止めます。セツキシマブは免疫細胞を呼ぶ働きも持ちます。 ただし、受け皿の下流にある中継(RAS)に変異があると、合図は受け皿と関係なく出続けます。だから、使う前にがんの組織でRASの変異を調べ、変異のない人(野生型)にだけ使います。

  • 皮膚にも同じ受け皿があるEGFRは皮膚や毛穴、爪の細胞にも多く、それをふさぐので、ニキビのような皮疹、皮膚の乾燥、爪の周りの炎症が出ます。効き目と同じ仕組みの副作用です。
  • 皮疹が出る人ほど効く複数の試験で、皮疹が強く出た人ほど生存が長い傾向が報告されています。皮疹は「薬が届いている印」と考えられ、量を減らさずに皮膚の手当てで続けることが勧められます。
  • キメラ型と完全ヒト型セツキシマブはマウスの部分が残るため、点滴中のアレルギー反応が出やすく、牛肉アレルギーやマダニに咬まれた歴のある人で重い反応が報告されています。パニツムマブは全部が人の型で、反応は少なめです。
ここだけ覚える効く相手は検査で決める。皮疹は効いている印。牛肉アレルギーは伝える。

SECTION 03 なぜこんなに使われるのか:「効かない人を除く」を初めて標準にした

決め手になった試験

2008年、化学療法が効かなくなった大腸がんでセツキシマブと支持療法だけを比べた試験の解析で、KRASに変異のない人では生存期間が4.8か月から9.5か月に延びる一方、変異のある人ではまったく延びませんでした(Karapetis ら、NEJM 2008、394人)。 同じ年、パニツムマブでも変異のない人だけに効くと報告され(Amado ら、J Clin Oncol 2008)、翌年には一次治療でFOLFIRIにセツキシマブを足す試験(1,198人)でも、利益はKRAS野生型に限られました(Van Cutsem ら、NEJM 2009)。

2013年には、KRAS以外のRAS変異も同じであることが分かり、RAS野生型の512人ではパニツムマブをFOLFOXに足すと生存期間が20.2か月から26.0か月に延びました(Douillard ら、NEJM 2013)。 頭頸部がんでは、放射線にセツキシマブを足すと生存期間が29.3か月から49.0か月に延びています(Bonner ら、NEJM 2006、424人)。

場面使い方決め手になった試験
RAS野生型の大腸がん、一次治療FOLFOX/FOLFIRI(第14・15回)に足す。左側の大腸がんで特にVan Cutsem 2009、Douillard 2013(生存20.2→26.0か月)
RAS野生型の大腸がん、後半単独、またはイリノテカンとCunningham 2004、Karapetis 2008(生存4.8→9.5か月)
頭頸部がん(局所進行)放射線とセツキシマブBonner 2006(生存29.3→49.0か月)
頭頸部がん(再発・転移)白金製剤・5-FUとセツキシマブEXTREME試験。いまは免疫チェックポイント阻害薬(第40回)が先
KRAS G12C変異の大腸がんソトラシブとパニツムマブ(2025年承認)第33回で扱う

表1 抗EGFR抗体の主な使われ方(添付文書と学会ガイドラインによる)。RAS野生型でも、大腸の右側(盲腸〜横行結腸)にできたがんでは効きが弱く、ベバシズマブ(第23回)が選ばれやすい。

制度のしくみ

セツキシマブの添付文書の対象は「RAS遺伝子野生型の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」と「頭頸部癌」、パニツムマブは「KRAS遺伝子野生型の〜結腸・直腸癌」と、2025年に加わった「KRAS G12C変異陽性の〜結腸・直腸癌(ソトラシブと併用)」です。 RASの検査は保険で受けられ、大腸がんの治療を始める前に調べるのが標準です。

ここだけ覚える効く人と効かない人が、遺伝子1つで分かれた。検査してから使う、が当たり前になった。

SECTION 04 副作用と、家でできること:皮疹、爪、下痢、マグネシウム

添付文書では、セツキシマブで発疹45%、ざ瘡様皮膚炎44.5%、重度の皮膚症状18.8%、低マグネシウム血症8.2%、重い点滴反応0.8%、間質性肺疾患0.2%。パニツムマブでは単独投与でかゆみ・紅斑67%、ざ瘡様皮膚炎60%、低マグネシウム血症22%、重度の下痢12%、間質性肺疾患0.6%です。

副作用と、家でできること

皮疹は点滴の1〜2週間後に顔・胸・背中に出ます。治療の初日から、朝晩の保湿、日焼け止め、刺激の少ない洗顔。多くの病院で、抗菌薬の飲み薬とステロイドの塗り薬を最初から使います(がん情報サービス「皮膚のトラブル」)。 膿を持って痛む、広がる、熱を伴う、は感染の合図です。爪の周りの腫れは、深爪をせず、締めつけない靴で。

下痢は組んでいる殺細胞薬(第15回)と重なります。マグネシウムの低下は血液検査で見つけ、点滴や飲み薬で補います。だるさ、けいれん、しびれが合図です。 点滴中の反応は初回に病院で見張ります。セツキシマブは点滴後1時間以内、まれに数時間後にも出ます。

  • こんなときは点滴中〜帰宅後数時間に、息苦しさ、じんましん、血圧低下、意識が遠のく
    こうする重い点滴反応。病院ならその場で、帰宅後なら救急に電話する
  • こんなときは皮疹に膿がたまって痛い、赤みが広がる、熱が出た
    こうする皮膚の感染のことがある。その日のうちに病院へ連絡する
  • こんなときは強いだるさ、手足のけいれん・つり、しびれ、動悸
    こうするマグネシウムやカリウムの低下のことがある。早めに受診して血液検査を受ける
気をつけること

牛肉などの赤肉にアレルギーがある人、マダニに咬まれたことのある人は、セツキシマブで重いアレルギーが出ることがあり、必ず伝えます。 間質性肺炎のある人、パニツムマブで重い点滴反応が出た人は使えません。皮疹があっても日焼けを避ければ外出は構いません。妊娠中は使えません。

在宅の現場では

顔の皮疹は、ご本人にとって見た目の負担が大きい副作用です。「効いている印」と伝えると、受け止め方が変わる方が多いです。保湿剤を朝晩、洗面所とベッド脇の両方に置いてもらいます。 爪の周りの炎症は、靴下と靴を見直すだけで楽になることがあります。

訪問のたびに、ふくらはぎのつりやだるさを聞きます。マグネシウムの低下は自覚しにくく、血液検査でしか分からないからです。

ここだけ覚える皮疹は初日から保湿と日焼け止め。膿と熱は感染。だるさとつりは採血。

SECTION 05 薬価と自己負担:1回15〜22万円、高額療養費の上限へ

薬価と自己負担の目安

アービタックス注射液は500mgが96,687円、100mgが20,171円。2週ごとの量(体表面積1平方メートルあたり500mg、およそ800mg)なら1回約15万7千円。 ベクティビックス点滴静注は400mgが223,997円、100mgが53,386円。2週ごとの量(体重1kgあたり6mg、55kgでおよそ330mg)なら400mg1瓶で約22万4千円です(薬価基準、令和8年8月13日適用)。

月2回で30〜45万円、FOLFOXやFOLFIRIの分が加わります。3割負担なら月10万円を超え、高額療養費の上限に届きます。70歳未満・年収約370〜770万円なら月85,800円+1%、4か月目からは44,400円。70歳以上・一般なら外来22,000円です(第1回の表1)。 どちらもバイオシミラーはまだありません。

重度のinfusion reactionが発現し、死亡に至る例が報告されている。症状としては、気管支痙攣、蕁麻疹、低血圧、意識消失、ショックがあらわれ、心筋梗塞、心停止も報告されている。これらの症状は本剤の初回投与中又は投与終了後1時間以内に観察されているが、投与数時間後又は2回目以降の本剤投与でも発現することがあるので、患者の状態を十分に確認しながら慎重に投与すること。 出典:メルクバイオファーマ「アービタックス注射液 添付文書」、警告の項
ここだけ覚える月30〜45万円の薬。だからこそ「効かない人に使わない」検査に意味がある。
在宅医の視点

「効かない人に使わない」ことも、薬の進歩。

薬の歴史は「効く薬を作る」話が多いのですが、この2剤の最大の貢献は「効かない人を前もって見分けた」ことです。 月30万円を超える薬を、効かないと分かっている半数の人に使わずにすむ。皮疹だけ出て効かない、という最悪の結果を避けられる。RASの検査は、患者さんと保険財政の両方を守っています。

在宅で皮疹の手当てをしながら思うのは、副作用が「効いている印」と重なる薬の難しさです。つらい皮疹を我慢してもらうのではなく、手当てで軽くしながら続ける。その手当ての質が、この薬の成績を左右します。

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Q&A よくある質問

Q「RASに変異がある」と言われました。この薬は一生使えないのですか。
ARASの変異はがんの細胞の性質なので、基本的に変わりません。抗EGFR抗体は効かないため使いませんが、代わりにベバシズマブ(第23回)を組む治療が標準です。また、変異の型がKRAS G12Cなら、その変異を狙う飲み薬ソトラシブとパニツムマブを組む治療が2025年に承認されました(第33回)。「使えない」ではなく「別の道がある」と考えてください。
Q顔の皮疹がひどくて、人に会うのがつらいです。薬を減らせますか。
A皮疹の強さは効き目と結びついていることが多いので、まずは手当てを強めて続ける方向で相談します。抗菌薬の飲み薬、ステロイドの塗り薬、保湿と日焼け止めで、多くの人は続けられる程度になります。それでも重い場合は、休薬や減量の決まりが添付文書にあり、主治医が判断します。皮膚科に紹介してもらうのも一つです。
Qセツキシマブとパニツムマブは、どちらがよいのですか。
A大腸がんでの効き目に大きな差はなく、直接比べた試験でも同等でした。違いは、セツキシマブは週1回も可能で頭頸部がんにも使え、点滴反応がやや多いこと。パニツムマブは2週ごとで反応が少なく、皮疹と低マグネシウムがやや多いことです。牛肉アレルギーやマダニの歴がある人はパニツムマブが選ばれます。値段は1回あたりパニツムマブのほうが高めです。

この回のチェックリスト(第24回ぶん)

  • RASの検査結果(野生型/変異型)をお薬手帳に書いた。
  • 治療初日から、朝晩の保湿と日焼け止めを始めた。抗菌薬・塗り薬の使い方を確かめた。
  • 牛肉アレルギーとマダニに咬まれた歴を主治医に伝えた。
  • 皮疹の膿・熱、だるさ・けいれんは、待たずに連絡する。
  • 高額療養費の区分と限度額を確かめた。

この回に関連する記事

連載の外にある、ふくろう訪問クリニックのコラムです。この回の内容をさらに掘り下げたいときに読んでください。

連載「優秀な抗がん剤」全50回

  1. 抗がん剤80年の歴史——毒ガスから「自分の細胞」まで、80年でここまで来た
  2. シクロホスファミド——毒ガスの研究から生まれた、最初の抗がん剤
  3. メトトレキサート——白血病の子どもに、初めて「寛解」をもたらした薬
  4. フルオロウラシル(5-FU)——60年以上、消化器がんの土台であり続ける理由
  5. ビンクリスチン——糖尿病の薬を探していたら、白血病の薬が見つかった
  6. ドキソルビシン——アドリア海の土から生まれた「赤い薬」と、心臓の話
  7. シスプラチン——電極の実験の偶然が、精巣がんを「治る病気」に変えた
  8. カルボプラチン——腎臓と吐き気にやさしく設計された、シスプラチンの「弟」
  9. パクリタキセル——イチイの木を切り尽くす前に、葉から作れるようになるまで
  10. ドセタキセル——前立腺がんで初めて「延命」を証明した化学療法
  11. ゲムシタビン——抗ウイルス薬の候補が、膵がんの標準治療になるまで
  12. ペメトレキセド——蝶の羽の色素の研究から生まれた、肺がんと中皮腫の薬
  13. テモゾロミド——脳腫瘍の治療を変えた、家で飲める抗がん剤
  14. オキサリプラチン——名古屋で生まれ、フランスで育ち、日本に帰ってきた薬
  15. イリノテカン——中国の木の成分を、日本の乳酸菌の会社が薬にした
  16. S-1(ティーエスワン)——日本生まれの「飲む5-FU」が、世界の標準を変えた
  17. タモキシフェン——避妊薬の失敗作が、世界で最も使われた乳がんの薬になった
  18. アロマターゼ阻害薬——「女性ホルモンを作らせない」という発想の乳がん治療
  19. リュープロレリン——武田薬品の徐放製剤が変えた、前立腺がんのホルモン療法
  20. エンザルタミドとアビラテロン——前立腺がんのホルモン療法に「上乗せ」する時代へ
  21. リツキシマブ——世界初のがん抗体医薬。CHOPに「R」がついて何が変わったか
  22. トラスツズマブ——HER2という「敵の印」を初めて狙い撃ちした薬
  23. ベバシズマブ——「がんは血管を呼ぶ」という仮説から、30年かけて薬になった
  24. セツキシマブとパニツムマブ——皮疹が出る人ほど効く、大腸がんの抗体薬
  25. ゾルベツキシマブ——胃の細胞の「接着剤」を狙う、2024年の新しい胃がんの薬
  26. イマチニブ——「魔法の弾丸」が、死の病だった白血病を飲み薬で抑えた
  27. オシメルチニブ——イレッサの光と影から、第3世代の肺がんの薬へ
  28. アレクチニブ——自治医大の発見を中外製薬が薬にした、純国産の肺がん治療薬
  29. レンバチニブ——エーザイの研究所から生まれた、肝がん・甲状腺がんの飲み薬
  30. エベロリムス——イースター島の土から見つかった成分の子孫
  31. CDK4/6阻害薬——お蔵入り寸前の化合物が、乳がんのホルモン療法を変えた
  32. オラパリブ——「合成致死」という発想と、BRCA遺伝子検査
  33. RASの40年——「薬にできない」と言われた標的に、ソトラシブからダラクソンラシブへ
  34. レナリドミド——サリドマイド薬害から復活した、骨髄腫の薬
  35. ダラツムマブ——点滴8時間が皮下注5分になった、骨髄腫の抗体薬
  36. ベネトクラクス——「細胞の自殺」を止めるタンパクを外す、高齢者の白血病の薬
  37. トレチノインと亜ヒ酸——ビタミンAの仲間と「毒」が、最も治る白血病を作った
  38. イピリムマブ——免疫の「ブレーキ」を外す最初の薬と、ノーベル賞
  39. ニボルマブ(オプジーボ)——本庶佑のPD-1と、薬価をめぐる騒動
  40. ペムブロリズマブ(キイトルーダ)——開発中止寸前だった薬が、世界一売れる薬になった
  41. アテゾリズマブ+ベバシズマブ——肝がんの一次治療を10年ぶりに変えた組み合わせ
  42. 二重特異性抗体——片手でがん、片手で免疫細胞をつかむ薬
  43. CAR-T細胞療法——6歳の少女を救った「自分の免疫細胞を薬にする」治療
  44. mRNAがんワクチン——コロナワクチンの技術で、患者ごとに作る「オーダーメイド」
  45. トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)——第一三共の「がんに薬を運ぶミサイル」
  46. エンホルツマブ ベドチンとADC——40年続いたシスプラチンの時代を終わらせた薬
  47. ルテチウム-177——「診断と治療を同じ分子で」放射線を出す薬が家に帰るとき
  48. がん遺伝子パネル検査——56万円で数百の遺伝子を読み、薬にたどり着くのは約1割
  49. 臓器横断的な薬——「臓器ではなく遺伝子で」薬を選ぶ時代
  50. リキッドバイオプシー——血液でがんの遺伝子を追い、再発の芽を見る

薬のこと・お金のことの相談先

電話番号や制度の内容は変わることがあります。最新の内容は各ページでご確認ください。治療中の方も、治療を終えた方も、ご家族だけでも相談できます。

  • 治療を受けている病院の外来・化学療法室副作用が出たとき、まず連絡する先です。夜間や休日の連絡先は、治療の説明書や「治療日誌」に書かれていることが多いので、目につく場所に貼っておいてください。
  • がん相談支援センター治療や薬のこと、お金や仕事のことを無料で相談できます。県内すべてのがん拠点病院にあり、その病院にかかっていなくても利用できます/福岡県「福岡県内のがん拠点病院がん相談支援センター」
  • がん情報サービス(国立がん研究センター)がんの種類ごとの標準治療と、使われる薬の情報を、公的機関がまとめています/ganjoho.jp
  • くすりのしおり(くすりの適正使用協議会)処方された薬の飲み方・注意・副作用を、薬の名前で調べられる患者向けの情報です/rad-ar.or.jp/siori
  • 高額療養費制度の窓口(加入している健康保険)1か月の自己負担に上限を設ける制度です。会社の健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の国民健康保険・後期高齢者医療広域連合など、保険証(資格確認書)に書かれた保険者に申請します。マイナ保険証を使えば、窓口での支払いが最初から上限額までになります/厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
  • かかりつけ薬局の薬剤師飲み薬の抗がん剤と、ほかの薬・サプリメント・食べ物との飲み合わせは、薬局で確かめられます。お薬手帳を1冊にまとめておくと早いです。

REFERENCE 参考資料

  1. メルクバイオファーマ「アービタックス注射液100mg・500mg 添付文書」(販売開始2008年9月)(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/380079_4291415A1021_1_18)、同 医薬品インタビューフォーム(開発の経緯:2008年7月日本承認、2010年3月一次治療、2012年12月頭頸部癌、2019年9月RAS野生型へ変更)
  2. 武田薬品工業「ベクティビックス点滴静注100mg・400mg 添付文書」(販売開始2010年6月)(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/400256_4291417A1020_1_17)、同 医薬品インタビューフォーム(開発の経緯:XenoMouse技術、2010年4月日本承認、2025年9月KRAS G12C変異陽性追加)
  3. 厚生労働省「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和8年8月13日適用)」(https://www.mhlw.go.jp/topics/2026/04/tp20260401-01.html
  4. Cunningham D, et al. Cetuximab monotherapy and cetuximab plus irinotecan in irinotecan-refractory metastatic colorectal cancer. N Engl J Med. 2004;351(4):337-345(https://doi.org/10.1056/NEJMoa033025
  5. Bonner JA, et al. Radiotherapy plus cetuximab for squamous-cell carcinoma of the head and neck. N Engl J Med. 2006;354(6):567-578(https://doi.org/10.1056/NEJMoa053422
  6. Karapetis CS, et al. K-ras mutations and benefit from cetuximab in advanced colorectal cancer. N Engl J Med. 2008;359(17):1757-1765(https://doi.org/10.1056/NEJMoa0804385);Amado RG, et al. Wild-type KRAS is required for panitumumab efficacy in patients with metastatic colorectal cancer. J Clin Oncol. 2008;26(10):1626-1634(https://doi.org/10.1200/JCO.2007.14.7116
  7. Van Cutsem E, et al. Cetuximab and chemotherapy as initial treatment for metastatic colorectal cancer. N Engl J Med. 2009;360(14):1408-1417(https://doi.org/10.1056/NEJMoa0805019
  8. Douillard JY, et al. Panitumumab-FOLFOX4 treatment and RAS mutations in colorectal cancer. N Engl J Med. 2013;369(11):1023-1034(https://doi.org/10.1056/NEJMoa1305275
  9. 国立がん研究センター がん情報サービス「皮膚のトラブル」2025年7月4日更新(https://ganjoho.jp/public/support/condition/skin/index.html)、「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療」2025年3月24日更新(https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/treatment.html)、「下咽頭がん 治療」2026年2月27日更新(https://ganjoho.jp/public/cancer/hypopharynx/treatment.html
本記事は、添付文書・学術論文・公的機関の資料をもとに、それぞれの薬について現時点で分かっていることを、 一般の方向けに整理したものです。記事中の効果の数字は臨床試験に参加した集団の結果であり、 一人ひとりの効き方や副作用の現れ方とは異なります。薬価は記載時点の薬価基準によるもので、改定で変わります。 治療の選択・変更・中止は、必ず主治医とご相談ください。研究は日々更新されますので、 記載の内容は公開時点のものとしてお読みください。