肝がんの一次治療を10年ぶりに変えた組み合わせ
肝細胞がんの薬は、2009年にソラフェニブが承認されてから10年以上、初回治療でそれを超える薬がありませんでした。免疫の薬も単独では勝てませんでした。2020年、ブレーキの「相手側」をふさぐ抗体と、血管を止める抗体を組んだ治療が、初めてソラフェニブに勝ちます。 血管を止める薬が免疫の「入り口」を開ける仕組み、死亡のリスクを42%減らした501人の試験、免疫を含む3つの初回治療から選ぶ時代、治療の前に胃カメラで静脈瘤を手当てする理由、家で見る血圧・便の色・むくみ、そして3週間で約69万円の薬代とバイオシミラーの話まで書きます。
この回の結論
- 肝細胞がんの薬は、2009年にソラフェニブが承認されてから10年以上、生存を延ばす新しい治療が出ませんでした。2020年、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブと、血管を止める抗体ベバシズマブ(第23回)の組み合わせが、ソラフェニブに対して死亡のリスクを42%減らし、初回治療を12年ぶりに変えました。
- アテゾリズマブは PD-1 の相手側(PD-L1)をふさぐ抗体で、肺がん・小細胞肺がん・乳がんでも使われます。ベバシズマブは血管を止めるだけでなく、がんの中で免疫を抑えている状態を解くはたらきがあり、2つを足すと免疫の薬が「効きにくい」肝がんに効くようになりました。
- 副作用は、免疫の薬のもの(第38〜40回)に、ベバシズマブの出血・高血圧・尿の蛋白が重なります。肝硬変のある人は食道に静脈瘤があることが多く、治療の前に胃カメラで静脈瘤を確かめて手当てするのは、そのためです。薬代は3週間で約69万円(体重60kg)です。
この薬のプロフィール
| 一般名(商品名) | アテゾリズマブ(テセントリク点滴静注)+ベバシズマブ(アバスチン点滴静注用、バイオシミラーあり) |
|---|---|
| 薬の家族 | アテゾリズマブは免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1抗体)。ベバシズマブは血管新生阻害薬(抗VEGF抗体) |
| 主に使うがん | この組み合わせは切除できない肝細胞がん(初回治療)。アテゾリズマブ単独や殺細胞薬との併用で、非小細胞肺がん(進行・術後)、小細胞肺がん、乳がん(トリプルネガティブ)、胸腺がん、胞巣状軟部肉腫、NK/T細胞リンパ腫 |
| 使い方 | 点滴。アテゾリズマブ1200mgとベバシズマブ体重1kgあたり15mgを、3週間ごと。アテゾリズマブ単独では1200mgを3週間ごと、または1680mgを4週間ごと |
| 日本での承認 | アテゾリズマブ 2018年1月(肺がん)、2019年8月 小細胞肺がん、2020年9月 肝細胞がん(ベバシズマブ併用)、2022年5月 肺がんの術後補助療法。ベバシズマブは2007年(第23回) |
| 薬価の目安 | テセントリク点滴静注1200mg 563,917円、840mg 445,699円。アバスチン点滴静注用400mg 56,525円、100mg 15,049円(バイオシミラーは400mg 約22,000円、100mg 約6,000円)(薬価基準、令和8年8月13日適用) |
SECTION 01 生まれた日:ブレーキの「相手側」をふさぐ抗体と、12年ぶりの肝がんの薬
第39回で書いたように、T細胞のブレーキ PD-1 は、がん細胞の PD-L1 という「手」で押されます。ニボルマブとペムブロリズマブはブレーキ側(PD-1)をふさぐ薬でした。米国ジェネンテック(ロシュの子会社)は、手の側(PD-L1)をふさぐ抗体を作ります。 2014年、277人の第1相試験で、がんの中の免疫細胞に PD-L1 が多い人ほど効くと報告されました(Herbst ら、Nature 2014)。2016年5月、米国で膀胱がんに承認。世界初の抗PD-L1抗体でした。
日本では2018年1月19日、殺細胞薬のあとに進行した非小細胞肺がんで承認され、4月に発売されました(テセントリクのインタビューフォーム)。1,225人の試験で、ドセタキセル(第10回)に対して生存期間の中央値を9.6か月から13.8か月に延ばした結果によるものです(Rittmeyer ら、Lancet 2017)。 同じ年、この薬とベバシズマブ(第23回)と殺細胞薬を組んだ肺がんの試験で、ベバシズマブを足すと免疫の薬がよく効くことが見えてきます(Socinski ら、NEJM 2018)。血管を止める薬が、免疫の薬を助ける。この発見が、次の舞台を肝臓に移しました。
肝細胞がんの薬は、2008年にソラフェニブが生存期間を7.9か月から10.7か月に延ばして以来(Llovet ら、NEJM 2008)、10年以上、初回治療でそれを超える薬がありませんでした。免疫の薬も単独では負けていました。 2020年、アテゾリズマブとベバシズマブの組み合わせが、ソラフェニブに対して死亡のリスクを42%減らします(Finn ら、NEJM 2020)。日本は同年9月25日に承認。肝がんの初回治療が、12年ぶりに変わりました。
- 2008年ソラフェニブが、肝細胞がんで初めて生存を延ばす(Llovet ら、NEJM 2008)。翌年、日本で承認。
- 2014年抗PD-L1抗体の第1相試験。免疫細胞の PD-L1 が効きやすさの目安(Herbst ら、Nature 2014)。
- 2016年5月、米国で膀胱がんに承認。世界初の抗PD-L1抗体。
- 2018年1月19日、日本で肺がんに承認。同年、ベバシズマブと組むと免疫の薬がよく効くと報告(Socinski ら、NEJM 2018)。小細胞肺がんで30年ぶりの前進(Horn ら、NEJM 2018)。
- 2020年肝細胞がんで、ソラフェニブに対して死亡のリスク42%減(Finn ら、NEJM 2020)。9月25日、日本で承認。
- 2022年免疫の薬2つを組む治療(デュルバルマブ+トレメリムマブ)も肝細胞がんに承認(12月)。肺がんの術後補助療法にも承認(5月)。
- 2025年ニボルマブ+イピリムマブ(第38・39回)が肝細胞がんに承認(6月)。4週間ごとの1680mgが承認(9月)。
SECTION 02 どうやって効くのか:血管を止める薬が、免疫の薬を助ける
アテゾリズマブは、がん細胞と免疫細胞の表面にある PD-L1 に結びつき、T細胞のブレーキを押せなくします。効き方はニボルマブ・ペムブロリズマブとほぼ同じで、副作用の顔ぶれも同じです。 ベバシズマブは、がんが血管を呼ぶ物質(VEGF)をつかまえる抗体です(第23回)。この VEGF には、血管を作らせるほかに、がんの中の免疫を眠らせるはたらきがあることが分かってきました。
- VEGF は免疫を眠らせるVEGF が多いがんの中では、攻撃役のT細胞が入りにくく、抑え役の免疫細胞が増え、がんを見つける役の細胞(樹状細胞)が育ちません。ベバシズマブで VEGF をつかまえると、この眠りが解け、T細胞が中に入れるようになります。
- そこにブレーキ外しを足す中に入ったT細胞のブレーキを、アテゾリズマブが押せなくします。「入り口を開ける薬」と「ブレーキを外す薬」の組み合わせです。肝細胞がんは VEGF が特に多いがんで、免疫の薬単独ではソラフェニブに勝てませんでしたが、組み合わせると勝ちました。
- 副作用は2つぶん免疫の薬の副作用(下痢、肺炎、内分泌、皮膚)に、ベバシズマブの副作用(出血、高血圧、尿の蛋白、傷の治りの遅れ、血栓)が重なります。肝硬変の人は出血しやすいので、静脈瘤の手当てが治療の前提です(第4節)。
SECTION 03 なぜ初回治療を変えたのか:ソラフェニブに勝った最初の治療
2020年、手術や局所治療ができない肝細胞がんで、肝臓の働きが保たれている(Child-Pugh A)501人(日本人61人を含む)を、くじ引きで「アテゾリズマブ+ベバシズマブ」336人と「ソラフェニブ」165人に分けました。 死亡のリスクは42%減り、1年生存率はソラフェニブ54.6%に対して67.2%。無増悪生存期間の中央値は4.3か月に対して6.8か月でした(Finn ら、NEJM 2020)。生活の質が悪くなるまでの期間も、組み合わせのほうが長いという結果でした。
追加の追跡では、生存期間の中央値がソラフェニブ13.4か月に対して19.2か月(Cheng ら、J Hepatol 2022)。肝細胞がんの初回治療で、生存中央値が1年半を超えた最初の治療でした。 その後、免疫の薬2つを組む治療(デュルバルマブ+トレメリムマブ、1,324人、死亡リスク22%減。Abou-Alfa ら、NEJM Evid 2022)と、ニボルマブ+イピリムマブ(668人、生存中央値20.6→23.7か月。Yau ら、Lancet 2025)も初回治療に加わり、肝がんの初回治療は「免疫の薬を含む3つの選択肢」から選ぶ時代になりました。
肺がんでも、この薬は小細胞肺がん(進展型)で、殺細胞薬に足すと生存期間の中央値を10.3か月から12.3か月に延ばし(Horn ら、NEJM 2018)、30年ぶりに小細胞肺がんの初回治療を変えました。
| 場面 | 使い方 | 決め手になった試験 |
|---|---|---|
| 切除できない肝細胞がん、初回(肝臓の働きが保たれている人) | アテゾリズマブ+ベバシズマブ。静脈瘤の手当てが前提 | IMbrave150(Finn 2020・Cheng 2022、生存13.4→19.2か月) |
| 同上、ベバシズマブが使いにくい人(出血しやすい、血栓の病気など) | デュルバルマブ+トレメリムマブ、または ニボルマブ+イピリムマブ、または レンバチニブ(第29回) | HIMALAYA(Abou-Alfa 2022)、CheckMate 9DW(Yau 2025)、REFLECT(Kudo 2018) |
| 進展型小細胞肺がん、初回 | カルボプラチン+エトポシドと併用4回、そのあと単独 | IMpower133(Horn 2018、生存10.3→12.3か月) |
| 非小細胞肺がん(進行、術後補助) | 単独、または殺細胞薬(+ベバシズマブ)と併用。術後は PD-L1 陽性で12か月 | OAK(Rittmeyer 2017)、IMpower150(Socinski 2018)、IMpower010 |
| 乳がん(トリプルネガティブ、PD-L1 陽性) | 840mgを2週間ごと、ナブパクリタキセル(第9回)と併用 | IMpassion130 |
表1 アテゾリズマブの主な使われ方(添付文書と主な試験による)。肝細胞がんの初回治療は、2026年9月時点で免疫の薬を含む3つの組み合わせから選ぶ。
添付文書の肝細胞がんの効能は「切除不能な肝細胞癌」で、ベバシズマブとの併用が条件です。試験は肝臓の働きが保たれた人(Child-Pugh A)で行われたので、肝臓の働きが落ちている人(Child-Pugh B・C)での効果と安全性は確立していません。 肺がんで単独で使うときは PD-L1 の検査で対象を決め、術後補助療法は PD-L1 陽性の人に12か月まで。2025年9月から、単独投与では4週間ごとの1680mgも選べます。
SECTION 04 副作用と、家でできること:胃カメラで静脈瘤を見てから始める理由
アテゾリズマブの添付文書では、間質性肺疾患3.0%、甲状腺機能低下8.0%、大腸炎1.1%、点滴中の反応2.6%、疲労14.7%。肝細胞がんの試験で2剤を受けた329人では、副作用が83.9%にあり、多いものは高血圧23.7%、尿の蛋白18.8%、疲労15.2%でした。 ベバシズマブの添付文書では、出血19.3%(鼻出血15.0%、消化管出血1.9%、肺出血1.2%、脳出血0.1%)、消化管穿孔、傷の治りの遅れ、動脈の血栓(脳梗塞・心筋梗塞)、高血圧性の脳症が警告に記されています。
肝硬変のある人の多くは、食道や胃に静脈瘤を持っています。ベバシズマブは出血のリスクを高めるので、決め手になった試験では、治療前6か月以内の胃カメラで静脈瘤を確かめ、出血しやすい静脈瘤は内視鏡で手当てしてから薬を始めました。日本でも同じ手順が標準です。「がんの薬なのに、なぜ胃カメラ」と思われますが、これが命を守る順番です。
家で見るのは3つです。血圧を毎日測り、いつもより20以上高い日が続けば連絡する。出血(黒い便、吐血、止まらない鼻血、血痰)は静脈瘤や腫瘍からの出血の合図で、すぐ受診。むくみと尿の泡立ちは尿の蛋白の合図で、採尿で確かめます。 これに、免疫の薬の副作用(下痢、息切れ、疲れ、のどの渇き。第38〜40回)が重なります。肝臓の病気による疲れと、甲状腺・副腎による疲れは、採血でないと区別できません。
-
こんなときは黒い便(タール便)、吐血、大量の鼻血、血痰こうする静脈瘤や腫瘍からの出血の合図。救急に電話する。次回の点滴は延期になる
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こんなときは血圧が上180または下110を超える、強い頭痛、目のかすみ、けいれんこうする高血圧性の脳症のことがある。すぐ受診する
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こんなときは急な腹痛と発熱、または 片方の手足の脱力・ろれつが回らない・胸の痛みこうする消化管穿孔、または脳梗塞・心筋梗塞の合図。救急に電話する
抜歯や手術の予定があるときは、ベバシズマブが傷の治りを遅らせるので、事前に主治医へ伝えます(手術の前後は薬を止める期間が要ります)。血をさらさらにする薬(抗血小板薬、抗凝固薬)を飲んでいる人は出血の危険が高まるので、必ず伝えます。 肝硬変の人は、腹水、むくみ、意識のぼんやり(肝性脳症)も起こるので、「がんの薬のせい」か「肝臓のせい」かを、自分で決めずに受診して確かめます。免疫の薬の患者カードと、肝臓の病気の記録を一緒に持ち歩きます。
肝細胞がんの患者さんの在宅では、がんと肝硬変を同時に見ます。この治療を受けている方の訪問で、私たちが毎回確かめるのは、血圧、便の色、腹囲(腹水)、むくみ、そして「話のつじつま」(肝性脳症)です。免疫の薬の副作用は、それらの上に重なります。 黒い便を「便秘のせい」と思っていた方が、静脈瘤からの出血だったことがありました。便の色を家族が見る習慣が、命を分けます。
この治療で、肝がんは「効いている間は普通に暮らせる」病気になりました。3週間に1度の点滴の合間を家で過ごす方が増えています。土台の肝臓を守ること(アルコールをやめる、肝炎の治療を続ける、塩分を控える)は、がんの薬と同じくらい大切だと伝えています。
SECTION 05 薬価と自己負担:3週間で約69万円、バイオシミラーなら約61万円
テセントリク点滴静注1200mgは563,917円。ベバシズマブは体重60kgで900mg(アバスチン400mg×2本+100mg×1本)が128,099円、バイオシミラーなら約50,000円。合わせて3週間で約69万円(バイオシミラーなら約61万円)、年17回で約1,180万円(約1,040万円)です(薬価基準、令和8年8月13日適用)。
自己負担は高額療養費の上限までで、70歳未満・年収約370〜770万円なら月85,800円+(医療費−286,000円)×1%、4か月目からは44,400円。70歳以上・一般なら外来は月22,000円が上限です(第1回の表1)。肝細胞がんは高齢の方が多く、外来22,000円で受けている方が大半です。 肝硬変の治療(利尿薬、肝炎の薬、内視鏡)も同じ月の医療費に合算されるので、領収書はまとめて保管します。
「足し算」が、効かなかった薬を効く薬に変えた。
免疫の薬は、肝がんに単独では勝てませんでした。血管の薬も、肝がんに単独では勝てませんでした。2つを足したら、12年ぶりに初回治療が変わった。がんの薬の歴史には、こういう足し算が何度もあります(CHOPに「R」を足した第21回、ホルモン療法に「上乗せ」した第20回)。 新しい分子を作ることだけが進歩ではない。手持ちの薬の組み合わせを、比較試験で確かめることも進歩です。
在宅で肝がんの方を見るとき、私たちは「がん」と「肝硬変」の両方の主治医になります。がんの薬が効いている間に、肝臓を守る。黒い便を見逃さない。血圧を毎日測る。地味なことの積み重ねが、この足し算の効き目を、家で支えています。
「この薬、家ではどう気をつければいいですか」と聞ける主治医を、持ってください。
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Q&A よくある質問
この回のチェックリスト(第41回ぶん)
- 治療の前に、胃カメラで静脈瘤を確かめて手当てしたかを確認する。
- 血圧を毎日測って記録する。いつもより20以上高い日が続けば連絡する。
- 便の色を家族が見る。黒い便、吐血、大量の鼻血、血痰は救急へ。
- 抜歯・手術の予定、血をさらさらにする薬は、必ず伝える。
- 免疫の薬の副作用(下痢、息切れ、疲れ、のどの渇き)は第38〜40回のとおり。疲れは採血で肝臓か内分泌かを確かめる。
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連載の外にある、ふくろう訪問クリニックのコラムです。この回の内容をさらに掘り下げたいときに読んでください。
- 根拠には強さの順番がある:詐欺医療に騙されないこの回の「決め手になった試験」が、体験談・動物実験・比較試験のどの段にあるかを、一枚の表で確かめられます。
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連載「優秀な抗がん剤」全50回
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- シクロホスファミド——毒ガスの研究から生まれた、最初の抗がん剤
- メトトレキサート——白血病の子どもに、初めて「寛解」をもたらした薬
- フルオロウラシル(5-FU)——60年以上、消化器がんの土台であり続ける理由
- ビンクリスチン——糖尿病の薬を探していたら、白血病の薬が見つかった
- ドキソルビシン——アドリア海の土から生まれた「赤い薬」と、心臓の話
- シスプラチン——電極の実験の偶然が、精巣がんを「治る病気」に変えた
- カルボプラチン——腎臓と吐き気にやさしく設計された、シスプラチンの「弟」
- パクリタキセル——イチイの木を切り尽くす前に、葉から作れるようになるまで
- ドセタキセル——前立腺がんで初めて「延命」を証明した化学療法
- ゲムシタビン——抗ウイルス薬の候補が、膵がんの標準治療になるまで
- ペメトレキセド——蝶の羽の色素の研究から生まれた、肺がんと中皮腫の薬
- テモゾロミド——脳腫瘍の治療を変えた、家で飲める抗がん剤
- オキサリプラチン——名古屋で生まれ、フランスで育ち、日本に帰ってきた薬
- イリノテカン——中国の木の成分を、日本の乳酸菌の会社が薬にした
- S-1(ティーエスワン)——日本生まれの「飲む5-FU」が、世界の標準を変えた
- タモキシフェン——避妊薬の失敗作が、世界で最も使われた乳がんの薬になった
- アロマターゼ阻害薬——「女性ホルモンを作らせない」という発想の乳がん治療
- リュープロレリン——武田薬品の徐放製剤が変えた、前立腺がんのホルモン療法
- エンザルタミドとアビラテロン——前立腺がんのホルモン療法に「上乗せ」する時代へ
- リツキシマブ——世界初のがん抗体医薬。CHOPに「R」がついて何が変わったか
- トラスツズマブ——HER2という「敵の印」を初めて狙い撃ちした薬
- ベバシズマブ——「がんは血管を呼ぶ」という仮説から、30年かけて薬になった
- セツキシマブとパニツムマブ——皮疹が出る人ほど効く、大腸がんの抗体薬
- ゾルベツキシマブ——胃の細胞の「接着剤」を狙う、2024年の新しい胃がんの薬
- イマチニブ——「魔法の弾丸」が、死の病だった白血病を飲み薬で抑えた
- オシメルチニブ——イレッサの光と影から、第3世代の肺がんの薬へ
- アレクチニブ——自治医大の発見を中外製薬が薬にした、純国産の肺がん治療薬
- レンバチニブ——エーザイの研究所から生まれた、肝がん・甲状腺がんの飲み薬
- エベロリムス——イースター島の土から見つかった成分の子孫
- CDK4/6阻害薬——お蔵入り寸前の化合物が、乳がんのホルモン療法を変えた
- オラパリブ——「合成致死」という発想と、BRCA遺伝子検査
- RASの40年——「薬にできない」と言われた標的に、ソトラシブからダラクソンラシブへ
- レナリドミド——サリドマイド薬害から復活した、骨髄腫の薬
- ダラツムマブ——点滴8時間が皮下注5分になった、骨髄腫の抗体薬
- ベネトクラクス——「細胞の自殺」を止めるタンパクを外す、高齢者の白血病の薬
- トレチノインと亜ヒ酸——ビタミンAの仲間と「毒」が、最も治る白血病を作った
- イピリムマブ——免疫の「ブレーキ」を外す最初の薬と、ノーベル賞
- ニボルマブ(オプジーボ)——本庶佑のPD-1と、薬価をめぐる騒動
- ペムブロリズマブ(キイトルーダ)——開発中止寸前だった薬が、世界一売れる薬になった
- アテゾリズマブ+ベバシズマブ——肝がんの一次治療を10年ぶりに変えた組み合わせ
- 二重特異性抗体——片手でがん、片手で免疫細胞をつかむ薬
- CAR-T細胞療法——6歳の少女を救った「自分の免疫細胞を薬にする」治療
- mRNAがんワクチン——コロナワクチンの技術で、患者ごとに作る「オーダーメイド」
- トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)——第一三共の「がんに薬を運ぶミサイル」
- エンホルツマブ ベドチンとADC——40年続いたシスプラチンの時代を終わらせた薬
- ルテチウム-177——「診断と治療を同じ分子で」放射線を出す薬が家に帰るとき
- がん遺伝子パネル検査——56万円で数百の遺伝子を読み、薬にたどり着くのは約1割
- 臓器横断的な薬——「臓器ではなく遺伝子で」薬を選ぶ時代
- リキッドバイオプシー——血液でがんの遺伝子を追い、再発の芽を見る
薬のこと・お金のことの相談先
電話番号や制度の内容は変わることがあります。最新の内容は各ページでご確認ください。治療中の方も、治療を終えた方も、ご家族だけでも相談できます。
- 治療を受けている病院の外来・化学療法室副作用が出たとき、まず連絡する先です。夜間や休日の連絡先は、治療の説明書や「治療日誌」に書かれていることが多いので、目につく場所に貼っておいてください。
- がん相談支援センター治療や薬のこと、お金や仕事のことを無料で相談できます。県内すべてのがん拠点病院にあり、その病院にかかっていなくても利用できます/福岡県「福岡県内のがん拠点病院がん相談支援センター」
- がん情報サービス(国立がん研究センター)がんの種類ごとの標準治療と、使われる薬の情報を、公的機関がまとめています/ganjoho.jp
- くすりのしおり(くすりの適正使用協議会)処方された薬の飲み方・注意・副作用を、薬の名前で調べられる患者向けの情報です/rad-ar.or.jp/siori
- 高額療養費制度の窓口(加入している健康保険)1か月の自己負担に上限を設ける制度です。会社の健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の国民健康保険・後期高齢者医療広域連合など、保険証(資格確認書)に書かれた保険者に申請します。マイナ保険証を使えば、窓口での支払いが最初から上限額までになります/厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- かかりつけ薬局の薬剤師飲み薬の抗がん剤と、ほかの薬・サプリメント・食べ物との飲み合わせは、薬局で確かめられます。お薬手帳を1冊にまとめておくと早いです。
REFERENCE 参考資料
- 中外製薬「テセントリク点滴静注840mg/1200mg 添付文書」(販売開始2018年4月)(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/450045_4291441A1024_1_24)、同 医薬品インタビューフォーム(開発の経緯:2016年5月米国承認、2018年1月19日日本承認、2019年8月22日小細胞肺癌、2020年9月25日肝細胞癌、2022年5月26日術後補助療法、2025年9月19日1680mg 4週間隔)
- 中外製薬「アバスチン点滴静注用100mg/400mg 添付文書」(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/450045_4291413A1022_1_27);厚生労働省「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和8年8月13日適用)」(https://www.mhlw.go.jp/topics/2026/04/tp20260401-01.html)
- Herbst RS, et al. Predictive correlates of response to the anti-PD-L1 antibody MPDL3280A in cancer patients. Nature. 2014;515(7528):563-567(https://doi.org/10.1038/nature14011);Rittmeyer A, et al. Atezolizumab versus docetaxel in patients with previously treated non-small-cell lung cancer (OAK): a phase 3, open-label, multicentre randomised controlled trial. Lancet. 2017;389(10066):255-265(https://doi.org/10.1016/S0140-6736(16)32517-X)
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