ベネトクラクス:優秀な抗がん剤

優秀な抗がん剤第36回/全50回
ベネトクラクス

「細胞の自殺」を止めるタンパクを外す、高齢者の白血病の薬

細胞には自ら死ぬ仕組みがあり、がん細胞はそのブレーキ役(BCL-2)を増やして死なずにいます。1988年に見つかったこの仕組みは、長く「薬にできない」と言われ、30年近くたって、ブレーキを外す飲み薬ベネトクラクスになりました。 最初の患者さんで細胞が一度に壊れた教訓から生まれた「5週間かけて増やす」飲み方、慢性リンパ性白血病を1〜2年で終える治療に変えた試験、高齢者の急性骨髄性白血病で初めて生存を延ばした試験、抗真菌薬との飲み合わせ、月91万円の薬代まで書きます。

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この回の結論

  1. 細胞には「自分から死ぬ」仕組み(アポトーシス)があり、がん細胞はそれを止めるたんぱく質(BCL-2)を増やして生き延びています。ベネトクラクスはそのたんぱく質を外し、がん細胞に自ら死んでもらう飲み薬です。2019年に日本で承認されました。
  2. 慢性リンパ性白血病では、抗体薬と組んで1〜2年で治療を終える「期間を決めた治療」を可能にし、急性骨髄性白血病では、強い化学療法に耐えられない高齢者の生存を9.6か月から14.7か月に延ばしました。
  3. 最初の患者さんで、がん細胞が一度に壊れる腫瘍崩壊症候群が起き、少量から5週間かけて増やす飲み方が作られました。白血球の減少と感染にも注意。薬代は1日約3万円、月約91万円で、高額療養費の上限に届きます。

この薬のプロフィール

一般名(商品名)ベネトクラクス(ベネクレクスタ錠)
薬の家族分子標的薬(BCL-2阻害薬。細胞の自死を止めるたんぱく質を外す飲み薬)
主に使うがん慢性リンパ性白血病(初発は抗体薬オビヌツズマブと、再発はリツキシマブと)、急性骨髄性白血病(強い化学療法に向かない人に、アザシチジンなどと)、再発したマントル細胞リンパ腫(イブルチニブと)
使い方飲み薬、1日1回食後。慢性リンパ性白血病は20mgから5週間かけて400mgまで増やす。急性骨髄性白血病は3日で400mgまで増やし、28日ごとのサイクルで続ける
日本での承認2019年9月(再発した慢性リンパ性白血病)。2021年3月急性骨髄性白血病、2025年マントル細胞リンパ腫と初発の慢性リンパ性白血病
薬価の目安ベネクレクスタ錠100mg 7,585.9円、50mg 3,956.6円、10mg 872.8円(薬価基準、令和8年8月13日適用)

SECTION 01 生まれた日:「死なない細胞」の謎から30年

1985年、米国の研究者が、ろ胞性リンパ腫の細胞で14番と18番の染色体がつなぎ替わり、BCL-2という遺伝子が働きすぎていることを見つけました(Tsujimoto ら、Science 1985)。 ところが、この遺伝子は細胞を「増やす」のではありませんでした。1988年、オーストラリアの研究者が、BCL-2は細胞が自ら死ぬのを止める遺伝子だと示します(Vaux ら、Nature 1988)。がんは「増えすぎる病気」だけでなく「死ななくなる病気」でもある、という発見でした。

BCL-2はたんぱく質どうしが手をつなぐ場所で働くため、薬が入り込むくぼみがなく、長く「薬にできない」と言われました(第33回のRASと同じ言葉です)。米国のアボット社は、たんぱく質の表面の浅いくぼみに合う化合物を、断片をつなぎ合わせて設計する方法で作りました。最初の化合物は血小板を減らす副作用が強く、BCL-2だけを狙うよう改良したのがベネトクラクスです(Souers ら、Nat Med 2013)。 最初の患者さんでは、白血病の細胞が一度に壊れる腫瘍崩壊症候群が起き、亡くなった方もいました。少量から段階的に増やす飲み方は、その経験から生まれました(Roberts ら、NEJM 2016)。

  • 1985年ろ胞性リンパ腫で染色体の入れ替わりからBCL-2遺伝子が見つかる。
  • 1988年BCL-2は「細胞の自死を止める」遺伝子だと判明。がんの新しい見方。
  • 2000年代アボット社が、断片をつなぐ設計法でBCL-2を外す化合物を作る。血小板減少の壁。
  • 2013年BCL-2だけを狙うベネトクラクスが発表される。
  • 2016年再発した慢性リンパ性白血病の79%に効くと報告。腫瘍崩壊症候群の教訓から、5週間の増量法が確立。米国で承認。
  • 2018〜19年抗体薬と組んで「期間を決めた治療」が成り立つと2つの試験で証明(MURANO、CLL14)。2019年9月、日本で承認。
  • 2020年高齢者の急性骨髄性白血病で、アザシチジンに足すと生存が延びると証明(VIALE-A)。2021年3月、日本で承認。
アポトーシスとは、細胞が自分の設計図に従って、静かに死んでいく仕組みです。傷ついた細胞や役目を終えた細胞は、この仕組みで片づけられます。 がん細胞は、この仕組みのブレーキ役(BCL-2)を増やして、死ぬべきときに死なずにいます。ベネトクラクスはブレーキを外し、がん細胞が本来持っている「死ぬ力」を取り戻させます。
ここだけ覚えるがんは「増えすぎる」だけでなく「死ななくなる」病気。死ぬ仕組みのブレーキを外す薬。

SECTION 02 どうやって効くのか:ブレーキを外す。効きすぎると、一度に壊れる

ベネトクラクスは、BCL-2が「死の実行役」のたんぱく質をつかんで押さえている手に割り込み、実行役を解放します。BCL-2に頼っている白血病の細胞は、数時間で自死を始めます。 正常な細胞の多くは別のブレーキも持っているので、影響は小さめです。ただし、血小板を作る細胞や好中球はBCL-2への依存が強く、減ります。

  • 効きすぎると腫瘍崩壊症候群大量の白血病細胞が一度に壊れると、カリウム・リン・尿酸が血液にあふれ、腎臓や心臓が危険になります。慢性リンパ性白血病では20mgから週ごとに5週間かけて400mgまで増やし、最初の日は病院で採血を繰り返します。
  • 「期間を決めた治療」ができる抗体薬と組むと、白血病の細胞が検出できない状態に多くの人が到達します。そこで治療を終え、再発したら再開する。飲み続けるのではない使い方が、慢性リンパ性白血病の新しい形になりました。
  • 飲み合わせに強い制限抗真菌薬(イトラコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール)や一部の抗菌薬(クラリスロマイシン)は、この薬の血中濃度を数倍に上げます。増量の時期には禁忌で、それ以外の時期も減量が必要です。
ここだけ覚える効きすぎると細胞が一度に壊れる。だから少しずつ増やす。抗真菌薬との飲み合わせは必ず確認。

SECTION 03 なぜこんなに使われるのか:期間を決めた治療と、高齢者の白血病

決め手になった試験

2018年、再発した慢性リンパ性白血病389人を、くじ引きで「ベネトクラクス2年+リツキシマブ」と「化学療法+リツキシマブ」に分けました。2年後に進行していない人は36.3%から84.9%に増え、進行のリスクは83%減りました(Seymour ら、NEJM 2018、MURANO試験)。 2019年、初発で持病のある432人では、抗体薬オビヌツズマブにこの薬を1年組む治療で、2年後に進行していない人が64.1%から88.2%に増えました(Fischer ら、NEJM 2019、CLL14試験)。どちらも、治療を終えたあとも効果が続いています。

2020年、強い化学療法に向かない急性骨髄性白血病431人(中央値76歳)では、アザシチジンにこの薬を足すと、生存期間が9.6か月から14.7か月に延び、完全寛解に近い状態になった人は28.3%から66.4%に増えました(DiNardo ら、NEJM 2020、VIALE-A試験)。 高齢者の急性骨髄性白血病は、それまで「治療の選択肢がほとんどない」病気でした。

病気使い方決め手になった試験
慢性リンパ性白血病、初発オビヌツズマブと組んで1年で終えるCLL14 2019(2年無進行64→88%)
慢性リンパ性白血病、再発リツキシマブ(第21回)と組んで2年で終えるMURANO 2018(2年無進行36→85%)
急性骨髄性白血病、強い化学療法に向かない人アザシチジンと組み、28日ごとに続けるVIALE-A 2020(生存9.6→14.7か月)
再発したマントル細胞リンパ腫イブルチニブと2025年承認

表1 ベネトクラクスの主な使われ方(添付文書と学会ガイドラインによる)。慢性リンパ性白血病は日本ではまれで、急性骨髄性白血病での使用が多い。

制度のしくみ

添付文書の対象は、慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)、再発または難治性のマントル細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病です。急性骨髄性白血病では「強力な寛解導入療法の適応となる人での有効性・安全性は確立していない」とされ、高齢や持病で強い治療に向かない人が対象です。 警告は腫瘍崩壊症候群について、治療前のリスク評価と予防、開始・増量後の血液検査を定めています。

ここだけ覚える慢性リンパ性白血病は「1〜2年で終える治療」に。高齢者の急性骨髄性白血病に、初めて生存を延ばす飲み薬。

SECTION 04 副作用と、家でできること:増量の時期、白血球、感染、飲み合わせ

添付文書の集計では、好中球減少43.9%、感染症26.7%(肺炎8.6%、敗血症4.4%)、血小板減少21.3%、下痢22.3%、吐き気20.1%、貧血11.5%、発熱性好中球減少症10.6%、腫瘍崩壊症候群2.1%。ほかに便秘、口内炎、疲労、低カリウム・低マグネシウム血症、皮膚の二次がんが記されています。

副作用と、家でできること

増量の時期(慢性リンパ性白血病の最初の5週間、急性骨髄性白血病の最初の3日)は、腫瘍崩壊症候群を防ぐため、水分を多めにとり(1日1.5〜2リットルを目安に、主治医の指示で)、尿酸を下げる薬を飲み、採血を受けます。リスクの高い人は入院で始めます。 白血球の減少は採血で見ます。37.5度以上の熱は、夜間・休日でも連絡します。

吐き気・下痢は食後に飲む、水を多めに、吐き気止めや止痢薬で。飲み合わせは、新しく薬をもらうたびに薬剤師に確かめます。急性骨髄性白血病では、感染予防の抗真菌薬と組むことが多く、そのときはこの薬の量を大きく減らします。 グレープフルーツやセビリアオレンジも避けます。

  • こんなときは増量の日の翌日までに、吐き気、筋肉のけいれん、動悸、尿が減った、強いだるさ
    こうする腫瘍崩壊症候群の合図。すぐ病院へ連絡し、採血を受ける
  • こんなときは37.5度以上の熱、寒気、咳と痰
    こうする感染の合図。白血球が減っている時期なら、夜間・休日でも電話する
  • こんなときは他の科で抗真菌薬や抗菌薬(クラリスロマイシンなど)を処方された
    こうする飲む前に、この薬の主治医か薬剤師に確かめる。量の調整か別の薬に替える
気をつけること

増量の時期に強い薬物相互作用のある薬(一部の抗真菌薬・抗菌薬・抗ウイルス薬)を飲んでいる人には使えません。腎臓の働きが弱い人、腫瘍の量が多い人は腫瘍崩壊症候群のリスクが高く、入院で始めます。 生ワクチンは避けます。妊娠中は使えません。

在宅の現場では

急性骨髄性白血病の高齢の方が、この薬とアザシチジンの注射で治療を続けながら家で過ごす、という形は、2021年以前にはありませんでした。在宅で見ているのは、発熱と、輸血が必要な貧血・血小板減少、そして食欲です。 発熱性好中球減少症が10人に1人に起こる薬なので、「37.5度で電話」の紙を電話のそばに貼ってもらいます。

抗真菌薬を併用している方では、この薬の量が通常の4分の1になっていることがあります。「量が少ないのは間違いではない」と、ご家族に説明しておきます。

ここだけ覚える増量の週は水分と採血。熱は電話。新しい薬は飲む前に確認。

SECTION 05 薬価と自己負担:1日約3万円、月約91万円

薬価と自己負担の目安

ベネクレクスタ錠100mgは7,585.9円。維持の量(1日400mg=4錠)で1日30,344円、30日で約91万円です(薬価基準、令和8年8月13日適用)。慢性リンパ性白血病の1年間(初発)で約1,100万円、2年間(再発)で約2,200万円。これに抗体薬が加わります。 急性骨髄性白血病では28日サイクルで約85万円に、アザシチジンの注射が加わります。抗真菌薬と組んで減量しているときは、その分だけ安くなります。

3割負担なら月約27万円で、高額療養費の上限に届きます。70歳未満・年収約370〜770万円なら月85,800円+(医療費−286,000円)×1%=約9万2千円、4か月目からは44,400円。70歳以上・一般なら外来22,000円が上限です(第1回の表1)。 「期間を決めた治療」は、薬代の面でも、終わりが見える治療です。

腫瘍崩壊症候群があらわれることがあり、特に本剤投与開始及び増量後1〜2日に多く認められている。本剤の投与開始前及び休薬後の再開前に腫瘍量に基づく腫瘍崩壊症候群のリスク評価を行い、リスクに応じた予防措置を適切に行うこと。 出典:アッヴィ「ベネクレクスタ錠 添付文書」、警告の項
ここだけ覚える月91万円。慢性リンパ性白血病なら1〜2年で終わる。急性骨髄性白血病は続く。上限は月4万4千〜9万2千円。
在宅医の視点

「死ぬ力」を返す薬と、「終わりのある治療」。

がんの薬の多くは、細胞を殺すか、増えるのを止めます。ベネトクラクスは、細胞が本来持っている「死ぬ力」を返します。発想が違う薬は、副作用の顔も違います。効きすぎて一度に壊れる、という副作用は、この薬でしか見たことがありません。

慢性リンパ性白血病で「1年で治療を終えて、そのあと何年も薬なしで過ごす」患者さんを見ると、飲み続ける薬(第26回)とは別の道が開いたことを感じます。高齢者の急性骨髄性白血病で、家で過ごしながら治療できる道も、この薬が作りました。

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Q&A よくある質問

Q1年で治療を終えると言われました。やめて大丈夫なのですか。
A初発の慢性リンパ性白血病でオビヌツズマブと組む治療は、1年で終える設計で試験が行われ、終了後も多くの人で効果が続きました。試験の追跡では、4〜5年たっても進行していない人が半数以上です。再発したときは、同じ薬を再び使う選択肢もあります。「やめる」のではなく「終える」治療で、終えたあとは3〜6か月ごとの採血で見守ります。
Q80歳の父が急性骨髄性白血病です。この薬で治りますか。
A「治る」と言い切れる薬ではありません。強い化学療法に向かない人での試験では、生存期間の中央値が9.6か月から14.7か月に延び、3人に2人で白血病の細胞が大きく減りました。長く効く人もいれば、効かない人もいます。ただ、家で過ごしながら受けられる治療で、輸血の回数が減り、暮らしが保たれる人が多いことは、それ以前の選択肢と大きく違います。目標を「治す」ではなく「よい時間を長く」に置く相談が、この薬では大切です。
Q水虫の薬(飲み薬)をもらったのですが、飲んでよいですか。
A飲む前に、必ずこの薬の主治医か薬剤師に確かめてください。イトラコナゾールなどの飲む抗真菌薬は、この薬の血中濃度を数倍に上げ、増量の時期には禁忌です。別の薬に替えるか、この薬の量を大きく減らす必要があります。皮膚科など他の科では、この薬との飲み合わせが知られていないことがあるので、お薬手帳に「ベネトクラクス服用中。飲み合わせ注意」と書いておくと安全です。

この回のチェックリスト(第36回ぶん)

  • 増量の日程表(何日から何mg)を冷蔵庫に貼り、増量の週は水分を多めにとる。
  • 増量の翌日までの吐き気・けいれん・動悸・尿の減少は、すぐ連絡する。
  • 37.5度以上の熱は、夜間・休日でも電話する。
  • お薬手帳に「ベネトクラクス服用中。抗真菌薬・抗菌薬は飲む前に確認」と書いた。
  • グレープフルーツを避ける。生ワクチンは受けない。

この回に関連する記事

連載の外にある、ふくろう訪問クリニックのコラムです。この回の内容をさらに掘り下げたいときに読んでください。

連載「優秀な抗がん剤」全50回

  1. 抗がん剤80年の歴史——毒ガスから「自分の細胞」まで、80年でここまで来た
  2. シクロホスファミド——毒ガスの研究から生まれた、最初の抗がん剤
  3. メトトレキサート——白血病の子どもに、初めて「寛解」をもたらした薬
  4. フルオロウラシル(5-FU)——60年以上、消化器がんの土台であり続ける理由
  5. ビンクリスチン——糖尿病の薬を探していたら、白血病の薬が見つかった
  6. ドキソルビシン——アドリア海の土から生まれた「赤い薬」と、心臓の話
  7. シスプラチン——電極の実験の偶然が、精巣がんを「治る病気」に変えた
  8. カルボプラチン——腎臓と吐き気にやさしく設計された、シスプラチンの「弟」
  9. パクリタキセル——イチイの木を切り尽くす前に、葉から作れるようになるまで
  10. ドセタキセル——前立腺がんで初めて「延命」を証明した化学療法
  11. ゲムシタビン——抗ウイルス薬の候補が、膵がんの標準治療になるまで
  12. ペメトレキセド——蝶の羽の色素の研究から生まれた、肺がんと中皮腫の薬
  13. テモゾロミド——脳腫瘍の治療を変えた、家で飲める抗がん剤
  14. オキサリプラチン——名古屋で生まれ、フランスで育ち、日本に帰ってきた薬
  15. イリノテカン——中国の木の成分を、日本の乳酸菌の会社が薬にした
  16. S-1(ティーエスワン)——日本生まれの「飲む5-FU」が、世界の標準を変えた
  17. タモキシフェン——避妊薬の失敗作が、世界で最も使われた乳がんの薬になった
  18. アロマターゼ阻害薬——「女性ホルモンを作らせない」という発想の乳がん治療
  19. リュープロレリン——武田薬品の徐放製剤が変えた、前立腺がんのホルモン療法
  20. エンザルタミドとアビラテロン——前立腺がんのホルモン療法に「上乗せ」する時代へ
  21. リツキシマブ——世界初のがん抗体医薬。CHOPに「R」がついて何が変わったか
  22. トラスツズマブ——HER2という「敵の印」を初めて狙い撃ちした薬
  23. ベバシズマブ——「がんは血管を呼ぶ」という仮説から、30年かけて薬になった
  24. セツキシマブとパニツムマブ——皮疹が出る人ほど効く、大腸がんの抗体薬
  25. ゾルベツキシマブ——胃の細胞の「接着剤」を狙う、2024年の新しい胃がんの薬
  26. イマチニブ——「魔法の弾丸」が、死の病だった白血病を飲み薬で抑えた
  27. オシメルチニブ——イレッサの光と影から、第3世代の肺がんの薬へ
  28. アレクチニブ——自治医大の発見を中外製薬が薬にした、純国産の肺がん治療薬
  29. レンバチニブ——エーザイの研究所から生まれた、肝がん・甲状腺がんの飲み薬
  30. エベロリムス——イースター島の土から見つかった成分の子孫
  31. CDK4/6阻害薬——お蔵入り寸前の化合物が、乳がんのホルモン療法を変えた
  32. オラパリブ——「合成致死」という発想と、BRCA遺伝子検査
  33. RASの40年——「薬にできない」と言われた標的に、ソトラシブからダラクソンラシブへ
  34. レナリドミド——サリドマイド薬害から復活した、骨髄腫の薬
  35. ダラツムマブ——点滴8時間が皮下注5分になった、骨髄腫の抗体薬
  36. ベネトクラクス——「細胞の自殺」を止めるタンパクを外す、高齢者の白血病の薬
  37. トレチノインと亜ヒ酸——ビタミンAの仲間と「毒」が、最も治る白血病を作った
  38. イピリムマブ——免疫の「ブレーキ」を外す最初の薬と、ノーベル賞
  39. ニボルマブ(オプジーボ)——本庶佑のPD-1と、薬価をめぐる騒動
  40. ペムブロリズマブ(キイトルーダ)——開発中止寸前だった薬が、世界一売れる薬になった
  41. アテゾリズマブ+ベバシズマブ——肝がんの一次治療を10年ぶりに変えた組み合わせ
  42. 二重特異性抗体——片手でがん、片手で免疫細胞をつかむ薬
  43. CAR-T細胞療法——6歳の少女を救った「自分の免疫細胞を薬にする」治療
  44. mRNAがんワクチン——コロナワクチンの技術で、患者ごとに作る「オーダーメイド」
  45. トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)——第一三共の「がんに薬を運ぶミサイル」
  46. エンホルツマブ ベドチンとADC——40年続いたシスプラチンの時代を終わらせた薬
  47. ルテチウム-177——「診断と治療を同じ分子で」放射線を出す薬が家に帰るとき
  48. がん遺伝子パネル検査——56万円で数百の遺伝子を読み、薬にたどり着くのは約1割
  49. 臓器横断的な薬——「臓器ではなく遺伝子で」薬を選ぶ時代
  50. リキッドバイオプシー——血液でがんの遺伝子を追い、再発の芽を見る

薬のこと・お金のことの相談先

電話番号や制度の内容は変わることがあります。最新の内容は各ページでご確認ください。治療中の方も、治療を終えた方も、ご家族だけでも相談できます。

  • 治療を受けている病院の外来・化学療法室副作用が出たとき、まず連絡する先です。夜間や休日の連絡先は、治療の説明書や「治療日誌」に書かれていることが多いので、目につく場所に貼っておいてください。
  • がん相談支援センター治療や薬のこと、お金や仕事のことを無料で相談できます。県内すべてのがん拠点病院にあり、その病院にかかっていなくても利用できます/福岡県「福岡県内のがん拠点病院がん相談支援センター」
  • がん情報サービス(国立がん研究センター)がんの種類ごとの標準治療と、使われる薬の情報を、公的機関がまとめています/ganjoho.jp
  • くすりのしおり(くすりの適正使用協議会)処方された薬の飲み方・注意・副作用を、薬の名前で調べられる患者向けの情報です/rad-ar.or.jp/siori
  • 高額療養費制度の窓口(加入している健康保険)1か月の自己負担に上限を設ける制度です。会社の健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の国民健康保険・後期高齢者医療広域連合など、保険証(資格確認書)に書かれた保険者に申請します。マイナ保険証を使えば、窓口での支払いが最初から上限額までになります/厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
  • かかりつけ薬局の薬剤師飲み薬の抗がん剤と、ほかの薬・サプリメント・食べ物との飲み合わせは、薬局で確かめられます。お薬手帳を1冊にまとめておくと早いです。

REFERENCE 参考資料

  1. アッヴィ「ベネクレクスタ錠10mg・50mg・100mg 添付文書」(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/112130_4291062F3023_1_11)、同 医薬品インタビューフォーム(2019年9月20日承認、2021年3月急性骨髄性白血病、2025年3月マントル細胞リンパ腫、2025年11月未治療の慢性リンパ性白血病)
  2. 厚生労働省「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和8年8月13日適用)」(https://www.mhlw.go.jp/topics/2026/04/tp20260401-01.html)
  3. Tsujimoto Y, et al. Involvement of the bcl-2 gene in human follicular lymphoma. Science. 1985;228(4706):1440-1443(https://doi.org/10.1126/science.3874430);Vaux DL, Cory S, Adams JM. Bcl-2 gene promotes haemopoietic cell survival and cooperates with c-myc to immortalize pre-B cells. Nature. 1988;335(6189):440-442(https://doi.org/10.1038/335440a0)
  4. Souers AJ, et al. ABT-199, a potent and selective BCL-2 inhibitor, achieves antitumor activity while sparing platelets. Nat Med. 2013;19(2):202-208(https://doi.org/10.1038/nm.3048);Roberts AW, et al. Targeting BCL2 with venetoclax in relapsed chronic lymphocytic leukemia. N Engl J Med. 2016;374(4):311-322(https://doi.org/10.1056/NEJMoa1513257)
  5. Seymour JF, et al. Venetoclax-rituximab in relapsed or refractory chronic lymphocytic leukemia. N Engl J Med. 2018;378(12):1107-1120(https://doi.org/10.1056/NEJMoa1713976);Fischer K, et al. Venetoclax and obinutuzumab in patients with CLL and coexisting conditions. N Engl J Med. 2019;380(23):2225-2236(https://doi.org/10.1056/NEJMoa1815281)
  6. DiNardo CD, et al. Azacitidine and venetoclax in previously untreated acute myeloid leukemia. N Engl J Med. 2020;383(7):617-629(https://doi.org/10.1056/NEJMoa2012971)
  7. 国立がん研究センター がん情報サービス「慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫」2023年12月18日更新(https://ganjoho.jp/public/cancer/CLL/index.html)、「急性骨髄性白血病」2023年12月6日更新(https://ganjoho.jp/public/cancer/AML/index.html)、「感染しやすい・白血球減少」2023年8月10日更新(https://ganjoho.jp/public/support/condition/FN/index.html)
本記事は、添付文書・学術論文・公的機関の資料をもとに、それぞれの薬について現時点で分かっていることを、 一般の方向けに整理したものです。記事中の効果の数字は臨床試験に参加した集団の結果であり、 一人ひとりの効き方や副作用の現れ方とは異なります。薬価は記載時点の薬価基準によるもので、改定で変わります。 治療の選択・変更・中止は、必ず主治医とご相談ください。研究は日々更新されますので、 記載の内容は公開時点のものとしてお読みください。