臓器横断的な薬:優秀な抗がん剤

優秀な抗がん剤第49回/全50回
臓器横断的な薬

「臓器ではなく遺伝子で」薬を選ぶ時代

がんの薬は長く「肺がんの薬」「乳がんの薬」と、できた臓器ごとに承認されてきました。2017年、米国が初めて「臓器を問わず、遺伝子の状態で」薬を承認し、2019年には日本が、NTRK 融合遺伝子を持つ固形がんの薬を世界で最初に承認しました。いま日本で「がんの種類を問わず」使える薬は7つあります。 バスケット試験という新しい試験の形、1%未満のまれな目印に当たれば半数以上が縮む薬たち、「臓器を問わない」が「臓器が関係ない」ではない理由(大腸がんの BRAF)、比較試験ではなく奏効率で承認されることの意味、めまい・発熱・血圧という家での見張りどころ、月90〜190万円の薬代まで書きます。

この連載の現在地 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 第49回 臓器横断的な薬

この回の結論

  1. がんの薬は長く「肺がんの薬」「乳がんの薬」と、できた臓器ごとに承認されてきました。2017年、米国が初めて「臓器を問わず、遺伝子の状態で」薬を承認し、日本は2018年12月に続きました。2019年6月には、NTRK という遺伝子の融合を持つ固形がんの薬(エヌトレクチニブ)を、日本が世界で最初に承認しています。
  2. いま日本で「がんの種類を問わず」使える薬は、MSI-High、NTRK 融合、TMB-High、BRAF 変異、RET 融合、HER2陽性の6つの目印に対して7つあります。狙う目印は1%未満のまれなものが多いものの、当たれば半数以上のがんが縮む薬が並びます。目印はがん遺伝子パネル検査(第48回)で見つかります。
  3. 「臓器を問わない」は「臓器が関係ない」ではありません。大腸がんの BRAF 変異には同じ薬が効かず、承認から除かれています。また、これらの薬の多くは比較試験ではなく「縮んだ人の割合」で承認されているので、その位置づけを知ったうえで使います。薬代は月90〜190万円、自己負担は上限までです。

この薬たちのプロフィール

一般名(商品名)ペムブロリズマブ(キイトルーダ、第40回)、エヌトレクチニブ(ロズリートレク)、ラロトレクチニブ(ヴァイトラックビ)、ダブラフェニブ+トラメチニブ(タフィンラー+メキニスト)、セルペルカチニブ(レットヴィモ)、トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ、第45回)
薬の家族臓器横断的(がん種横断的)に承認された薬。免疫チェックポイント阻害薬、分子標的薬(飲み薬)、抗体薬物複合体が含まれる
目印MSI-High、TMB-High(免疫の薬)。NTRK 融合、BRAF V600E 変異、RET 融合(飲み薬)。HER2陽性(エンハーツ)
使い方いずれも、承認された検査で目印を確かめてから。多くは「標準的な治療が困難な場合」に限る
日本での承認2018年12月 MSI-High、2019年6月 NTRK(エヌトレクチニブ、世界初)、2021年3月 NTRK(ラロトレクチニブ)、2022年2月 TMB-High、2023年11月 BRAF、2024年6月 RET、2026年3月 HER2
薬価の目安ロズリートレクカプセル200mg 10,073円、ヴァイトラックビカプセル100mg 14,542.9円、レットヴィモ錠80mg 7,717.4円、タフィンラーカプセル75mg 7,903.2円、メキニスト錠2mg 31,970.7円(薬価基準、令和8年8月13日適用)

SECTION 01 生まれた日:「臓器の名前」から「遺伝子の名前」へ

第26回からの分子標的薬は、「がんを動かしている遺伝子の変化」を狙う薬でした。ただ、承認は臓器ごとでした。肺がんの EGFR、乳がんの HER2、大腸がんの RAS。同じ遺伝子の変化が別の臓器のがんにあっても、その臓器で試験をしなければ使えません。 2010年代、「臓器ではなく変化で患者を集める」試験(バスケット試験)が始まります。2015年、悪性黒色腫の薬ベムラフェニブを、同じ BRAF 変異を持つ他のがんに使う試験で、肺がんなどには効き、大腸がんには効かないことが分かりました(Hyman ら、NEJM 2015)。「変化で選ぶ」考えの可能性と限界が、同時に見えた試験です。

2017年5月、米国は、遺伝子の修復が壊れた MSI-High のがんに、臓器を問わずペムブロリズマブ(第40回)を承認しました。12種類のがんの86人で半数が縮んだ結果によるものです(Le ら、Science 2017)。史上初の「臓器を問わない承認」でした。 翌2018年、NTRK という遺伝子の融合を持つがんの薬ラロトレクチニブが、17種類のがん55人の75%を縮め(Drilon ら、NEJM 2018)、米国で承認されます。NTRK 融合は、肺がんや大腸がんでは1%未満のまれな変化ですが、乳児の線維肉腫や乳腺分泌がんなど一部の希少がんではほとんどの人が持っています。

日本は2018年12月に MSI-High(ペムブロリズマブ)を承認。そして2019年6月18日、NTRK 融合のもう1つの薬エヌトレクチニブ(中外製薬)を、世界のどの国よりも先に承認しました。国の「先駆け審査指定制度」で審査を早めた成果です(ロズリートレクのインタビューフォーム)。 その後、2022年に TMB-High、2023年に BRAF 変異(国立がん研究センターの医師主導の研究「MASTER KEY プロジェクト」の成果で承認)、2024年に RET 融合、2026年に HER2陽性(第45回)が加わり、日本で「がんの種類を問わず」使える薬は7つになりました。

  • 2015年BRAF 変異のがんを臓器を問わず集めたバスケット試験。効くがんと効かないがんが分かる(Hyman ら、NEJM 2015)。
  • 2017年5月、米国で史上初の「臓器を問わない承認」(MSI-High、ペムブロリズマブ)。
  • 2018年NTRK 融合のがんで75%が縮む(Drilon ら、NEJM 2018)。11月、米国で承認。12月21日、日本で MSI-High を承認。
  • 2019年6月18日、日本がエヌトレクチニブを世界で最初に承認(NTRK 融合の固形がん)。
  • 2021年3月23日、ラロトレクチニブを承認。
  • 2022年2月、TMB-High の固形がんにペムブロリズマブを承認。
  • 2023年11月24日、BRAF 変異の固形がん(大腸がんを除く)にダブラフェニブ+トラメチニブを承認。日本の医師主導研究の成果。
  • 2024年6月24日、RET 融合の固形がんにセルペルカチニブを承認。2026年3月、HER2陽性の固形がんにエンハーツ。
臓器横断的(がん種横断的)な承認とは、「肺がん」「大腸がん」ではなく、「NTRK 融合遺伝子陽性の固形がん」のように、遺伝子の目印で対象を決める承認です。 目印が1%未満のまれなものだと、臓器ごとに比較試験を組むには人数が足りません。そこで、いろいろな臓器の患者を目印で集め、縮んだ人の割合(奏効率)で効き目を示す「バスケット試験」が使われます。比較試験より証拠の段は低い(第2304の関連記事)ので、多くは「標準的な治療が困難な場合」に限って承認されています。
ここだけ覚える2017年に米国、2018年に日本。2019年の NTRK は日本が世界初。いま6つの目印に7つの薬。

SECTION 02 どうやって効くのか:目印は同じでも、臓器で違うことがある

NTRK 融合、RET 融合、BRAF V600E 変異は、いずれも細胞に「増えろ」と言い続けるスイッチが壊れて入りっぱなしになった変化です。飲み薬でそのスイッチを止めると、どの臓器のがんでも縮みます。MSI-High と TMB-High は、変異が多くて免疫に見つかりやすいがんの印で、免疫のブレーキを外す薬(第40回)がよく効きます。 どちらも「がんを動かしている原因」に薬を当てるので、臓器を問わず効くのは理にかなっています。

  • 臓器が「抜け道」を持っていることがある大腸がんの BRAF 変異に BRAF の薬を使うと、細胞は別の道(EGFR)で増え続けます。だから大腸がんは承認から除かれ、EGFR の抗体(第24回)と組む別の治療が使われます。「目印が同じなら同じ薬」とは限りません。
  • まれな目印ほど、当たれば効くNTRK 融合は固形がん全体の1%未満ですが、持っているがんの多くは、この融合だけで増えています。だから当たれば7割前後が縮み、効き目も長く続きます。「よくあるがんの、まれな一部」(希少フラクション)を探す検査が、第48回のパネル検査です。
  • 脳に届く薬が選ばれてきたエヌトレクチニブとラロトレクチニブは脳に届きやすく設計され、脳転移にも効きます。子どもにも使えるよう、内用液(ラロトレクチニブ)や小児用の錠(ダブラフェニブ)が作られました。
ここだけ覚えるスイッチの故障を止めるから臓器を問わず効く。ただし大腸がんの BRAF のように、臓器が抜け道を持つことがある。

SECTION 03 なぜ承認されたのか:「縮んだ人の割合」で示した効き目

決め手になった試験

ラロトレクチニブは、17種類のがん(乳児線維肉腫、唾液腺がん、甲状腺がん、肺がん、大腸がんなど)の55人で75%が縮み、1年後も71%の人で効き続けました(Drilon ら、NEJM 2018)。日本の添付文書では89人で65.2%、唾液腺がんでは16人中14人が縮んでいます。 エヌトレクチニブは、3つの試験を合わせた54人で57%が縮み、脳転移のある人でも半数が縮みました(Doebele ら、Lancet Oncol 2020)。日本の添付文書では51人で56.9%です。

MSI-High では12種類のがん86人で53%が縮み、21%は消えました(Le ら、Science 2017)。TMB-High では、変異の多い102人の29%が縮み、変異の少ない人(6%)との差が示されました(Marabelle ら、Lancet Oncol 2020)。 BRAF V600E 変異では、甲状腺未分化がん36人の56%、胆道がんの半数前後が縮み(Subbiah ら、Nat Med 2023)、RET 融合では肺がんと甲状腺がん以外の41人で44%が縮みました(Subbiah ら、Nat Med 2022)。HER2陽性では、子宮内膜がん・子宮頸がん・卵巣がんなど75人の61%が縮んでいます(Meric-Bernstam ら、J Clin Oncol 2024)。

これらはすべて「くじ引きで分けた比較試験」ではなく、薬を使った人だけを追った試験です。人数が少ないまれな目印では、比較試験は現実に組めません。奏効率と効き目の持続で承認し、承認後に使用の記録を集めて確かめる。臓器横断的な薬は、承認の仕組みそのものを変えた薬でもあります。

目印薬(商品名)日本の承認決め手(奏効率)と薬代の目安
MSI-Highペムブロリズマブ(キイトルーダ)2018年12月Le 2017(12種類のがんで53%)。3週間で398,924円
NTRK 融合エヌトレクチニブ(ロズリートレク)2019年6月(世界初)Doebele 2020(57%)。1日600mg、30日で約91万円
NTRK 融合ラロトレクチニブ(ヴァイトラックビ)2021年3月Drilon 2018(75%)。1日200mg、30日で約87万円
TMB-Highペムブロリズマブ(キイトルーダ)2022年2月Marabelle 2020(29%)。3週間で398,924円
BRAF V600E 変異(大腸がんを除く)ダブラフェニブ+トラメチニブ(タフィンラー+メキニスト)2023年11月Subbiah 2023(甲状腺未分化がん56%など)。30日で約190万円
RET 融合セルペルカチニブ(レットヴィモ)2024年6月Subbiah 2022(44%)。1日320mg、30日で約93万円
HER2陽性トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)2026年3月Meric-Bernstam 2024(61%)。第45回。診断薬の承認待ち

表1 日本で「がんの種類を問わず」使える薬(添付文書と主な試験による、2026年9月時点)。薬代は薬価基準(令和8年8月13日適用)から、通常の量で計算。

制度のしくみ

添付文書は、いずれも「十分な経験を有する病理医又は検査施設」の検査で目印を確かめ、承認された検査を使うことを定めています。MSI-High と TMB-High は「がん化学療法後に増悪した」「標準的な治療が困難な場合に限る」、BRAF は「標準的な治療が困難な」固形腫瘍で大腸がんを除く、といった条件つきです。 目印は、がん遺伝子パネル検査(第48回)か、目印ごとの検査(コンパニオン診断)で見つけます。まれな目印は、パネル検査で初めて見つかることがほとんどです。

ここだけ覚える当たれば半数以上が縮む。ただし比較試験ではなく奏効率での承認。標準治療のあとが原則。

SECTION 04 副作用と、家でできること:めまい、発熱、血圧

NTRK の薬(エヌトレクチニブ、ラロトレクチニブ)は、添付文書で浮動性めまいが約3割、味覚の変化、体重増加、便秘、疲れ、肝酵素の上昇。ダブラフェニブ+トラメチニブは発熱が最も多く(併用で約半数)、皮疹、目の障害、心臓の働きの低下。セルペルカチニブは高血圧、肝機能障害、口の乾き、QT延長。ペムブロリズマブは免疫関連有害事象(第40回)、エンハーツは間質性肺疾患(第45回)です。

副作用と、家でできること

飲み薬の多くは家で続けます。NTRK の薬のめまいは、ふらつきと転倒につながるので、立ち上がりはゆっくり、夜のトイレは明かりをつけ、運転は主治医に相談します。多くは数週間で慣れますが、減量で軽くなります。体重増加は食欲の変化とむくみで、週1回の体重測定を続けます。 BRAF の薬の発熱は、飲み始めて数週間に多く、38度台の熱と悪寒が突然出ます。感染との区別がつきにくいので、発熱したら薬を休んで連絡するのが決まりです。セルペルカチニブの血圧は家で毎日測り、上が150を超える日が続けば連絡します。

  • こんなときはダブラフェニブ+トラメチニブで38度以上の発熱、悪寒、ふるえ
    こうする薬の発熱か感染か区別がつかない。薬を休んで、その日のうちに連絡する
  • こんなときはNTRK の薬で、強いめまい・ふらつき、転んだ、意識がぼんやりする
    こうする減量が必要な合図。転倒を防ぎ、主治医に連絡して量を相談する
  • こんなときはセルペルカチニブで血圧の上が150を超える日が続く、動悸、失神
    こうする高血圧・QT延長の合図。失神は救急へ。血圧はその日のうちに連絡する
気をつけること

飲み合わせに注意する薬が多く(NTRK・RET・BRAF の薬は、肝臓の酵素 CYP3A で分解されるので、抗真菌薬、一部の抗菌薬、グレープフルーツで血中濃度が上がります)、他の科で薬をもらうときは、お薬手帳を必ず見せます。 子どもに使う場合は体重で量が決まり、内用液や小児用の錠があります。妊娠の可能性のある女性は避妊が必要です。

在宅の現場では

「まれな目印」の薬を家で飲んでいる患者さんは、まだ多くありません。それでも、パネル検査の結果で NTRK や BRAF の薬にたどり着いた方の訪問は、年に数人あります。共通しているのは、「もう薬がない」と言われたあとに、飲み薬で年単位の時間を得ていることです。 訪問では、めまいと転倒、発熱、血圧、飲み合わせを確かめます。飲み薬は「飲み忘れ」と「自己判断の中断」が効き目を左右するので、飲んだ記録を一緒につけます。

これらの薬は、承認の根拠が「縮んだ人の割合」です。効いている間は続け、効かなくなればやめる。その判断は画像で行われるので、通院の画像検査を飛ばさないことが、在宅でも大切です。

ここだけ覚えるNTRK はめまいと転倒、BRAF は発熱、RET は血圧。飲み合わせはお薬手帳で。画像検査を飛ばさない。

SECTION 05 薬価と自己負担:月90〜190万円、自己負担は上限まで

薬価と自己負担の目安

ロズリートレクは1日600mg(200mg 3カプセル)で30,219円、30日で約91万円。ヴァイトラックビは100mgを1日2回で29,086円、30日で約87万円。レットヴィモは160mgを1日2回(80mg 4錠)で30,870円、30日で約93万円。タフィンラー(150mg 1日2回)+メキニスト(2mg 1日1回)は1日63,584円、30日で約190万円です(薬価基準、令和8年8月13日適用)。

自己負担は高額療養費の上限までで、70歳未満・年収約370〜770万円なら月85,800円+(医療費−286,000円)×1%、4か月目からは44,400円。70歳以上・一般なら外来は月22,000円が上限です(第1回の表1)。 まれな目印の薬は対象の患者が少ないため、薬価が高く設定されます。1人の患者にとっては上限までの負担ですが、効いている限り年単位で続く薬なので、総額は年1,000万〜2,000万円になります。

十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、NTRK融合遺伝子陽性が確認された患者に投与すること。検査にあたっては、承認された体外診断用医薬品又は医療機器を用いること。 出典:バイエル薬品「ヴァイトラックビカプセル 添付文書」、効能又は効果に関連する注意の項
ここだけ覚える月90〜190万円、自己負担は上限まで。まれな目印の薬は高く、年単位で続く。
在宅医の視点

「どこにできたか」から「何で動いているか」へ。がんの見方そのものが変わった。

この連載の前半で書いた殺細胞薬は、がんの臓器ごとに組み合わせが決まっていました。後半の分子標的薬は、臓器の中で「効く人」を検査で選ぶ薬でした。そして臓器横断的な薬は、臓器の壁を越えて「同じ故障」を持つがんを1つの病気として扱います。80年かけて、がんの分類が「場所」から「仕組み」に移ったのです。

在宅で私たちが出会うのは、その変化の末端です。「もう薬がない」と言われた患者さんが、パネル検査で1%未満の目印を見つけ、飲み薬で年を越す。まれなことですが、起こります。その「まれ」を見逃さないために、第48回のパネル検査があり、この回の薬があります。最終回は、その目印を血液で追う技術の話で、連載を締めくくります。

利用のご案内

「この薬、家ではどう気をつければいいですか」と聞ける主治医を、持ってください。

ふくろう訪問クリニックは、福岡市早良区の在宅医療のクリニックです。 ご自宅はもちろん、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームへも医師が伺います。 病院で抗がん剤の治療を受けながら、家での体調管理や副作用の相談をしたい。飲み薬の治療を家で続けている。 病院の治療を終えて、これからの暮らしを考えたい。どの段階のご相談でもかまいません。ご家族だけでのお問い合わせも歓迎します。

ふくろう訪問クリニック(訪問診療) 福岡市早良区荒江2-6-37 第2渡辺ビル1階
お電話:092-407-7337
メール:clinic@fukurou.fukuoka.jp
クリニックのご案内
ふくろう訪問看護リハビリステーション 看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が伺います。
お電話:092-834-8581(平日 9:00〜18:00)
メール:nurse@fukurou.fukuoka.jp
ステーションのご案内

訪問看護は、ふくろう訪問クリニック以外がかかりつけの方でもご利用いただけます。 主治医を変える必要はありません。

採用のご案内

在宅医療の現場で、一緒に働く方を募集しています。

ふくろう訪問クリニック 入職祝い金20万円直接応募限定 医師(常勤・非常勤)/看護師/医療事務
お電話:092-407-7337
メール:clinic@fukurou.fukuoka.jp
採用情報のページ
ふくろう訪問看護リハビリステーション 入職祝い金20万円直接応募限定 看護師/理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(常勤・非常勤)
お電話:092-834-8581(平日 9:00〜18:00)
メール:nurse@fukurou.fukuoka.jp
求人情報のページ

入職祝い金は、クリニック・ステーションのどちらも20万円です。 人材紹介会社を通さず直接ご応募いただいた方が対象になります。 見学だけでも歓迎します。訪問の経験がない方、ブランクのある方もご相談ください。

Q&A よくある質問

Qパネル検査で「NTRK 融合」と出ました。これは効く薬があるということですか。
Aはい。NTRK 融合遺伝子が承認された検査で確認されれば、エヌトレクチニブかラロトレクチニブが、がんの種類を問わず保険で使えます。試験では6〜7割の人が縮み、効き目は年単位で続くことが多い薬です。ただし、パネル検査の結果によっては「確定のための追加検査」が要ることがあり、また手術の補助療法(再発予防)には使えません。エキスパートパネルの記録に、使える薬と条件が書かれています。
Q大腸がんで BRAF 変異があります。タフィンラー+メキニストは使えないのですか。
A大腸がんは、この承認から除かれています。大腸がんの BRAF 変異のがんは、BRAF を止めると別の道(EGFR)で増え続けることが分かっており、BRAF の薬と EGFR の抗体(セツキシマブ、第24回)を組む治療(エンコラフェニブ+セツキシマブ)が、大腸がんの承認薬として別にあります。「同じ目印でも臓器で治療が違う」代表例です。主治医に、大腸がんでの選択肢を聞いてください。
Q「比較試験ではない承認」と聞くと不安です。効かないこともありますか。
Aあります。奏効率が7割の薬なら、3割の人は縮みません。また「縮んだ人の割合」は、「生存が延びた」ことを直接には示しません。それでも承認されたのは、まれな目印では比較試験が組めず、縮まなければ数か月で進むはずのがんが、年単位で抑えられている人が多いからです。使ってみて、画像で効いているかを確かめ、効かなければやめる。この「確かめながら使う」ことが、この薬たちの前提です。根拠の強さの順番は、関連記事(詐欺医療に騙されない)にまとめています。

この回のチェックリスト(第49回ぶん)

  • パネル検査の結果に「がんの種類を問わず使える薬」があるかを、エキスパートパネルの記録で確かめる。
  • NTRK の薬:立ち上がりはゆっくり、夜は明かりを。転んだら減量の相談。
  • BRAF の薬:38度以上の発熱は薬を休んで連絡する。
  • RET の薬:血圧を毎日測り、上が150を超える日が続けば連絡する。
  • 他の科の薬、抗真菌薬、グレープフルーツは飲み合わせを確かめる。画像検査を飛ばさない。

この回に関連する記事

連載の外にある、ふくろう訪問クリニックのコラムです。この回の内容をさらに掘り下げたいときに読んでください。

連載「優秀な抗がん剤」全50回

  1. 抗がん剤80年の歴史——毒ガスから「自分の細胞」まで、80年でここまで来た
  2. シクロホスファミド——毒ガスの研究から生まれた、最初の抗がん剤
  3. メトトレキサート——白血病の子どもに、初めて「寛解」をもたらした薬
  4. フルオロウラシル(5-FU)——60年以上、消化器がんの土台であり続ける理由
  5. ビンクリスチン——糖尿病の薬を探していたら、白血病の薬が見つかった
  6. ドキソルビシン——アドリア海の土から生まれた「赤い薬」と、心臓の話
  7. シスプラチン——電極の実験の偶然が、精巣がんを「治る病気」に変えた
  8. カルボプラチン——腎臓と吐き気にやさしく設計された、シスプラチンの「弟」
  9. パクリタキセル——イチイの木を切り尽くす前に、葉から作れるようになるまで
  10. ドセタキセル——前立腺がんで初めて「延命」を証明した化学療法
  11. ゲムシタビン——抗ウイルス薬の候補が、膵がんの標準治療になるまで
  12. ペメトレキセド——蝶の羽の色素の研究から生まれた、肺がんと中皮腫の薬
  13. テモゾロミド——脳腫瘍の治療を変えた、家で飲める抗がん剤
  14. オキサリプラチン——名古屋で生まれ、フランスで育ち、日本に帰ってきた薬
  15. イリノテカン——中国の木の成分を、日本の乳酸菌の会社が薬にした
  16. S-1(ティーエスワン)——日本生まれの「飲む5-FU」が、世界の標準を変えた
  17. タモキシフェン——避妊薬の失敗作が、世界で最も使われた乳がんの薬になった
  18. アロマターゼ阻害薬——「女性ホルモンを作らせない」という発想の乳がん治療
  19. リュープロレリン——武田薬品の徐放製剤が変えた、前立腺がんのホルモン療法
  20. エンザルタミドとアビラテロン——前立腺がんのホルモン療法に「上乗せ」する時代へ
  21. リツキシマブ——世界初のがん抗体医薬。CHOPに「R」がついて何が変わったか
  22. トラスツズマブ——HER2という「敵の印」を初めて狙い撃ちした薬
  23. ベバシズマブ——「がんは血管を呼ぶ」という仮説から、30年かけて薬になった
  24. セツキシマブとパニツムマブ——皮疹が出る人ほど効く、大腸がんの抗体薬
  25. ゾルベツキシマブ——胃の細胞の「接着剤」を狙う、2024年の新しい胃がんの薬
  26. イマチニブ——「魔法の弾丸」が、死の病だった白血病を飲み薬で抑えた
  27. オシメルチニブ——イレッサの光と影から、第3世代の肺がんの薬へ
  28. アレクチニブ——自治医大の発見を中外製薬が薬にした、純国産の肺がん治療薬
  29. レンバチニブ——エーザイの研究所から生まれた、肝がん・甲状腺がんの飲み薬
  30. エベロリムス——イースター島の土から見つかった成分の子孫
  31. CDK4/6阻害薬——お蔵入り寸前の化合物が、乳がんのホルモン療法を変えた
  32. オラパリブ——「合成致死」という発想と、BRCA遺伝子検査
  33. RASの40年——「薬にできない」と言われた標的に、ソトラシブからダラクソンラシブへ
  34. レナリドミド——サリドマイド薬害から復活した、骨髄腫の薬
  35. ダラツムマブ——点滴8時間が皮下注5分になった、骨髄腫の抗体薬
  36. ベネトクラクス——「細胞の自殺」を止めるタンパクを外す、高齢者の白血病の薬
  37. トレチノインと亜ヒ酸——ビタミンAの仲間と「毒」が、最も治る白血病を作った
  38. イピリムマブ——免疫の「ブレーキ」を外す最初の薬と、ノーベル賞
  39. ニボルマブ(オプジーボ)——本庶佑のPD-1と、薬価をめぐる騒動
  40. ペムブロリズマブ(キイトルーダ)——開発中止寸前だった薬が、世界一売れる薬になった
  41. アテゾリズマブ+ベバシズマブ——肝がんの一次治療を10年ぶりに変えた組み合わせ
  42. 二重特異性抗体——片手でがん、片手で免疫細胞をつかむ薬
  43. CAR-T細胞療法——6歳の少女を救った「自分の免疫細胞を薬にする」治療
  44. mRNAがんワクチン——コロナワクチンの技術で、患者ごとに作る「オーダーメイド」
  45. トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)——第一三共の「がんに薬を運ぶミサイル」
  46. エンホルツマブ ベドチンとADC——40年続いたシスプラチンの時代を終わらせた薬
  47. ルテチウム-177——「診断と治療を同じ分子で」放射線を出す薬が家に帰るとき
  48. がん遺伝子パネル検査——56万円で数百の遺伝子を読み、薬にたどり着くのは約1割
  49. 臓器横断的な薬——「臓器ではなく遺伝子で」薬を選ぶ時代
  50. リキッドバイオプシー——血液でがんの遺伝子を追い、再発の芽を見る

薬のこと・お金のことの相談先

電話番号や制度の内容は変わることがあります。最新の内容は各ページでご確認ください。治療中の方も、治療を終えた方も、ご家族だけでも相談できます。

  • 治療を受けている病院の外来・化学療法室副作用が出たとき、まず連絡する先です。夜間や休日の連絡先は、治療の説明書や「治療日誌」に書かれていることが多いので、目につく場所に貼っておいてください。
  • がん相談支援センター治療や薬のこと、お金や仕事のことを無料で相談できます。県内すべてのがん拠点病院にあり、その病院にかかっていなくても利用できます/福岡県「福岡県内のがん拠点病院がん相談支援センター」
  • がん情報サービス(国立がん研究センター)がんの種類ごとの標準治療と、使われる薬の情報を、公的機関がまとめています/ganjoho.jp
  • くすりのしおり(くすりの適正使用協議会)処方された薬の飲み方・注意・副作用を、薬の名前で調べられる患者向けの情報です/rad-ar.or.jp/siori
  • 高額療養費制度の窓口(加入している健康保険)1か月の自己負担に上限を設ける制度です。会社の健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の国民健康保険・後期高齢者医療広域連合など、保険証(資格確認書)に書かれた保険者に申請します。マイナ保険証を使えば、窓口での支払いが最初から上限額までになります/厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
  • かかりつけ薬局の薬剤師飲み薬の抗がん剤と、ほかの薬・サプリメント・食べ物との飲み合わせは、薬局で確かめられます。お薬手帳を1冊にまとめておくと早いです。

REFERENCE 参考資料

  1. 中外製薬「ロズリートレクカプセル100mg/200mg 添付文書」(販売開始2019年9月)(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/450045_4291061M1025_1_11)、同 医薬品インタビューフォーム(開発の経緯:2018年3月先駆け審査指定、2019年6月承認、2019年8月米国承認);バイエル薬品「ヴァイトラックビカプセル25mg/100mg・内用液 添付文書」(販売開始2021年7月)(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/630004_4291071M1029_1_11)、同 医薬品インタビューフォーム(2018年11月米国、2021年3月日本承認)
  2. 日本イーライリリー「レットヴィモ錠40mg/80mg 添付文書」(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/530471_4291075F1028_1_05);ノバルティス ファーマ「タフィンラーカプセル50mg/75mg・小児用分散錠 添付文書」(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/300242_4291046M1020_1_16)、同 医薬品インタビューフォーム(2023年11月固形腫瘍・有毛細胞白血病、2024年9月小児用分散錠);MSD「キイトルーダ点滴静注100mg 添付文書」(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/170050_4291435A2025_1_28)
  3. 厚生労働省「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和8年8月13日適用)」(https://www.mhlw.go.jp/topics/2026/04/tp20260401-01.html);国立がん研究センター プレスリリース「中央病院「MASTER KEY プロジェクト」の研究成果によって BRAF V600E 遺伝子変異陽性固形腫瘍に対するがん種横断的治療薬が日本で薬事承認」2023年11月24日(https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2023/1124/index.html)
  4. Hyman DM, et al. Vemurafenib in multiple nonmelanoma cancers with BRAF V600 mutations. N Engl J Med. 2015;373(8):726-736(https://doi.org/10.1056/NEJMoa1502309);Le DT, et al. Mismatch repair deficiency predicts response of solid tumors to PD-1 blockade. Science. 2017;357(6349):409-413(https://doi.org/10.1126/science.aan6733)
  5. Drilon A, et al. Efficacy of larotrectinib in TRK fusion-positive cancers in adults and children. N Engl J Med. 2018;378(8):731-739(https://doi.org/10.1056/NEJMoa1714448);Hong DS, et al. Larotrectinib in patients with TRK fusion-positive solid tumours: a pooled analysis of three phase 1/2 clinical trials. Lancet Oncol. 2020;21(4):531-540(https://doi.org/10.1016/S1470-2045(19)30856-3);Doebele RC, et al. Entrectinib in patients with advanced or metastatic NTRK fusion-positive solid tumours: integrated analysis of three phase 1-2 trials. Lancet Oncol. 2020;21(2):271-282(https://doi.org/10.1016/S1470-2045(19)30691-6)
  6. Marabelle A, et al. Association of tumour mutational burden with outcomes in patients with advanced solid tumours treated with pembrolizumab: prospective biomarker analysis of the multicohort, open-label, phase 2 KEYNOTE-158 study. Lancet Oncol. 2020;21(10):1353-1365(https://doi.org/10.1016/S1470-2045(20)30445-9);Subbiah V, et al. Tumour-agnostic efficacy and safety of selpercatinib in patients with RET fusion-positive solid tumours other than lung or thyroid tumours (LIBRETTO-001): a phase 1/2, open-label, basket trial. Nat Med. 2022;28(8):1640-1645(https://doi.org/10.1038/s41591-022-01931-y)
  7. Subbiah V, et al. Dabrafenib plus trametinib in BRAF V600E-mutated rare cancers: the phase 2 ROAR trial. Nat Med. 2023;29(5):1103-1112(https://doi.org/10.1038/s41591-023-02321-8);Meric-Bernstam F, et al. Efficacy and safety of trastuzumab deruxtecan in patients with HER2-expressing solid tumors: primary results from the DESTINY-PanTumor02 phase II trial. J Clin Oncol. 2024;42(1):47-58(https://doi.org/10.1200/JCO.23.02005)
  8. 国立がん研究センター がん情報サービス「がんゲノム医療 もっと詳しく」(https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/genomic_medicine/genmed02.html)
本記事は、添付文書・学術論文・公的機関の資料をもとに、それぞれの薬について現時点で分かっていることを、 一般の方向けに整理したものです。記事中の効果の数字は臨床試験に参加した集団の結果であり、 一人ひとりの効き方や副作用の現れ方とは異なります。薬価は記載時点の薬価基準によるもので、改定で変わります。 治療の選択・変更・中止は、必ず主治医とご相談ください。研究は日々更新されますので、 記載の内容は公開時点のものとしてお読みください。