コロナワクチンの技術で、患者ごとに作る「オーダーメイド」
「がんワクチン」は、100年以上、失敗の歴史でした。多くの患者に共通する目印を狙ったからです。2010年代、遺伝子を高速で読む技術と、新型コロナワクチンで実用化された mRNA の技術が組み合わさり、患者一人ひとりのがんの変異に合わせて作るワクチンが生まれました。2026年8月、その第3相試験が世界で初めて成功しました。 この回の薬は、まだどの国でも承認されていません。BCG 膀胱内注入から始まる免疫療法の歴史、その人だけの設計図を書く6つの手順、再発を44%減らした第2相と数字がまだ出ていない第3相、膵がんの小さな試験、そして「がんワクチン」を名乗る自由診療との見分け方まで書きます。
この回の結論
- 「がんワクチン」は、100年以上、失敗の歴史でした。多くの患者に共通する目印を狙ったため、免疫が本気で攻めなかったからです。2010年代、遺伝子を高速で読む技術と、新型コロナワクチンで実用化された mRNA の技術が組み合わさり、患者一人ひとりのがんの変異に合わせて作るワクチンが生まれました。
- 2026年8月、手術で取り切った悪性黒色腫の患者1,137人で、mRNAワクチンをペムブロリズマブ(第40回)に足すと再発が減ったと、第3相試験で世界で初めて報告されました。まだ承認されておらず、数値も公表されていません。膵がんでも、小さな試験で有望な結果が出ています。
- この回の薬は、2026年9月時点で日本でも海外でも承認されていません。薬価はなく、受けられるのは治験だけです。「がんワクチン」を名乗る自由診療とは別物です。いま受けられる、証明された「がんのワクチン」は、子宮頸がんを防ぐ HPV ワクチンと、膀胱がんの BCG 膀胱内注入です。
この薬のプロフィール
| 一般名(商品名) | インチスメラン アウトジーン(開発名 mRNA-4157/V940。モデルナとメルクが共同開発。商品名は未定)、アウトジーン セブメラン(ビオンテックとジェネンテック、膵がんで開発中) |
|---|---|
| 薬の家族 | 個別化ネオ抗原 mRNA ワクチン(治療用のがんワクチン)。患者ごとに作る |
| 主に使うがん | 手術で取り切った悪性黒色腫(ステージⅡB〜Ⅳ)の再発予防。開発中:肺がん、膀胱がん、腎がん、膵がん など |
| 使い方 | 手術で取ったがんの遺伝子を読み、その人だけの目印(最大34個)を1本の mRNA に書いて製造(数週間)。3週間ごとに筋肉注射(最大9回)、ペムブロリズマブの点滴と併用して約1年 |
| 日本での承認 | 未承認(2026年9月時点。海外でも未承認)。第3相試験の結果をもとに承認申請が予定されている。日本の施設も第3相試験に参加 |
| 薬価の目安 | 薬価なし(未承認)。承認されれば、薬価収載の手続きを経て決まる |
SECTION 01 生まれた日:100年の失敗と、コロナワクチンがくれた技術
「免疫にがんを覚えさせる」試みは古く、1976年、カナダの医師が結核のワクチン BCG を膀胱がんの患者の膀胱に注入し、再発が減ることを示しました(Morales ら、J Urol 1976)。これは今も、筋肉に達していない膀胱がんの標準治療です(日本ではイムノブラダー、1997年発売)。免疫を「ざっくり」目覚めさせる治療は、ここで1つ成功しました。 しかし、「がんの目印を免疫に覚えさせる」本来のワクチンは、その後30年、失敗を重ねます。2010年に米国で承認された前立腺がんのワクチン(シプリューセル-T)は、生存を4か月延ばしましたが(Kantoff ら、NEJM 2010)、効果は小さく、日本には入りませんでした。
失敗の理由は、狙う目印にありました。多くの患者に共通する目印は、正常な細胞にも少しはあるため、免疫は生まれつき「本気で攻めない」ように訓練されています。答えは、その人のがんにだけある変異から生まれた目印「ネオ抗原」を狙うことでした。 2010年代、遺伝子を高速で読む技術が安くなり、がんと正常組織を比べて変異を全部見つけ、免疫が見つけやすいものを計算機で選ぶことができるようになります。2017年、ドイツのビオンテック(第25回のガニメドの創業者、シャヒンとテュレジが作った会社)が RNA で(Sahin ら、Nature 2017)、米国のグループがペプチドで(Ott ら、Nature 2017)、患者ごとに作ったワクチンで免疫が動くことを、悪性黒色腫の患者で示しました。
もう1つの部品が mRNA でした。体の中で壊れやすく、炎症を起こす mRNA を薬にする研究は長く「無理」とされていましたが、2005年、ペンシルベニア大学のカタリン・カリコとドリュー・ワイスマンが、mRNA の部品を少し変えると炎症を起こさずに細胞に届くことを見つけます(Karikó ら、Immunity 2005)。2人は2023年にノーベル賞を受けました。 2020年、この技術で新型コロナワクチンが作られ、mRNA を大量に、速く、安全に作れることが世界で証明されました。ビオンテックもモデルナも、もともとはがんのワクチンを作るための会社でした。コロナで得た技術と資金が、がんに戻ってきたのです。
- 1976年BCG の膀胱内注入が、膀胱がんの再発を減らす(Morales ら、J Urol 1976)。いまも標準治療。
- 2005年mRNA の部品を変えると炎症を起こさずに届く(Karikó ら、Immunity 2005)。2023年ノーベル賞。
- 2010年米国で前立腺がんのワクチン(シプリューセル-T)を承認。効果は小さく、日本には入らず。
- 2017年患者ごとに作るネオ抗原ワクチンで免疫が動く(Sahin ら、Ott ら、Nature 2017)。
- 2020年新型コロナの mRNA ワクチン。製造技術が実用化される。
- 2023年膵がん16人の小さな試験で、免疫が動いた8人は1年半再発なし(Rojas ら、Nature 2023)。
- 2024年悪性黒色腫の術後157人の第2相試験で、再発が44%減(Weber ら、Lancet 2024)。
- 2026年8月19日、1,137人の第3相試験で再発が減ったと発表。個別化がんワクチンの第3相成功は世界初。承認申請へ。
SECTION 02 どうやって効くのか:手術で取ったがんから、その人だけの設計図を書く
手順は6段階です。手術で取ったがんと正常な組織の遺伝子を読み、がんにだけある変異を一覧にします。その人の免疫の「型」(HLA)を調べ、免疫が見つけやすい変異を計算機で最大34個選びます。34個の設計図を1本の mRNA に書き、脂質の粒(脂質ナノ粒子)に包みます。これは新型コロナワクチンと同じ仕組みです。 その人1人分だけを製造して届け(数週間)、3週間ごとに筋肉に注射します。体の中で設計図から目印が作られ、それを覚えたT細胞が、手術後に残っているかもしれないがん細胞を探しに行きます。
- 手術のあとに使う理由再発の多くは最初の2年に、離れた臓器への転移として起こります。画像に映らない残りかすが相手なら、敵の数が最も少ない時期に免疫で押さえ込める可能性が高い。だから「進行したがんを縮める」のではなく「手術のあとの再発を防ぐ」試験から始まりました。
- ブレーキ外しと組む理由ワクチンで「誰を攻めるか」を教えても、がんの現場でブレーキ(PD-1)を踏まれれば止まります。ペムブロリズマブでブレーキを外し、ワクチンで標的を教える。両方そろって初めて働く設計です。試験の対照群は、すでに再発を4割減らす標準治療(ペムブロリズマブ)でした。
- 在庫がない薬患者ごとに作るので、在庫はありません。手術から製造まで数週間かかり、その間にペムブロリズマブを先に始めます。CAR-T細胞療法(第43回)と同じく、「作る時間」が治療の一部です。
SECTION 03 なぜ「世界初」なのか:第2相で再発44%減、第3相で成功、まだ数字は出ていない
2024年、手術で取り切った悪性黒色腫(ステージⅢB〜Ⅳ)157人を、くじ引きで2対1に「ワクチン+ペムブロリズマブ」と「ペムブロリズマブだけ」に分けた第2相試験で、再発または死亡のリスクは44%減り、18か月後に再発していない人は62%対79%でした(Weber ら、Lancet 2024)。 5年後の追跡でも、再発のリスクは49%減、遠隔転移は59%減、死亡は53%減と、効果は続いていました(Khattak ら、J Clin Oncol 2026)。ただし人数が少なく、信頼区間は広いものでした。
そこで、1,137人の第3相試験が行われました。対象はステージⅡB〜Ⅳの手術後、対照はペムブロリズマブ単独(すでに再発を4割減らす標準治療)です。2026年8月19日、両社は主要評価項目の無再発生存期間と、副次評価項目の遠隔転移なし生存期間を達成したと発表しました。個別化ネオ抗原療法として、また mRNA を使うがん治療として、第3相試験の成功は世界で初めてです。 ただし、公表されたのは「達成した」という事実だけで、何%減ったか、どの病期で効いたか、生存が延びたかは、まだ出ていません。数字は今後の学会と論文で示され、承認の審査はそれからです。
膵がんでは、ビオンテックの mRNA ワクチンを手術後の16人に使った小さな試験で、免疫が動いた8人は1年半のあいだ再発がなく、動かなかった8人は中央値13.4か月で再発しました(Rojas ら、Nature 2023)。3年後の追跡でも、免疫が動いた人の再発は少ないままで、ワクチンで作られたT細胞は何年も残ると推定されました(Sethna ら、Nature 2025)。人数が少なく、くじ引きの試験ではないので、いま第2相試験(約260人)で確かめられています。
| 種類 | 何を狙うか | いまの位置づけ(2026年9月) |
|---|---|---|
| 予防のワクチン(HPV、B型肝炎) | がんの原因になるウイルスを防ぐ | 証明ずみ。HPV ワクチンは定期接種。子宮頸がん・肝がんを減らす |
| BCG 膀胱内注入 | 免疫を「ざっくり」目覚めさせる | 証明ずみ。筋肉に達していない膀胱がんの標準治療(1976年〜) |
| 共通の目印を狙う治療ワクチン | 多くの患者に共通するがんの目印 | 多くが第3相で失敗。前立腺がんの1つが米国で承認(効果は小さい、日本未承認) |
| 個別化ネオ抗原 mRNA ワクチン | その人のがんにだけある変異 | 悪性黒色腫の術後で第3相成功(2026年8月、数値は未公表)。未承認。膵がんは第2相 |
| 自由診療の「がんワクチン」「樹状細胞ワクチン」 | 多くは共通の目印 | 比較試験の証明がなく、全額自己負担。上の4つとは別物 |
表1 「がんのワクチン」と呼ばれるものの整理。同じ「ワクチン」でも、証明の段階がまったく違う。
個別化ネオ抗原 mRNA ワクチンは、2026年9月時点で、日本でも米国・欧州でも承認されていません。受けられるのは治験だけで、日本では国立がん研究センター中央病院などが第3相試験に参加しました。治験の情報は、主治医を通して確かめます(第33回)。個人輸入はできません。 承認されれば、薬事審査を経て薬価が決まり、高額療養費の対象になります。CAR-T細胞療法(第43回)のように、実施できる施設と対象を限る仕組みが作られる可能性があります。
SECTION 04 副作用と、家でできること:注射のあとの発熱と、免疫の薬の副作用
第2相試験では、ワクチンを足したことで増えた副作用は、注射した部位の痛み、疲れ、発熱、悪寒で、多くは軽く1〜2日で治まりました。重い副作用の頻度は、ペムブロリズマブ単独と大きく変わらなかったと報告されています(Weber ら、Lancet 2024)。第3相試験でも「新たな安全性の懸念はなかった」と発表されています。 添付文書はまだ存在しないので、頻度の数字はこの回には書けません。
治験に参加している方の家で見るのは、2つです。注射のあと1〜2日の発熱・だるさ・注射部位の痛みは、新型コロナワクチンと同じ性質のもので、水分と休養、必要なら解熱剤で乗り切ります。3日以上続く発熱は、別の原因(感染症、免疫の薬の副作用)を疑います。 もう1つはペムブロリズマブの副作用で、これは第40回に書いたとおりです。皮膚、腸、肝臓、肺、内分泌の順に、数週間から数か月で出ます。ワクチンの反応と、免疫の薬の副作用は、時期と続き方で見分けます。
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こんなときは注射から3日以上続く発熱、息切れ、咳こうするワクチンの反応ではない。感染症か間質性肺疾患の合図。その日のうちに治験の担当医へ連絡する
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こんなときは1日3〜4回以上の下痢、のどの渇きと多尿、動けない疲れこうする免疫の薬の副作用(大腸炎、1型糖尿病、副腎不全)。第40回のとおり、様子を見ずに連絡する
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こんなときは「がんワクチン」「免疫を上げる」の広告や勧誘を受けたこうする受ける前に、主治医か当院に相談する。関連記事(詐欺医療に騙されない)を読む
「がんワクチン」という言葉は、自由診療の広告に最も多く使われる言葉の1つです。樹状細胞ワクチン、ペプチドワクチン、自家がんワクチン。数百万円の費用で、比較試験の証明がないものがほとんどです。この回で書いた mRNA ワクチンは、そうした治療とは製造も証明も別物で、自由診療では受けられません。 「第3相試験で成功した」という報道を根拠に、無関係な治療を勧める広告が出ることが予想されます。「その治療の名前で、くじ引きの比較試験があるか」を確かめてください。
在宅で、この薬を使っている患者さんにはまだ出会いません。出会うのは、「がんワクチンの広告を見た」と相談してくる患者さんとご家族です。そのとき私たちは、この回の表1を見せながら、「証明ずみのワクチン」「第3相で成功したが未承認のワクチン」「証明のない自由診療」の3つを分けて説明します。 希望を否定するのではなく、希望の置き場所を正しくする。それが、この回を書いた理由です。
承認されたら、手術のあとの1年を、3週間ごとの注射と6週間ごとの点滴で過ごす患者さんが家に増えるでしょう。注射の翌日の発熱を見て、免疫の薬の副作用を見張り、「再発を防ぐ1年」を支える。準備は、いまから始めています。
SECTION 05 薬価と自己負担:薬価はまだない。決まる仕組みだけ書いておく
この薬には、まだ薬価がありません。承認されたときに、製造の費用や海外の価格、似た薬との比較で薬価が算定されます。患者ごとに製造する薬の先例は CAR-T細胞療法(第43回、1回3,264万円)で、この薬も高額になる可能性がありますが、いまの時点で額を書くことはできません。 治験の間は、治験薬の費用は製薬会社が負担し、患者さんは通常の診療分(併用するペムブロリズマブなど)の自己負担だけです。
承認されれば高額療養費の対象になり、70歳未満・年収約370〜770万円なら月85,800円+(医療費−286,000円)×1%、4か月目からは44,400円。70歳以上・一般なら外来は月22,000円が上限です(第1回の表1)。薬価が1,000万円でも3,000万円でも、患者さんの自己負担はこの範囲に収まります。 一方、自由診療の「がんワクチン」は、高額療養費の対象になりません。数百万円が全額自己負担で、証明もない。値段の高さは、効き目の証明ではありません。
「まだ承認されていない薬」を、なぜ50回のうちの1回に入れたのか。
この連載は「優秀な抗がん剤」を、承認され、比較試験で証明された薬に限って書いてきました。この回だけが例外です。理由は2つ。第3相試験の成功が「がんワクチン」の100年の歴史を変える出来事であること。そして、この報道をきっかけに、無関係な「がんワクチン」の広告が患者さんの元に届くことが目に見えているからです。 希望と詐欺は、同じ言葉を使います。分ける物差しは、いつも同じ。くじ引きの比較試験があるか、承認されているか、保険で受けられるか。
第7章「免疫を使う」はこの回で終わります。ブレーキを外す薬(第38〜41回)、T細胞を連れて行く薬(第42回)、T細胞を作り変える薬(第43回)、そして標的を教える薬(第44回)。80年前、毒ガスから始まった抗がん剤は、いま「自分の免疫にがんを教える」ところまで来ました。次の章では、がんに薬を「運ぶ」「照らす」技術を書きます。
「この薬、家ではどう気をつければいいですか」と聞ける主治医を、持ってください。
ふくろう訪問クリニックは、福岡市早良区の在宅医療のクリニックです。 ご自宅はもちろん、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームへも医師が伺います。 病院で抗がん剤の治療を受けながら、家での体調管理や副作用の相談をしたい。飲み薬の治療を家で続けている。 病院の治療を終えて、これからの暮らしを考えたい。どの段階のご相談でもかまいません。ご家族だけでのお問い合わせも歓迎します。
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Q&A よくある質問
この回のチェックリスト(第44回ぶん)
- 「がんワクチン」の広告や勧誘は、受ける前に主治医か当院に相談する。くじ引きの比較試験があるかを確かめる。
- 治験に参加中なら、注射から3日以上続く発熱・息切れ・咳は、その日のうちに担当医へ連絡する。
- ペムブロリズマブの副作用(下痢、のどの渇き、疲れ)は第40回のとおり、様子を見ずに連絡する。
- 自分のがんで治験があるかは、主治医を通して確かめる。個人輸入はしない。
- HPV ワクチンと B型肝炎ワクチンは、証明された「がんのワクチン」。家族の接種の機会を確かめる。
この回に関連する記事
連載の外にある、ふくろう訪問クリニックのコラムです。この回の内容をさらに掘り下げたいときに読んでください。
- 「がんワクチン」の第3相試験が、世界で初めて成功したこの回で書いた第3相試験 INTerpath-001 の設計と、公表された内容・まだ分からないことを、発表当日に詳しく整理した記事です。
- 免疫細胞療法(ANK療法・樹状細胞療法など):詐欺医療に騙されない「がんワクチン」「樹状細胞ワクチン」を名乗る自由診療と、この回の薬の違いを見分ける材料です。
- 根拠には強さの順番がある:詐欺医療に騙されないこの回の「決め手になった試験」が、体験談・動物実験・比較試験のどの段にあるかを、一枚の表で確かめられます。
- 臨床試験で確かめること第1相〜第3相の試験がそれぞれ何を確かめる段階なのかを、人数と期間まで含めて説明しています。
連載「優秀な抗がん剤」全50回
- 抗がん剤80年の歴史——毒ガスから「自分の細胞」まで、80年でここまで来た
- シクロホスファミド——毒ガスの研究から生まれた、最初の抗がん剤
- メトトレキサート——白血病の子どもに、初めて「寛解」をもたらした薬
- フルオロウラシル(5-FU)——60年以上、消化器がんの土台であり続ける理由
- ビンクリスチン——糖尿病の薬を探していたら、白血病の薬が見つかった
- ドキソルビシン——アドリア海の土から生まれた「赤い薬」と、心臓の話
- シスプラチン——電極の実験の偶然が、精巣がんを「治る病気」に変えた
- カルボプラチン——腎臓と吐き気にやさしく設計された、シスプラチンの「弟」
- パクリタキセル——イチイの木を切り尽くす前に、葉から作れるようになるまで
- ドセタキセル——前立腺がんで初めて「延命」を証明した化学療法
- ゲムシタビン——抗ウイルス薬の候補が、膵がんの標準治療になるまで
- ペメトレキセド——蝶の羽の色素の研究から生まれた、肺がんと中皮腫の薬
- テモゾロミド——脳腫瘍の治療を変えた、家で飲める抗がん剤
- オキサリプラチン——名古屋で生まれ、フランスで育ち、日本に帰ってきた薬
- イリノテカン——中国の木の成分を、日本の乳酸菌の会社が薬にした
- S-1(ティーエスワン)——日本生まれの「飲む5-FU」が、世界の標準を変えた
- タモキシフェン——避妊薬の失敗作が、世界で最も使われた乳がんの薬になった
- アロマターゼ阻害薬——「女性ホルモンを作らせない」という発想の乳がん治療
- リュープロレリン——武田薬品の徐放製剤が変えた、前立腺がんのホルモン療法
- エンザルタミドとアビラテロン——前立腺がんのホルモン療法に「上乗せ」する時代へ
- リツキシマブ——世界初のがん抗体医薬。CHOPに「R」がついて何が変わったか
- トラスツズマブ——HER2という「敵の印」を初めて狙い撃ちした薬
- ベバシズマブ——「がんは血管を呼ぶ」という仮説から、30年かけて薬になった
- セツキシマブとパニツムマブ——皮疹が出る人ほど効く、大腸がんの抗体薬
- ゾルベツキシマブ——胃の細胞の「接着剤」を狙う、2024年の新しい胃がんの薬
- イマチニブ——「魔法の弾丸」が、死の病だった白血病を飲み薬で抑えた
- オシメルチニブ——イレッサの光と影から、第3世代の肺がんの薬へ
- アレクチニブ——自治医大の発見を中外製薬が薬にした、純国産の肺がん治療薬
- レンバチニブ——エーザイの研究所から生まれた、肝がん・甲状腺がんの飲み薬
- エベロリムス——イースター島の土から見つかった成分の子孫
- CDK4/6阻害薬——お蔵入り寸前の化合物が、乳がんのホルモン療法を変えた
- オラパリブ——「合成致死」という発想と、BRCA遺伝子検査
- RASの40年——「薬にできない」と言われた標的に、ソトラシブからダラクソンラシブへ
- レナリドミド——サリドマイド薬害から復活した、骨髄腫の薬
- ダラツムマブ——点滴8時間が皮下注5分になった、骨髄腫の抗体薬
- ベネトクラクス——「細胞の自殺」を止めるタンパクを外す、高齢者の白血病の薬
- トレチノインと亜ヒ酸——ビタミンAの仲間と「毒」が、最も治る白血病を作った
- イピリムマブ——免疫の「ブレーキ」を外す最初の薬と、ノーベル賞
- ニボルマブ(オプジーボ)——本庶佑のPD-1と、薬価をめぐる騒動
- ペムブロリズマブ(キイトルーダ)——開発中止寸前だった薬が、世界一売れる薬になった
- アテゾリズマブ+ベバシズマブ——肝がんの一次治療を10年ぶりに変えた組み合わせ
- 二重特異性抗体——片手でがん、片手で免疫細胞をつかむ薬
- CAR-T細胞療法——6歳の少女を救った「自分の免疫細胞を薬にする」治療
- mRNAがんワクチン——コロナワクチンの技術で、患者ごとに作る「オーダーメイド」
- トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)——第一三共の「がんに薬を運ぶミサイル」
- エンホルツマブ ベドチンとADC——40年続いたシスプラチンの時代を終わらせた薬
- ルテチウム-177——「診断と治療を同じ分子で」放射線を出す薬が家に帰るとき
- がん遺伝子パネル検査——56万円で数百の遺伝子を読み、薬にたどり着くのは約1割
- 臓器横断的な薬——「臓器ではなく遺伝子で」薬を選ぶ時代
- リキッドバイオプシー——血液でがんの遺伝子を追い、再発の芽を見る
薬のこと・お金のことの相談先
電話番号や制度の内容は変わることがあります。最新の内容は各ページでご確認ください。治療中の方も、治療を終えた方も、ご家族だけでも相談できます。
- 治療を受けている病院の外来・化学療法室副作用が出たとき、まず連絡する先です。夜間や休日の連絡先は、治療の説明書や「治療日誌」に書かれていることが多いので、目につく場所に貼っておいてください。
- がん相談支援センター治療や薬のこと、お金や仕事のことを無料で相談できます。県内すべてのがん拠点病院にあり、その病院にかかっていなくても利用できます/福岡県「福岡県内のがん拠点病院がん相談支援センター」
- がん情報サービス(国立がん研究センター)がんの種類ごとの標準治療と、使われる薬の情報を、公的機関がまとめています/ganjoho.jp
- くすりのしおり(くすりの適正使用協議会)処方された薬の飲み方・注意・副作用を、薬の名前で調べられる患者向けの情報です/rad-ar.or.jp/siori
- 高額療養費制度の窓口(加入している健康保険)1か月の自己負担に上限を設ける制度です。会社の健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の国民健康保険・後期高齢者医療広域連合など、保険証(資格確認書)に書かれた保険者に申請します。マイナ保険証を使えば、窓口での支払いが最初から上限額までになります/厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- かかりつけ薬局の薬剤師飲み薬の抗がん剤と、ほかの薬・サプリメント・食べ物との飲み合わせは、薬局で確かめられます。お薬手帳を1冊にまとめておくと早いです。
REFERENCE 参考資料
- 日本ビーシージー製造「イムノブラダー膀注用80mg/40mg 添付文書」(販売開始1997年3月)(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/530331_6391700X3020_2_07);Morales A, Eidinger D, Bruce AW. Intracavitary Bacillus Calmette-Guerin in the treatment of superficial bladder tumors. J Urol. 1976;116(2):180-183(https://doi.org/10.1016/S0022-5347(17)58737-6)
- Kantoff PW, et al. Sipuleucel-T immunotherapy for castration-resistant prostate cancer. N Engl J Med. 2010;363(5):411-422(https://doi.org/10.1056/NEJMoa1001294);Karikó K, et al. Suppression of RNA recognition by Toll-like receptors: the impact of nucleoside modification and the evolutionary origin of RNA. Immunity. 2005;23(2):165-175(https://doi.org/10.1016/j.immuni.2005.06.008)
- Sahin U, et al. Personalized RNA mutanome vaccines mobilize poly-specific therapeutic immunity against cancer. Nature. 2017;547(7662):222-226(https://doi.org/10.1038/nature23003);Ott PA, et al. An immunogenic personal neoantigen vaccine for patients with melanoma. Nature. 2017;547(7662):217-221(https://doi.org/10.1038/nature22991)
- Weber JS, et al. Individualised neoantigen therapy mRNA-4157 (V940) plus pembrolizumab versus pembrolizumab monotherapy in resected melanoma (KEYNOTE-942): a randomised, phase 2b study. Lancet. 2024;403(10427):632-644(https://doi.org/10.1016/S0140-6736(23)02268-7);Khattak A, et al. Intismeran autogene plus pembrolizumab versus pembrolizumab alone in high-risk resected melanoma: 5-year update of the randomized phase IIb KEYNOTE-942 study. J Clin Oncol. 2026;44(26):2482-2489(https://doi.org/10.1200/JCO-26-00835)
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- 第3相試験 INTerpath-001(V940-001)の登録情報:ClinicalTrials.gov NCT05933577(https://clinicaltrials.gov/study/NCT05933577)。結果の概要(2026年8月19日)と設計の詳しい解説は、当院コラム「「がんワクチン」の第3相試験が、世界で初めて成功した」(関連記事)を参照
- 国立がん研究センター がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」2025年11月6日更新(https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu01.html)、同「悪性黒色腫(皮膚)」2023年6月7日更新(https://ganjoho.jp/public/cancer/melanoma/index.html)

